【3】鳥インフルエンザとその脅威 |
昨年末より鳥インフルエンザが発生しています。
本節では、鳥インフルエンザの脅威と対処法をまとめました。
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新型インフルエンザとは? |
新型インフルエンザとは、動物や鳥類が持つインフルエンザウイルスがヒトの体内で増えるように変異し、ヒトからヒトに感染して起こる疾患のことを指します。発生の予測が困難な上、新しいウイルスであるために殆どの人が免疫を持っていないため、世界中で爆発的に大流行(パンデミック)すると考えられています。
新型インフルエンザも季節性インフルエンザと同じ機序で感染が起きますが、違うのは、新型に対する免疫は誰にもなく、ヒトからヒトへ容易に感染してしまうことです。更に重症化する人が増えることも大きな違いです。
季節性インフルエンザでは毎年1千万ほどの罹患者が出ますが、ウイルスに対して誰も免疫を持たなければ、その数は2千万人や3千万人にまで膨れあがる可能性があります。しかも、その患者さんの中には、高齢者や乳幼児、喘息などの持病を持つ人、妊産婦などの病気弱者が必ず一定数おり、流行が大きくなればなるほどその数も増えて来ます。病気弱者の方は抵抗力も弱いためにどうしても重症化しやすく、重症者が増加すると地域の医療機関に与える負荷も大きくなります。特に夜間診療や休日診療の体制をしっかり整備しておかないと助かる命も助からなくなってしまいます。
■WHOによる新型インフルエンザの警報フェーズ一覧表 |
区分 |
段階 |
説明 |
前パンデミック期 |
フェーズ1: |
動物のインフルエンザ・ウイルスでヒト感染を引き起こすものはまだ報告されていない |
フェーズ2: |
動物(飼育または野生)のインフルエンザ・ウイルスのヒト感染が知られ、そのため、そのウイルスがパンデミックの潜在的脅威と考えられる |
パンデミック・アラート期 |
フェーズ3: |
人々の間で散発的又は(幾つかの)小規模集団において疾患が発生するが、コミュニティ・レベルの大発生を支えるほどのヒト-ヒト感染には至っていない段階。限定的なヒト-ヒト感染がある環境(例:感染者と無防備な介護者との密な接触)で起こることはあったとしても、そのウイルスがパンデミック・レベルの伝染能力を得たわけではない |
フェーズ4: |
コミュニティ・レベルの大発生の要因となるヒト-ヒト伝染が確認される段階。かかる事態が疑われるか確認された国は至急WHOと相談すべきで、状況を共同で評価し、早急なパンデミック封じ込め作戦を実行可能かどうか判断しなければならない。ただしこの段階は、パンデミックのリスクの増大は重要である一方、パンデミックが必ずしも起こるとは限らない段階でもある |
フェーズ5: |
ヒト-ヒト感染がWHOの同一管区の複数の国で広まる段階。大半の国はまだその影響を受けていない段階ではあっても、フェーズ5の宣言は、パンデミックが差し迫り、鎮静手段の計画を策定・伝達・実行するための時間が短いことを強く示すものであることに充分留意しなければならない |
パンデミック期 |
フェーズ6: |
フェーズ5以外のWHOの管区の一国以上でコミュニティ・レベルの大発生に至る段階で、フェーズ6の指定は当然ながら地球すなわち全世界規模のパンデミックが起きていることを示すものである |
後パンデミック期 |
フェーズ - : |
パンデミックが終息し、発生前の状態へ急速に回復する段階で、「インフルエンザ・パンデミックの推移」(※後述)で示した「流行の消退」と「流行後」の時期当たる |
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■インフルエンザ・パンデミックの推移 |
経過 |
説明 |
亜型ウイルスの確認 |
- 亜型ウイルスの存在が確認されている(例:動物のインフルエンザウイルス)
- ヒト感染のリスクは低い、またはヒト感染は報告されていない
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ヒトへの感染の確認 |
- 亜型ウイルスの存在が確認されている(例:動物のインフルエンザウイルス)
- ヒトへの感染が報告されている
- パンデミックの潜在的脅威
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限局したヒト-ヒト感染の確認 |
- ヒトからヒトへの感染はきわめて限定されている(※家族や身近な接触者等)
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小規模の流行 |
- ヒトからヒトへの小規模感染(※単独国家内での感染)を認めるだけの証拠が存在する
- パンデミックとなる可能性は中~高程度
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大規模の流行 |
- ヒトからヒトへの相当数の感染(※単一のWHO管区内における複数の国家での感染)を認めるだけの証拠が存在する
- パンデミックへと発展する可能性が高く、早急に大流行への計画的な対策を講じる必要性がある
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世界的な大規模流行 |
- グローバル・パンデミック(=世界流行)の状態
- 上記の状態に加え、当初集団発生したWHO管区とは異なる管区で集団発生が確認される
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流行の消退 |
- 流行のピークは過ぎたものの、流行再燃の懸念が残る状態
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流行後 |
- パンデミックを起こしたウイルスが通常のインフルエンザ・ウイルスと同等の状況となった状態(※ただし、パンデミックに対する警戒と備えは維持する必要はある)
