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今月のワンポイントアドバイス


 昨今、認知症に関するニュースや話題をよく見聞きするようになりました。認知症は物忘れや身体障害といった外面的な症状にとどまらず、人格の崩壊に至る場合もあります。今回は取り上げませんでしたが、認知症患者の生活の質を左右する介護保険制度も、今度は認知症の介護も重視する方向に変わってゆくようです。そんな訳で、今月は社会的にも非常に関心の高まっている認知症について取り上げました。
認知症


認知症
【1】認知症とはどんな病気か?
【2】認知症の種類とその症状
【3】認知症とその予防
【4】認知症の介護


【1】認知症とはどんな病気か?

 最近は認知症に関するニュースや話題をよく見聞きするようになりました。本節では、認知症とは一体どのような病気なのか、その概要をまずは簡単に説明しました。
長生きと認知症

長生き家族と認知症 大昔は「人間50年」などと言って人の一生を表わした時代もありました。昔の停年が55歳だったのも、当時の平均寿命(0歳時の平均余命)が大体それぐらいであったことに由来しています。ところが、医学の進歩も相俟って、現在日本人の平均寿命は、女性84歳、男性78歳となって、日本人も世界の中でもかなり長生きな民族になりました。
 それでは人間の身体の寿命はどのくらいあるのでしょうか? 最近の遺伝子学の研究によると、人の寿命は本来120歳ないし200歳程度であろうというのが常識となってきているそうです。遺伝子学の急速な進歩によって、次々に生命の神秘が解き明かされているようで、短命遺伝子と名づけられた遺伝子の発見も遺伝子学の進歩の賜物なのでしょう。そしてこの短命遺伝子は、私たちの寿命を縮める方向に働くらしいのです。とすれば、この短命遺伝子の働きを止めてしまう、或は遅らせることができれば、不老長寿とはゆかないまでも、120歳以上の寿命も可能だろうと考えられているのです。120歳以上生きるのがよいか悪いか分からないですが、長生きしてゆく上での最大の壁は、高齢化によって出現してくる老人性認知症(以前は老人性痴呆と呼んでいました)です。

 認知症は、地球上のどこの国でも万国共通の問題です。先進国は、生活水準や医療環境が整った分、平均寿命も延びていますので、老人性認知症が最大の懸念であると言えるでしょう。肉体の長寿命化は、神経細胞の寿命との間に大きな差(ギャップ)を生み出してしまいました。人間が平原で生活するようになって20万年とも言われますが、現代は今までにない長生きを経験しています。医療の発達や食料の安定供給、社会構造の安定化などの結果だと言えるでしょう。しかし、太古の昔から人間が望んできた長生きが、今度は皮肉なことに認知症という問題をもたらしてしまいました。誠に残念ながら、現在の医学をもってしても認知症の根本的な解決策は見つかっていないのが現状です。
 現在、日本は世界でも稀に見る高齢化社会に向かって突き進んでいますが、それと同時に認知症の問題も最先端を行っていると言えます。認知症が「21世紀の時限爆弾」とまで言われる所以でもあります。「人間50年」どころか、「人間200年」という遺伝子からのメッセージも、認知症を克服することができなければ単に絵に描いた餅にしかすぎません。最初にも触れたように、厚労省の調査では、認知症患者は約150万人、そのうちアルツハイマー型が4割以上とされています。社会の高齢化に伴って今後ますます認知症患者は増え続けてゆくことでしょう。
認知症とはどんな病気か?


認知症とは?
 認知症とは、脳や身体の疾患を原因として記憶や判断力などの障害が起こることです。老化に伴う単なる物忘れよりも、急速に脳細胞が消失して、記憶の一部ではなく全てがなくなったりします。また、人格崩壊や妄想・幻覚といった症状を引き起こすこともあり、日常生活に支障を来すことが多いのが認知症です。
 脳は私たちの身体活動及び精神活動の殆どをコントロールしている言わば司令塔とも言える重要器官です。それが上手く働かなければ精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなるのは当然のことです。そして認知症とは、色々な原因でこの脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなったために様々な障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。また、認知症を引き起こす病気の中で最も多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでゆく変性疾患と呼ばれる病気で、アルツハイマー病や前頭・側頭型認知症、レビー型小体病などがこの変性疾患に当たります。それに続いて多いのが、脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などのために神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって、その結果その部分の神経細胞が死んだり神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。このアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が認知症の多くを占めています。

認知症を持つ人の数〜25年後に認知症の人は2倍になるとの推計も!?〜
 認知症は身近な問題になってきています。高齢化の進展と共に認知症の人が増え続けています。65歳以上では約10人に1人が認知症になっていると言います。また、85歳以上では発症率が非常に高くなっています。
認知症の種類別の割合 2008年時点で全国の65歳以上の高齢者は2,840万人(高齢化率21.5%)で、そのうち認知症の人は225万人です。厚生労働省によると、これが団塊の世代が65歳以上になる2015年には302万人、今の40歳代が65歳以上となる2035年には445万人、すなわち現在の2倍にもなると推測されていると言います。家族など認知症の影響を受ける人まで含めて考えれば、これはかなり膨大な数となると言ってよいでしょう。認知症は誰にとっても当事者か「明日は我が身」というのが現状です。なお、認知症を防ぐ確かな方法はまだ明らかになっていませんが、メタボリックシンドロームや生活習慣病を予防するような生活習慣を心懸けることが大切です。また、アルツハイマー型認知症は薬によって状態のある程度の改善は可能です。とにかく、朝食のメニューにとどまらず、朝食を食べたことすら忘れてしまうような認知症が疑われる症状に気づいたら、早めにかかりつけ医や専門医に相談し、より治療効果が高い早めの治療に結びつけましょう。

認知症は治らない?
 残念ながら現在の医学水準では認知症は治らない、治すことができないと言っても過言ではありません。特にこれからも増え続けると予想されるアルツハイマー型認知症は、症状が徐々に発症してゆき、その進行を止めたり元に戻したりすることは今のところ不可能と言ってもよい状況です。決定打と言える治療法が確立されているわけでもなく、今のところ手探りの状態です。日本では唯一、病気の進行を遅らせる効果がある塩酸ドネペジル(アリセブト)という名前の抗認知症薬がよく用いられてはいますが、その効果にも限界があるのが実情です。一方、動脈硬化が原因の脳血管性認知症の場合は、軽度の場合ならば、血栓の形成を抑制する薬や血圧及び高脂血症の薬などを使用しながら再発を防ぎつつ、認知症の進行を食い止めることはある程度は可能となっています。しかしながら、認知症の症状である記銘力の低下や見当識障害などに直接効果のある有効な薬剤は今のところ存在しないようです。

痴呆から認知症への名称変更
 認知症は、以前は痴呆と呼ばれるのが一般的でしたし、それが一般にも浸透していました。しかし、皆さんもご存知の通り、この痴呆という名称が差別的印象を与えるという問題提起を受けたことから、厚生労働省が中心となって検討を重ねた結果、2004年12月24日、厚生労働省は痴呆の名称を認知症と改めることを決定しました。それ以後、行政機関や医療機関においても徐々に名称変更が進み、現在では認知症という名称が一般にも浸透するようになりました。
 なお参考までに書くと、「痴呆」という名称が差別的であるとされたのは、痴も呆も共に愚かとか馬鹿という意味を持つ漢字だからだとのことです。ちなみに、もっと以前の江戸時代では、痴呆は耄碌(もうろく)とか老碌(ろうろく)と呼ばれて、一種の老化に伴う一時的な現象と捉えられて、余程深刻な症状でなければ医師が関与することもなく、社会でも柔軟に受け止められていたようです。当時においてはその介護は専ら家族によって任されていましたが、祖先の霊が家を守っていると信じられていた当時においては、介護に尽くすことで高齢者が死後に祖先の霊として新たに加わって家を加護してくれることで家族もまた報われると信じられていたため、これに親への孝行を重視された儒教思想も加味されて、介護を負担としてのみで捉えてはいなかったようです。

生活習慣と認知症

 認知症はアルツハイマーや脳血管性の認知症だけでなく、注意力の低下によっても生じます。生活習慣やライフスタイルによって認知症の症状が現れることがあります。たとえば漫然とテレビばかりを見てすごすとか、自分からは積極的に活動しない、趣味もなく他人と会話することも極端に少ないなど刺激の少ない単調な生活を送っていると、脳への刺激が減り、神経細胞も神経細胞のネットワークも衰えるばかりです。脳も使わないと退化してしまいます。非活動的な生活は脳にも影響を与え、時間感覚な乏しくなり、人から聞かれてもなかなか答えられず、認知症と間違われることもあります。ちなみに、これに関連して、1999年に発表されたある論文によると、海馬の神経細胞を破壊したラットを、羽根車を回させたグループと何もしないグループとに分けて一定期間経過後に解剖して海馬の状態を調べたところ、羽根車を回していたグループの海馬の神経細胞が明らかに再生していたと言います。従来は一度破壊された神経細胞は再生しないというのが常識で、リハビリなどはその神経細胞ネットワークが再構築されるだけだとされていたのです。もっとも神経細胞自体が本当に再生するのかどうかは今後の研究を待つしかありませんが、大事なことは、常に好奇心を持って新しいことにチャレンジすることが神経細胞のネットワークだけでなく、神経細胞自体の再生も促す可能性があるということです。
 また、ストレスによっても認知症の症状を誘発することがあります。配偶者や家族の死、離婚、別居、定年退職、転居、病気や怪我などの生活環境の変化にも注意が必要です。過度のストレスは海馬の神経細胞にダメージを与えることが分かってきましたが、ストレスが認知症を誘発する原因はこの辺りにありそうです。そのため、過度のストレスを感じたら早急にストレスの軽減を図ることが重要です。特に高齢の方には、生き甲斐を与え、安心できる居所を確保することが大切です。生き甲斐を見つけ、さらに人の役に立ったりすることは、その人の人間としての尊厳を満足させることにもなりますし、第一、生き甲斐を持っていれば認知症もそれほど重症にならずにすませることができるかも知れません。


