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 百薬の長と言われるお酒ですが、飲みすぎは禁物です。
 今回はアルコールの飲みすぎによるアルコール依存症を取り上げました。アルコールは脳に甚大な影響を与え、認知症や鬱病の原因にもなります。
アルコール依存症


アルコール依存症
【1】アルコール依存症とは?
【2】アルコールが脳に与えるダメージ
【3】アルコール依存症とその治療


【1】アルコール依存症とは?

 アルコール依存症は恐い病気です。
 本節ではアルコール依存症とはどんな病気なのか解説しました。
恐いアルコール依存症


50人に1人の成人男性がお酒なしではいられない
アルコール依存症

 アルコール依存症なんて他人事だと思っている人がたくさんいることと思います。ところが、実は50人に一人の成人男性がアルコール依存症に罹っているのだそうです。簡単に言えば、永年に渡ってお酒を大量に飲みつづけ、お酒なしではいられなくなってしまうのがアルコール依存症です。お酒がもとで身体を壊したり、仕事や日常生活が続けられなくなることもあるのがこの依存症の怖いところです。厚生労働省が2002年度から3年間に渡って行なった調査によると、成人男性の約2%、つまり50人に一人の割合でアルコール依存症があることが分かりました。

高齢者と若い女性は特に注意を
 最近の傾向として、高齢者(60歳以上)と若い女性にアルコール依存症が急増しています。高齢者の場合、リタイア後の孤立感や時間を持て余すなどの理由から飲酒を続け、若い頃よりも身体がアルコールに弱くなっていることもあって、短期間でアルコール依存症になるケースが見られます。また、20歳代前半の女性の場合、飲酒率が90%に近く、既に中年男性を上回っています。女性はストレスなどが原因で飲酒を続けることが多く、アルコールの影響も受けやすいため、30歳代の若さでアルコール依存症になるケースが増えています。不安やストレスの解消をアルコールに頼るのはとても危険です。趣味を持ったり地域活動に参加するなど、ストレス発散にはアルコール以外の方法を考えるようにしましょう。

お酒が好きなら要注意
 お酒をよく飲む人の大半は、自分がアルコール依存状態にあるとは思っていないでしょう。ところが、アルコール依存症の疑いがある人は現在450万人近くもいて、しかも毎年のように増加しているのです。ちなみにこの数字はアルコール依存症予備軍の推定値で、アルコール依存症の患者数は約80万人とされていますが、体調をかなり悪化させたり仕事などでトラブルを起こした人以外は殆どが治療を受けていないため、実際の患者数はその数倍はいると考えられています。
 「自分は違う」と思う人も多いでしょうが、そう思っているとしたら要注意です。アルコール依存症への第一歩は、実は「自分は違う」という思い込みから始まります。「自分はアルコールに強い」と思っている人は特に注意が必要です。アルコールに強いというのは、肝臓でアルコールが分解される時に発生する有害物質アセトアルデヒドの処理能力が高いという意味で、要は悪酔いしにくい体質のことです。しかし、そのこととアルコールが脳や身体に与える影響とは全く別のものなのです。たとえば脳への影響で言えば、アルコールに強い人ほど判断力などの低下を自覚しない傾向が見られます。たとえばある研究にによれば、アルコールに強いか弱いかに関係なく、アルコール摂取によって運転の際の反応時間が遅くなることが分かっていますが、これは有害物質のアセトアルデヒドではなく、アルコールそのものが脳の働きを麻痺させ、判断を鈍らせることが原因です。また、アルコールに強い人は自分の酔いの程度を低く評価する傾向があることも分かっています。 要するに酒気帯び運転によく見られる「これくらい平気だ」という気持ちが既に危険な状態なのです。ちなみに身体への影響についてはWHO(世界保健機関)がアルコールを原因とする病気が60以上あることを指摘しています。実際にアルコール依存症を放置していると、50歳代前半で死亡するケースが目立つのです。アルコール依存症になると、自分の健康を損うだけでなく、仕事を失ったり、家庭崩壊を招く例も少なくありません。お酒が好きでよく飲むという方ほど、アルコール依存症の怖さを知っておくことが大切です。

酒の力を借りるタイプはアルコール依存症になりやすい
 「酒は百薬の長」とも言われ、少し嗜む程度であれば心身の調子をよくしてくれるものです。実際、全くお酒を飲まない人よりも少量嗜む人の方が健康であるというデータもあります。しかし、これも度が過ぎると心身や生活を破壊するほどの影響力をもつもので、お酒を長く楽しむためには、自分の適量を知り、酒量や時間をコントロールしていくことが大切です。一番危険なのは、「明るくなりたいために酒を飲む」とか「酒がないと本音で話せない」というような酒の力を借りるタイプの人です。このタイプの人は、ストレスを感じるたびに度に酒量が増え、自分でも気づかないうちにアルコール依存症への道を進んでしまうことがあります。そういうタイプのお酒を飲まれる人は今後十分注意する必要があります。

アルコール依存症とはどんな病気なのか?

 アルコール依存症は薬物依存症の一つで、他の薬物依存症と同様アルコール依存症も脳の病気であり、行動の病気でもあります。

 薬物依存症の主な症状は、「強化された薬物探索・摂取行動」と規定されており、これは、脳に行動の記憶として刻印され、完治することがない病気です。長期に渡る断薬(アルコール依存症では断酒)をしても、少量の再摂取から短期間に断薬(断酒)直前の摂取行動に戻ってしまいます。そのため、他の慢性疾患と同様に再燃(再発)しやすい病気です。
アルコール依存症に対する誤解

 アルコール依存症は普遍的な病気ですが、一般社会においては多くの誤ったイメージが罷り通っている病気でもあり、そのため大量飲酒や常習飲酒者がアルコール依存者であると思い込まれがちです。また、アル中(慢性アルコール中毒)とは必ずしも同義ではありません。アル中は社会的・道徳的・倫理的なラベリング(レッテル貼りの言葉)であり、医学用語からは排除されています。

 先ず第一に、アルコール依存症は飲酒量や飲酒の仕方によって決定づけられるものではありません。飲酒の仕方は常習飲酒や周期飲酒、機会飲酒に分けられますが、一般には常習飲酒者のみがアルコール依存症の患者であるかのような誤った概念があります。確かに常習飲酒者が圧倒的に多いことは事実ですが、実は周期飲酒者の中にも本症患者の3分の1から4分の1の人々が含まれており、渇酒症と呼ばれる患者の多くはこのタイプです。さらに病的酩酊と呼ばれるものは極めて稀にしか飲酒しない機会飲酒ですが、ひとたび飲酒すると突然に意識障害が現われて急激な興奮や攻撃的態度となり、周囲の状況の認識を欠く状態となって完全健忘を認めることが多いのです。このような人々も断酒をしなければ社会生活をスムースにおくることはできませんし、医療の対象となります。
 次に、飲酒量によってアルコール依存症を簡単に診断することはできません。アルコールに対する受容量は個体差が大きく、体質的(先天的)に大量の飲酒が可能で、身体的にも精神的にも社会的にも何ら障害を示さない人々も存在しますが、多くの人は飲酒量が増加し、飲酒回数が増すに従ってアルコール耐性が形成されて、更に飲酒量が増加する危険性を孕んでいます。
 また、これも誤解が多いのですが、アルコール依存症とは生活破綻者や浮浪者のような人々のみを指しているのではありません。日常生活に問題もなく、社会的にも立派に活躍している人々の中に、驚くほど多くのアルコール依存者が潜んでいることも忘れてはなりません。
アルコール依存症の概念

 一般にアルコール依存症と呼ばれているものは急性中毒症を含まず、周期的または持続的にアルコールを摂取することによって起こる慢性中毒が問題になります。ところがアルコール依存症という用語の概念は極めて曖昧で、専門家の間でも明確な定義がなされていない状況で、それぞれの立場によって本症の概念にずれや拡大が生して統一が困難になっています。