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H5N6型、高病原性鳥インフルエンザA(亜型)が日本に上陸 |
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鳥インフルエンザが発生しています! |
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今冬、高病原性鳥インフルエンザが相次いで確認されています。2016年11月18日、鹿児島県出水市で採取された水に高病原性鳥インフルエンザA
H5N6型が確認されました。この水は鶴のねぐらの水であり、ここから約2.4キロ離れた場所で死んだナベヅルが発見されています。鶴の死骸からはA型インフルエンザウイルスの陽性反応が出ています。
なお、鳥インフルエンザに関する心配としては、「鶏肉や鶏卵を食しても大丈夫か?」などと言ったものが多く挙げられます。鳥インフルエンザの原因となっているウイルスがヒトの細胞に入り込むための受容体は、鳥の受容体とは異なり、またウイルスは酸に弱く、胃酸で不活化されると考えられています。更に家禽類で発生が確認された場合には、本病に感染した鶏等が市場に出回ることがないようにする家畜防疫上の措置に加え、通常の公衆衛生の観点から殺菌・消毒等の衛生管理が流通の各段階で実施されていることから、国内においては、鳥の肉や卵を食べることによって鳥インフルエンザ(ウイルス)がヒトに感染する可能性はないと考えられています。根拠のない噂やデマなどによって徒に騒いだりせず、正確な情報に基づいて冷静に対応しましょう。 |
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H5N6型の始まりは? |
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2014年4月以降、中国でヒトへの感染が確認された高病原性鳥インフルエンザウイルスAのH5N6型は、中国で15人が感染、そのうち6人が死亡しています。
2016年11月、韓国では11月28日時点で家禽のアヒルと鶏の131万羽が殺処分されました。そして11月29日、日本の新潟において約31万羽の殺処分が始まっています。11月29日現在では日本韓国何れにおいてもヒトへの感染の報告はありません。なお、11月28日の韓国の農林畜産食品部の発表によると、韓国内で採取されたH5N6型高病原性鳥インフルエンザAを4件分析したところ、中国や香港で採取されたH5N6の遺伝子と99%一致したと言います。しかし、内部遺伝子であるPA遺伝子やNS遺伝子においては92~97%の一致だったとし、変異が見られることを明示しました。 |
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鳥インフルエンザウイルスの変異 |
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ウイルス変異とは、野鳥が2つ以上のウイルスに同時に感染すると、ウイルスの遺伝子が鳥の体内で交換されてしまうことから発生するものだとされています。つまり、その結果病原性が増し、予防が困難になるということを意味しています。
ちなみに、韓国では鳥インフルエンザには強いはずのアヒルが多く犠牲になっています。日本での殺処分は11月29日現在では鶏のみですが、青森でアヒル10羽の死亡及び9羽から鳥インフルエンザの陽性反応が出ているので、更に病原性の高まった鳥インフルエンザウイルスの蔓延が懸念されます。日本国内でもヒトへの感染、更には死亡例が発生する可能性もあります。基本的な予防対策を怠らないよう十分注意が必要です。 |
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鳥インフルエンザの発生状況 |
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過去の海外での発生状況 |
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2016年10月現在、WHO・OIEから以下の国においての鳥インフルエンザの人への感染と感染による死亡が公表されています。このうち2015年の中国では症例数135、死亡数39という多くの報告がされています。また、フランスなどの欧州でも鳥類からの鳥インフルエンザウイルスの検出が報告されており、2015年にはフォアグラの輸入禁止の措置もとられました。
- アジア:
インドネシア・カンボジア・タイ・中国・パキスタン・バングラデシュ・ベトナム・ラオス
- 中東:
アゼルバイジャン・イラク・エジプト・トルコ
- アフリカ:
ナイジェリア
- 北米:
カナダ
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日本国内の鳥インフルエンザの発生状況 |
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人への感染が確認され、近年では世界的に危険視されるようになった鳥インフルエンザですが、鳥インフルエンザそのものは決して新しい病原菌ではなく、古くは100年以上も前から発生が確認されており、日本でも少なくとも1920年代には発生が確認されていたとされています。また、鳥インフルエンザが確認されても、高病原性(鶏に感染した場合に高確率で死亡する種類の鳥インフルエンザウイルスでA/H5,A/H7のタイプのもの)でなかったり発生規模が小さなケースだと大きく報道されない場合もありますが、日本でも毎年のように鳥インフルエンザが確認されています。
2016年11月現在、日本国内で鳥インフルエンザが人間に感染した例は報告されていませんが、飼育された鳥や野鳥から鳥インフルエンザウイルスが検出された例は日本国内でもあります。今までに、愛知県や宮崎県、茨城県、埼玉県、山口県、大分県、京都府などで鳥類から鳥インフルエンザウイルスが検出されています。特に平成19年の宮崎県では幾つかの市町村亜おいてウイルスが検出されています。