酒飲と認知症の関係
 毎日晩酌する場合の適量は、日本酒だったらせいぜい2合程度だと言われます。それ以上の日本酒を毎日飲み続けると、アルコール中毒になる危険性が高まります。また、アルコール依存症になってしまった人は、脳の栄養が偏るために脳が萎縮しやすいことも分かっています。当然の結果として、アルコ−ル依存症が認知症の危険因子であることは間違いないようです。個人差は相当ありますが、日本酒を毎日3合以上飲む人はアルツハイマー型認知症になりやすいという報告もあります。何れにしろ、アルコールの飲み過ぎは脳だけでなく身体全体に対して悪影響を与えることは常識です。
 ちなみに、純粋なアルコールの摂取量が男性1トン、女性はその半分の500キログラム程度で肝硬変になるとも言われています。日本酒1合の純粋アルコール量は28グラム、1日1合飲み続けると、1年で100キログラム、5合なら50キログラムで、ざっと20年で1トンとなる計算です。結論として、毎晩アルコールを飲むことかどうかということよりも、その量が重要だということです。程よい量ならばアルコールは善玉コレステロールを増やし、血行もよくしてくれますが、度を過ぎたアルコールの摂取は単なる自殺行為意外の何者でもありません。

参考:健常な物忘れと認知症による物忘れ


■健常な物忘れと認知症による物忘れの違い
健常な物忘れ 認知症による物忘れ
・体験の一部を忘れる ・体験の全体を忘れる
・買い物先で何を買うか忘れる ・買い物に行ったことを忘れて、何度も買い物に行く
・食べたことは覚えているが、何を食べたか思い出せない ・食べたこと自体を思い出せない
・新しいことを記憶することは苦手 ・新しいことを記憶することは苦手
・度忘れが目立つ ・料理&家事などの段取りが分からなくなる
・ヒントで思い出せる ・ヒントがあっても思い出せない
・もの忘れを自覚している ・物忘れを自覚できない
・忘れていたことを別の機会に思い出す
・人格に大きな変化はない ・人格が変化する
・財布の置き場所を忘れ、家族に尋ねる ・財布がなくなると、誰かが盗ったと怒り出す
・人物や場所、時間が理解できる ・人物や場所、時間が理解できない
・久しぶりに会った人の名前を思い出せないが、その人のことは知っている ・子どもに「誰?」と聞く
・作話は見られない ・しばしば作話が見られる
・日常生活に支障はない ・日常生活に支障を来す
・来た道順は忘れたが、帰ることはできる ・自分の家がどこにあるか分からない


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【2】認知症の種類とその症状

 一般に認知症と呼ばれる疾病には一体どのような症状が見られるのでしょうか?
 認知症にはその型によって幾つかの種類に分けられます。本節では脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症などの種類によって異なる認知症の症状やその原因について、以下でなるべく詳しく紹介・解説しました。また、簡単ながら若年性認知症についても解説をしておきました。
認知症の症状

 認知症は脳の細胞が壊れてゆくことによって起こると考えられています。そして、その症状には大きく(A)脳障害そのものである「中核症状」と、(B)それに環境変化や身体の具合、介護者などの関わり方も関与する「周辺症状」とに分類されています。また、(B)の周辺症状には、幻覚や妄想(物取られ妄想が典型的)、抑鬱、意欲低下などの(イ)精神症状と、徘徊や興奮などの(ロ)行動異常とがあり、最近ではBPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれるようになっています。


■認知症の症状:(A)中核症状
記憶障害
 人間の脳には、眼や耳から得られた情報を取捨選択し、関心のあるものを一時的に保存しておく海馬と呼ばれる器官と、重要な情報を長期間保存するための菊の壺とも表わせる機能を持っています。記憶の壺に入れられた情報は長期間保存され、必要な時に必要な情報を取り出せるようになっています。しかしこの便利な機能も、加齢と共に海馬の機能が衰えてゆき、一度にたくさんの情報を掴まえておくことが難しくなってきます。また、掴まえたとしても記憶の壺に移すのに手間取ったりするようになります。逆に記憶の壺の中から必要な情報を取り出す作業もスムーズに行なわれにくくなります。これは、通常は加齢に伴うど忘れとして現われてきます。こうなっても一応は海馬が機能してはいるので、幾度かそれらの作業をしてゆくうちに、大事な情報は何とか記憶の壺に収まってくれます。ところが、これが認知症になると、海馬の機能が極端に衰えてしまうので、掴まえた情報を記憶の壺に収めることができなくなってしまうのです。こうして、新しく入ってきた情報を記憶できなくなり、さっき聞いたことが思い出せないといった状態になります。認知症がさらに進行すると、記憶の壺までが衰えてしまい、これまでに覚えていたはずの記憶まで消滅して行ってしまうのです。
見当識障害
 見当識障害とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することができなくなる状態を指しますが、これも認知症の初期から記憶障害と並行してよく現われる症状です。
 まず時間に関する感覚が薄らいでゆきます。時間の感覚が麻痺してくるので、予定に合わせた行動ができなくなるなどの現象が出現します。さらに認知症が進行すると、時間感覚だけでなく日付や年次まであやふやになり、今日は何日かと何度も聞くようになったり、服装に季節感がなくなったり、さらに自分の年齢が分からないなどといったことも起こってきます。こうして場所や方向に関する感覚が薄らいでくると、慣れているはずの場所に行くのにも迷子になるなどの症状が出てきます。初めは方向感覚が薄らいでも、周囲の景色等をヒントにして道を間違えないで歩くことができますが、夜間など暗くてヒントがなくなると迷子になってしまいます。これが進行すると、近所で迷子になったり、夜、自宅のお手洗いの場所が分からなくなったりします。或は距離感も鈍くなるのか、通常では到底歩いてゆけそうにない距離を歩いて出かけようとしたりします。一方、人に関する見当識は、認知症がかなり進んでから出てくる症状です。病状が進行し、記憶の壺まで衰えてしまうと、過去の記憶がなくなってしまうので、自分の年齢や周囲の人との関係が分からなくなります。80才の人が30才以降の記憶を失ったために、50才の娘に対して「姉さん」「叔母さん」などと呼んで家族を混乱させたり、過去に亡くなっている母親が心配しているからと遠く離れた故郷に歩いて帰ろうとしたりします。
理解&判断力の障害
 認知症になることで、ものを考えることにも障害が起こってきます。考える速度が遅くなったり、幾つもの情報を並行して処理することができなくなったりします。一度に処理できる情報の量が減ってしまうので、情報が重なると混乱してしまいます。また、些細な事柄やちょっと違う状況に対処できず、混乱するようになります。たとえばお葬式での行動に不自然さが目立ったり、突発的な出来事、夫の入院などで混乱してしまったりで認知症が発覚することがあります。こういった状況では、本人が混乱した時に補助してくれる人がいれば日常生活は継続できることが多いものです。また、観念的な事柄と現実的・具体的な事柄が結びつかなくなるので、たとえば「糖尿病だから食べ過ぎはいけない」ということは分かっているのに、目の前のケーキを食べてよいのかどうか判断できないということが起こります。これは正常人でも日常起こりうることですが、普通の人の「分かっているけど止められない」というのとは違い、そもそもその是非善悪の判断がつかなくなっているところにに大きな差異があるのです。さらに目に見えないメカニズムが理解できなくなるので、自動販売機や交通機関の自動改札などが上手く使えなくなります。
実行機能障害
 健康な人は頭の中で計画を立て、予想外の変化にも適切に按配してスムーズに進めることができますが、認知症になると、計画を立てたり按配をしたりすることができなくなり、日常生活が上手く進まなくなります。たとえばスーパーマーケットでニンジンを見て、健康な人ならば「自宅にはゴボウがあるので、きんぴらを作ろう」と考えますが、ところが認知症になると、自宅のゴボウのことはすっかり忘れて、ニンジンと一緒にゴボウも買ってしまいます。さらに夕食の準備ではそれらのこともすっかり忘れて、別の材料で全く別の総菜を作ったりします。後に残るのはニンジンと二つのゴボウです。こういうことが幾度となく起こり、冷蔵庫には同じ食材が並ぶことになります。認知症の人にとっては、ご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのはこのように至難の業なのです。
感情表現の変化
 認知症になると、その場の状況が読めなくなってきます。通常、自分の感情を表現した場合の周囲のリアクションは想像がつきます。私たちが育ってきた文化や環境、周囲の個性を学習して記憶しているからです。さらに、相手が知っている人なら、かなり確実に予測できます。しかし認知症の人は、記憶障害や見当識障害、理解・判断の障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができなくなっているので、時として周囲の人が予測しない思いがけない感情の反応を示すことがあります。