 アルコール依存症は最も古くから普及した一般的名称ですが、その形成過程を重視する立場からは「アルコール嗜癖」または「依存」が好まれて用いられています。また、英語のアルコホリズム(Alcoholism)の訳語としては「アルコール依存症」が特に精神科臨床において近年用いられ、一般化しつつあると言えます。
 WHOにおいては、本症を薬物依存のひとつとして捉え、特に「依存」という概念を重視しています。1968年のWHO薬物依存専門委員会では「薬物依存とは、生体と薬物との相互反応から生ずる精神状態及び身体状態であって、行動上その他の反応が常に強迫的であるという特徴を持っています。この強迫とは薬物の精神効果を経験したいことや、時には薬物がないと生ずる不快を避けたいために持続的か周期的に薬物を使用することだとされます。要するにこれは、強迫的飲酒とは個人の自由意志によって選ばれ楽しまれる飲酒ではなく、否応なしに周期的または持続的に飲まなければならない渇望状態に陥ったことを意味しています。そして、飲酒をやめると精神的・身体的に何らかの不快な異常(障害)を生じるような状態をアルコール依存症の概念として捉えることができると言えるでしょう。
アルコール中毒とアルコール依存

 エチルアルコールによる中毒は「急性中毒」と「慢性中毒」とに分けられますが、最近では慢性中毒という用語は次第に用いられなくなる傾向にあります。それは、酒類に含まれるエチルアルコールを持続的に飲用し、その常用量を超えたり異常な飲用を繰り返すに至る状態を「アルコール乱用」と言い、一般に酒類の飲用を中止できなくなる状態になりますが、それは急性中毒とは違った生体変化によるものと考えられるので、中毒症状とは区別してこれを「依存」と呼ぶことがWHOの専門委員会で提唱されたことに基づいています。なお、急性アルコール中毒とは、一般には酔い、すなわち「酩酊」を指しています。そこでアルコール飲用によって起こる精神身体障害は急性アルコール中毒とアルコール依存とに大別されることになり、アルコール依存を基礎にしてアルコール精神病(alcoholic psychosis)が生じるとされるようになりました。その一方でアルコール飲用に関連して起こる広義の社会的問題、たとえば怠業や酩酊運転などを含む医療問題を超えた福祉や社会政策をも包括するような領域については近年「アルコール関連問題」という呼び方が提唱されるようになりました。この「アルコール関連問題」を起こす者については最近では「アルコール関連障害」を持つ者と言い換えることになりました。
アルコール乱用とアルコール依存

 アルコールを飲まないと満足に仕事ができないようになり、怠業や欠勤、家族への暴力の問題行動があり、絶えずアルコールを飲む状態になれば、これを「アルコール乱用」と言いますが、アルコールが切れると禁断症状(離脱症状)が起こるようになるものを「アルコール依存」と言います。完全にアルコールを断つには至らないものの、短時間の中断や量を減らしただけでも離脱症状は出ることがあります。手の震えや不眠症などがそれです。アルコール依存は、精神依存と身体依存、そして耐性の三つの要素が、強さの差こそあれ、その何れもが存在する状態で、この状態にある人は「アルコール依存症」と診断されます。また、アルコール乱用、アルコール依存の何れの状態においても、大なり小なり神経症候や臓器障害を伴います。神経症候としては、アルコール性弱視や手先及び足先の痺れ、アルコール性多発神経炎などが見られ、一方臓器障害としては、アルコール性心筋炎やアルコール性肝炎、膵炎、胃炎などが合併します。アルコール依存症の場合は、耐えがたい飲酒欲求のために飲酒抑制ができないこと、飲酒に起因する精神・身体的症状、経済的破綻、犯罪などの法的問題が生じているにも拘らず飲み続けること、断酒できる期間は僅かで、一度飲み始めると24時間以上にも渡って飲酒を続けること、〔飲酒→酩酊→入眠→覚醒→飲酒〕の繰返しになることなどの条件が揃って現われます。
酩酊

 酩酊(intoxication)は「普通酩酊」と「異常酩酊」とに分けられます。普通酩酊とは、飲酒量に従い、酔いが段階的に進行し、高揚気分、次いで注意集中困難、運動失調、発語障害、眼球運動障害と進み、睡眠に移行する経過を取るものですが、酔いの進行はほぼ血中アルコール濃度と並行しており、血中アルコール濃度が500〜600mg/dlを超えると昏睡状態となり、それを上回ると死に至ります。酩酊時に起こる顔面紅潮や心悸亢進などは、アルコールの分解過程で生じるアセトアルデヒドの毒性作用と関係があります。なお、東洋人は西欧人に比べてて肝臓でアルコールを分解する酵素のアルコール脱水素酵素のうち非定型型が多いとされ、この非定型脱水素酵素がアルコールを分解する速度が速いのでアセトアルデヒドが血中に生じやすいとされています。

 一方の異常酩酊の下では、しばしば暴行や傷害、殺人などの犯罪が行なわれることがあります。この異常酩酊は更に「複雑酩酊」と「病的酩酊」などに大別されます。異常酩酊は普通酩酊とは異なり、酔いの経過中に突然興奮したり、急に激情的になったりして粗暴ないし暴力行為に及ぶ場合もあります。いわゆるトラと言われる状態がそれに当たります。その異常行動がその時の状況から無理からぬことと思われるにしても、興奮の激しさが並外れており、その間のことを後に殆ど覚えていない(健忘)時はこれを複雑酩酊と言います。それに対して、全く興奮の理由が分からず、また、明らかに意識が朦朧としているか、或は譫妄状態になっており、興奮が醒めた後に完全な健忘を残す場合は特に病的酩酊と言ってこれを区別しています。なお、異常酩酊の一つにアルコール不耐性があり、これはアルコールを一口飲むだけで激しい身体反応を呈する人で、アルコール過敏性特異体質によるものです。一般に複雑酩酊になる人は日頃から激情的になりやすい性質の人が多いのに対して、病的酩酊になる人は小心で几帳面な人が多いとされます。また、酒量は一定しないものの、病的酩酊の場合は少量飲酒でも起こりえます。
アルコール依存症とその原因
アルコール依存症の原因

 依存性薬物であるアルコールを含んだ嗜好品すなわちアルコール飲料を繰り返し摂取すると、脳内へのアルコールの強化作用(その薬物の再摂取欲求を引き起こす作用、アルコールでは飲酒欲求)に対する感受性が増大します。強化作用の機序(仕組み)は全ての薬物依存症に共通で、脳内の側坐核から神経伝達物質のドーパミンが放出されることにより、アルコールはGABA‐A神経を介して側坐核からドーパミンを放出させます。この強化作用に対する感受性の増大が飲酒行動を強化し、飲酒パターンが病的となって探索行動(何とかしてお酒を飲むための行動)を引き起こします。感受性の増大する速度は、強化作用に対する感受性の他に飲酒量や飲酒頻度などで変わってきます。強化作用に対する感受性が高いと、飲酒量や飲酒頻度が高くなくても短期間で依存症に至ります。一方、感受性が低くても、飲酒量や飲酒頻度が高ければ短期間で依存症に至ります。すなわち、アルコールの強化作用に対する感受性と飲酒の反復とからアルコール依存症が形作されるのです。従って、原因に性格や人格を挙げるのは余り科学的態度ではないということになります。
アルコール依存の形成