- 近年の主な発生状況:
- 1996年、5N4型が日本(北海道)で確認される
- 2004年、山口県や京都府の養鶏場でH5N1型による最大10万羽以上の死亡事例などが発生
- 2005年、茨城県や埼玉県の採卵養鶏場などからH5N2型の陽性反応
- 2007年、宮崎県や岡山県内の養鶏場などからH5N1亜型などの高病原性鳥インフルエンザが発生
- 2008年、東北・北海道の野鳥の死骸からH5N1型が見つかる
- 2009年、愛知県のウズラ飼養農場から日本で初めて高病原性の鳥インフルエンザ(H7N6亜型)が見つかる
- 2010年、北海道で採取されたカモの糞などから検出される。また、島根県の採卵鶏養鶏所からもH5N1亜型の陽性反応
- 2011年、兵庫県や福島県の野鳥の死骸からH5N1亜型が検出された他、宮崎県内で10例以上の H5N1亜型が確認される
- 2016年、青森県において11月28日に高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が確認され、12月1日にH5N6亜型と確定。その後、同年にて新潟県関川村、新潟県上越市、北海道、宮崎県川南町でも発見
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2016年11月末現在の発生状況 |
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- 海外:
2016年11月、韓国において野鳥の分からH5N6亜型鳥インフルエンザが確認されました。また、10月以降からハンガリーやドイツなどの欧州やインドでH5N6亜型鳥インフルエンザの発生が確認されており、多数の野鳥の死亡も報告されています。
- 日本国内:
2016年年11現在、国内でも幾つかの県において鳥インフルエンザウイルスが検出されています。これらの報告を受け、2016年11月21日現在、環境省は野鳥の監視体制を最も高い対応レベル3に引き上げました。今シーズンはこれまでに野鳥から19例もの鳥インフルエンザウイルス検出が報告されており、最高の警戒レベルが続いています。
- 2016年11月15日、秋田県においてH5N6亜型が検出される
- 2016年11月18日、鹿児島県において11月14日に採取した鳥のねぐらの水からH5N6亜型が検出
- 2016年11月21日、鳥取県において11月15日に採取したコガモの糞便からH5N6亜型が検出
- 2016年11月28日、青森県のアヒル農場において高病原性鳥インフルエンザの感染が確認
- 2016年11月28日、新潟県の養鶏場においてH5N6亜型鳥インフルエンザウイルスが検出
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鳥インフルエンザウイルス感染症とはどんな感染症か? |
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鳥インフルエンザとは? |
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インフルエンザウイルスは感染していく中で、常にそのタンパク質の構造に変化が生じています。これがウイルスの変異です。そし インフルエンザウイルスのうちA型インフルエンザウイルスは、人以外の鳥、豚などの動物も感染します。それに対して鳥インフルエンザとは、ニワトリやウズラ、アヒル、七面鳥などの家禽が持っているA型インフルエンザウイルスによる感染症で、ヒトの季節性インフルエンザとは感染症法上で区別されています。鳥インフルエンザウイルスは鳥に対する病原性の強さから高病原性と低病原性に分類され、ヒトへの感染例が確認されているものは高病原性はH5N1及びH7N7亜型ウイルス、低病原性はH9N2亜型ウイルスがあります。特に鳥インフルエンザウイルスの中で鳥に感染した時に症状が重篤で致死率が高い強毒株を高病原性鳥インフルエンザウイルスと言います。
高病原性H5N1ウイルスのヒトへの感染は、主に生鳥マーケットへの立ち入りや病鳥の調理などの濃厚接触により、その体液や排泄物を吸飲したり、生肉を摂食することで起こります。発症後の致死率は60%です。しかし、充分に加熱処理された鶏肉や鶏卵からの感染は見られていません。現時点でヒトからヒトへの感染は確認されておらず、何れも散発例のみで、感染事例は中国、東南アジア及び中東諸国から報告されています。一方H7N7ウイルスはヒトからヒトへの伝播が確認されており、致死率は低いものの、2003年にオランダの養鶏場で起こった感染者1名の死亡例が知られています。なお、高病原性鳥インフルエンザという病名は、2006年の感染症法改正により鳥インフルエンザとされ、亜型で区別することになりました。2008年からはH5N1は2類感染症に追加され、それ以外が4類とされています。て、タンパク質が同じ型の中で変化するものを連続変異、タンパク質が全く別の型に変化するものを不連続変異と呼びます。我々の身体は一度感染して克服したウイルスに対しては免疫を獲得し、その後そのウイルスには感染しないか、感染したとしても軽い症状ですみます。しかし、ウイルスが変異を起こし、私達が免疫を持たない亜型に変化することがあります。これが新型インフルエンザですが、新型インフルエンザは、過去に人が感染した経験が殆どない分、感染が広がる危険性が出てきます。 |
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鳥インフルエンザと毎冬流行するインフルエンザの関係 |
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鳥インフルエンザと毎年流行する季節性インフルエンザは一体どのような関係にあるのでしょうか?