■認知症の症状:(B)周辺症状
抑鬱
 鬱状態は一般に認知症が高度になる以前に見られるのが普通です。認知症がはっきりする以前に鬱状態が先行して見られることもしばしば見受けられます。
幻覚&妄想
 認知症の初期に目立つことが多い症状です。妄想の主題は現実的なのが特徴で、妄想の対象は身の周りの人が多いという傾向があります。特に「物盗まれ妄想」は老年期に見られる典型的な妄想のタイプです。しかもこれは、認知症の老人が物の置き場所を忘れてしまったために被害妄想が生じるという単純な理由で、説明が可能というわけではありません。妄想対象に対する強い攻撃性が見られ、物が見つかっても自分の誤りを認めようとしません。「嫁が私の財布を隠した」などと言い張るのはそのよい例です。
譫妄
 譫妄は急性の脳障害に伴って起こる軽い意識障害で、判断力や理解力が低下し、しばしば幻覚や妄想が現われて興奮状態になります。健康そうに見えても潜在的な脳疾患があるような高齢者に生じやすく、認知症患者ではしばしば認められます。意識障害のために見当識や認知能力の低下が起こり、同様の症状が見られる痴呆との鑑別がしばしば問題となります。譫妄の症状は認知症と違い、時間単位或は分単位での急速な変化、日内変動を伴いやすいのが特徴です。特に夕方から夜間にかけ起こりやすく、しばしば異常な興奮状態を伴います。徘徊したり奇声を上げたりするなどのために介護する人にとって大きな負担になります。
暴言&暴力
 自分の中の感情をコントロールできないことによって起こる症状です。介助の時や行動を制限する時に現われる傾向があります。暴言や暴力、大きな声の威嚇などが具体的な症状になります。また、幻覚や妄想から起こる場合もあります。
徘徊&行方不明
 一般的に認知症が進行すると、徘徊が顕著になって、帰る道筋が分からなくて行方不明になることが増えてきます。これには譫妄が関係している可能性も考えられます。自分の住んでいる場所が自分の家であることが分からなくなり、生まれた家や転居前の居宅など以前住んでいた家が本当の住まいだと思って探し歩いたり、物を置いた場所を忘れたり、トイレの場所が分からなくて探して歩き回ったりします。一見すると無目的に歩き回っているように見えますが、その実、何らかの理由が存在することが多いと考えられます。
異食
 中度から高度の認知症に見られます。紙や土、さらには糞など食物ではないものを食べてしまうことがあります。脳の特定の部位の障害によって現われる手に触れる物は何でも口に入れてしまう傾向(口唇傾向)によると考えられます。異食の前段階においては、廊下や家の中を徘徊している途中で周辺に落ちているものを拾っては集める行為から、それを食べ物と誤認して口に入れる行為に繋がってゆくのではないかと考えられます。

脳血管性認知症

 脳血管性認知症は、脳の血管の病気、脳梗塞や脳出血を根本的な原因として起こるものです。簡単に言うと、脳血管疾患の後遺症です。詰まるか切れるかのどちらかが脳の血管の病気ですが、主として生活習慣病を原因とする動脈硬化が原因として起こることが多いです。原因はともかく、発症すれば酸素や栄養素が脳に行き渡らず脳の神経細胞は死んでしまったり回復不能なダメージを受けたりしてしまいます。その障害の場所がどこかによって認知症の症状はそれぞれ異なりますが、一般的には、その範囲が広ければ広いほど認知症の症状も重いものになります。なお、脳血管性認知症の場合、突然の脳血管障害をキッカケに急激に認知症が発症する場合と、小さな脳梗塞を繰り返して起こしているうちに徐々に認知障害が現われる場合とがあります。


脳血管性認知症の原因
 根本的原因は何であるかは別として、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こります。脳血管障害の危険因子として高血圧や動脈硬化、糖尿病、高脂血症などがあります。脳血管障害により脳の血流量や代謝量が減少し、その程度や範囲は認知症の軽重と関係します。

脳血管性認知症の特徴
 脳卒中を起こすと、破壊された脳の場所によって半身不随や言語が理解できないなど、認知症だけでなく様々な神経症状が併発されますが、この状態を「まだら痴呆」と呼びます。記憶・言語機能・視空間認知能力・人格・気分・認知に関する障害が認知症になると必ずと言ってよいほど現われますが、アルツハイマー型は症状の悪化が全般的に進むのに対し、脳血管性は全く正常な部分が比較的最後まで残っているのが特徴です。記憶障害は殆どの場合、最近の記憶に対して起こります。そして、記憶のハッキリしたところとそうでない部分とが見られます。この症状(まだら痴呆)は、脳血管性認知症に特徴的な症状です。また、アルツハイマー型認知症はいつ始まったのか分からないことが多く、ある程度症状が進んでから気づくことが多いものですが、これに対して脳血管性認知症は脳の血管障害の後に合併して始まることが多いので、いつから始まったのかが分かる場合も多いことが特徴と言えます。ちなみに脳卒中の症状が出てこない無症候性脳梗塞などの場合は、徐々に始まってきたとの印象を持つこともあります。そして、脳血管障害の進行に伴って認知症も進行するので、段階的に症状が悪化するのも特徴となります。なお、共通して現われる症状に徘徊がありますが、 アルツハイマー型では無目的な行き当たりばったりの行動であるのが特徴であるのに対して、脳血管性認知症では自分の場所に対する理解が多少はあるので、目的を持って徘徊するという特徴が見られます。

アツルハイマー型認知症


アルツハイマー型認知症の歴史
 アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は1906年にオーストリアの精神科医アロイス・アルツハイマー博士がドイツで行なわれた精神科地方会において症例報告を行ないましたが、その症例は、夫に対する嫉妬妄想・見当識障害にて発症し、その後に進行性の認知症を呈し、4年半の経過で亡くなった51歳の女性の脳が、他の疾患で死亡した人と比べ明らかに小さく、病理学的異常(老人斑)が目立ったという内容でした。その後の1912年にアルツハイマーの師匠であるクレペリンがその著書『精神医学教科書』の中で、その症例に対して弟子の名を取ってアルツハイマー病と命名したと言われています。

アルツハイマー型認知症の原因
 アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の減少や脳の萎縮、脳への老人斑・神経原線維変化の出現をその特徴とします。アルツハイマー型認知症は、βアミロイド蛋白と呼ばれる異常な蛋白質が脳全般に蓄積することで脳の神経細胞が変性・脱落してしまうことが原因とされており、そのために脳の萎縮が進行し、認知症を発症すると考えられています。CTやMRIといった画像診断では比較的早期から側頭葉内側部(海馬領域)の萎縮が目立ってくると言われています。進行すると脳全体の萎縮が顕著になります。しかしながら、未だにハッキリした原因は分かっていないというのが現状です。
 老年期の認知症はアルツハイマー型が最も多いとされています。従って、アルツハイマー病は特別な病気ではなく、年齢を重ねれば誰でも罹る可能性のある脳の老化に関係する病気であるとも言えます。なお、特殊な例ではありますが、家族性のアルツハイマー病も存在するようです。家族性のアルツハイマー病には色々な遺伝子が関与していると言われ、第1染色体、第14染色体、第19染色体、第21染色体上の遺伝子が原因として報告されています。また、非家族性のアルツハイマー病でApo E(アポ・イー)という物質に関する遺伝子異常が多いことが分かっています。なお、アルツハイマー型認知症の発症と進行は比較的緩やかに進行していきますが、しかし、時間の経過と共に確実に悪化してゆくのも事実です。多くの場合、物忘れといった記憶障害から始まり、時間や場所、人の見当がつかなくなるといった見当識障害が現われてきます。そして、この物忘れは、病気の進行と共に「最近のことを忘れる」状態から「昔のことを忘れる」というように変化し、次第に過去の記憶や経験などを失ってゆくのです。

アルツハイマー型認知症の特徴
 アルツハイマー型認知症の特徴は、大脳の後半部(側頭葉、頭頂葉、後頭葉)の萎縮が次第に進行してゆくことにあります。まず脳の側頭葉と呼ばれる部分の海馬の脳神経細胞が減るところから始まります。海馬は眼や耳から得られた情報を短期に記憶しておく場所ですが、その海馬が損傷を受けるので、病気の初期段階では「今さっきの記憶」が思い出せないといった症状として現われてきます。また、脳組織の変化としては、アミロイドと呼ばれる蛋白質の沈着(アミロイド斑もしくは老人斑という)と非常に溶けにくいタウ蛋白からできる神経原線維が出現します。年配者の場合ですと、アミロイドの沈着は認知症患者でなくてもしばしば見られます。アルツハイマー型認知症では比較的早期から側頭葉を中心に比較的強くこの沈着が認められるようになり、徐々に脳の後半部に高度の萎縮が見られるようになります。そして、こうした変化と共に、正常な神経細胞が徐々に脱落することで認知症障害の状態になっていくわけですが、このような経過を辿る神経組織の変性は実際に認知症の症状が現われるかなり前から始まっており、発病中の全期間の中頃から症状がハッキリしてくる極めて長い経過をとる進行性の病気です。
 アルツハイマー型認知症は、実際には70歳を過ぎてから症状が出るのが普通で、女性に多く(男女比はほぼ2:3)、認知症の症状が出てから死亡までの平均罹病期間は5年前後と言われています。いつから症状が出現したのかハッキリせず、その後は徐々に認知症が進み、最後は全身衰弱や肺炎などの感染症で死亡するといった経緯をたどることが殆どです。その間、歩行障害や筋肉が固くなる、失禁などの身体症状を伴うこともあります。そして、それと共に時間や場所を正しく認識する見当識が衰えてゆき、幻覚や妄想が現われたりします。しかし、本人はその認識がなく、無欲状態や鬱状態、もしくは多動、苛つき、不安、攻撃性などの精神症状をしばしば伴います。結果として、社会的行動と個人の習慣も次第に崩壊してゆくことになります。

アルツハイマー型認知症の経過
 アルツハイマー病の典型的な経過を以下に説明します。進行の速さはそれぞれの例で差が大きくありますし、一般にはより若くして発症した場合の方が進行が速く症状もはっきりしていると言われています。また、抑鬱や不安・焦燥、興奮、不穏、譫妄、幻覚・妄想など認知症の周辺症状を伴うかどうかでも違った経過をたどります。
  1. 初期:
     まず物忘れから始まることが多い。最初は初老期に現われる、単なる物忘れと区別がつけ難い程度だが、徐々にひどくなり、仕事や家庭生活でも支障を来すようになる。日常生活で慣れた行動(入浴や食事など)は自分でできるす、古い過去の記憶はかなり保たれてはいるものの、数日前の出来事や直前の出来事はすっかり忘れてしまう。また、物をどこに置いたか忘れてしまい、一日中探し回るなどといった行動をとる事もある。それと並行して意欲や自発性、積極性が低下して、世の中のことや周りのことに対する興味や関心が薄れてくることも特徴。場合によってはハッキリとした抑鬱気分が見られることもありし、逆に理由もない幸福な気分を伴うこともある。

