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今月のワンポイントアドバイス
MERS(マーズコロナウイルスによる感染症の発生報道されておりますが、昨年より騒がれていた、西アフリカにおいてエボラ出血熱が猛威をも忘れてはならない感染症です。
一部地域で終息宣言が出ているとはいえ、今後も注意が必要です。
エボラ出血熱は一度感染するとその致死率が著しく高いことで知られており、これが都市部で流行化することが以前より懸念されています。少し忘れている今こそ、そのエボラ出血熱がいつ日本でも発症し流行化するか恐れられています。今回はこの恐ろしいエボラ出血熱について取り上げました。


エボラ出血熱
【1】エボラ出血熱とはどんな病気か?
【2】エボラ出血熱の診断とその治療法
【3】エボラ出血熱の治療薬とワクチン〜その開発と課題〜

【1】エボラ出血熱とはどんな病気か?

 昨年より西アフリカにおいて猛威を振るっているエボラ出血熱とはどんな病気なのでしょうか? 
 本節では、日本でも流行の危険性が昨今騒がれているエボラウイルスのどこが怖いのか取り上げ解説しました。
エボラ出血熱とは何か?


西アフリカで大流行中のエボラ出血熱とは?
 現在、西アフリカを中心に今までにないほど大流行しているエボラ出血熱ですが、2013年末より流行が確認され、現段階までに感染者3,000名以上、死亡者1,500名以上(死亡率約50%)と言われています。そして、ついにアメリカでも初のエボラ出血熱感染者が出てしまいました。
 エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患であり、ラッサ熱やマールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱と共にウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fever :VHF)の一疾患に分類されます。エボラ出血熱はザイールのエボラ川地域で発症が確認された急性ウィルス性の感染症で、高熱など症状が激しく、致死率が高い出血熱で、その感染力と致死率の高さからバイオセーフティレベルの最高レベルである4に指定されています。致死率は50〜80%程度とされ、非常に怖い病気です。エボラ出血熱の最も重要な特徴は、血液や体液との接触により人から人へ感染が拡大し、多数の死者を出す流行を起こすことで、しばしば注目を浴びています。2000年10月にウガンダ北方のグルで流行があった時には日本人専門家が派遣されたこともあります。自然界の宿主が今もって完全には解明されていないことからも、今後、西アフリカ以外での発生が懸念されています。

エボラ出血熱(エボラウイルス病)とはどんな感染症か?
 1976年6月末、スーダン南部ヌザラの綿工場に勤める倉庫番の男性が出血熱様症状を示し、次いで他の部署の男性2人も同様の症状で倒れました。これが初めてエボラ出血熱と認識された流行の幕開けです。この3人の患者を源として家族内・病院内感染を通してエボラ出血熱の流行が拡大、計284人がエボラ出血熱を発症して151人(53%)が死亡しました。また、その流行とは別に、同年8月末にコンゴ民主共和国(旧ザイール)北部のヤンブクで1人の男性(教会学校の助手)が出血熱の症状を示し、その患者が収容されたヤンブク教会病院での治療・看護を通じて大規模な流行が発生しました。計318人の同様の患者が発生し、280人(88%)が死亡しましたが、これもエボラウイルスによる出血熱であることが確認されました。これらがエボラ出血熱が初めて確認された流行です。その後、スーダン及びコンゴ民主共和国、象牙海岸で散発的なエボラ出血熱の流行が確認されていましたが、1995年にコンゴ民主共和国中央部バンドゥンドゥン州キクウィトの総合病院を中心としてエボラ出血熱の大規模な流行が発生します。その流行では計315人が発症して244人(77%)が死亡。今でもコンゴ民主共和国やガボン、スーダンで比較的大きな流行が続いています。さらに2014年には、ギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心にこれまでにない大きな規模のエボラ出血熱の流行が発生し、世界保健機関(WHO)の2014年11月21日の発表によると、患者数は1万5319人に上り、5444人が死亡しています。このような規模のエボラ出血熱の流行はかつてなく、これらの国々の社会基盤が破壊されつつあります。WHOは2014年8月8日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であると宣言しました。現在でもその流行は続いており、エボラ出血熱の流行の阻止と社会基盤の回復に向けた国際社会の継続した支援が求められています。
 ちなみにエボラの名は、ヤンブクの最初の患者の出身村を流れるザイール川支流の名(エボラ川)に由来しています。また、従来エボラ出血熱という病名が用いられてきましたが、エボラ出血熱患者の約2割において出血症状が認められ、全ての患者で出血症状が認められるわけではないことから、エボラ出血熱という病名から「エボラウイルス病」と呼ばれるようになっています。なお、感染したチンパンジーからヒトにエボラウイルスが感染した例が幾つか確認されていますが、それらのケースを除いて人間への感染源は不明です。チンパンジーも人間と同様に致死的な出血熱を発症します。アフリカでのエボラ出血熱の流行を調査すると、人から人への感染の拡大は、貧しい医療衛生環境での注射器・注射針の使い回しや家族内での濃厚な接触が原因です。なお、最近ではエボラウイルスの宿主はアフリカに生息するオオコウモリであると考えられています。

エボラ出血熱の実態

野生動物に寄生、撲滅困難
 エボラ出血熱が現在西アフリカで過去最大の流行となっていますが、病原体のエボラウイルスは野生動物に寄生しており、人間が感染すると致死率が極めて高い脅威の存在です。有効な治療法はまだ存在せず、その生態や感染の仕組みも謎が多い存在です。

1976年に発見
 エボラウイルスは1976年、中央アフリカのコンゴ(旧ザイール)を流れるエボラ川沿いの流行で発見され、その名がつきました。エボラウイルスは空気感染せず、接触で広まるウイルスです。その潜伏期間は最長21日で、発症すると、発熱や頭痛など風邪に似た症状が起き、更にこれが進行すると、消化器系を中心に全身から出血、多臓器不全を起こします。致死率は今回の流行で約50%、過去は最悪で90%に達しています。
 ウイルスは糸状で、DNAより原始的なRNAと呼ばれる核酸が遺伝情報を担っています。RNAはタンパク質の殻に覆われ、更に外膜に包まれており、外膜の表面にはタンパク質と糖で出来た多くの突起があって、エボラウイルスはこれを使って人の細胞の膜に付着し感染します。細胞が外部の分子を取り込む機構を使って丸ごと侵入し、ウイルスと細胞の膜が融合してRNAなどが細胞内に飛び出します。そして、細胞内の小器官を利用してRNAや蛋白質を合成、それが細胞膜の近くに集合し、膜を破って子孫ウイルスが外に出てまた別の細胞に感染してゆくのです。