鳥インフルエンザウイルスは水鳥が自然に腸管に持っているウイルスです。ただ持っているだけでは害はないのですが、これが水鳥から家禽に感染し、更に家禽から家禽へと感染が拡がると次第に強毒化してしまうことがあります。それが高病原性鳥インフルエンザで、H5N1やH7N7の中にはそのようなものがあります。元々鳥が持っているA型インフルエンザウイルスが人にうつって、更にウイルスがヒトからヒトに容易に、かつ持続的に感染できる能力を得ると、これが新型インフルエンザとなって爆発的な流行(パンデミック)が発生します。過去には1918~21年に大流行したスペイン風邪(H1N1)や1957年に発生したアジア風邪(H2N2)、1968年の香港風邪(H3N2)などが挙げられます。しかし、爆発的な流行から通常2年か3年もすると多くの人がウイルスに抵抗力(免疫)を持ち、大きな流行はなくなり、毎冬のインフルエンザとして小流行を繰り返すようになります。これが季節性インフルエンザと呼ばれるH1N1とH3N2です。 |
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鳥インフルエンザとその脅威 |
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忘れられた鳥インフルエンザ |
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2009年4月にメキシコで発生した新型インフルエンザ(H1N1)は瞬く間に世界中に広がり、パンデミックを起こしました。その発生から1年半近く経過した翌年の2010年8月、WHO(世界保健機関)はパンデミックの終息を宣言しましたが、この間に世界200ヵ国以上で新型インフルエンザは流行し、結果的に18,000人以上もの人が亡くなりました。しかし、この数はウイルス検査で新型インフルエンザの感染が確認された例だけを集計したもので、殆どの国では早期に全例検査を取りやめていることから実際の数は誰にも分からないのが実態です。この時はある意味で幸運に助けられた側面が強くあります。ウイルスが強毒性に変異しなかったことと、タミフルに対する耐性を持ったウイルスが広がらなかったこと、そして、ワクチンの型がよく合っていたことなどが理由として挙げられます。しかし、つい最近になってこのH1N1新型インフルエンザウイルスは高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1と容易に遺伝子の交雑(交換)を行なって毒性の強い新たなウイルスを作り出しやすいという事実が明らかになりました。豚由来の新型インフルエンザ(H1N1)の出現によりすっかり忘れ去られてしまった鳥インフルエンザ(H5N1)ですが、アジアや中東などでヒトへの感染が報告され続けており、相変わらず50%程度と高い致死率となっています。H5N1は家禽や野鳥の間では既にパンデミックになっているというのが多くの専門家の意見となっているのです。 |
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鳥インフルエンザのヒトへの感染とその実態 |
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一般に信じられているように、鳥インフルエンザウイルスは本当に人へ感染しないのでしょうか? 関係省庁からの通知では、感染した鳥との濃密な接触等の特殊な場合を除いて、通常ではヒトに感染しないとはされていますが、それではその「特殊な場合を除いて」とは一体どういうことでしょうか? また 鳥インフルエンザが人間に感染した場合はどうなるのでしょうか?