 アルコールの作用は様々で、初めての飲酒(初期体験)で好ましい味覚と快感が得られた場合(報酬効果)と嫌悪すべきものとしての効果であった場合(罰効果)、そのどららでもなかった場合い(中性効果)とに区分される。報酬効果の得られた人にとっては当然の結果として繰り返し反復飲酒の欲求が起こってきます。報酬効果には2種類あり、アルコールの中枢神経抑制による陶酔作用との積極的快感とアルコールが作用した結果生ずる現在の身体的・精神的苦痛の軽減または消失による快適状態としての受身的快感とがあります。一般に前者は明るい陽気な酒飲みですが、後者は現在の苦痛や苦悩が解消されない限り連続的・反復飲酒になりやすい危険性を孕んでいます。そこで、連続的な飲酒が惹き起こすだろう種々の障害を認め予測しながら飲酒欲求を抑制し、反復飲酒を自制する能力が問題となってきます。また、報酬効果の得られた人にとって、積極的快感であったか受身的快感であったかは、その後の経過と直接的な因果関係はありません。むしろ飲酒者の遺伝的素質や性格、生育環境、現在環境、精神状態、とりわけ自我の確立や自制心(自己統制力)が飲酒欲求を抑制できるが否かにかかっていると言えます。ちなみに、1970年のWHOの専門委員会では依存形成の本質を理解するのに重要不可欠な問題として、(1)薬物自体の依存性とその耐性(薬理学的要因)と、(2)依存者の心理特性及びパーソナリティ要因(人間的要因)、そして、(3)社会環境要因(環境要因)の3つを挙げています。すなわち、(11)においては、アルコールのもつ薬理作用としての依存性(習慣性)によって反復欲求を生ずること、さらに連続的飲酒によってアルコールの効果は低下し、身体的耐性が生じて飲酒量が増加してくることが一つの要因であるとするものです。次に(2)と(3)は飲酒者の人間的、環境的要因の重大さの問題です。なお、アルコールの身体的耐性は遺伝的体質として全く飲酒できないアルコール不堪症と呼ばれる者もいれば、最初から大量飲酒のできる者もおり、これらを生得性(先天性)耐性と言います。しかし、アルコール依存症において問題になる耐性とは、連続的・周期的飲酒によって起こる獲得性(後天性)耐性を意味しています。耐性は飲酒者の全てに生ずるアルコールの薬理作用ですが、ここにおいて人間的及び環境的要因の差によって飲酒量増加の傾向と飲酒欲求に対する抑制(自制)が依存形成への分かれ道となります。すなわち、自制が減退したり失われた場合には、速やかにアルコール依存が形成される結果となるわけです。

 アルコール依存は精神的依存と身体的依存とに区別されます。既に反復飲酒欲求や自制の減退は精神的依存の始まりで、その点では身体的依存よりも早く精神的依存が形成されると考えられます。精神的依存は個人の自由意志によらない強迫的飲酒やアルコ―ルヘの渇望状態で、飲酒を中断すると精神的に不快なイライラ感や欲求不満、不眠などの障害を認める状態です。一方、身体的依存は耐性の結果として形成されてくるもので、飲酒量を減少したり断酒することによって起こってくる刺激性の亢進や運動亢進(じっとしておれない)、幻覚、妄想、手指および全身的振戦(ふるえ)、痙攣など振戦譫妄状態と呼ばれるような身体障害(離脱症状、禁断症状)が認められます。要するにアルコールが体内に減少したり存在しなくなると身体の正常な機能が営めない状態がそれであると言えます。
耐性強化と悪循環

 アルコール依存が形成されると、最早自力では抑制し難い飲酒欲求と強迫的飲酒が繰り返されることになります。身体的・精神的に衰弱し、自ら自己の崩壊を知りつつも、その危険を逃れるためには更に飲酒量を増加しなければならないアルコール依存の悪循環は、終着点を見出すことのできない世界へ落ち込んでゆくものであると言ってよいでしょう。

 飲酒量を減少したり断酒することの努力は精神的・身体的に耐え難い苦痛をひき起す結果となります。そのため更に飲酒量の増加を招くことになり、大量のアルコールに依存せねばならない状態に陥ってしまいます。このようにしてアルコール耐性は日増しに強化され、従来の飲酒量や飲酒回数では殆ど満足感を味わうことはできなくなって、苦痛と不快、欲求不満は更に耐えられないものとなります。ここに飲酒欲求の高まりによる飲酒量の増加とその結果生じてくる耐性強化による苦痛と欲求不満の悪循環が繰り返されることになるのです。この段階では飲酒は頻回の反復乱用の状態となり、自制不能であり、耐性強化と身体的依存の強固な壁を打ち破ることは殆ど不可能で、悪循環のサイクルは完成してしまうのです。このような状況の中でアルコールを入手することのみに全ての精神エネルギーが消耗される時、精神的依存の二次形成と呼ばれています。
アルコールの代謝と薬理作用

 アルコールは胃や腸からそのままの形で速やかに吸収されて血中に入り、肝臓のアルコール脱水素酵素によって分解され、アセトアルデヒドとなります。そして、アセトアルデヒド脱水素酵素によってアセテートとなり、最終的には炭酸ガスと水に分解されます。アルコールの中間代謝産物であるアセトアルデヒドは著明な交感神経様作用を示す物質で、カテコールアミン分泌(遊離)効果を持つとされています。過量の飲酒によりアルコールの代謝が不充分になってくると、生体内にアセトアルデヒドが過剰に産成蓄積される結果となりますが、この状態は生体にとって交感神経緊張状態(心身のストレス状態)となり、カテコールアミンの血中増加は精神的緊張や不安、抑鬱状態を惹き起こすことになります。二日酔や悪酔いの原因もこのアセトアルデヒドが原因とされており、生体にとっては―種の毒素的な作用を示しています。

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【2】アルコールが脳に与えるダメージ

 アルコール依存症になるとどんな症状が現われるのでしょうか?
 本節では、アルコールが脳に与える影響とその結果現われる症状を中心に取り上げ、解説しました。
アルコール依存症とその症状
こんな経験はありませんか?


こんな経験はありませんか?
秋と酒 アルコール依存症は、永年の飲酒習慣が原因で起こる生活習慣病の一つです。一般に1日平均でビール1500ml、日本酒なら3合程度を飲み続けると、10〜20年でアルコール依存症になるとされています(高齢者と女性は半分程度の飲酒量でもアルコール依存症になりやすいとされます)。しかし、飲酒量や飲酒回数は自分では中々把握できません。そこで、次のような経験がないかチェックしてみましょう。
 下記の項目のうち、上の4つは何れも自分でアルコール摂取をコントロールできない状態を示しており、最後のものはアルコールが人間関係や仕事に悪影響を及ぼす典型的な例です。これらのことが合計で月に2〜3回以上ある場合はアルコール依存症を疑い、早めに受診しましょう。アルコール依存症は、自己流で節酒をしても改善は極めて難しく、断酒をはじめとした専門的な治療が必要です。そのため、きちんと医師の指導を受けることが大切となります。
  • 家族や友人から「飲みすぎ」と言われることがある
  • 飲んだ時の会話や行動を覚えていないことがある
  • 体調が悪い時も飲んでしまう
  • 仕事中や昼間でも「飲みたい」と強く思うことがある
  • 約束を忘れたり、仕事でうっかりミスをする