コウモリから感染か?
 ウイルスは自力で増殖することが出来ず、生物に寄生して存在しています。そのため、流行を防ぐには生態と感染ルートを知ることが重要です、残念ながらエボラウイルスは未だ謎が多いのです。
 エボラウイルスが普段暮らしている場所(自然宿主)は野生のオオコウモリが強く疑われています。それは、オオコウモリの体内から遺伝子が検出されたからです。そのため、現在コウモリに居たウイルスが偶々人間やチンパンジーなどに感染して広まるルートが有力視されています。しかしながら、コウモリから完全な形でウイルスが検出された例はまだなく、決定的な証拠は得られていないのも実情です。

都市部で拡大
 エボラウイルスは古くからアフリカに分布していたと考えられていますが、昔は人の移動が少なかったため感染は他地域に殆ど拡大せずにすんでいました。それに対して近年の流行は、経済発展などに伴って人の移動や交流が活発化したことが大きな要因と考えられています。これまでの流行はコンゴや南スーダンなど中央アフリカで起きていましたが、なぜ今年ギニアやリベリアなどの西アフリカで過去最悪の被害になったのでしょうか?
 エボラウイルスの遺伝子は安定しており、ウイルスが進化したとは考えにくいため、その原因としては、都市部で感染が起きたことが被害拡大の大きな要因となっているのではないかと考えられます。初期に患者が報告されたのはギニアの首都コナクリ近郊などで、その辺りは特に人口密度が高く、感染者への接触機会が多い地域です。それに加えて、西アフリカでは医療従事者の経験が乏しく、初期に患者をきちんと隔離できなかったことも感染拡大に影響しました。

都市部で拡大
 それでは、エボラウイルスの撲滅は可能なのでしょうか? 結論を言うと、エボラ出血熱が野生動物と人間の共通感染症なので、エボラウイルスの根絶は不可能です。たとえば天然痘ウイルスは人間しか感染せず、しかも必ず発症するため、感染者を隔離することによりウイルスを根絶することが可能でした。しかしながら、エボラウイルスは普段野生動物に寄生しているため、エボラウイルスに感染した動物を全て隔離するのことは現実的に困難です。蚊がウイルスを媒介し、渡航歴のない患者が国内で70年ぶりに発生したデング熱も同じ状況です。もっとも、エボラウイルスにとっても人間への感染は幸せなことではありません。それというのは、抵抗力の低い患者は死に至るため、エネルギーを使って新たな寄生場所を探さなくてはならないからです。感染拡大を防ぐには、ウイルスの生態をミクロとマクロの観点で解明する必要があります。

エボラ出血熱とその危険性


突然変異で治療薬無効化の恐れ
 エボラウイルスの過去40年間の遺伝子変異が一部の製薬会社が開発中の実験的治療薬を無効にする恐れがあるとの研究論文が本年1月20日の米国微生物学会のオンラインジャーナル『mBio』に発表されたとのことです。
 エボラウイルスは非常に高い致死性を持つエボラ出血熱を引き起こします。これまでにエボラ出血熱による死者は8000人以上、感染者は2万1000人以上に上っています。それにも拘わらず、製薬会社は最近までエボラ治療薬に多くを投資しようとする姿勢を示して来ませんでした。アフリカで散発的に発生する傾向があるウイルスの治療薬からは経済的な見返りが殆ど期待できないからです。そのため、エボラ出血熱を治療するための市販薬や予防のためのワクチンは、一部開発中ないし試験中のものを除き、現在まだ存在していません。しかし、史上最悪の大流行が昨年西アフリカを襲ったことを受けて、臨床試験(治験)が加速しました。そのような状況の中、現在一部の治療薬は急速に発展しているものの、それらは1970年代にエボラウイルスが初めて出現した当時に特定されたウイルス株に基づき、10年以上前に開発された薬となっています。最も有望な治療薬の一部は、エボラウイルスの遺伝子配列の一部分に結合してこれをターゲットとするもので、しかもウイルスは時間が経つと自然に突然変異を起こすため、これは治療薬が期待通りの十分な有効性を示さなくなることを意味する恐れがあると論文は指摘しているのです。エボラウイルスはこれらの治療薬が設計された時代以降に変化を遂げただけでなく、現在もなお変化を続けています。その証拠にUSAMRIIDと米ハーバード大学、米マサチューセッツ工科大学の共同研究チームは、西アフリカで現在見られるエボラウイルス株のゲノム(全遺伝情報)を1976年と1995年に流行したエボラ変異株と比較した結果、現在のウイルス株のゲノムの約3%に一塩基多型(SNPs)と呼ばれる遺伝子変異が含まれていることを明らかにしました。さらに論文によると、モノクローナル抗体と低分子干渉RNA(siRNA)、ホスホロジアミデート・モルホリノ・オリゴマー(PMO)など現在臨床試験が進められている治療薬の作用を阻害する可能性のある変異を新たに10個発見したとのことです。10個の遺伝子変異のうちの3個は、ギニア及びシエラレオネ、リベリアの3か国を中心に拡大してきた現在の流行が進む間に出現したものです。論文では、治療薬の開発会社に対して今回発見された遺伝子変異が各社で開発中の薬に影響を及ぼす可能性があるかどうかを調査するよう呼びかけています。治療薬の有効性をタイムリーに調査し、最早効き目がなくなった治療薬の開発に貴重な資源を費やすことがないよう注意する必要があるのことです。 

エボラは1種類でない!?〜死亡に繋がらないエボラも〜
 エボラウイルスは実は1種類ではありません。現在西アフリカで流行しているのは、感染した場合の死亡率が最も高いザイールウイルスで、だからこそ注意を要するのです。なお、これまでに判明している複数種類が判明しており、遺伝子の情報からかなり細かく分類可能となっています。2007年にも新種が発見したばかりで、その新種の名前はブンディブギョと言います。
 過去30年以上に渡って様々な流行が起きていますが、多くの死者を出しているのはザイール・エボラウイルスとスーダン・エボラウイルスで、それぞれ死亡率が53%〜90%に達します。しかも現在拡大しているタイプはザイール・エボラウイルスであると判明しており、当面は警戒すべき状況は続きそうです。なお、この他死亡に至ることの少ないウイルスがあって、コートジボワール(アイボリーコースト)・エボラウイルスと呼ばれるタイプがあります。レストン・エボラウイルスと呼ばれる猿では致死的なものの、人間ではそれほど症状は重くならないウイルスもあります。その一方で米国疾病対策センターの研究グループは、感染した29人の血液検査からコートジボワール・エボラウイルスと比較的タイプの近い新種と割り出しましたが、致死率は当時の流行では25%の死亡率となり、ザイールやスーダンほどではないものおの、決して軽ちは言えないタイプです。また、2007年に発生して新種として報告されたのは、その年の11月にウガンダ西部のブンディブギョ県で初めて発症したもので、地名から一風変わったウイルス名が取られています。ブンディブギョのようなウイルスはザイールやスーダンと遺伝情報を持つDNAの塩基配列が異なっており、課題となっている治療薬の開発では比較的に病原性が低い新種ウイルスは重要と見られています。