H5N6は人に感染すると高率に死に追いやることは殆ど知られていません。中には「通常は感染しない」などと言う人もいるくらいです。しかし、専門家によってはH5N6型の鳥インフルエンザウイルスは日本中の家禽類に蔓延すると予測しています。実際2014年以来、2年弱で中国香港で十数名の感染者と死者が出ていて、つい先日11月21日に中国湖南省で農業に従事している女性が感染して死亡しているのです。今回の感染源はその中国やシベリアから越冬のために飛来している渡り鳥とされ、運ばれたH5N6型は人間に感染し、更に死に追いやるというのです。また、日本でも近年、鳥インフルエンザの本格的な蔓延が起きつつあります。事実、昨年12月には長野県安曇野市でも衰弱した野生のコハクチョウが発見され、陽性反応が出ています。豚インフルエンザの時と同様、鳥インフルエンザも人間にはうつらないとされていますが、有効なワクチンがないだけに、いざ鳥インフルエンザがヒトに感染した場合、非常に恐ろしいことにになる可能性も決して否定できないのです。
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3つの型があることは一般にも知れていると思いますが、鳥インフルエンザはA型に当てはまります。A型は更にH1~H16の亜型とN1~N9の亜型があり、組み合わせると144種類もその種類があるのです。中でもニワトリなどに感染する高病原性鳥インフルエンザウイルスはH7型と今回のH5型があります。通常は鳥に感染するウイルスと人間に感染するウイルスは異なり、日本国内でも人間に感染した例はなく、厚労省でもそれを強調していますが、やはり怖いのはウイルスが変異してトリからヒトへ、更にはヒトからヒトへとインフルエンザウイルスが感染し、パンデミック(世界的流行)状態になることです。 |
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鳥インフルエンザなぜ危険なのか? |
一般に鳥インフルエンザウイルスはヒトに直接感染することはほぼないとされています。更にヒトからヒトへの感染もほぼないと考えられています。ところが、A型インフルエンザウイルスはB型に比べて変異しやすいことから、鳥インフルエンザが鳥の間で感染を繰り返すうちに、トリからヒトへ、そしてヒトからヒトへと感染を起こすタイプに変異した場合はとても危険です。なぜなら、このような変異により出現したインフルエンザウイルスは人が免疫を持たない新型ウイルスだからです。
昨年の11月に入ってから秋田県秋田市や鹿児島県出水市、鳥取県鳥取市などで回収された鳥の死骸や水鳥の糞などから相次いで高病原性鳥インフルエンザウイルスが発見されています。野鳥観察などをしているだけで鳥インフルエンザに感染することはまずないでしょうが、念のために野鳥や野生動物の死骸を見つけても決して素手で触らないようにしなければなりません。また、同じ場所でたくさんの野鳥が死亡しているの見つけたら都道府県や市町村役場に連絡するようにして下さい。
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ワクチンによる予防が困難 |
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これまでにヒトに感染したことがないに等しい新種のウイルスであるため、流行初期にはぴったりなワクチンが存在しません。事前予防ができないことから、鳥インフルエンザ(H5N1)をはじめとする新型インフルエンザの大流行に繋がりかねません。現在これまでにヒトに感染したケースのH5N1ウイルスで暫定的に作ったワクチン(プレパンデミックワクチン)が一定量備蓄されていますが、実際のパンデミックの際のウイルスとは型が異なることから効果は限定的と言わざるを得ないのです。 |
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感染するとどうなるの? |
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感染すると突然の高熱や呼吸器症状の他、全身倦怠感や筋肉痛などの全身症状を伴うとされています。中には軽症で済んだ例もありますが、多臓器不全や重症肺炎などにより急激に悪化して死に到るケースも報告されているため充分な注意が必要です。 |
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重症化しやすい10~20歳代 |
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若者(特に10~20歳代)は生体防御機能がよく働いているため、身体の免疫機能が過剰に反応してしまうサイトカイン・ストームが起こりやすく、重症化しやすいとされています。また、妊婦や乳幼児、高齢者についても重症化しやすいことが指摘されていますので、くれぐれも感染予防を心懸け、かかりつけの医師の指導を受けることが大切となります。 |
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5歳以下の乳幼児はインフルエンザ脳症にも注意 |
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インフルエンザ脳症とは、インフルエンザ発病後、急激に病状が悪化する病気で、主に5歳以下の乳幼児に見られます。この場合、インフルエンザの症状に加えて、(1)呼びかけに答えないなどの意識障害、(2)意味不明の言動、(3)持続性の痙攣と言った症状が現われるとされています。このような症状が見られた際には速やかに医療機関を受診するように心懸けましょう。 |
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致死率が下がっているのは危険の予兆!? |