  2. 中期:
     認知症の状態がさらに進行し、記憶障害が顕著になる。最近のことは殆ど覚えられなくなり、過去の記憶さえもかなりあやふやになる。簡単な日常会話の他は、買い物やお金の計算なども殆どできなくなる。また、日常のありふれた行為、たとえば電話をするなどができなくなったりする。時間感覚も衰え、月日や時間等が認識できなくなる。また、一人で外出すると迷子になって帰ってこれなくなってしまうということもよく起こる。

  3. 末期:
     アルツハイマー病の末期になると、殆ど言葉も出なくなって寝た切りになり、全体的な意識の低下が見られるようになる。また、周囲との交流も全くできなくなり、目的もなく徘徊し続けるといった状態になる。体力も低下し、軽い風邪が肺炎に移行するなど身体合併症で死亡に至ることも多い。

アルツハイマー型認知症の治療法
 大変残念ながら、現在のところアルツハイマー病の根治的治療法はありません。また、アルツハイマー病の確実な予防法も分かっていません。慣れ親しんだ環境の中で親しい人たちとの関係を保ち、生活の質を少しでも低下させないように周囲の援助が大切になります。アルツハイマー病に伴う興奮症状や不眠などがあれば、対症的に鎮静剤や睡眠薬を用いているというのが現状です。

アルツハイマー型認知症と気づいたら
 初期のアルツハイマー病は、老化による単なる物忘れとの区別がつきにくいものです。しかし、少しでもおかしいと感じるような出来事があった場合は、アルツハイマー病の専門医や保健所の老人相談を訪ねるようにして下さい。また、栄養や生活一般の点検、身体的な健康状態のチェックを日頃から心懸けることも大切です。
 もっともアルツハイマー病の中には、その進行が非常に遅いものや停止性のものもあり、軽度ないし中等度のまま長く家庭生活を過ごせるアルツハイマー病の老人もいます。しかしながら、アルツハイマー病の症状が非常に高度になると、家庭での療養は困難になり、施設や病院での看護が必要になるなど経済的にもその負担は非常に重いものとなります。なかなか難しいですが、アルツハイマー病を早期に見つけ、確実な手立てを整えることが、患者本人だけでなく周囲の家族の負担を軽減するためにも非常に重要だと言えます。

レビー小体型認知症

 レビー小体型認知症は老年期に認知症を呈する病気の一種で、脳の神経細胞が原因不明に減少する病態の認知症ではアルツハイマー型認知症に次いで多い病気です。男性により多く見られ、その割合は女性より約2倍前後だと言われます。レビー小体(Lewy Body)とは、元々は運動障害を主な症状とするパーキンソン病の脳の中の中脳と言われる部分に溜まった異常な構造物を指す言葉ですが、レビー小体型認知症の患者の脳ではこれが認知機能を司る大脳皮質にも広く見られることからこのように命名されたそうです。なお、これまでは、レビー小体はパーキンソン病に特徴的なものと考えられていましたが、最近ではパーキンソン症状のない患者でも見られることが分かってきました。


レビー小体型認知症の原因
 レビー小体型認知症の原因は加齢による脳の変性によるものと考えられています。脳神経細胞内にレビー小体と言われる蛋白質の塊が出来ます。レビー小体(Lewy Body)とは、元々は運動障害を主な症状とするパーキンソン病に罹患した脳の中脳と言われる部分に溜まった異常な構造物を指す言葉ですが、このレビー小体が大脳皮質の広範囲に出来ることでレビー小体型認知症となって現われるのだと考えられています。ただし、なぜこうした物質が出来るのかは今のところ十分に解明されてはいません。

レビー小体型認知症の症状
  1. 認知障害と精神症状
     レピー小体型認知症における認知機能障害はアルツハイマー型認知症とは多少異なる面が見られます。アルツハイマー型認知症では、初期症状として比較的間近な期間の記憶をとどめておくことが難しくなる物忘れの症状から始まることが多いのに対し、レピー小体型認知症では、物忘れ症状だけでなく、初期から幻覚や幻視が現われることが多いのが特徴です。幻視とは、「壁に虫が這っている」とか「子どもが枕許に座っている」など現実には存在しないものが現実のように見える症状です。さらに「布団が人の姿に見える」などの錯視の症状もしばしば見られます。これらの視覚性の認知障害は、周囲が暗くなると現れやすくなります。また、気分や態度の変動が大きいのも特徴で、穏やかな精神状態から無気力、興奮、錯乱といった気分の変動をを一日の中で短時間に繰り返したり、日中に惰眠を貪ったりすることもしばしば見られます。

  2. 運動機能障害
     レピー小体型認知症では、パーキンソン病の症状と似た歩行障害や身体の固さを伴う点も特徴です。この症状があるため、アルツハイマー型認知症の患者よりも転倒する危険が強く、寝た切り状態にもなりやすいと言えます。

  3. 自律神経障害
     レピー小体型認知症では自律神経障害も伴います。便秘や尿失禁などがよく見られる症状ですが、起立性低血圧等も見られ、日常生活の支障になることもあります。立ち眩みのように起立することで血圧の低下が起きる症状で、ひどくなると失神を起こすこともあり、この症状をキッカケとして歩行困難になる場合も見られます。

レビー小体型認知症の治療
 レビー小体型認知症の治療は抗精神薬による精神症状のコントロールと運動症状に対する抗パーキンソン病薬、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどが行なわれています。また、アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、試みられることもあります。なお、レビー小体型認知症により引き起こされる物忘れは、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きの低下が関与しているため、これを増加させる治療を行なうと物忘れの改善はかれる場合があり、従って早期に正確に診断することで治療効果が期待できる疾患とも言えます。

レビー小体型認知症 家族を支える会 -HOME-
http://www.dlbf.jp/

恐い!他人事ではない若年性認知症


認知症は高齢者だけの病気ではない!
 認知症は一般に高齢者の病気だと考えられていますが、しかしながら、実は働き盛りの年代でも認知症になることがあります。それも決して稀なケースではありません。それが若年性認知症で、18〜64歳で発症する認知症の総称をこう呼んでいます。若年性認知症も原因や症状は高齢者の場合と同じですが、頭部損傷などの事故による後遺症で認知症が発症することもあります。
 若年性認知症を発症したとしても、最初は「あれ、何だっけ?」といった一時的な物忘れから始まるケースが多いのですが、時間の経過と共に病状が進行すると、家族や同僚の名前を忘れてしまったり、自分の行き先が分からなくなってしまったりと言った症状が現われるようになり、仕事を続けることもできなくなってしまいます。また、行動障害としての徘徊なども症状に加わってきます。なお、若年性認知症の患者数は、厚労省によれば、患者数は推計で2万7千人から3万5千人はいるとされますが、現実にはその3倍以上に及ぶとも言われ、正確な実態は分かっていません。

若年性認知症の治療方法
 若年性認知症においても、残念ながら現状ではこれといった決定的な治療法があるわけではないので、従って、症状に応じて様々な治療法を行なうことになります。もっとも、若年性認知症だと診断されただけでも、そのショックは並大抵のものではないと思いますが、しかしながら、早期発見により症状の改善や回復の可能性もないわけではありません。また、アルツハイマー型の場合はリハビリを続けることが大事ですし、また、脳血管性の場合は規則正しい生活とバランスの取れた食事に気を付けることが大切です。何れにせよ若年性認知症は、早期に発見し医療機関に罹ることが非常に重要なことになります。専門医の指示を仰ぎ、少しでも病状の進行を遅らせるようにすることが、本人のみならず家族をはじめとする関係者の負担軽減にもつながることは間違いありません。

若年性アルツハイマー型認知症の症状と原因
  • 症状:
     若年性アルツハイマー型認知症と診断される6〜7年前から色々な初期症状が目立つようになることが多いと言われています。症状としては、初めは頭痛や目眩、不眠が現われます。また、不安感や自発性の低下、抑鬱状態もあります。この段階では本人も気づいていないことが多く、仕事でのストレスや通常の鬱病が原因だろうなどと間違えられやすいので注意が必要です。さらに病状が進行すると、自己中心性が増し、非常に頑固になったり、他人への配慮ができなくなったりといった症状が現われます。また、若年性アルツハイマー型認知症は、脳の萎縮スピードも早く(40歳代患者の場合、高齢者に比べ2倍以上のスピードで病気が進行します)、放っておくと症状がどんどん進行してしまいますので、早期発見と早期対策(治療)が非常に重要であり、それが患者のその後の生活維持にも大きく影響してきます。

  • 原因:
     一般的には高齢のお年寄りの病気だと考えられているアルツハイマー型認知症ですが、元々は若年性の病気で、これは、その年代には起こらない病変が脳に起きてしまう病気なのです。若年性アルツハイマー型認知症も通常言われている老人性アルツハイマー型認知症と原因は同じで、βアミロイド蛋白と呼ばれる異常な蛋白質が脳全般に蓄積することで脳の神経細胞が変性・脱落し、萎縮てしまうことが原因とされています。なお、未だに発生原因がよく分かっていない若年性アルツハイマー型認知症ですが、遺伝によるケースも見受けられるので、親族でアルツハイマー型認知症の患者がおられる方は注意が必要かも知れません。

若年性脳血管性認知症の症状と原因
  • 症状:
     「物忘れがひどくなった」とか「計算ができなくなった」などの症状が重要な判断ポイントになります。一部の脳の機能が低下してしまうために、あることは忘れたのに、あることは細かく覚えているといった「まだら痴呆」が現われるのも若年性脳血管性認知症の症状の特徴のひとつです。高血圧や脳卒中の経験がある人は特に注意が必要です。