エボラ出血熱の症状がインフルエンザと酷似!?
 昨年の9月末、ショッキングなニュースが全米を震撼させました。それによると、テキサス州ダラスで1人の男性がエボラ出血熱を発症したと言うのです。治療の甲斐なく、この男性は8日後に死亡、さらに治療に携わった看護師2名も二次感染しました。しかも、それは信頼と実績のある地域の中核病院での出来事だったのです。
 ダラスでのエボラウイルスの二次感染は様々な問題点を浮き彫りにしました。まずは空港検疫でのエボラウイルス感染者の擦り抜けです。死亡した男性はリベリアでエボラウイルスに感染したのですが、米国入国時に症状はありませんでしたが、このようにウイルスに感染しても直ぐに症状は出現しないのです。この期間を潜伏期と言い、エボラウイルスの場合、その期間は最大21日です。現在全米の主要な空港では西アフリカからの渡航者に対し体温測定が行なわれていますが、残念ながらその効果はまだ限定的です。2009年新型インフルエンザの際、水際作戦を強調する余り、日本国内での感染の発見が遅れたことを彷彿とさせるものがあります。次にエボラウイルス感染者に近づいたことのある人を把握し、隔離ないしは体調管理させることの難しさです。今回は二次感染のリスクのある病院スタッフでさえも、飛行機やクルーズ船で旅行していたことが判明したからです。保健当局はエボラ出血熱患者の治療に関わった病院スタッフに旅行の自粛を呼びかけました。さらに、エボラウイルス感染者に対する救急医療体制も課題です。二次感染した看護師は2人とも、結局ダラスを離れ、バイオセーフティレベル4と呼ばれる特殊施設のある他の州の病院に搬送されました。地域の中核総合病院でさえも十分に対応できないことが露呈した形です。何れにせよ、国際的な人の往来が激しい現代、どの国もエボラウイルスの国内感染に備える必要があります。インフルエンザが流行すると、エボラ出血熱とのふるいわけに混乱が生じると予想されています。発熱という点でエボラ出血熱とインフルエンザの初期症状は極めて似ているからです。ダラスにおけるエボラウイルスの感染拡大は、先進国でさえも感染制御することの難しさを物語っています。

参考:2014年における西アフリカエボラ出血熱の流行とその経緯

 2014年における西アフリカエボラ出血熱の大流行は、ギニアをはじめとする西アフリカにおいて2013年12月頃からバイオセーフティーレベル4に属する最強の感染性と毒性を持つエボラウイルスが原因となって発症するエボラ出血熱が流行し始めた事象で、2014年6月頃より感染が急拡大して深刻な事態となっています。エボラ出血熱の患者が急増、そのうえアメリカ人の感染・死亡と同国医療従事者の感染もあって、アメリカ途上国支援団体の平和部隊はボランティアの撤退を決め、CDCが渡航自粛勧告を行ないました。

 2015年5月13日までにおける世界保健機関(WHO)のまとめにおいては、感染疑い例も含め26,746名が感染、11,022名が死亡(死亡率41%、WHOによる推定死亡率は71%)しました。グローバル化の影響で人間の移動が広範囲となっているため、地球上の遠隔地への拡散も懸念されているのが現状です。この対策には、WHOの他にアメリカ疾病予防管理センター (CDC)や欧州委員会 (EU)、西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS) 、国境なき医師団 (MSF) 、平和部隊、赤十字社 (IFRC) などが乗り出し、各種基金や人的支援を行なっています。流行は森林隣接地帯が中心ですが、エボラの感染は空気感染ではなく、皮膚が直接接触することが必要とされていることもあって、この地域の葬儀で死者に触れる習慣が流行を加速させていると考えられます。また、コウモリや猿などの野生動物を食べる習慣がリスクを高めているのではないかとする推測もあります。
 2014年8月8日、WHOは西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言しました。かくて、エボラ出血熱の感染者数・死亡者数は共に過去最多に達し、2015年5月時点でも指数関数的に増加中です。また、西アフリカにおける初めての流行、及び史上初めての首都(※リベリアのモンロビアとギニアのコナクリ、シエラレオネのフリータウン)での流行となった次第です。なお、2015年5月9日、WHOが終息の目安としている42日間で新たな感染者が確認されなかったことから、リベリア政府はエボラ出血熱の終息を宣言をしました。


流行の始まり
 エボラ出血熱の流行は、2013年12月にギニアで始まりました。最初の感染者はゲケドゥに在住していた2歳の男児だと見られています。直ぐに母親と姉(3歳)、そして祖母が亡くなりましたが、当初初は誰もエボラ出血熱が原因の死亡とは考えていませんでした。感染源としてはエボラウイルスに汚染された果物を食べたり、汚染された針で注射されたこと、或は野生のコウモリとの接触の可能性などが疑われますが、明確な原因は不明です。なおこの男児を含め、最初期の感染者の疑いがあるとされている人の居住県として、コナクリ(4名)とゲケドゥ(4名)、マセンタ(1名)、ダボラ(1名)が挙げられていまする。
 ギニア保健省は、2月9日に初の発症例が確認された正体不明の病気が36人で確認され、そのうち少なくとも23人が死亡したと発表しましたが、その症状には発熱と下痢、嘔吐が含まれ、一部の患者には出血も見られると報告されており、その症状はラッサ熱や黄熱・エボラ出血熱の症状に似ていました。3月下旬にフランスのリヨンにある研究所から病気がエボラ出血熱であるとの報告を受けたギニア政府は、その時点での感染被疑者は80人、死亡者は59人だと発表、ギニア保健省からの通告に基づき、WHOは3月23日に第1報を出しました。さらに、ギニア保健省の3月25日の報告では、ギニア南東部のゲケドゥとマセンタ、ンゼレコレ、キシドゥグでの発生が伝えられています。また、その翌日にリヨンのパスツール研究所はそれがザイール株であると発表しましたが、その後の全遺伝子解析によってそれが新株であることも明らかになりました。その後ギニアの首都コナクリでも感染が見つかりましたが、コナクリの大部分の人々は貧しく、しかも水が不足しているため手も洗えない状況で、当然ながら公衆衛生も不足しているため、エボラ出血熱の流行が急速に拡大する怖れが懸念されています。