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2009年以降のインフルエンザによる致死率を見ると、2008年まで70%ほどあった致死率が40~50%程度にまで低下しています。 一見喜ばしいことにも思えるのですが、パンデミックの観点から言うと単純に喜ぶわけにはゆきません。新型インフルエンザが効率よくヒト-ヒト感染を成立させ、感染拡大を起こすためには感染者が多くの人と接することが必要です。余りに致死率が高いと症状が激しく、外出することも難しくなるために却って人との接触の機会が減り、感染効率が悪いためにパンデミックのような感染爆発は起こしにくいのです。つまり、致死率が下がって来たことで、このウィルスがヒト-ヒト感染をおこすようになった時には一気に感染爆発をおこす危険性が強くなったという見方をすることも出来るということです。 |
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鳥インフルエンザに感染した時の症状 |
ウイルスの型により違いがありますが、突然の高熱や咳、全身のだるさ、筋肉痛などの症状を伴うとされています。
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鳥インフルエンザの潜伏期間 |
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感染してから3~7日 |
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鳥インフルエンザの症状 |
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症状は通常のインフルエンザとよく似ており、発熱、呼吸器症状、全身倦怠感が主症状です。更に高病原性鳥インフルエンザでは、急速な呼吸不全や全身症状の悪化、多臓器不全の合併症を起こして死に至ることがこれまでの感染事例から報告されています。また、H7亜型ウイルスでは結膜炎症状を示すことが知られています。
初期症状は季節性インフルエンザと似た症状が挙げられますが、進行は比較的早い傾向があり、重篤な場合は全身の臓器が異常を呈し、死に至ることもあります。
- 38℃以上の突然の高熱
- 咳などの呼吸器の症状
- 全身の倦怠感
- 筋肉痛
- 下痢や嘔吐、腹痛などの消化器の症状
- 胸痛などの呼吸器の症状
- 鼻や歯茎からの出血
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鳥インフルエンザが人に感染した場合の治療法 |
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鳥インフルエンザの検査と診断 |
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鳥インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスであることから、インフルエンザ迅速診断キットで検出可能です。しかし、検出感度が必ずしも高くないことから見逃しも多く、陰性であっても感染を否定するものではありません。従って、病鳥との接触歴など疫学的な背景を考慮した臨床診断が優先されます。また、迅速診断検査では亜型の特定はできないので、陽性であっても季節性インフルエンザとの区別をするために、H5やH7及びH9亜型ウイルスの特異的遺伝子検出検査やウイルス分離による確認を行なう必要があります。 |
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鳥インフルエンザの治療法 |
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今のところ効果が期待できるとされる治療は、A型インフルエンザに有効な抗インフルエンザウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害剤(タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビル)による早期治療です。感染の可能性がある場合は極力早い時期に投与することが勧められており、発症した場合は48時間以内の投与が効果的とされます。また、病鳥に濃厚に接触する可能性の高い場合は、医療用マスク(N95)やゴーグル、防護服などを着用し感染防御を徹底すると共に、抗インフルエンザ薬の事前服用が推奨されます。また、現在人のための鳥インフルエンザ予防のワクチンはありません。つまり、季節性のインフルエンザのワクチンでの予防効果は期待できないということです。しかし、幸い高病原性H5N1ウイルスの感染予防としてH5N1不活化ワクチンが開発されました。臨床研究により安全性が確認されたことから、2007年には国から製造販売承認が出され、4つの異なる系統のウイルスを用いたH5N1ワクチン3千万人分が製造され、国家備蓄されています。更に備蓄ワクチン量が限られていることからH5N1が流行した場合は、医療従事者や社会機能維持者の順でワクチン接種する優先順位が決まっています。 |
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鳥インフルエンザとその予防 |
鳥インフルエンザに感染しないために |
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野鳥からの感染防止 |
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野生の鳥はインフルエンザウイルス以外にも人に病気を起こす病原体を持っている可能性があります。日頃からつぎのことに注意しましょう。
- 衰弱または死亡した野鳥またはその排泄物を見つけた場合は直接触れないこと。もしも触れた場合には速やかにうがいや手洗いをする
- 特に子供は興味から野鳥に近づく恐れがあるので注意が必要
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感染した人からの感染の予防 |