  • 原因:
     この場合も通常の脳血管型認知症と同じで、脳梗塞による血管の詰まりや血流量の減少などにより脳細胞の働きが低下するために起こります。こちらの型は男性に多く見られます。

  • 予防方法:
     脳血管性認知症は、脳神経細胞の活動に不可欠な栄養素や酸素を運ぶ血管に障害を来すことにより、間接的に脳がダメージを受ける病気です。こうした血管の障害を予防するには、動脈硬化や高血圧といった循環器系の生活習慣病予防と同様、毎日の食事や運動、ストレス解消などに留意する一方、最近よく聞かれるようになった脳トレなどで脳への血流を積極的にサポートするように心懸ける方法が試みられます。
     脳が正常に活動するためには様々な栄養素(炭水化物や蛋白質、脂質、ビタミン・ミネラル)が必要不可欠でなのは当然のことですが、それら栄養を運んでくれる通路が血管です。従って、若いうちから循環器系の病気を予防する栄養素を意識して多く摂り、脳の活動をサポートしておくのは望ましい認知症予防の方法であると考えられます。また、その一方で、どんなに良質な栄養素を供給しても、使わなければ脳の活動は低下します(それは体の他の部分でも同じことです)。栄養素や酸素の補給といった基本的な毎日のメインテナンスに加え、脳に課題を与えたり毎日何らかのトレーニングを課することで脳に刺激を与えることも大切です。


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【3】認知症とその予防

 残念ながら認知症は完治する方法が見つかっていません。しかしながら早期発見することで進行を遅らせることは可能です。さらに認知症に罹らないように日頃から気をつけることも大切です。
 本節では、認知症の予防法について取り上げ、以下でその幾つかの方法を紹介・解説しました。
認知症の予防
転ばぬ先の認知症予防

 認知症は一度発症してしまうと、現在の所元のように戻ることはありません。現状維持ができればよい方で、できるだけ病状の進行を遅らせるだけが精一杯という場合も多いと言われます。何れにせよ、本人のみならず、家族や親族にのしかかる認知症の治療や医薬品にかかる負担には重いものがあります。そこで、発症したら治らないとあれば、発症する前に何とか予防しようという考えが出てくるのも当然です。
 ちなみに、脳の老化の進み具合は個人差が大変に大きく、また、日頃の生活習慣や食生活などの要因も強く関係していると言われています。「認知症は広い意味で生活習慣病」と言われることもあるようですが、まさに的を射た言葉と言えるでしょう。

 アルツハイマー型認知症の危険因子として頭部外傷の既往がまず第一に挙げられます。頭部外傷と言っても、脳震盪のように脳の組織に特に損傷を与えないもの、また、脳挫傷といい脳組織に損傷を与えるものもあります。また、臨床的には意識消失のあった場合と無かった場合などその重症度には様々な差があります。なお、ボクシングの選手に起こる拳闘家認知症(パンチドランカー)です。これは反復して頭部に外傷を受けたためにボクサーに出現する認知症のことですが、この言葉は頭部外傷と認知症の関連を的確に表している病名と言えます。ちなみに、アルツハイマー型認知症の脳の変化として老人斑及びアルツハイマー原線維変化というものが出現しますが、これがアルツハイマー型認知症の診断基準となっています。ボクサー、特にノックアウトが多かったボクサーの例では、若年にも拘らずこれらアルツハイマー型認知症と同じ変化が出現することが確認されています。
 なお、転倒を避ける方法はありませんが、日頃から運動を心懸け、身体を身軽に動かせるようにしておくことが認知症の予防に役立ちます。つまり、転倒しても頭部を打たないように身を交わすなど機敏に反応できるようになるからです。また、家庭内はバリアフリーにし、階段には滑り止めや手摺りを取り付けるなどの工夫をする、躓かないように薄暗いところに照明を点けるなどが必要です。
認知症への別れ道〜日頃のちょっとした事柄が認知症の予防に〜

 日常の生活習慣生が認知症の発症に影響しているのは確かなことなのですが、同じような生活習慣を送っていても、認知症になる人とならない人に分かれます。何故そうなるのか、どのようにしたら認知症にならず、少しでも老化を遅らせて健康的な生活を送ることができるのか。脳の衰えを防いで、認知症を予防することは、急速に進行する超高齢化時代を生きぬくのに重要な課題と言えるでしょう。

 認知症を予防すると言っても、日常の生活の中でごくごく些細な事項に注意を向けることが重要です。何も大掛かりなトレーニングマシンを使ったりといった大袈裟なものではなく、日常の中のほんの些細な事柄に注意するだけで認知症の予防に繋がるのです。もっとも、日常生活に十分すぎるほど注意したからと言っても、絶対に認知症にならないと断言できるものでもありませんが、しかし、その確率は蹴らすことができるというのも事実のようです。


参考:認知症予防のための日頃からの心懸け
  • 適度な運動で足腰を鍛える
  • 短い昼寝をする
  • 食事に気をつける
  • 抗酸化物質を摂る
  • 塩分は控えめに
  • コレステロールを摂りすぎない
  • 家族の中で役割を持つ
  • 会話をし、大いに笑う
  • 脳を鍛える趣味を持つ
  • 日常生活を習慣づける
  • 耳の老化を防ぐ

運動で認知症予防

 極端な運動不足は体の活動能力を低下させ、ひいては脳の活動をも低下させてしまいます。しかし、適度な運動は認知症予防に繋がってゆきます。
 運動と言えば、まず歩くことです。歩くことは何でもないように見えますが、現実には脳の様々な場所の機能を使うので、歩くことによって脳の色々な領域が刺激されて、脳の代謝と循環が活発になります。また、筋力の低下も抑えることができます。日常生活動作の障害と知的機能の低下との間には密接な関係があります。歩くことができなくなると知的機能が低下し、知的機能が低下すると運動機能が低下するといった悪循環に陥ってしまうのです。歳を取ったからと歩くのを億劫がらず、積極的に身体を動かして寝た切りにならないように気をつけることが認知消予防には大切です。正しい姿勢で、転ばないように注意しながら、マイペースで無理せず歩くのがよいでしょう。また、手をよく使うことも大切です。手を使って作業をすることは、複雑な巧緻運動をすることになりますが、これは脳の機能を活発にするためにも重要です。楽器を奏でるとか絵を描く、パソコンのキーボードを打つなどは手を使うと共に思考能力を使うことにもなため、認知症予防のために一層効果的です。


注意:無理な運動は禁物
 運動が認知症の予防に欠かせない要素であることは間違いないことで、これは年齢には関わりなく、寝た切りを防止する上でも身体を動かすことは非常に大事なことです。もっとも運動が身体によいからと言って、高齢になればなるほど敷居の高いもの、敬遠しがちなものになります。歳を取るにつれて筋力も気力も衰えてくるし、疲労も溜まりやすく、その回復にも時間がかかるようになります。さらに運動に対するイメージも「苦しいもの」「耐えるもの」などのネガティブな方向に傾きがちで、「楽しい」「気持ちがよい」などというポジティブな発想は中々出て来ないものです。も、運動が必ずしも苦しいものや耐えなければならないものなど激しいものであるとは限りません。特に高齢者の場合は、激しい運動などは望むべくもないもので、そんなことをしたら却って健康を害してしまいます。すなわちここで言う運動とは、ウォーキングやストレッチなど簡単な運動でよいので、当然ながらのんびりとした散歩も運動のうちに入ります。要するにここで重要なのは、一時的に激しい運動をすることではなく、無理のない範囲の軽い運動を継続的に行なうことを心懸けることであるのです。出来もしないような高い目標を設定して運動に置き換えてしまうと長く続けてゆくことは中々難しいことですが、そうではなくて、自分で許容できる範囲の運動をのんびりと継続的に続けてゆくよう日頃から心懸けましょう。

食事で認知症予防

 脳血管性認知症はそのベースに動脈硬化があり、脳の血管の病気は適切な対処でその進行を止めることが可能です。つまり、動脈硬化を防ぐ食事を中心とした生活習慣を心懸けることで認知症の予防につながってゆきます。そんな訳で、食事は塩分と動物性脂肪を控え、バランスの取れたメニューを心懸けましょう。
 食塩摂取は1日10グラム以下がよいと言われています。高血圧の人は6グラムを目標に、また、蛋白尿が出ている人は6グラム以下にします。味噌汁(※1杯で食塩2グラム程度)などは薄味で、醤油や味付けの食塩なども極力抑えるようにすれば、ほぼ1日10グラム程度にできるでしょう。その他、漬け物や佃煮など塩味の濃い食品の摂りすぎにも気をつけるようにしましょう。また、食事中のコレステロールは極力減らし、脂肪は1日20〜30グラムに制限し、動物性脂肪を減らし、リノール酸を多く含む植物性脂肪を多く摂ることを心懸けて下さい。また、脂肪のみならず糖質も併せて制限する必要があります。ちなみに、1日の総摂取カロリーは1,500〜1,800キロカロリーが目安となります。高齢者も老化に打ち勝つ活動力を維持するためには、良質の蛋白質を多く摂るべきです。もちろん食物繊維やビタミン・ミネラル類の摂取にも心懸けなくてはいけませんが、そのためには野菜及び海藻類を摂りましょう。何れにしても食塩や動物性脂肪は少なくして、バランスの取れた食事するように日頃から心懸けるようにして下さい。