初期の対策
 ギニア、シエラレオネ、リベリア各国の当局は、これを受けて国家非常事態委員会を立ち上げ、エボラ対策計画を実行します。また、西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS) は3月末、国際的支援が必要との声明を発表しました。第44回西アフリカ政府長官会議期間中の3月30日、ECOWASは2万5千USドルの支援を発表、またシエラレオネ当局は、ギニア及びリベリアからの入国者に対し厳しい健康チェックを行なう規定を発表しています。また、欧州委員会 (EC) は、ギニアとその近隣諸国での流行を抑えるために50万ユーロを供出しました。さらにECは状況評価と地方への情報伝達のため、ギニアに専門家も派遣しています。
 3月末、ギニアの北隣セネガルの内務省はギニア国境からの入国を無期限停止にしましたが、これに続いて、2014年3月26日、セネガル川の上流にギニアがあることをもって、モーリタニアはセネガル川からの入国口をロッソ (モーリタニア)とディアマの2か所に制限しました。さらに3月31日、アメリカ疾病予防管理センターは、ギニア保健省とWHOのサポートとして5名のチームを派遣します。2014年4月1日、サウジアラビアは、ギニアとリベリアからのメッカ巡礼(ハッジ)を理由とするビザの交付を停止、さらにモロッコは西アフリカのハブ空港であるムハンマド5世国際空港の医学チェックを強化しました。なおこれとは対照的に、ギニアとリベリアの国境は大きな対応はなされませんでした。なお、EUが資金提供しているヨーロッパモバイル研究所は、WHO/地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク (GOARN) の流行対策の一環としてバイオセーフティーレベル4の病原体を取り扱える移動実験室を派遣しましたが、この移動実験室が採取した患者20名の血液サンプルからウイルスRNAを抽出、配列を決定し、2007年にコンゴ民主共和国で発見されたウイルスと97%一致することが確認され、その旨4月16日に発表されました。なお、4月23日の時点で感染者数242、その内の死者142であり、致命率は58.7%となりました。

感染の拡大
 シエラレオネ、マリ共和国、ガーナでも疑わしい患者が見つかりましたが、臨床サンプルはエボラウイルス陰性でした。5月にはギニアの状態も改善に向かっており、ゲケドゥを除いて新たな感染者は報告されませんでした。ところが、5月23日から27日にかけて、ギニアのゲケドゥとマセンタ、コクナリの3地区に加えて、新たにボッファとテリメレ、ボケ (ギニア)、ドゥブレカの4地区、さらにはギニアの南にあるシエラレオネでも臨床例が報告されました。そして、6月5日にはギニアのクールーサでも感染が報告されています。
  • 6月17日: リベリアのモンロビアでもエボラ出血熱で7名が死亡したと報告。
  • 6月23日: 制御できない状況であるとする声明を国境なき医師団が発表。
  • 7月25日: ナイジェリアの最大都市ラゴスにある西アフリカ地域最大のハブ空港にて、リベリアから入国したアメリカ国籍を持つリベリア人パトリック・ソーヤーの同市でのエボラ感染・同日中の死亡が発表される。
  • 7月27日: リベリアは感染の拡大を防ぐために自ら国境封鎖を行なう。
  • 7月31日: シエラレオネのアーネスト・バイ・コロマ大統領が非常事態宣言。
  • 8月6日: リベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ大統領が非常事態宣言。
  • 8月8日: 世界保健機関(WHO) が専門家による緊急の委員会を開いた上で、西アフリカにおけるエボラ拡大が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であることを宣言。また、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領が、国内でエボラ感染が続発している事態を受けて国家非常事態宣言。
  • 8月13日: ギニアのアルファ・コンデ大統領が公衆衛生上の非常事態宣言。
  • 8月15日: 国境なき医師団が「エボラ出血熱は私達が対応し切れないほどの速さで悪化し拡大している」と発表。なお、その声明に先立って、WHOはエボラの流行規模がこれまで大幅に過小評価されてきており、拡大防止のためには異例の措置を講じる必要があるとの見解を表明していた。
  • 8月28日: エボラ出血熱流行の最終的な感染者数は2万人に拡大する恐れがあるとWHOが警告。
  • 8月29日: セネガルが同国内で初めてエボラ感染者を確認したと発表。
  • 9月2日: 国境なき医師団は「世界の指導者達はエボラ出血熱への対応に失敗しつつある」との見解を緊急発表し、西アフリカ各地の緊急仮設病院の増床への資金提供と訓練された要員の派遣、さらにギニア、シエラレオネ、リベリア全域への移動検査所の展開に対する援助を求める。
  • 9月18日: 国際連合安全保障理事会が緊急会合を開催、異例の公衆衛生に関する決議を行なう。
  • 9月22日: エボラ出血熱の流行を食い止める劇的な抑制策が行なわれぬ限り、11月までに感染が2万人に拡大するとWHOが警告。
  • 9月23日: 適切な対処が取られなかった場合、2015年1月中旬には感染者数が55万人〜140万人に拡大するとアメリカ疾病対策センターが警告。


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【2】エボラ出血熱の診断とその治療法

 エボラウイルスに一度感染すると助からないのでしょうか?
 本節ではエボラ出血熱の治療や予防法について取り上げました。
エボラ出血熱の症状と潜伏期間

 潜伏期間は2〜21日で、死亡率は50〜90%。血液を介するエボラウイルスの感染力は強く、針刺し事故ではほぼ100%の確率で感染すると考えられています。症状は発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛、吐き気・嘔吐、胸痛、腹痛、咽頭痛、下痢、紫斑、吐血、下血、意識障害などです。

 エボラ出血熱の症状としては、感染後2〜21日程度の潜伏期の後、突然の発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛などの風邪のような症状に次いで、嘔吐や下痢、胸痛、そして出血(吐血、下血)などの症状が現われます。エボラ出血熱の原因であるエボラウィルスに感染すると、約7日間の潜伏期間を経た後に、発熱や頭痛、悪寒、筋肉痛や関節痛などの初期症状から嘔吐や下痢、胃の痛みに発展します。その感染力や症状の重さは深刻で、その後症状が進むと、口や耳、鼻や直腸など全身のあらゆる場所から出血や吐血、下血が見られます。致死率が高いことも特徴であり、生命を取り留めたとしても、重い後遺症を患う場合があります。日本においては感染症法による一類感染症に定められており、感染力やその重篤性など危険度が高い感染症に指定されています。
エボラウイルスに感染すると人体でどんなことが起こるのか?