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通常鳥インフルエンザウイルスは人には特に感染しませんが、もしも感染した人が近くにいる場合や鳥インフルエンザウイルスの変異により新型インフルエンザが発生した場合の予防策は知っておく必要があります。
- マスクをする
- 小まめにうがいをする
- 小まめに石けんで手を洗う
- 汚れた手で口や目、鼻などを触らない
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海外での感染防止 |
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鳥インフルエンザ(H5N1)の予防策は、現在流行している新型インフルエンザ(H1N1)と同様、手洗い・うがい・マスクの着用が有効です。インフルエンザの流行期には、手洗いは外出後だけではなく、可能な限り頻回に行いましょう。石けんを泡立てて最低でも15~20秒以上洗い、すすぎも入念に行います。親指・爪の間・指の間・手首・手のしわなどに洗い残しが多いので注意してください。固形の石鹸は表面に細菌が繁殖したりウイルスが付着したままになりやすいので、できれば液体石鹸をおすすめします。外出から帰宅した際は、手洗いとセットのうがいを1回15秒程度で2回以上行いましょう。特に人混みに入る際には、マスクの着用によりウイルスの侵入をある程度防止する効果が期待できます。また、ウイルスは粘膜を通して感染するため、マスクを外す際などに鼻や口などを触らないように注意が必要です。目の粘膜からも感染することがあるので注意して下さい。 鳥インフルエンザの流行地域に行った場合は、以下のことに留意する必要があります。
- 不用意に鳥類に近寄ったり触れたりしない。特に家禽が飼育されている場所、生きた鳥を販売している場所や食用に鳥を解体している場所には立ち入らない。特に子供は好奇心で野鳥などに近づく恐れがあるので注意をする
- 万が一、感染の可能性のある鳥等に触れた場合は直ぐにうがいと手洗いをする
- 鳥の解体や調理をしない。もしも鳥を扱った場合には必ずよく手を洗う
- 充分に加熱された鳥肉、卵などを食べる
- 予防策は季節性インフルエンザと同様にうがいと手洗い、マスクが有効
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鶏肉や鶏卵を食べることによる感染は? |
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今まで鶏肉や鶏卵を食べることで人に感染した事例はありませんが、WHO(世界保健機関)は、鳥インフルエンザの集団発生が認められる地域で鶏肉や鶏卵を食べる場合の充分な加熱調理の必要性を示しています。 |
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予防策は通常のインフルエンザと同様にうがいと手洗い、マスクが有効 |
鳥インフルエンザ(H5N1)の予防策は、現在流行している新型インフルエンザ(H1N1)と同様、うがいと手洗い、マスクの着用が有効です。インフルエンザの流行期には、手洗いは外出後だけではなく、可能な限り頻回に行ないます。石鹸を泡立てて最低でも15~20秒以上洗い、すすぎも入念に行ないます。親指と爪の間、指の間、手首、手の皺などに洗い残しが多いので注意ましょう。固形の石鹸は表面に細菌が繁殖したりウイルスが付着したままになりやすいので、出来れば液体石鹸がオススメです。外出から帰宅した際は、手洗いとセットのうがいを1回15秒程度で2回以上行ないます。特に人混みに入る際にはマスクの着用によりウイルスの侵入をある程度防止する効果が期待できます。また、ウイルスは粘膜を通して感染するため、マスクを外す際などに鼻や口などを触らないように注意が必要です。目の粘膜からも感染することがあるので注意しましょう。
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鳥インフルエンザウイルス感染症に気づいたらどうする? |
ニワトリなどの病鳥との接触歴やそれに関連した職歴、鳥インフルエンザの流行地域への渡航歴の有無によって患者への初期対応は異なります。
接触歴があり発熱などの症状が現われていて迅速診断検査でA型陽性でH5N1が同定された場合は、医療機関は2類感染症として速やかに最寄りの保健所を通して国へ届けなければなりません。報告を受けた自治体では、検査に必要な検体を確保し、インフルエンザのウイルス学的検査が行なわれます。また、患者は必要に応じて個室で入院管理されます。現時点ではヒトからヒトへの感染は起こっていませんが、医療従事者への感染防御のために使い捨て手袋やマスク、眼鏡、使い捨てガウンなどで接触感染や飛沫感染の予防策をとる必要があります。一方H5N1以外の鳥インフルエンザの場合は4類感染症として届けられます。外来管理の場合はヒトへの感染を防ぐためにマスクの着用や手洗いの励行、人混みに出ない、他の人との濃厚な接触を可能な限り避けるなどの措置が必要になります。
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参考:鳥を飼っている人は要注意! |
鳥インフルエンザは鶏やアヒルの他にも色々な種類の鳥に感染することが知られていますが、国内で鳥インフルエンザが発生したために、これまでペットとして家庭や学校などで飼養している鳥が直ちに危険になるということはありません。むしろ家庭などで隔離して飼われている鳥は野外からの感染の危険は小さいといえます。「ペットのチャボが感染」との報道以来、安易に飼い鳥を手放したり捨てたりする事態も起きています。ペットは大切な家族の一員ですし、冷静な対処を心懸けましょう。
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飼っている鳥への感染予防方法 |