◆脳の健康に必要な栄養素
 健康な血管をサポートする食事には、(A)コレステロールの摂り過ぎを抑える、(B)高血圧を予防するために減塩食を基本とする、(C)血管の細胞を傷つける活性酸素を消去する食品を摂取する、といった3つの要素が必要になります。これらの要素を充足させるために、下の表に挙げた食品類をできるだけ多く摂るように心懸けるとよいでしょう。(※なお、脂っこいこってりとしたメニューや塩辛い食事の摂り過ぎは血管の老化を促し、高血圧を助長するため、毎日の食事がコレステロールや塩分の摂り過ぎに傾いていないかどうか日頃から注意することも大切です。)
食品名 概要
野菜類  ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜は細胞の老化を予防する。
海藻類  繊維質が豊富な海藻類はコレステロールの吸収を抑える。
キノコ類  腸内のコレステロールの吸収を抑える。
玄米&胚芽米  ビタミンEが体内で発生する活性酸素を減少さる。
青魚  サバやイワシなど青魚に含まれる多価不飽和脂肪酸(DHAやEPA)は悪玉コレステロールを少なくし、認知症予防にも役立つと考えられる。
フルーツジュース  ポリフェノールがアルツハイマー予防に役立つと言われている。

◆認知症の予防によい食物
食品 有効成分 概要
コリン  脳の記憶形成を助ける。血管を拡張し、血圧を下げる。
レバー ビタミンB12  脳の働きに関与。記憶力・集中力を高める。
背の青い魚 DHA  神経細胞を修復し活性化。血流をよくし、血管障害を予防。
ナッツ類 ビタミンE  細胞を破壊する過酸化脂質を抑え、動脈硬化やシミも防ぐ。
大豆製品 レシチン  血管壁に付着したコレステロールを溶かして動脈硬化などを防ぐ。
納豆 ナットウキナーゼ  血栓を溶かす作用がある。動脈硬化の予防や改善に効果。
コーヒー トリゴネリン  脳の神経細胞を活性化し、学習能力や記憶力を高める。
長ネギ リン脂質  脳の神経細胞を守っている細胞膜の主要な構成要素。
タマネギ ケルセチン  血液をサラサラにして、血管壁や毛細血管を強くする。
焼きニンニク メラノイジン  抗酸化作用で脂質の酸化を防いだり、コレステロール値を下げる、血糖値を正常に保つなどの効果。
ゴマ ビタミンE、B12  脳内の血管を丈夫にして血圧を安定させ、血流を改善し、新陳代謝も活発にする。
シイタケ エリタデニン  血液中におけるコレステロール量を調整する効果。
フィトステリル  コレステロール値や血圧を下げる。 総合的に働いて認知症を防ぐ。

◆参考:認知症予防のサプリメント
 脳の老化対策やボケ防止などに効果が期待されるサプリメントで有名なものには、ギャバ(GABA)やEPA&DHA、イチョウ葉エキス、ホスファチジルセリン(PS)、核酸、シソ、ビタミンB群、乳清タンパク、ヤマブシダケ、レシチン、卵黄油、ローズマリー、ガングリオシド、ヤマブシタケ等が挙げられます。
サプリメント名 概要
ギャバ(GABA)  頭脳労働や気分のリラックスに深く関わるギャバ(ガンマ・アミノ酪)。発芽玄米などに多く含まれる健康成分が手軽に摂取できる。
ドコサヘキサエン酸(DHA)  強い抗酸化物質。すっきり冴えた毎日を過ごしたい人や生活習慣やストレスが気になる人にオススメ。魚嫌いの人もサプリメントで手軽にDHAが補うことができる。
エイコサペンタエン酸(EPA)  中性脂肪の低下やコレステロールの低下、血小板凝集抑制作用、血液粘度の低下、血圧低下などに対する有用成分で、我々の身体を心臓病や脳卒中から守ってくれる成分。
ホスファチジルセリン(PS)  フォスファチジルセリンはリン脂質の一種で、大豆などから抽出される。デスクワークの多い人や物忘れが気になる人に有用な成分。
イチョウ葉エキス  イチョウ葉エキスには抗酸化物質であるフラボノイドやギンコライドが多く含まれている。サラサラでスムーズな血液の流れをサポートしてくれる成分。
ガングリオシド  ガングリオシドとはシアル酸残基を含むスフィンゴ糖脂質の総称を言い、高等動物の細胞壁の成分で脳及び神経組織に多く含まれている。細胞の分化や増殖、或は接着の調節及び制御、代謝などあらゆる細胞の調節に関わっていると考えられている。
ヤマブシタケ  神経細胞成長因子ヘリセノンが含まれている。特に海馬での効果が顕著。


参考:よく噛むことが大切
 食事の時、何回ぐらい食べ物を噛んでいるでしょうか? 堅いものや柔らかいものなど食べ物によっても様々なので一概には言えないかも知れませんが、よく言われるのは「30回噛む」です。
 噛むことは脳に刺激を与え、記憶の中枢である海馬を活性化させてくれます。従って、堅めの食べ物を意識的によく噛んで食べることを日頃から心懸けることで認知症の予防に貢献するものと思われます。 なお、高齢になると、その「よく噛む」前提となる歯が残っていないということもあるでしょう。自分の歯でないと十分に噛むことが出来にくくなりますが、そうなると、噛むのが辛いので柔らかいものばかり食べることになり、栄養バランスにも影響が出てしまいます。そのような状態にならないためにも、いつまでも歯を大事にすることが認知症予防には効果的です。

好奇心で認知症予防

 アルツハイマー型や脳血管性の認知症でなくとも、注意力の低下によって認知症が出現することがあります。あまりにも刺激のない単調な生活を続けていると、脳への刺激が減り、神経細胞も神経細胞のネットワークも衰えるばかりです。非活動的な生活は脳にも影響し、月日や曜日など時間の感覚が曖昧になり、何か聞かれても直ぐには答えられず、認知症と間違えられることもあります。
 興味というのは「楽しい」「面白い」という感情がその背景にあります。好奇心の強い人には、「未知の事柄を知りたい」「探りたい」という意欲があります。また、興味も好奇心も積極的な前向きの意欲を必要とします。従って、自分のライフスタイルに興味と好奇心を持っていることは認知症予防に繋がると言ってよいのです。そんな訳で、趣味やボランティア活動、或は社会活動に積極的に参加することは、脳の活性化に繋がり、認知症予防に大切な役割を果たすことになります。
ペットと共に認知症予防

 ペットを飼うと認知症の予防に役立つと言われています。
 最近はペットブームだそう、単にペットという範囲を超えて、家族の一員としての存在にまでなっています。ペットにかける費用は糸目をつけないなどの溺愛もそこら中に溢れています。また、ペットを中心として人と人との絆が深まることも少なくありません。始めはただ可愛いからと飼い始めたものが、時間がたつにつれて愛情が湧いてきて、一緒にいるだけで心が穏やかな気持ちになったりしてくるから不思議なものです。この感情は、脳の中にあるミラーニューロンという神経細胞の働きによるところが大きいと言われています。ペット自身が心ないし感情を持つかどうかは別として、飼い主である人間には心が存在します。この心の原型がミラーニューロンと言われるものです。この神経細胞は脳の前頭葉にあり、相手の身振り手振りを物真似するように働きます。ミラーニューロンで相手の動作を真似ることにより、相手の気持ちや行動を予測することができます。これが心の原型であると言われているのです。人はこのミラーニューロンによって心を発達させてきたといっても過言ではありません。人間はペットを見た時、そのペットの仕草をミラーニューロンと以前からの記憶によって照合させて、ペット自体に心があるように感じているのです。そういった意味ではペットでなくぬいぐるみでもよいとも言えますが、自発性を持って活動するという点では本物のペットの方が遙かに優れています。その証拠と言っては何ですが、たとえば飼い猫の背中を撫でるだけで、高齢者のストレスが改善されたという例もあるそうです。犬や猫を飼うと、特に犬の場合は散歩に連れて行かなければなりませんので、体力の低下を防ぐ意味でも役立ちますし、また、同じ犬を飼っている人との交流も生まれてくるでしょう。何れにしろ、飼い主とペットとの心の交流が生活に対する充実感を生み、認知症の予防に役立つのではないでしょうか。


参考:ペットとの触れ合いがもたらす人の心身への効果
  • ペットは高血圧患者のストレスを軽減する
  • ペットを飼っている人は心臓病になりにくい
  • 子どもはペットと遊ぶことから思いやりの心を養う
  • お年寄りの健康に良い結果をもたらす

参考:回想法で眠った記憶を呼び覚ます

 回想法には、専門家などによって行なわれる「ライフレビューセラピー」と一般的な「レミニッセンス」とがあります。本項では、家庭で手軽にできるごく簡単な回想法を紹介します。
眠っていた記憶を呼び覚ます「回想法」

 回想法は認知症ケアの手法の一つで、過去の懐かしい思い出を語り合ったり誰かに話したりすることで心の核となる部分を再発見することができると言われています。自分の存在の意味や人生の歴史を見つめ直し、改めて自尊心を持てるようにもなるそうです。回想法を提唱したのはアメリカの精神科医ロバート・バトラー氏で、1960年代に「過去の経験を振り返り、問題をよく考えれば、解決の方向性を見出すことができる」と主張したのが始まりです。それまでは、過去を振り返る行為は現実逃避的であり、治療の妨げになるという考え方が一般的だったのですが、、実際に効果があることが分かり、回想法は高齢者向けの心理療法として広く知られるようになりました。ただし、重度の認知症を患っている人や過去の記憶によって傷ついている人などの場合、残念ながら回想法は適しません。その方の状態や過去によく配慮した上でチャレンジしてみましょう。
回想法その1) 歴史をネタにする

 関東大震災や226六事件、終戦など歴史上の大事件をネタに会話を試みるのもよいでしょう。スムーズに会話を展開するために予め勉強をしておくとよりよいでしょう。前後に起こった事件や首相の名前、当時その人が何歳だったのかなどを事前に頭に入れておきます。また、地域の風土記などを読んでおくのもよいかも知れません。「昭和○○年に川が大氾濫した」とか、「大正○年に公会堂が出来た」などという話題もそのお年寄りの記憶力を刺激することに繋がる可能性があります。
回想法その2) 道具をネタにする