離脱症状に特徴が

 アルコール依存症の典型的な症状は体内のアルコール量が減った時に起こる離脱(禁断)症状で、手のふるえや悪寒、寝汗、イライラ、不安、焦燥感、睡眠障害などが見られます。こうした症状は、アルコールを飲むと一時的に治まるためため、また飲むという悪循環の原因ともなっています。人によっては吐き気や下痢、胃痛、動悸、高血圧といった症状も見られます。これが更に進むと鬱状態に陥り、無いものが見える(幻視)とか無い声や音が聞こえる(幻聴)といった症状や、また記憶障害なども起こすようになり、仕事や家庭生活にも大きな支障を及ぼすようになります。こうした不快な症状はなぜ起こるのかと言うと、それは私達の脳がアルコールの影響を受けやすいからで、アルコールを飲むと私達の脳の働きが変化し、緊張が緩んだり、いい気分になったり、気が大きくなったりしますが、それが「酔う」ということですが、普通は脳への影響は数時間程度で治まります。ところが、毎日のようにアルコールを多量に飲んでいると、脳はその状態を通常と判断するようになります。すると反対に、体内のアルコール濃度が低くなった時に対応できなくなり、様々な不快な症状が現われることになるのです。従って、離脱症状が見られたら既にアルコール依存症になっているということができます。できればそうなる前にアルコール依存症の予防したいものです。
アルコール依存症の症状
 連続的で頻回の反復するアルコール乱用は、必然的に身体的、精神的、社会的な問題(障害)を生ずる結果となります。これは最早アルコール依存症の症状と言うよりも、その結果として生じてくる合併症と改めた方が妥当なようにも思われますが、アルコール依存症の診断の大きな手懸かりでもあり、治療対象として見落してはならない点でもあります。何れにせよ、アルコール依存症の延長線上に待ち構える重篤な障害は数多くあり、生命の危険と廃人への―路をたどることになります。なお、アルコール依存症の症状は身体均症状と精神的症状、そして社会的症状の三大症状に大別されます。

 アルコール依存症の主な症状は病的な飲酒行動ですが、その始まりは緩やかで気づきにくいという特徴があります。病的な飲酒行動は、摂取行動と探索行動の変化として現われます。摂取行動は日常行動の合間合間に飲酒を繰り返したり、飲んでは眠り、醒めては飲むを繰り返したりの病的飲酒パターンになります。病的飲酒パターンの持続時間は初期は短期間で徐々に延長します。また、病的飲酒パターンと表裏して飲酒渇望が探索行動に現われ、徐々に高度になります。飲酒を取り繕う嘘や酒代の借金、隠れ飲み、酒瓶隠し、隠し金、酒屋や自販機めぐり、飲酒を妨害する人を責めたり脅したりなどその有り様は多種多様です。そして、アルコール依存症の進行につれて日常行動の規範が飲酒に移り、飲酒中心性と呼ばれる状況になりますが、これは、たとえばどこへ行くにも飲酒の可否で優先するような事態です。


退薬症状
 退薬症状とは、飲酒の反復の後に飲酒中断や飲酒間隔の延長、飲酒量の減少で現れる症状です。不眠や悪夢、血圧上昇、頻脈、動悸、吐き気、嘔吐、頭痛、胃痛、発汗、寝汗などの自律神経症状や、手指振戦や筋肉の硬直ないし痙攣発作などの神経症状、幻視や幻聴、振戦譫妄などの精神症状が現われます。また、退薬症状が治ると、怒りっぽくなるとか刺激に敏感になる、焦燥や抑鬱など情動の不安定な遷延性退薬徴候と呼ばれる状態が続きます。

合併症
 アルコールに起因する合併症には、胃炎や膵炎、膵石、肝炎、肝硬変、心筋症などの内科疾患、末梢神経炎、小脳変性症、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、前頭葉機能障害、アルコール痴呆などの神経・精神疾患があります。

お酒の飲み過ぎで大脳が萎縮!?


アルコールの脳への影響
 お酒の飲み過ぎは肝臓や膵臓、胃腸ばかりでなく、脳や神経系、筋肉系、骨格系、ホルモン系、生殖系などに及ぼす甚大な障害やリスクがあります。特に脳に対するアルコールの影響には無視できないものがあります。酔っ払いが同じ話を何度も繰り返すとか、家に帰った時の記憶が消えている、思い出そうとしても思い出せないといった経験があるでしょう。それでは、酔っ払うと大脳はどのように変化し、影響を受けるのでしょうか?

 以前から大量に飲酒する人には脳が小さくなる脳萎縮が高い割合で見られることは知られていましたが、最近は飲酒量と脳萎縮の程度には正の相関が見られることが分かってきました。これは要するに飲酒量が増えるほど脳が萎縮するということです。一方で飲酒による脳萎縮は断酒することで改善することも分かっています。萎縮以外の影響としては、アルコールが加齢による記憶・学習低下を促進することが動物実験では証明されています。
 アルコールは脳の働きを変化させ、感情のコントロールや平衡感覚、長期記憶に影響を与えます。大脳(脳脊髄)には、有害な物質をブロックする血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)という脳の関所があります。血液脳関門は中枢神経のホメオスタシス(恒常性)を守るために血液から大脳に有害な化学物質や異物が侵入するのを防御するシステムですが、分子量500以下のタンパク質や脂溶性の物質はここでブロックされません。アルコール(エタノール)の分子量は46.07で脂溶性のため、血液脳関門も易々と通してしまうのです。その結果、大脳が麻痺することになります。このように、アルコール依存症及び大量飲酒者には脳萎縮が高い割合で見られること、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。一方で少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります。

酒の飲み過ぎは致命的な栄養障害を招く
 長期間に渡る大量飲酒の弊害は、神経系や筋肉系にも容赦なく襲いかかります。
 大量飲酒は毎日の食事のバランスを崩し、特にアルコールの代謝に欠かせないビタミンB1、B6、B12などのビタミン・ミネラル欠乏症を招くため、アルコール性末梢神経障害を惹き起こします。また、水溶性ビタミンのニコチン酸が欠乏すれば、皮膚炎や下痢の他、認知症や抑鬱、譫妄、幻覚を伴うペラグラ(ニコチン酸欠乏症)を誘発するのです。さらにアルコール性末梢神経障害に至ると、手足の末梢部は痺れや痛み、脱力感、筋萎縮などに苛まれることになります。また、ビタミンB1の欠乏で起こるウェルニッケ脳症を発症すれば、意識障害や眼が動かなくなる眼球運動障害、眼球がリズミカルに動く眼振、酔ったように歩く失調性歩行などの重篤な障害が現われます。ウェルニッケ脳症に伴って起きるコルサコフ症候群は健忘症候群とも言われ、時間や方向感覚を失う見当識障害、新しい体験を忘れる記銘力障害などが現われる。また、小脳が萎縮するアルコール性小脳失調症に罹ると歩行が不安定になるため、転倒や転落などによる頭部外傷を起こします。その他、妊娠中に大量のアルコールを飲めば、特異的な顔貌や心臓の奇形、発育障害、知能障害を持った子どもを出産する胎児性アルコール症候群を発症する危険性が強まり、死産率も高いとされています。

アルコール依存における精神神経病
 アルコール依存が成立している場合、断酒または節酒によって禁断症状(離脱症状)が出現しますが、離脱時には精神神経病状態が突然出現することがあります。最も典型的なものは、(1)振戦譫妄と、(2)アルコール癲癇様痙攣発作、(3)アルコール幻覚症です。まず(1)振戦譫妄とは、突然の飲酒中断後、意識混濁が生じ、虫やネズミなどが多数現れる小動物幻視や複数の会話調幻聴などを伴う譫妄状態を呈するもので、時には被暗示性の亢進や眼球を圧迫すると幻視を生じるリープマン現象、日頃手慣れた仕事をしているような動作を示す作業譫妄が出現することもあり、これは飲酒中断後48時間から72時間の間に生じやすいとされます。手指の振戦(震え)や失見当、幻視が振戦譫妄の主徴候です。稀に1週間以上も譫妄が続くこともありますが、多くは3〜4日で回復します。次に(2)アルコール離脱痙攣発作とは、飲酒を突然中断した後48時間以内に強直性‐間代性の痙攣発作を起こす場合のことで、過去にはアルコール癲癇と呼ばれ、癲癇の一亜型に考えられていましたが、近年は離脱時にのみ見られ、一次性癲癇とは異なるとされるに至りました。最後に(3)アルコール幻覚症とは、飲酒していない時に、意識混濁が認められないのにも拘らず、しばしば複数の人の会話や自分を呼ぶ人声などの幻聴が現われる現象で、一般に被害的内容のもので、数日ないし数ヵ月続きます。
 長期に及ぶアルコール依存状態の持続によって、脳に器質的・永続的な病変が起こると、記銘力や判断力の低下、知能障害などが出現しますが、この状態をアルコール性痴呆と言います。この状態になると、感情も鈍り、活動性も乏しく低下し、無為な生活を送るようになります。また、前記の振戦譫妄後に脳の器質的変化が著しくなり、物忘れがひどくなる記銘障害、場所や時間がわからなくなる失見当識、作話症の主徴候を呈する場合を、この徴候の発見者の名を入れてアルコール性コルサコフ精神病と称しています。多くの場合、アルコール性コルサコフ精神病に先行してウェルニッケ病という眼球運動障害(眼振、外直筋麻痺、起立・歩行失調)と意識混濁を伴う精神神経症候が現われ、意識回復後にコルサコフ精神病に移行します。振戦譫妄の反復によって、稀には小脳変性症や中心性橋髄比崩壊症などが起こることがあります。なお、飲酒を続けるうちに妻などの不貞について嫉妬する妄想が生じることもあります。一度生じた妄想はなかなか消失せず、配偶者に対する暴力行為などがみられることもありますが、これはアルコール性嫉妬妄想と言われますが、この妄想についてはアルコール飲用との関連が必ずしも明確にされてはいるわけではありません。