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今回国内で発生した鳥インフルエンザの感染経路はわかっていませんが、専門家は日本に飛来する渡り鳥が運んできたか、人や物に付着して持ち込まれた可能性を指摘しています。飼っている鳥へ感染させないように特に次のことに注意しましょう。鳥インフルエンザウイルスは鶏(チャボ、ウコッケイ等を含む)やウズラ、キジ等の家畜に感染しやすく、鶏から鶏への伝播は容易に起こります。これらの鶏を飼っている人は特に注意が必要です。
- ペットの鳥を渡り鳥などの野鳥に接触させない
- 飼養ケージを点検、補修して野鳥が侵入できる穴などは塞ぐ
- 野鳥の糞などが飼っている鳥の水や餌を汚染しないように気をつける
- 水や餌は毎日取り替えて常に清潔なものを与える
- 餌は野鳥が侵入しない場所に保管する
- 野鳥が飛来する池の水を鳥の飲水に利用しない
- 人がウイルスを持ち込まないように気をつける
- 飼養舎に入る時は専用の長靴に履き替える。入り口に消毒液の踏み込み槽を設置するとなおよい
- 飼い主は鳥インフルエンザが発生している地域などへの旅行、訪問は控える
- 鳥を飼養する場所に飼養に関係ない人が立ち入らないように注意する
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鳥インフルエンザに感染した鶏などの主な症状 |
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鳥インフルエンザに鶏が感染すると様々な症状が出て高率に死亡します。なお、鳥の伝染病にはこれらの鳥インフルエンザの症状に良く似た症状を示すものもあります。飼っている鳥に健康異常が見られたら直ぐに動物病院に受診しましょう。
- 元気消失
- 呼吸器症状
- 下痢
- 肉冠、肉垂のチアノーゼ、出血、壊死
- 顔面の腫れ
- 脚部の皮下出血
- 産卵の低下
- 神経症状
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日常の正しい衛生管理が大切 |
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鳥インフルエンザに限らず、鳥から人に感染する病気はいくつかありますが、正しい衛生管理をしていれば無闇に恐れる必要はありません。ただし、飼い主の体調に不調を感じたら早めに医療機関に受診することも大切です。
- 衛生管理のポイント
- 鳥を触る前、また触った後には手を洗う
- 排泄物は速やかに処理をして常に動物の周りを清潔に保つ
- 排泄物の処理をした後は直ぐに手を石鹸でよく洗い、うがいをする。心配な時はマスクや手袋をする
- 水や餌は衛生的なものを与える
- 鳥の健康状態を毎日よく観察する
- 鳥に健康異常が見られたら直ぐに動物病院に受信する
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参考図書及び参考サイト |
◆参考図書 |
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村上一裕・著 |
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『一生インフルエンザにかからない体質の作り方
今すぐできる!最新医学に基づく「免疫力」を強化する方法』 |
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フォレスト出版・2009年10月刊、1,200円 |
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世の中には「インフルエンザにかからない人」がいる!世の中には「インフルエンザにかからない人」が存在しますが、その秘密は「免疫力」です。多くの人が勘違いしていますが、「タミフル」「リレンザ」などの抗ウイルス剤ではウイルスは殺せません!本書は7000人の人生を変えた世界トップクラスの医学博士が、最新医学に基づく「免疫力強化法」を初公開!「今すぐできる!インフルエンザ対策リスト」の付録つき。 |
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河合直樹・編著 |
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『よくわかるインフルエンザのすべて』 |
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医薬ジャーナル社・2013年08月刊、2,800円 |
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インフルエンザの基礎知識、インフルエンザと他のウイルス感染症の診断、インフルエンザの外来治療、インフルエンザの合併症、重症例と入院治療、インフルエンザに伴う異常言動、インフルエンザの予防と感染対策、新たなインフルエンザの脅威と対策 |
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順天堂大学医学部・編 |
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『かぜとインフルエンザ
―日常生活の注意、予防、治療―』 |
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順天堂のやさしい医学13、
学生社・2006年04月刊、780円 |
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「かぜ」と「インフルエンザ」の見分け方、鳥インフルエンザの予防と治療、かぜとインフルエンザに関する日常生活の注意点や予防・治療法、など第一線の医師たちが、かぜとインフルエンザのすべてを解説!疑問・不安を解決する「質問コーナー」つき。 |
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