 古道具屋さんで見つけた土瓶や簪、昔懐かしい駄菓子などを買ってきたりして、「ほら、こんなの買ってきちゃった」と見せてあげたら、昔話に花が咲くかも知れません。女性なら台所用品、男性なら玩具などもよいでしょう。「どうやって使うの?」などと尋ね、実演付きで教えてもらうと場が盛り上がります。
回想法その3) 映画や音楽をネタにする

 懐メロCD集あたりはどうでしょうか。聞き覚えのあるメロディに、当時の世相や風俗などが生き生きと甦る可能性も大きいと思います。ついでに、「どんな人が歌っていたの?」とか「歌詞の中に出てくる○○って何?、「当時の銀座ってどんな街だったの?」など、さらに突っ込んで尋ねてみましょう。それ以外では、銀幕の名優たちが登場する昔の映画もよいでしょう。
レミニッセンス・ブック(人生の回想録)を作ってみよう



 お年寄りの自分史を作ってみるのもよいでしょう。子どもの頃に住んでいた家やよく遊んだ友だち、尋常小学校時代の先生、得意だった科目、初恋の人と言った具合に記憶を掘り起こしていくうちに、とうに忘れていたことが甦ってくるかも知れません。これに写真や関連のある絵などを入れるとさらに充実した作品になります。
ノートを使って記憶を思い出そう
参考:「天声人語」専用ノートが人気〜書き写して「認知症予防」や「お受験対策」に〜

 朝日新聞のコラム「天声人語」を書き写すための専用ノートが人気だそうです。書き写しを実践する人が多いことを受けて企画されたもので、2011年4月末から全国の朝日新聞販売所(ASA)を中心に販売されています。ノートはA4判で1冊210円。新聞から切り抜いた天声人語をノートにスクラップし、その下のマス目に内容を書き写すもので、マス目は天声人語と全く同じ字数・行数になっています。
学校や企業が100冊単位で購入も

 天声人語は朝日新聞の1面に毎日掲載されているコラムで、大学などの入学試験に出題されることも多いことでよく知られています。ノートの説明には、「毎日続けると、世の中のいろいろなできごとがわかります。知っている言葉がどんどん増えて、文章の構成力やリズムも身につきます」と書き写しの効果が書かれています。事実、天声人語はぴったり602文字のため、これを手書きで丁寧に書き写すとなれば、1日当たり30分ほど時間がかかり、ノート1冊で1か月続けるとなればそれなりの集中力が求められます。
 発売後、予想を遙かに上回る勢いで売れているそうで、親子など家族で競い合って写したり、学校や企業などが授業や研修のためにまとめて100冊単位で購入したりするケースも多いとのことです。購入層は小学生〜大学生、母親世代、シニア層が中心で、学生は国語の学習や小論文対策、就職活動などのため、母親世代は子どもの勉強のため、シニア層は老化防止や日課のひとつとして実践している人が多いそうです。
認知症予防のために17年続けている男性も

 朝日新聞社では2010年に教育事業センターを発足し、その業務上で教育関係者から天声人語の書き写しを実践している人が多いことをよく耳にしたと言います。中には認知症予防のため日課として「天声人語」を17年間書き写し続けている高齢の男性もいるそうで、この人のノートは既に93冊目だと言います。このように殆どの人が市販の大学ノートを利用していたこともあり、「専用のノートがあれば喜ばれるのではないかと言うことで今回「天声人語」専用ノートの作成に至ったそうです。なお、書き写しノートは朝日新聞販売所だけでなく、昨年の5月中旬からは東急ハンズ池袋店でも機能付ノートなどと並んで販売が開始され、6月中旬からは名古屋店でも販売されています。東急ハンズによると、発売から10日で60冊が年配者を中心に売れたと言います。
参考:認知症の治療薬

 以下で紹介する薬剤は医師の処方に従って服用するものですが、患者本人のみならず、その介護に当たっている方を含め、処方される側の知識として薬剤の名称や大まかな薬効及び副作用などを知っておくことは決して損になならないでしょう。
認知症における薬物治療の意義

 残念ながら現在でも認知症は完全に治癒させることはできません。現在の治療は、認知症を治すのではなく、残っている健常な機能を維持しながら認知症状の進行をできるだけ抑えることを目的として行なわれています。しかし、近年はアルツハイマー型認知症の治療薬(シンメトレル)が登場するなどして、治療内容と効果は格段に向上しました。それに伴い、認知症のタイプによっては薬物療法を治療の中心とするケースも増えてきています。なお、薬物療法が行なわれ一方で、従来から行なわれてきた運動や食事の指導といった非薬物療法が効果的であることも分かっています。このように、認知症の治療は、薬物療法と非薬物療法を上手く組み合わせながら維持できるようにサポートしてゆくことが治療成績を上げる事につながってゆくのではないでしょうか。
 何れにせよ、アルツハイマー病をはじめ認知症に対するよりよい治療薬が製品化できれば経済的効果も非常に大きいため、製薬会社をはじめとする企業を巻き込んだ研究開発が非常に活発に行なわれていることを考えると、認知症の治療薬も次々と革新的な著効を持つものが今後現われてくることも期待されます。


参考:貼る認知症治療薬が承認へ
 最近、身体に貼るタイプの認知症治療薬が国内で初めて承認されることになったというニュースがありました。なお、これまでのアルツハイマー型認知症治療薬アリセプトに加えて、昨秋以降、メマンチン(第一三共、商品名:メマリー)、ガランタミン(ヤンセンファーマ、商品名:レミニール」)が相次いで承認され、認知症治療薬の選択肢が広がりつつあるのは頼もしい限りです。
 今回、厚労省の薬事・食品衛生審議会が承認したのは、イクセロンパッチ(ノバルティスファーマ)とリバスタッチパッチ(小野薬品工業)の2種類です。何れも薬効成分はほぼ同じで、アルツハイマー型認知症の治療薬としては国内で4品目目となります。これは、今までの飲む薬ではなく、パッチという名の通り患者の背中や腕、胸などに貼って使用するもので、有効成分が体内に浸透し、脳内の伝達物質の分解を防ぐ効果があり、アルツハイマー型認知症の症状を抑えることができると言います(なお、同種の薬は世界81カ国で既に承認されているとのことです)。薬が飲み込めない患者や食事はもとより薬を飲むこと自体を嫌がる患者が多い中、このような形態の薬が利用できるようになるということは、日頃から認知症患者の介護に携わっている人には朗報だではないでしょうか。少しでも負担の軽減に繋がることが期待されます。

認知症の治療薬〜脳循環改善薬と脳代謝改善薬〜

 認知症はその発症原因は様々で、一説には70種類以上あるのではと言われています。認知症は未だに根本的な治療法は確立しておらず、薬物治療といっても対症療法的にならざるを得ないのが現状です。

認知症の薬(アリセプト) 認知症の治療薬を大きく分類すると、(A)脳循環改善薬(B)脳代謝改善薬とに分けられます。両者では似たような名前ですが、その差異は、(A)脳循環改善薬は軽い認知症や脳血管性認知症に対して血流改善を目的に使用される薬で、(B)脳代謝改善薬は脳を働かせたり神経伝達物質を調整したりするのを目的に使用される薬です。なお、これらの薬剤は必ずしも認知症専門の治療薬というわけではなく、通常、脳卒中(脳梗塞)の後遺症の改善に使用される薬剤です。認知症の場合、これらの薬剤を使用することにより、意欲の低下や鬱状態、不安感などが改善される場合があります。


■脳代謝改善薬を兼ねる主な脳循環改善薬
名称 主な作用 副作用など
セロクラール 脳の血液の循環をよくして脳細胞の代謝を改善し、脳の働きが低下している状態を改善する作用がある。また、脳の末梢血管内で血液が凝固するのを防ぎ、血液の流れを確保する作用もある。これらの作用によって、脳出血や脳梗塞の後遺症としての眩暈や頭痛、抑鬱、不安、苛立ちなどの症状を改善する。 口や喉の渇き、吐き気、発疹などの過敏症状が起こることがある。また、頭痛や眠気、動悸を感じたり、のぼせなどが起こることがある。
ケタス 内服は気管支喘息に用いると気管支の過敏な反応を和らげ、気道の収縮を抑える作用がある。また、脳の血液の循環をよくして脳の機能を改善するので、脳梗塞の後遺症や脳の動脈硬化による頭痛・意欲低下などの症状に用いる。点眼液は眼のアレルギー症状を抑え、花粉症やアレルギー性結膜炎の症状を改善する。 内服ではむかつきや下痢などの胃腸症状、動悸、立ち眩み、発疹などが、また血小板減少や肝機能障害が起こることがある。点眼液では眼が滲みる、痒み、痛み、結膜の充血、眼瞼の浮腫、発赤、異物感などがある。
サアミオン 脳の血液量を増すなどして脳細胞の代謝を改善し、脳の働きが低下している状態を改善する作用がある。また、脳の末梢血管内で血液が凝固するのを防ぎ、血液の流れを確保する作用もある。脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下の改善に用いられる。 食欲不振や下痢、便秘などの胃腸症状や、目眩や立ち眩みなどが起こることがある。

アルツハイマー型認知症の治療薬


■アルツハイマー型認知症の治療薬
 アルツハイマー型認知症にはアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑える作用のある塩酸ドネペジル(アリセプト)を用います。これによってアセチルコリンを長く脳内に残すことができるようになり、アルツハイマー型認知症の症状の改善が期待できます。
名称 主な作用 副作用など
アリセプト 脳内のアセチルコリン分解酵素に選択的に働き、その作用を阻害,脳内のアセチルコリンの量を増すことで、記憶障害などアルツハイマー型認知症の症状の改善に効果を示す。ただし、病気そのものを根治する作用はなく、症状の改善及び進行の抑制を期待して使われる薬で、アルツハイマー型認知症が適応となる。 血中のアセチルコリンの量が増えるために不整脈や消化性潰瘍、気管支喘息を増悪させるので、そのような病気を持つ患者には用いない。また、吐き気や嘔吐、ヨダレ、発汗、急性膵炎、心不全、急性腎不全、肝炎及び肝障害、低血圧、手の震えや運動障害などの錐体外路障害、時には悪性症候群が現われることがある。なお、アスピリンやその他の非ステロイド性消炎鎮痛薬と言われるものは、アセチルコリン系の作用を増強して胃酸の分泌を高め、潰瘍を増悪させる副作用を起こしやすいので、一緒に使わない。その他、胃腸の病気でよく使われる抗コリン系の薬も、この薬の効果を相殺するので、併用に注意が必要になる。逆にコリン系の薬との併用でこの薬の作用が増強され、副作用を来す恐れがある。時に横紋筋融解症から腎不全に至ることもある。腎機能が悪い人は注意が必要。