エボラ出血熱とその感染経路
エボラウイルス アフリカにおけるエボラ出血熱の発症と流行は、エボラウイルスに感染したコウモリや猿などの野生動物の死体などへの接触よって感染が始まったとされています。ウイルスは感染した人や動物の尿、汗、血液、母乳などの体液を通じて感染し、空気感染はしないとされており、また、発症していない人からは感染しません。なお、直接遺体に触れることで死者を弔う葬儀の習慣などがエボラ出血熱の感染拡大の主因になることがあります。ウイルスは死の直前に最も感染力が増すとされ、遺体に触れることは感染のリスクを大幅に高めるため、感染制御には葬儀を安全に執り行うことが重要になります。

エボラウイルスは一体どのようにして人体に入り込むのか?
 史上最悪規模のエボラウイルスの感染拡大が現在西アフリカで続いていますが、世界保健機関(WHO)によると、昨年夏頃の段階で死者数は1000人を突破、シエラレオネ、リベリア、ギニア、ナイジェリアの4カ国で死者が確認されました。WHOのマーガレット・チャン事務局長は「感染を制御しようとする我々の努力以上の速さで急速に拡大している」と言います。現状の感染流行に含まれるザイール株(1976年に最初に同ウイルスが見つかったザイール[現コンゴ民主共和国]に因んで命名)のエボラウイルスの致死率は、かつて最大で90%にまで達しました。しかし、現在拡大中のウイルスの致死率は幸いそれよりも低いものです。もっとも、90%の致死率は一切の治療を受けられなかった場合の数値であって、対症療法が行なわれている現在においてもその実際の致死率は60%にも達するのです。エボラ出血熱は目や耳から出血し、死に至ることで恐れられていますが、それではこのウイルスは一体どのようにしてこのような重篤な症状を惹き起こすのでしょうか? 
 エボラ出血熱は空気感染しないことで知られています。何らかの方法でウイルスと接触しない限り感染のリスクはないのです。ウイルスに感染した動物(コウモリや霊長類) との接触や、ウイルスに感染して症状が出ている患者の体液への接触、ウイルスに汚染された器具接触によってエボラウイルスに感染します。たとえば家族で世話係をしている人が、患者の吐瀉物や下痢便の始末をする際にウイルスに接触することがあり、その場合は液体に含まれるウイルスによって感染するのですが、そのウイルスは鼻や口などから体内に侵入するのです。さらにエボラウイルスは宿主の体外で驚くほど長い期間生存することでも知られており、それは室温で数日間にも及ぶこともあると言います。そのため、感染防止が非常に重要となります。もしも器具の消毒ができ、IVs(静脈内投与)や消毒剤の入手が可能で、周囲の環境を清潔に保つことができ、患者を効率的に隔離することができれば、感染が拡大することはほぼ考えられません。感染防止対策が十分に取られ医療設備が充実している場所ではこの病原体の流行のリスクは全くないと言えます。

エボラウイルスに感染すると人体にどんなことが起こるのか?
 エボラウィルスに感染すると、インフルエンザに似た症状と出血(外出血と内出血の両方)が見られ、その多くのケースが死に至ります。現在の大流行では何とその致死率はおよそ60%に及んでいると言います。いったんエボラウイルスが体に侵入すると、ウイルスは細胞内に入り込み、自己を複製しますが、その後私たちの細胞を破壊する特定のタンパク質を作り出します。このタンパク質はエボラウイルス糖タンパク質と呼ばれ、血管内で細胞に付着します。それによって血管透過性が高まり、血管から血液が流れ出すのですが、このウイルスは体内の血液を凝固する能力に異常を引き起こすのです。こうして出血性の症状が見られない患者にも血管からの出血が起こるようになり、出血性ショックから次第に死に至るという経緯を辿ります。
 エボラウイルスは身体に備わる免疫反応を巧妙に回避し、好中球と呼ばれる細胞へのシグナルを阻害します。白血球のひとつである好中球は、免疫細胞が警告を発して攻撃する役割を持っていますが、実際エボラウイルスは免疫細胞に感染し、肝臓や腎臓、脾臓、脳を含む体の各部位へと広がってゆくのです。そして、エボラウイルスに細胞が感染し破裂する度に内容物を飛沫させ、それによるダメージとウイルス粒子がサイトカインと呼ばれる分子を活発化させます。通常、健康な体ではこれらのサイトカインは炎症反応を引き起こす役割を果たし、それにより身体は外部からの攻撃を知ることができるのですが、それに対してエボラ患者の場合、過剰なサイトカインの放出がインフルエンザに似た症状を惹き起こしますが、それはエボラ出血熱の初期症状なのです。

エボラ出血熱の経緯
  • ウィルスの暴露

  • 潜伏期
     症状は一般的に暴露の第4〜9日で現われる。しかし、潜伏期間は21日に及ぶこともある。

    1. 1〜3日目:
       発症して最初の数日は、インフルエンザに似た症状で重度の脱力状態となる。

    2. 4〜7日目:
       発症から4〜7日経過すると、嘔吐、下痢、血圧低下、頭痛、貧血などが起こる。

    3. 7〜10日目:
       末期症状となると、意識混濁、外出血ならびに内出血が起きる。こうした症状を経て昏睡状態、ショック状態に陥り、死に至る。

  • 死亡

エボラ出血熱の診断と治療


エボラ出血熱の検査と診断
 エボラ出血熱の発症初期の患者の血液から容易にエボラウイルスが分離されます。臨床症状だけからウイルス性出血熱を診断することは難しく、ウイルス抗原及びウイルスに対する特異的抗体検出によるウイルス学的検査に基づいて診断を下すのが基本です。
 迅速診断としてはウイルスゲノムをRT-PCR法等で検出する方法がありますが、その他にも血中抗原や抗体をELISA 法で検出する方法もあります。RT-PCR法では血中抗原測定よりも1日早く検出が可能となります。一方、抗体検出は免疫蛍光法でも行なえます。血液及び体液等からウイルスを分離するのが最も確実です、現地では困難です。なお、死亡者では頚部等の小さな皮膚片をパンチ生検し、ホルマリン固定材料で免疫組織化学的にウイルス抗原検出が行なわれます。