アルコールと認知症

 施設に入所している認知症の高齢者の3割弱は大量飲酒が原因の認知症と考えられると言います。また、過去に5年間以上のアルコール乱用または大量飲酒の経験のある高齢男性では、そのような経験のない男性と比べて認知症の危険性が5倍近く、鬱病の危険性が4倍弱もあると言われます。このように大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが分かっています。

 なお、大量の飲酒は認知症の危険性を高める一方で、少量の飲酒は認知症を予防する可能性もあることが分かっています。すなわち、大量の飲酒は認知症の原因となりますが、少量ないし中等量の飲酒は認知症の危険性には関係しない、または予防する可能性があるということです。しかし、注意しなければならないことは、元々飲酒する習慣がない人が飲酒した場合に認知症を予防するという証拠はどこにもないということです。
アルコールと鬱、自殺

 アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症に鬱症状が見られる場合や、鬱病が先で、後から依存症になる場合など、幾つかのパターンに分かれます。アルコールと自殺も強い関係があり、自殺した人のうち3分の1の割合で直前の飲酒が認められています。
アルコールと鬱病


鬱病とアルコール依存症の合併の割合
 鬱病の人と鬱病ではない人のアルコール依存症合併率を比較すると、鬱病はアルコール依存症を合併する率が高いことが分かっています。
 その一方で、米国における一般住民を対象とした大規模調査で現在または過去にアルコール依存症と診断された人の調査によると、依存症の人には調査前1年間に限っても、鬱病が3割弱に見られて、依存症ではない人と比べて鬱病になる危険性は4倍弱、躁鬱病は2割弱に見られて、鬱病になる危険性6倍強と何れも高い頻度で合併することが分かっています。

鬱病とアルコール依存症が合併するパターン
 鬱病とアルコール依存症の合併には、単なる合併または共通の原因(ストレス・性格・遺伝因子など)による場合と、長期の大量飲酒が鬱病を引き起こした場合、鬱病の症状である憂鬱気分や不眠を緩和しようとして飲酒した結果、依存症になった場合、そして、アルコール依存症の人が飲酒を止めることによって生じる離脱症状の一つとして鬱状態が見られる場合の4つのパターンが考えられます。なお、鬱病とアルコール依存症の時間的な関係から、鬱病が先行してアルコール依存症が合併する場合は一次性鬱病、アルコール依存症が先行して鬱病を合併する場合は二次性鬱病と呼びます。

鬱病の経過に及ぼすアルコールの影響
 鬱病の人の飲酒が鬱病の経過に影響するかしないかという点については意見が分かれています。飲酒の問題によって鬱病の改善率が低下するという意見と飲酒と鬱病の再発には関連がないという意見があって見解が分かれています。一方、鬱病では自殺の危険性を常に念頭に置かなければなりませんが、アルコール依存症の合併や飲酒問題は鬱病の自殺の危険性を高めるとされています。

アルコール問題とうつ状態が合併した場合の対処
 二次性鬱病の場合、すなわちアルコール依存症にうつ状態が合併した場合は、まず断酒から始めることは当然です。一次性鬱病の場合でも一定期間(最低数ヶ月程度)断酒してみるとよいでしょう。鬱症状をアルコールが修飾している可能性も考えられ、鬱状態の改善も期待できます。また、抗鬱薬や抗不安薬といった薬物療法を行なう上でも飲酒は避けることが必要です。

飲酒と自殺


飲酒直後の自殺
 自殺した人からアルコールが検出されることは珍しいことではありません。日本の調査でも自殺例全体のアルコール検出率は3割強で、毒物死・焼死・轢死・墜落死で高濃度のアルコールが検出されています。この割合を海外の調査結果と比較すると、自殺した人からは平均で4割弱%からアルコールが検出され、自殺未遂で救急病院を受診した人からは平均で4割の人からアルコールが検出されています。このように自殺の直前に飲酒する割合は高いことが知られていますが、その理由としては、飲酒が絶望感・孤独感・憂うつ気分といった心理的苦痛を増強することや、飲酒が自分に対する攻撃性を高めること、飲酒は人の予想に変化をもたらして死にたい気持ちを行動に移すキッカケとなること、視野を狭めて自殺を予防するために有効な対処手段を講じられなくなることといった心理的変化が考えられます。

慢性的な飲酒と自殺
 習慣的な大量飲酒も自殺の危険性を高めます。わが国の中年男性に関して、ある調査では、月に1〜3日程度飲酒する人が自殺で死亡する危険度を1とした場合、非飲酒者及び週に414グラム(日本酒約18合に相当)以上の大量飲酒者で自殺による死亡の相対危険度が2.3と危険性が高くなり、少量ないし中等量の飲酒では自殺による死亡の危険度は低くなるという結果が出ています。また別の調査では、上述の調査とは結果がやや異なっており、飲酒量に比例して自殺で死亡する危険度が高くなるという結果も出ています。以上の調査では大量飲酒が自殺の危険を高めることは共通していますが、非飲酒または少量の飲酒が自殺の危険性を高めるか関係しないかという点については結果が分かれています。

アルコール使用障害と自殺
 アルコール依存症の人は依存症ではない人と比較して自殺の危険性が約6倍高いとされています。特に鬱病の合併、また離婚や別離といった対人関係のストレス、社会的サポートの欠如、非雇用、重篤な身体疾患、単身生活といったことが自殺の危険性を高めるとされます。また、アルコールの乱用そのものも自殺の危険性を高めます。一方、自殺者に鬱病が多いことは有名ですが、鬱病以外では依存症が最も頻度が高く、自殺者全体の15〜56%にアルコール乱用または依存が見られると言われています。


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【3】アルコール依存症とその治療

 アルコール依存症になったらどんな対処法が必要でしょうか?
 本節では、アルコール依存症の治療法や予防法、家族の対応法などについて解説しました。
身体依存ができると根治は難しい
アルコール依存症
 アルコール依存症以外にも摂食障害やギャンブル依存症など様々な依存症が存在しますが、アルコール依存症がこれらと決定的に異なるところは、進行すると「身体依存」になることです。一度身体依存になると、心の持ち方を変えるだけでは克服できません。

 二日酔いでたまに朝寝坊してしまうことがある程度ならまだ引き返せます。しかし、身体依存の段階まで進んだ場合、この体質は一生続きます。一度やめたとしても何かの拍子に飲酒を一度でも再開してしまえばお酒がないといられない生活がまた始まってしまうのです。そんな訳で、身体依存が出来た人がアルコール依存症を克服する場合には、「何があっても一生飲まない」ことを心に誓い、断酒に取り組まねばならなくなります。