エボラ出血熱の治療法
 エボラ出血熱には今のところ有効な治療薬や予防ワクチンはなく、現在でも研究が続けられています。また、エボラ出血熱には特異的な治療法はなく、安静、ショックに対する治療、輸液・循環の管理といった対症療法に限られています。その対処法としては、下痢で脱水症状を起こしている患者への点滴や、併発感染症を避けるための抗生物質の投与などがあります。その他、鎮痛剤や栄養治療食、ビタミン剤の投与も有効です。対症療法で状態を保つことで患者自身の免疫システムがウイルスに打ち勝つために必要な時間を稼ぐことができます。患者がエボラを克服し完治した場合は、感染したウイルスの型に免疫を持つことになります。なお、日本ではエボラ出血熱は感染症法で1類感染症に分類され、これらの患者の治療専用に設計されている病室に隔離し治療が行なわれます。エボラ出血熱の予防法としては、エボラ出血熱の発生はアフリカ中央部で流行するため、流行している地域へは近づかないことが重要です。動物の死体に近づくことも危険です。日本では厚生労働省が海外渡航者のための注意喚起としてエボラ出血熱の情報を公開しています。海外に渡航予定がある方は情報を確認し、感染経路などを頭に入れ、直接触れる事がないようにすることが重要となります。

エボラ出血熱の感染経路からみる予防法

 エボラ出血熱は細長く多種多様で形が定まっていないエボラウィルスに感染することが原因です。感染力は非常に強く、感染すると致死率が高い病気ですが、空気感染はしません。エボラウィルスに感染している患者の血液や体液、唾液や排泄物などに直接触れることで感染します。また、人以外の動物でエボラウィルスに感染している動物に触わったり食べたりすることでも感染するので注意が必要です。感染している患者の近くにいることで、唾液や排泄物の飛散によっても感染します。皮膚からウィルスが体内に入り込むため、直接触れなくとも感染し発症する場合もあります。

 エボラウイルスに感染し、症状が現われている患者の体液(血液、分泌物、唾液、吐物、排泄物)やその体液などに汚染された物(注射針など)に触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。これを接触感染(直接触れてから感染すること)と言います。現段階ではその他、空気感染や飛沫感染はしないと言われています。従って、エボラ出血熱に感染しないようにするには、エボラ出血熱に感染している患者の体液や体液で汚染されている物に接触しないことが重要となります。
参考:エボラ出血熱を必要以上に怖がらなくてもよい

 現在、西アフリカ諸国で急速な広がりを見せているエボラ出血熱ですが、世界保健機関(WHO)によると、エボラ熱による死者はこれまで961人に達し、患者は1779人に上ると見られているとのことです。犠牲者はギニア及びシエラレオネ、リベリアやナイジェリアに広がり、WHOは緊急事態を宣言、国際社会の一体となった対応策を求めました。周期的に流行しているエボラ出血熱ですが、今回は感染規模が大きく、マスコミでも連日報道されているため、一部ではパニックに陥っている人も多いでしょう。
 人々がエボラ出血熱に罹るのを恐れる理由はたくさんあります。特効薬も有効な治療法もなく、感染したら致死率90%という恐ろしいウィルスだから当然です。感染すると、当人はインフルエンザのような症状に苦しみ、2週間も経たぬうちに内臓や体の開口部から出血して死に至るという恐ろしい病気です。そんな訳で、世界中のメディアが現在アフリカの一部で発生しているエボラ出血熱に飛びついて大騒ぎし、不安を煽っているのも確かによく分かります。新聞の多くの見出しは、このモンスター感染体が世界をパニックに陥れ、公衆衛生にとって悪夢となる可能性があると謳っているものもあります。しかし、過剰に恐れる必要はありません。そこで、エボラをそれほど恐れる必要のない理由を以下で説明します。正しい情報を知ることで不要な不安は解消できるでしょう。


エボラウィルスの感染力はそれほど強くない
 多くのウィルスは、特に咳やクシャミなどでウィルスをエアゾール化して拡散する空気感染などによって宿主との接触を見事に成し遂げています。また、成功している感染体は温度が高くても低くても生存することができ、宿主の体外にいても長く生き残っていられるよう進化しています。ところがエボラウィルスは、感染者やその体液(クシャミの鼻汁や咳の唾、血液、汚物)に直接触れない限り感染するものではないのです。さらに普通の食べ物や水が原因の伝染病と違って触れないでいるのが難しいというわけではなく、直接接触さえ避ければ感染者が限られ、ウィルスの拡散を封じ込めることが可能なのです。

症状の出ていない患者は感染力がない
 疾病管理センターによると、エボラウィルスに感染していても症状の出ていない人は感染力がないと言います。つまり、接触しても潜伏期間中なら移らないということです。その反対に、性感染症やインフルエンザなど他の多くのウィルスは宿主に症状が現われる前から感染力を発揮し、自分でも感染を知らないうちにウィルスを広め、大流行させてしまうということになります。しかし、今のところエボラウィルスには知らないうちに多くの人々に忍び寄って感染を大流行させる能力はまだないので、症状が出ている人には近づかないようにすればよいと言うわけで、感染者をきちんと隔離しさえすればそれ以上の感染は防ぐことが可能です。

エボラウィルスは宿主を早く殺してしまう
 優秀な感染体は宿主を直ぐには殺さないという特徴があります。それは、ウィルス自身が宿主の身体を使って更に拡散し、生き延びてゆくためには、できるだけたくさんの人に乗り移るまで宿主に生きていてもらわなくてはならないからです。ところが、エボラウィルスは取り憑いた宿主を2週間以内に殺してしまいます。これは逆に言えば、ウィルスが拡散し、他の宿主と接触して生存してゆくためには効率的ではないということになります。

エボラウイルスは制御できる
 直接接触する以外感染しないのだから、感染者を特定してきちんと隔離すれば大流行は防ぐことが可能です。

社会に影響を与える深刻な伝染病は他にたくさんある
 エボラ出血熱よりも心配しなくてはならない伝染病は他にもたくさんあります。現在のエボラ出血熱の状況はこれまでになく深刻ですが、2012年には世界で17万人が多剤耐性結核で死亡していますし、47万3000人から78万9000人がマラリアで命を落としています。また、下気道感染症による死者は、毎年膨大な数に上ります。それらに比べてエボラは、深刻な伝染病のレベルになるまでにはまだ時間がかかるようです。重大な健康問題としてエボラに対処するのはもちろん大事ですが、必要以上にパニックにならないことが大切です。集団パニックが引き起こされるとまた別の問題が出てくるからです。いま直ぐにアフリカの当該地域を訪れる予定がないのなら、とりあえずは安全と言ってよいでしょう。


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【3】エボラ出血熱の治療薬とワクチン〜その開発と課題〜

 エボラ出血熱には薬もワクチンも効かないとされて来ましたが、最近日本で有望な治療薬が開発されました。
 本節ではそのエボラ出血熱の治療薬とワクチンについて取り上げ解説しました。
エボラ出血熱への効果が期待されるアビガン錠

 西アフリカでのエボラ出血熱の大流行は今のところ全く衰えを見せません。世界保健機関(WHO)によると、疑い例も含めると5千人近くが感染し、2400人を超える人々が死亡したと言います.

エボラ治療薬 現在開発中のエボラウイルスの治療薬やワクチンは複数種類あり、既に患者に投与された治療薬としては、アメリカのマップ・バイオファーマシューティカルがカナダ公衆衛生庁やアメリカ政府と共同開発中のZMapp(ジーマップ)がありますが、この治療薬は通称・抗体医薬品と呼ばれるモノクローナル抗体からできています。人間の体内には、体内に侵入してきた異物を排除する免疫という機能があるのは周知の通りですが、異物を排除するため、免疫に関係するB細胞がウイルスなどに感染した細胞に特有の目印に結合する抗体を作ります。この抗体がただ1種類でB細胞から作る場合、その抗体をモノクローナル抗体と呼びます。ジーマップはエボラウイルスに作用する3種類のモノクローナル抗体を含んだもので、タバコの葉になるナス科タバコ属の多年草・ニコチアナの細胞を使って抗体を産生されます。それは、タバコの葉を使うのは抗体産生のスピードが早く、大量生産にも向いているからです。ただ、ZMappはまだ発見されたばかりで、カナダ公衆衛生庁によってエボラウイルスに感染させたサルで有効と確認されたものの、人間での投与実績はまだありまえんでしたい。今回医療支援のため現地を訪れて感染したアメリカ人医師2人とスペイン人司祭1人に試験的に投与され、アメリカ人医師は症状が改善したものの、スペイン人司祭はそのまま死亡しています。その後、感染が流行しているリベリアでリベリア人とナイジェリア人の医師3人に投与されたが、このうちの1人も既に死亡しました。まだ試験的なことや、タバコの葉を使ったとしても、通常の化学物質のような大量生産ができないことも影響して、マップ・バイオファーマシューティカルは既に在庫は尽きていることを明らかにしています。


なぜインフルエンザ治療薬がエボラ出血熱に効くのか?
 いま最も注目を集めているのが富士フイルムグループの医薬品子会社である富山化学工業が開発した抗インフルエンザ薬アビガンですが。インフルエンザの治療薬がなぜエボラ出血熱に効果があるのしょうか? 
 一般にウイルスはその複製に必要な遺伝子情報が組み込まれたDNAないしRNAをタンパク質の膜で包んだだけの極めて簡単な構造を持っています。このウイルスがヒトに感染すると、人間の細胞に寄生して自分のDNAやRNAをそこに送り込み、遺伝情報と必要なタンパク質を複製して新たなウイルスが作られるのですが、これが繰り返されて体内でのウイルス量が増えると、病原性を持つ場合は様々な症状が出現するのです。インフルエンザはRNAがタンパク質の膜で包まれたものなのですが、アビガンは人間に感染したインフルエンザウイルスのRNA複製に必要な酵素・RNAポリメラーゼの働きを抑えてウイルスの増殖を抑制する働きがあるのです。エボラウイルスは、インフルエンザと同じようにその遺伝子情報を持ったRNAをタンパク質の膜で包んだもので、動物実験ではアビガンが効果を示すことが知られています。このため、人間でもエボラウイルスに効果を示す可能性があると考えられているのです。

FDAがアビガンをエボラ出血熱の治療薬として承認へ
 このアビガンが注目される理由はその効果以外にもあります。アビガンは通常の錠剤で大量生産が比較的容易なのです。また、患者の体液を介して感染しやすいエボラ出血熱の場合、錠剤の方が医療従事者の感染リスクを大幅に減らせるというメリットもあります。ちなみに、マップ・バイオファーマシューティカルのZMappは大量生産に向かないため、現状では僅か10人に満たない患者に投与した時点で在庫切れとなってしまうのです。これでは、今回のような爆発的な感染では対応できません。なお、富士フ イルムの米国でのパートナー企業メディベクターがこの治験薬をエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、米食品医薬品局(FDA)と協議していると言いますが、これが承認されればエボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通しです。しかし、薬である以上、副作用は必ずあるわけで、たとえばアビガンの催奇性があるため妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与や男女とも男性の服用後の7日間程度の避妊の必要があります。FDAが緊急承認したとしても、現実的にはその効果や副作用は未知数の部分があるのも事実です。既に富士フイルムは2万人分のアビガンの在庫を保有すると言われ、菅義偉官房長官もWHOや医療従事者の要請によって超法規的提供の用意があると言います。

東芝などのエボラ出血熱検査薬、現地評価で有望な結果
 長崎大学と東芝は、西アフリカ・ギニアで実施したエボラ出血熱検査試薬の実用性評価において同試薬の優位性を確認し、その結果、既存の検査法であるリアルタイムRT-PCR法と同等の判定精度を平均11.2分と約6分の1の時間で実現できたという。エボラ出血熱の新規患者数は現在ギニアだけでも50〜100例/週で推移しており、流行の収束に向けて予断を許さない状況です。なお、今回の新検査法が現地で導入されれば西アフリカにおけるエボラ出血熱の収束に貢献できる可能性が極めて高いだろうと言われています。
 両者は長崎大学 熱帯医学研究所が開発したエボラ出血熱検査試薬の実用化に向けて、実検体を用いた実用性評価を2015年3月にギニアで実施しました。この実用性評価は、長崎大学熱帯医学研究所 教授の安田二朗氏と同助教の黒崎陽平氏が担当しましあ。安田氏らは2015年3月16日に国立ドンカ病院(ギニア共和国コナクリ市)を訪問、エボラ出血熱患者から採取した実検体による検証実験を同月17〜24日に行ないました。そして、検査機器や試薬、防護服は日本から輸送し、コナクリ市内および郊外のエボラ治療センターなどから集めた100検体(陽性47検体、陰性53検体)について、現地で採用されているRT-PCR法と比較試験した結果、新検査法による判定結果は高い判定精度を持つRT-PCR法の結果と100%一致したのです。陽性の判定にかかる平均時間はRT-PCR法の約1時間に対し、平均11.2分で済んだと言うのです。もっとも判定中には停電が発生したものの、新検査法は電池を内蔵する装置を使うため、影響なく検査を実施できたとのことです。今回の結果はギニア政府によるエボラ対策会議でも高い評価を得ました。