身体依存とは
 ある物質を長い期間に渡って大量に摂取したために、身体がその物質がないといられなくなり、中断したり量を制限すると身体に異変が生じること。アルコールの他にも、薬物やニコチンなども身体依存ができやすいとされます。

検査と診断

 アルコール依存症の検査法には、飲酒パターン分類やCAGEテストなど各種のスクリーニングテストがあり、それらでおおむね診断可能です。

 アルコール依存症は、他の薬物依存症と併せて精神作用物質依存症や物質依存症と呼ばれ、共通の診断基準があります。WHO(世界保健機関)のICDの精神作用物質依存症診断基準や米国精神医学会のDSMの物質依存症診断基準です。これらの診断基準を用いてアルコール依存症の診断をします。なお、酔って興奮するのは、先にも説明したように「酩酊の異常」に分類され、アルコール依存症とは区別されます。
アルコール依存チェック&診断のガイドライン

 自分がアルコール依存症でないかどうかを知るにはどうしたらよいでしょうか? WHOによる診断ガイドラインがありますので、チェックしてみましょう。


アルコール依存症の診断ガイドライン
 過去1年間のある期間において、次の項目のうち3つ以上の経験があった場合、アルコール依存症の疑いがあります。
  • 「飲酒したい」という強い欲望または切迫感がある
  • 飲み始めや飲み終わりの時間、または飲酒量をコントロールすることが困難
  • 飲酒を中止したり減らしたりすると離脱症状(禁断症状)が現われる
  • アルコールの効果を感じるために以前より飲酒量を増やさなければならなくなった
  • 飲酒のために他の楽しみや興味に目を向けなくなり、飲んでいる時間や酔っている時間が長くなった
  • 明らかに心身や生活などに支障が出ているのを知りながら飲まずにはいられない

アルコール中毒の治療法

 現在のところ、アルコール依存症には断酒以外の治療選択肢はありません。たとえば米国立アルコール研究所が、患者の特性に合った治療法を検証するため、12ステップ強化療法や認知行動療法、動機づけ補強療法の3つに関して、治療後1年間の飲酒日数と飲酒量から治療効果を判定する全米規模の研究を行なったところ、精神病性障害がなく最初から外来治療を行なってきた患者には、12ステップ強化療法が認知行動療法よりも飲酒日数が明らかに少なかった以外に、患者の特性と治療法の有意な組み合わせは見られなかったとのことでです。このように、今のところ特に優れた治療法はありません。

 急性アルコール中毒で治療を要する場合は、若年者の一時的大量飲酒や小児の誤飲など、また、稀にアルコール依存症者の大量飲酒時ですが、何れも血中アルコール濃度を下げる対症療法と心臓保護療法を行なうことになり、メチルアルコール中毒もこれに準じます。病的酩酊などでは入院保護を要することもあります。アルコール乱用やアルコール依存の治療は一般には入院加療が建前となりますが、アルコール精神病に移行しない例では、外来治療も不可能ではありません。ただし、本人が治療意欲を持たないと外来治療は成功しません。外来治療の場合は、嫌酒療法として断酒薬(アンタブース、シアナマイドなど)が用いられ、同時に精神療法が試みられます。入院治療の場合、アルコール病棟と言って、アルコール依存者専門の病棟が利用される傾向が強くなっています。精神病様状態以外は、一般には開放的に取り扱われることが多いです。ここでは集団精神療法や作業療法が取り入れられ、酒害からの回復が図られています。
 しかし、入院治療だけでは不十分で、退院後に地域の断酒会や AA(alcoholicsanonymous の略、匿名禁酒会)に参加し、息の長い断酒への努力がなされなければなりません。すなわち、断酒会やAA(アルコール・アノニムス=アルコール匿名会)などの自助会も治療の場なのです。医療機関としては、アルコール専門クリニックや精神病院のアルコール専門病棟、一般精神病院などがあります。日本のアルコール専門病棟の大半では断酒の動機づけを入院条件にしており、開放病棟で2〜3カ月の入院期間中に患者自治会の主導で断酒会やAAへと繋げてゆきます。最近は認知行動療法を行うところも増えています。また、中には内観療法を行なうところもあります。動機づけが困難で、3カ月以上の長期入院が必要な人の専門病棟は余りありません。
アルコール依存症の薬物療法

 アルコール依存症の断酒維持のための薬物療法として、抗酒薬(ジスルフィラム・シアナミド)と飲酒欲求を減らす薬(アカンプロサート)が利用できます。抗酒薬は飲酒後の不快反応を利用して心理的に飲酒を断念する薬、アカンプロサートは脳内に作用して飲酒への欲求を減らすことで断酒を補助する薬です。

 アルコール依存症の治療での薬物療法の役割は二つあります。一つは離脱症状や不安や不眠などの併発症状を軽減させるためのもので、主にベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬が用いられます。もう一つは断酒を維持するための薬物療法です。
 断酒維持のために使用される薬物は大きく分けて2種類があります。一つは抗酒薬と呼ばれる薬剤で「飲酒すると気持ち悪くなる」という状態を作ることによって飲酒行動を起こさなくするもの、もう一つは中枢神経に作用して飲酒欲求を直接減らすことにより断酒を補助する薬剤です。


抗酒薬
 シアナマイドとジサルフィラムの2つが用いられますが、飲酒渇望を抑制する効果はありません。両剤はアルコール中間代謝産物のアセトアルデヒドの代謝酵素を阻害して飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ、飲めない体質の人と同じ生体反応を起こすことでアルコールを遠ざけるようにする薬剤です。抗酒薬は従来から用いられており、国内ではジスルフィラムとシアナミドが利用できます。これらの薬は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害するので、抗酒薬を服用中に飲酒した場合、血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、悪心・嘔吐や頭痛、動悸、顔面紅潮、呼吸困難などのアセトアルデヒドによる不快な反応を引き起こします。よって抗酒薬を服用していれば、生活の中で飲酒をしたくなるような出来事があった場合にも、「飲んでも気持ち悪くなるからやめよう」と考え、心理的に飲酒を断念しやすくなるという効果があります。ジスルフィラムは100-300mg、シアナミドは5-20mlを通常1日1回服用します。シアナミドの方がジスルフィラムに比べて速効性ですが、効果の持続も短いことが知られています。主な副作用としてはアレルギーによる皮疹・肝障害が起こる可能性があるため、特に服用の初期には血液検査などを行なうことが望ましいとされています。また、重症の肝硬変や心・呼吸器疾患が合併する場合は使用できません。

飲酒欲求を抑制する薬
 日本では未承認薬のアカンプロセートやナルトレキソンが欧米で用いられています。飲酒渇望には万全ではありませんが、支持的精神療法と組み合わせて高い断酒効果が得られています。飲酒欲求を抑制する薬剤として、国内ではアカンプロサートがあります。欧米では20年以上前から使用されてきた薬剤ですが、日本では2013年5月に承認され発売されました。アカンプロサートは、主に脳内のNMDA受容体を介する神経伝達を阻害することによって効果を現すのではないかと考えられています。飲酒への欲求を軽減させることにより断酒率を高める効果があり、多くの研究で再飲酒のリスクを低減させることが確かめられています。アカンプロサートの効果は、断酒をしている人が服用すると断酒率が上がりますが、飲酒している人が服用してその飲酒量を少なくする薬剤ではないとされます。そのため、服用にはきちんと断酒をしていることが前提とされています。通常1日3回2錠ずつ服用することになっています。副作用としては、下痢や軟便が起こることがありますが、多くの場合は一過性で暫くすると軽快することが多いです。また、重症の腎障害がある場合は服用できません。相互作用は少ないため、抗酒薬との併用も可能と考えられています。なお、海外では飲酒している人の飲酒量を下げる効果があるナルトレキソン・ナルメフェンといった薬剤も使用されていますが、日本ではまだ承認されていません。

薬物療法の効果を高めるために
 どちらの薬剤も薬物療法の有効性に影響を与える因子として一番重要なのは、服薬のアドヒアランス(きちんと薬を服用しているか)です。アドヒアランスを向上させるために、毎朝家族の前で薬を飲む、薬箱を作って服用したかどうかをチェックできるようにするといった工夫が治療効果を上げることに繋がります。また、これらの薬は薬を服用しただけで断酒に成功するというものではありません。薬物療法と他の心理・社会的な治療や自助グループへの参加と組み合わせることが効果を最大限に得るために重要なことです。

入院治療

 アルコール依存が完成され、悪循環が完璧なものになった段階では、当然のことながら身体的・精神的・社会的三大症状の治療を要することになりますが、患者自身に対する治療への動機づけは更に困難となります。ただ、多くの患者は身体的症状の治療には比較的応じやすいので、内科や外科における身体的治療のみが行なわれています。


 身体的に快復すると、患者は既に病気が全快したものと認識して直ちに飲酒が継続されることを反復することが多いです。それに対して精神科を受診する患者の多くは、飲酒のために身体的に重篤な症状を認めるようになるか、もしくは精神的にアルコール精神病を発症するか、或は社会的に完全な生活破綻の状態にまで落ち入ってから始めて来院する者が圧倒的に多いです。精神科における初診では、その患者がアルコール依存症であるか否かの診断(判断)は殆ど不要な状況であり、余りにも治療のスタートが遅きに失していると言わざるを得ません。この段階の患者では直ちに入院治療となるわけですが、まず治療のスタートでは患者に治療の必要性を認識させることから始められます。まずは身体的・内科的治療が優先されるますが、何よりも大切なことは、患者の病気がアルコール依存症であることの自覚(病識)をしっかりと持たせなければならないことです。何となれば、それなしに患者は断酒の必要性を認識することは不可能だからです。

 患者が病識を持つことに必要不可欠の作業は、アルコール依存症という病気の概念をまずはっきりと知ることと同時に、自己の過去の生活態度や身体・精冲的状況を振り返って、その概念と見事に一致することを患者自身の内部で確認することに始まります。ともすると患者にとって断酒は自分の「意志一つでだ」「気持ち一つ」と言いたがるものですが、まさにその通りです。しかし、その意志(精神)に力がないのが問題なのであり、大概は精神的に極めて不安定で、人格レベル低下を来し、自我の弱さや自制心(自己統制力)の弱さを認識していないのです。入院治療の最終目標は、この地盤(精神)の強化であると言えるでしょう。そのための作業がアルコール依存症患者に対する精神療法として必要であり、最も困難な作業が精神科医療には課せられています。
断酒会

 アルコール依存形成の段階で充分な飲酒抑制や断酒の努力がなされることが治療上最も望ましいことではありますが、一般社会における概念では未だこの段階をアルコール依存症と認めることは極めて困難なのが実情です。医療の対象となるのは、悪循環が完成して、その結果生じた身体的・精神的・社会的三大症状のみの治療を依頼されるのが現状です。予防の第2段階は既に治療の第1歩で、この時期は断酒会や外来治療に最適で、節酒療法としての抗酒剤の服用や断酒している人との交流によって節酒や断酒が比較的スム一スに継続可能な時期です。

 断酒会とは、アルコール依存から脱却するために依存者たちが断酒を誓い、再飲酒しないように励まし合う会のことです。アルコール依存症は、酒を断つために入院治療を行なっても、退院して間もなく再飲酒してしまう例が極めて多く見られます。断酒するためには強い意志と己れにかつ努力がいるのです。それに失敗すれば、再飲酒の繰返しで社会からの落伍者になってしまいます。アルコール依存者が飲酒の悪循環を断ち切り、自己破壊行動から逃れるために、孤独感からの解放と治療への動機づけのために、仲間たちでつくるグループ活動が断酒会なのです。アメリカで1935年に生まれた酒害者匿名会 AlcoholicsAnonymous(略称 AA)は、ロックフェラー財団の援助を受けて、今では世界的に発展しています。当然日本にもAAはありますが、特に匿名でなく集まる全日本断酒連盟が作っている地区断酒会も全国各地にあります。日本の断酒会の発足は1873年と記録されています。断酒会は依存者だけでなく、家族も加わると一層の効果があるとされています。
アルコール依存症に気がついたらどうするか?

 患者本人に治療意欲があれば、まず地域の断酒会やAAへ参加しましょう。治療意欲がないか、気づかない場合は、問題に気づいた人が地域の保健所や断酒会、AA、アルコール専門クリニックや専門病棟のある精神病院などの窓口へ相談しましょう。なお、合併症が重い(当然アルコール依存症も重い)のに治療する意欲がない場合、本人の意思を尊重すると事態は深刻になるので、強制的な入院治療も必要です。その場合、利用できる医療資源には地域差があるので、相談機関の指導に従って下さい。


 治療が必要な状態かどうかわからない時には、まず保険期間に相談しましょう。症状や問題の程度に関係なく、本人でも家族でも無料で相談ができます。
 公的機関のうちアルコール依存症に対応している代表的な機関は精神保健健康センターと保健所です。どちらも全国に存在し、無料の相談窓口が設置されているため、思い立った時にいつでも相談することができます。問題の全貌が明らかになっていなくても、まずは相談して、話を進めてゆく中で問題も整理されてゆきます。困っていることが少しでもあるならまずは相談しましょう。ただし、専門の窓口が対応しているのは主に依存症の症状や治療に関する相談です。経済的なことや法律的なことなど病気から派生した症状以外の悩みについては、それぞれの対応窓口を利用しましょう。一つの機関に相談するのではなく、目的に合わせて複数の機関を利用し、総合的に対応、治療してゆきます。


保健所(保険福祉センター)
 心身両面の健康維持のために活動している機関で、飲酒問題についての無料相談を行なっています。健康面の問題に広く対応しているため、精神保健健康センターよりも専門性が低いと言えます。他機関とも連携しています。

精神保健健康センター(こころの健康センター)
 主に心理面の健康維持のために活動している機関で、飲酒問題についての無料相談を行なっています。その他、講演会や勉強会、本人向けのディケアプログラムなどを実施、医療機関と連携して依存症を支えています。

最初はどの医療機関でもよい
 治療を受けたいと思った時はアルコール依存症の専門医療機関を受診するのがベストですが、近隣に専門医療機関があるかどうか分からなければ、まずはかかりつけの医師に相談するだけでも構いません。とにかく受診して対応を始めることが大切です。最初は、出来れば精神科か内科を受診して下さい。症状を伝え、専門医療を希望しましょう。アルコール依存症の治療に対応している機関であれば、そのまま専門医療が始まります。残念ながらその対応のない機関の場合は他機関を紹介してもらいましょう。希望すれば紹介状を出してもらえます。

早期受診と予防のために

 アルコール依存症はそれ自体でも危険な病気ですが、もう一つの怖さは、長期に渡る飲酒が原因の様々な臓器障害の併発が多いことです。最もよく見られるのは肝機能障害で、アルコール性脂肪肝はその典型ですが、致死率の高いアルコール性肝炎(重症型)を起こしていることもあります。アルコール性膵炎も多く見られますが、膵炎を起こすと、胃の辺りや背中に強い痛みを生じる他、慢性化するとインスリンの分泌が悪化して糖尿病を併発する可能性も高くなります。また、アルコールが余り強くない人が飲み続けている場合には、食道癌や口腔癌の発症率が高くなることも知られています(アルコールを飲むと顔が赤くなる人はリスクが高いとされています)。その他、アルコールには脳の神経細胞を壊す作用もあるため、記憶障害などの認知症を起こしていることもあり、脳の神経細胞の破壊が進むと、治療をしても回復が難しくなります。こういった多くの病気の早期発見のためにも、アルコールが好きでよく飲むという人は定期的に受診して検査を受けることが大切です。アルコール依存症と臓器障害を併発している場合、治療では離脱症状への対応と、臓器障害の治療を並行して進める必要があります。離脱症状は苦しく、精神的にも不安定になるので、自分だけで対応することは危険です。専門医の管理の下、入院してきちんとした治療を受けるようにしましょう。専門の医療機関が分からない時は、それぞれの地域にある精神保健福祉センターや保健所に相談して下さい。