エボラ出血熱のワクチン


エボラ出血熱ワクチンに課題山積、製造・供給などに高い技術ハードル
 エボラ出血熱ワクチンの開発を急ぐ大手医薬品メーカーは、臨床試験が成功しても、来年の利用に備えて大量の薬剤を確保するには、製造過程や承認手続き、アフリカでの供給網構築などの技術的な課題がまだまだ山積している状態です。
 エボラ熱ワクチン開発で先行するグラクソ・スミスクラインとニューリンク・ジェネティクスは既に安全性を確認する臨床試験を開始し、更に5社が本年度前半には試験を開始する見通しです。グラクソとニューリンク、ジョンソン・エンド・ジョンソンの3社は本年中に数百万回分のワクチンを製造する計画で、グラクソは5件の製造ラインを発注、ジョンソン・エンド・ジョンソンも既に2億ドルを投資していると言います。しかしながら、実際の生産量は製品の歩留まりに左右され、歩留まりは細胞培養の進み具合やワクチン接種の拡大ペースによって大きく変わってきます。その主なボトルネックの1つは充填能力です。エボラ熱ワクチンは遺伝子組み換え生物(GMO)を使うため、バイオ・セーフティー・レベル2(BSL2)の格付けを持つ実験室や施設で無菌充填しなければなりません。しかし、この格付けレベルの施設を持つ企業はさほど多くないのです。たとえばグラクソやサノフィ、メルク、ノバルティスなどはこうした施設を持つものの、既にロタウィルスなど他のワクチン製造にこれを利用している状況です。その上、当局からの承認獲得手続きをどう加速化するかも問題で、通常は生産の様々な段階で長期間の検査がなわれますが、その対応として、一部の検査を時系列ではなく、並行的に行なう方式が期待されています。さらに、零下80度で保存しなければならないエボラ熱ワクチンの供給網構築も厄介です。

新しいエボラワクチンの開発に成功〜ワクチンの有効性を猿で証明〜
 東京大学医科学研究所は新しいエボラウイルスワクチンを開発し、霊長類において当ワクチンが有効であることを示しました。
 現在、世界保健機関(WHO)の報告によれば、西アフリカ諸国で流行しているエボラ出血熱によって感染者数が24,000人以上、犠牲者数は10,194人に上っている状況ですが、しかし、未だにエボラウイルスに有効なワクチンの開発には至っておらず、現在臨床試験が行われている3種類のエボラウイルスワクチンにしても、その効果や安全性の問題が懸念されている現状です。そのため、新しいエボラウイルスワクチンを開発してエボラ出血熱の予防及び治療方法を確立することは最重要課題となっています。東京大学医科学研究所の研究グループは、安全性の高いエボラワクチンを開発するため、エボラウイルスの遺伝子の一部を欠損した変異エボラウイルスを作製しました。この変異ウイルスは特定の細胞においては増殖できますが、普通の細胞では増えることはできません。当研究グループは、開発したエボラウイルスワクチンの安全性を更に高めるため、この変異エボラウイルスを過酸化水素水で不活化しワクチンをサルに接種してその効果を評価しましたが、その結果、このエボラウイルスワクチンを接種した猿は、その後、致死量のエボラウイルスを接種されてもエボラウイルスに感染しないことが明らかとなりました。この研究成果は、エボラ出血熱の制圧に向けた大きな一歩となることが期待されます。

参考:エボラ出血熱に関する参考文献


◆参考図書
デビッド・クアメン『エボラの正体 死のウイルスの謎を追う』日経BP社
デビッド・クアメン・著/山本光伸・訳
『エボラの正体 死のウイルスの謎を追う』
日経BP社・2015年01月刊、1,500円
エボラは人獣共通感染症である。人獣共通感染症とは人間にも感染する可能性のある動物由来の感染症のこと。人獣共通感染症ウイルスは隠れることができる。病気が姿を消したように見えるときでもどこかに潜んでいるのは間違いない。2014年に西アフリカ3カ国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)を襲ったエボラウイルス病のアウトブレイクは、過去最悪の事態となった。WHO(世界保健機関)の発表によると、感染者数は1万5935人、死者数は5689人に達した。エボラウイルスが最初に出現したのは1976年。それ以来、散発的に姿を見せて人々の命を奪ってきたが、今回のアウトブレイクでは、感染者数、死亡数とも、過去のアウトブレイクのトータルの合計数をはるかに上回った。終息のメドはいまだに立っていない。本書は、エボラについて、現在までにわかっていること、研究の余地がある点、危険極まりないウイルスを抑制しようとしている人々の努力などエボラと人間の戦いの歴史を振り返りながら様々な疑問に答える。
岡田晴恵『エボラvs人類終わりなき戦い―なぜ二十一世紀には感染症が大流行するのか―』PHP新書963
岡田晴恵・著
『エボラvs人類終わりなき戦い
―なぜ二十一世紀には感染症が大流行するのか―』
PHP新書963、PHP研究所・2015年01月刊、780円
2014年、世界はエボラ出血熱の恐怖に震撼した。リベリアでの大流行を経たエボラウイルスはスペイン、アメリカなど先進国にも飛び火。なぜ、アフリカの風土病にすぎなかったエボラは大陸を越えたのか。エボラはもちろんデング熱、強毒型インフルエンザなど迫りくる新しい感染症の実態、感染症の文明史、そこで自らの身をどう護るかまでを、スペシャリストが徹底的に解説する。
山内一也『エボラ出血熱とエマージングウイルス』岩波科学ライブラリー
山内一也・著
『エボラ出血熱とエマージングウイルス』
岩波科学ライブラリー235、
岩波書店・2015年02月刊、1,200円
西アフリカで発生したエボラ出血熱は過去に例を見ない大流行となった。エボラはどこから来たのか、なぜ致死率90%と高いのか、治療や予防法はあるのか、日本は大丈夫なのか、とさまざまな疑問が投げかけられている。ウイルスハンターや医師たちの苦闘の歴史を振り返り、ウイルス専門家の立場からエボラ出血熱の現在を紹介する。
中原英臣『ウイルス感染から身を守る方法』河出書房新社
中原英臣・著
『ウイルス感染から身を守る方法』
河出書房新社・2013年11月刊、1,400円
新型インフル・がん・肝炎・風疹・ヘルペス…身近な感染症の予防から変異する新ウイルスの実態まで、これだけは知っておきたい!!軽視できないウイルスと病気の必読情報が一冊に!
エボラ出血熱緊急募金 - 日本ユニセフ協会
http://www.unicef.or.jp/kinkyu/ebola/
2014年西アフリカ エボラ出血熱救援金 - 日本赤十字社
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/detail_33/


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