 予防面では、先に紹介したチェックの他、アルコールの飲み方の変化にも注意が必要です。飲酒量が増えたとか、飲むスピードが速くなった、二日酔いが多くなった、飲酒中に口論などトラブルを起こしたといった面ことが見られたら要注意です。何らかの理由でアルコールへの依存度が高まり、コントロールが効かなくなりつつある状態だからです。本人は当然ですが、家族などの周囲の人がこうした初期段階での変化に気づき、適切な対応(断酒、早期受診)ができればアルコール依存症の予防に繋がります。
アルコール依存症者と家族
アルコール依存症者の飲酒に対する家族の接し方


アルコール依存症者の飲酒に対する家族の接し方
  1. 監視をしない
     お酒を飲まないように目を光らせていても、家族には患者の飲酒を止める力はありません。まずはこのことを理解しましょう。

  2. 責めない
     飲酒したことを責めても反発されるだけです。責めれば責めるほど嘘をついたり隠れて飲んだりするようになります。

  3. 世話を焼かない
     お酒の後片付けやトラブルの後始末、本人の仕事の肩代わりなどは一切やらずに、本人にやらせるようにしましょう。もっとも、そうは言っても、衰弱状態など命の危険がある場合は別です。見殺しすれば裁判で裁かれることになるかも知れませんので、救急車を呼ぶなどの対応をして下さい。また、後始末をしないことで自分の身に危険が及ぶ場合には速やかに逃げて下さい。親戚や友人の家に行ったり、DVの相談窓口に電話をするとよいでしょう。

アルコール依存症の家族が陥りやすい共依存


世話を焼くタイプ
 このタイプは、患者の飲酒を最終的に許してしまうのが特徴です。主に、飲んだお酒の缶や酔って散らかした物の後片付けする、酔い潰れている患者を迎えに行く、お酒が切れて荒れている患者を宥めるためにお酒を買って来たり、お金を渡したりする、飲んだ翌日に遅刻しそうな患者を起こしてあげたり、欠勤する際に本人の代わりに会社に電話をかけてあげる、などといった行動を取ります。このように患者本人がすべきことを代わりにやってあげたり、患者の責任を自分が負うことが当たり前だと思い尻拭いをしてしまうのです。患者に頼られることに満足している共依存の状態に陥っていると言えます。こういう行動を取ると、患者は甘える一方で、自分の飲酒問題の深刻さを冷静に判断できなくなります。

責めるタイプ
 何かにつけて「お酒が原因だ!」と患者を責め立てるタイプです。主に、家にあるお酒を全て捨てたり、患者がお酒を隠してないか家中を探し回る、飲酒によるトラブルを患者本人に認めさせたり謝らせたりする、離婚話を持ち出したり、無理やり病院へ連れて行ったりする、などといった行動を取ります。このタイプは、自分が正しいと思い込み、患者をコントロールすることばかりに囚われてしまうのが特徴です。しかし、患者に無理やり罪悪感を植え付けようとしても逆効果です。患者は自分のことを理解してくれない家族に反発し、更にお酒を飲んでしまうことになります。

受け身になるタイプ
 このタイプは、患者の飲酒による非常識な行動を受け入れてしまっているのが特徴で、患者から暴言を吐かれるとか暴力を受ける、大切な物を壊されるといったようなことをされても、じっと我慢をしてしまう傾向があります。このタイプの人は、患者のこのような行動に対して受け身になり、全て自分の中で消化しようとしますが、結果的に患者を甘えさせるだけでしかありません。

参考文献と参考情報


◆参考:アルコール依存症を描いた映画の紹介
アルコール依存症の映画
映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」公式サイト
http://www.yoisame.jp/index.html

◆参考図書&資料
佐藤成美『お酒の科学(おもしろサイエンス)』日刊工業新聞社
佐藤成美・著
『お酒の科学(おもしろサイエンス)』
B&Tブックス、日刊工業新聞社・2012年10月刊、1500円
味だけでなく見た目、香り、のどごしなど、さまざまな角度から楽しむことができるお酒。お酒の作り方やその飲み方にこめられている、おいしさの理由に迫ります。
『アルコール依存症から抜け出す本 イラスト版』講談社
樋口進・監修
『アルコール依存症から抜け出す本 イラスト版』
講談社・2011年05月刊、1200円
信頼できる全国150医療機関リスト付き。依存症の疑いのある人は450万人以上。依存症の進み方、治療法から相談先までを詳説。患者家族が知りたい情報をまとめた決定版。
森岡洋『よくわかるアルコール依存症 その正体と治し方』白揚社
森岡洋・著
『よくわかるアルコール依存症 その正体と治し方』
白揚社・2002年05月刊、1800円
この一冊で、本人の問題も、家族の悩みも、すべて解決! あんなにおいしく楽しんだお酒が体と心を蝕んでいく、つらい仕事や家事育児を忘れさせ、安らぎを与えてくれたほんのちょっとのお酒が、悪魔のように生活を破壊していく──豊富な治療経験をもつ精神科医が、全国250万人の患者と悩めるその家族に、真の救いの手を差し伸べます。
水野肇『酒は飲んでも飲まれるな ストレス社会を生きるアルコールと健康』厚生科学研究所
水野肇・著
『酒は飲んでも飲まれるな ストレス社会を生きるアルコールと健康』
厚生科学研究所・2002年04月刊、1500円
アルコールとのつき合い方のポイントは、自分の酒量をちゃんと認識して、2〜3割の余力を残してやめることである。複雑なストレス社会でアルコールと身体との関係について知るべきことを記す。
季刊Be!編集部『依存症って何? どこから病気?どうやって抜け出す?』季刊Be!増刊号16
アルコール薬物問題全国市民協会・著/季刊Be!編集部・編集
『依存症って何? どこから病気?どうやって抜け出す?』
季刊Be!増刊号16 公開ミーティングシリーズ、
アスク・ヒュー・2007年12月刊、1000円
アルコール、薬物、ギャンブル依存、摂食障害、ニコチン、カフェイン、ネットオークション、恋愛依存......。どこからが病気? 何が病んでいるの? 25名の心に響く体験談に加え、専門家インタビュー、コラムで依存症にまつわる豆知識を紹介。「病気の一線を超えたのはいつ?」「あなたにとって依存症とは? 回復とは?」などアンケートから生の声も紹介。本人だけでなく、家族、依存症について知りたい人にもおすすめの一冊。
お酒と健康 - キリン
http://www.kirin.co.jp/csv/arp/
人とお酒のイイ関係 - アサヒビール
https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/
アルコール依存症 症状チェック - メディカルiタウン
http://medical.itp.ne.jp/shoujou-chekku/alcohol-izonshou/
神奈川県のアルコール依存症の診療が可能な病院 15件 - 病院なび
https://byoinnavi.jp/kanagawa/q04
全日本断酒連盟
http://www.dansyu-renmei.or.jp/
AA日本ゼネラルサービス(JSO) - AA日本ゼネラルサービス(JSO) 03-3590-5377
http://aajapan.org/
Al-Anon アラノン家族グループ
http://www.al-anon.or.jp/


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