その他の認知症の治療に使われる治療薬


精神病治療薬
 睡眠薬や抗鬱薬、抗不安薬、抗精神薬を用いることもあります。老人の鬱状態にはSSRIやSNRIが効果を発揮しているようです。

認知症で使用される抗鬱剤
 デプロメール、ルボックス、パキシル、トレドミン、テトラミド、ルジオミール、テシプール、デジレル、レスリン

認知症で使用される睡眠薬
 ベンザリン、ネルボン、サイレース、エバミール、ロラメット、?ユーロジン、ハルシオン、ダルメート、ベノジール、インスミン、ソメニン、リスミー、レンドルミン

認知症で使用される抗不安薬
 セレナーレ、レスミット、メレックス、ソラナックス、コンスタン、レキソタン、ワイパックス、メイラックス、リーゼ、デパス、アタラックスP、セディール

認知症で使用される抗不安薬
 リスパダール、ルーラル、セロクエル、ジプレキサ、セレネース、ハロステン、レモナミン、グマチール、ミラドール、グラマリール


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【4】認知症の介護

 認知症患者を抱えた家族は大変な思いをします。
 本節では、認知症患者の介護法について取り上げ解説しました。
認知症の方と接する原則



 認知症の人は実は記憶が失われてゆくことを理解していますので、自分が誰だか分からなくなくなることがとても不安なのです。また、認知症の人の行動にもそれなりの意味があります。そのため、私たちの感覚で否定せず、受け入れることが大切になります。
認知症の介護


認知症の人に対応するときの原則
  • 認知症の人のペースに合わせましょう
  • 受容と理解のある態度が大切です
  • 全てが上手く行っていることを話し、安心させましょう
  • よい点を認めましょう
  • 間違いであっても受け入れ、怒らないようにしましょう
  • 納得できるように話しましょう
  • 非言語的なコミュニケーション(例:手を軽く撫でる、背中を擦るなど)も大切です
  • 一人で放置しないようにしましょう
  • 絶えずよい刺激を与えて廃用症候群を予防しましょう
  • 今を大切に生きる人として接しましょう
参考:廃用症候群とは?
 健康な人であっても、筋肉などは使わなければ萎縮し、関節は拘縮してしまいますが、高齢者や寝た切り、或は安静などによって筋力や臓器などに退行性変化が生じることを廃用症候群と言います。具体的な状態を挙げれば、関節拘縮や筋委縮、床ずれ(褥瘡)、骨粗鬆症、起立性低血圧、便秘、尿失禁、肺炎、認知機能の低下などなどがあります。特に認知症と診断されている高齢者で、外に出たがらず、歩くことが減ってきた場合や、刺激の少ないない生活を送っているとか、ずっと座ったままで過ごしている場合、一日中臥床がちの場合などでは廃用症候群が生じやすくなると言えます。従って、散歩などでなるべく歩くこと、できることは自分で行なってもらい、よく動くこと、座っていても下肢の上げ下ろしなどの筋力トレーニングなどを行なうこと、他者と接して日常の会話を楽しんだり脳に刺激を与えることなどが大切になります。

家庭介護のアドバイス〜主な対応と工夫〜
主な対応と工夫


記憶障害への対応
  • 刺激のある一日の生活を工夫する

  • 記憶しておくことへの工夫をする
     たとえば大きなカレンダーを目に触れるところに貼り、日にち曜日など確認しやすくします。また、予定などを書き込むようにし、一緒に折に触れ確認するとよいでしょう。季節感のある話題の会話をする、記憶ノートを活用するなども対策として有効です。
固執への対応
  • 忍耐をもって接しましょう

見当識障害による不安への対応
  • 受容と共感的態度で接する
     受容していることを表現するために相槌を打ったり、頷いたり、言葉を繰り返しながら本人の話しを聴きましょう。感情を正確に把握して、たとえば「今○○だから怒っているのね」「心配なのね」といった具合に言葉で返します。

  • 怒ったり叱責したりしない

  • 穏やかだが、刺激のある生活を支援する。楽しく、人と接するような環境、役割をもてる環境を作る

  • 心地よい生活空間を工夫する

幻覚・妄想への対応
 置き忘れを「無くした」でなく「盗られた」と表現することがあります。また、嫉妬妄想と言って妻の不貞を信じ、攻撃することもあります。なお、いじめられ妄想とも言いますが、たとえば「嫁にご飯も食べさせてもらえない」などと言った発言は孤独感から生じていることもあります。
  • 本人が見えているもの、感じているものを把握します。ただし、あまり細かく質問しすぎないように。

  • 妄想を増強するので、否定するのは逆効果。

  • 受容的態度で黙って聞き、肯定も否定もしないようにします。

  • 無くした物が見つからないと不安がるようなら、「一緒に探しましょう」と対応し、本人に見つけてもらうように普段から保管しておいて、必要に応じて差し出したり、見つけるように誘導したりしてみます。

徘徊への対応
 徘徊とは、認知症高齢者が無目的に歩き回る様を言いますが、本人にとっては意味があって歩いているのです。徘徊には次のような分類があります。
  1.  外出すると道や場所が分からなくなり、迷子になることがあります。
  2.  転居や入院などで馴染みのない場所に移ると、見当識障害と不安から徘徊することがあります。
  3.  興奮した状態(譫妄)で歩き回ったり、ぼんやりとして活動性が低下することがあります。夜間に起こるものを夜間譫妄と言います。
  4.  脳の器質障害によって現れる症状の一部で、いつもと同じような軌跡を描き、早足で、堅い表情で、前に人がいても押しのけるように歩くのが特徴です。
  5.  「帰って家族の夕飯の支度をしなければ……」など最も生き生きと生活していた時へ戻りたいという願望から生じることがあります。
  • 対応の基本は、不安を減らすこと(場所を覚える、環境に親しむ、今いる場所が楽しいところになる、他にどこも行くところがないと思うようになるなど)

  • いま居る場所が分かるように表示する

  • 廊下や部屋を明るくして不安を少なくする

  • 運動や散歩など興味を引くものに注意を向ける

  • 楽しみや仕事を提供する

  • 外に出て気分をほぐす

不潔行為
 便・尿など排泄物を弄んだり撒き散らしたりすることがありますが、身体拘束は禁物です。原因を探り、対処しましょう。
  • 蒸れる、暑い、痒いと言った場合:
     オムツを外し、言葉や行動、サインで尿意を把握し、トイレ誘導します。

  • 皮膚の疾患がある場合:
     皮膚科に受診して治療しましょう。

  • 残便・残尿による不快感があるために手で便を取り出そうとする場合:
     水分摂取を増やして、腹部マッサージや温湿布で排便を促してみましょう。

  • 排便後の後始末が出来ない場合:
     居室及びトイレでの様子や臭気を早期に把握して対処します。また、見えるところにトイレットペーパーを置くとよいでしょう。自分で処理しようとした行為を認めることも大切です。

  • トイレまで間に合わない場合:
     排尿及び便のリズムやサインを見つけ、トイレ誘導します。夜間は寝室にポータブルトイレを置くのもよいでしょう。

  • 汚れた衣類をタンスや押入れに入れる場合:
     羞恥心やプライドからそうしているため、決して怒らず、本人がいない時に処理します。

  • 誤認や空間失認(トイレの場所が認識できない、ゴミ箱に放尿する)の場合:
     ポータブルトイレを見えやすいところに置き、「便所」と書いて貼っておきましょう。

攻撃的言動
 感情のコントロールが上手くゆかないため、一度怒り出すと、ひどい言葉で非難したり暴力を振るったりすることがあります。要因を調べて取り除きましょう。
  • 状況判断や理解ができないで怒り出すような場合:
     少しの間、冷静に様子を観察していると、暫くすると何に腹を立てていたのか忘れてしまい、元の状態に戻ることがあります。

  • 無理矢理何かをしようとした時(例:声をかけずにおむつ交換したりする時)に手を撥ね除けたり大声で怒鳴ったりするような場合:
     何かをする前には必ず声をかけましょう。

性的言動
 身体の自立度の高い認知症高齢者で、自己抑制が効かない場合生じやすいと言われています。施設に入所者すると、男性の約3割、女性の約2割に、身体に触れる、卑猥なことを言う、布団の中に入るように言う、風呂を覗くなどの性的なトラブルがあるという報告もあります。
  • 寂しさや不安からこのような行為に及ぶことを理解しておきましょう。

  • 自尊心を傷つけないように、できれば冗談を交えて対応しましょう。

  • 強い口調や拒否の態度は混乱や不安を招き、暴力的にさせることがあります。

  • 淋しさのためにスキンシップを求めている場合もあるため、身体や足をマッサージしたり、両手を握ったりすることで対応してみましょう。

  • 夜間は嫁の寝室に鍵をかけるのも一つの方法です。

日常生活の工夫


整容
  • 洗面や手洗いなど一連の動作が分からない場合は、一つずつ声をかけて行なってもらいましょう。

  • 頭髪は洗面後に鏡の前で櫛やブラシを持ってもらい、自分で行なってもらうよう促してみましょう。

  • 口腔衛生は食後毎回行ないましょう。入れ歯は外して清掃しましょう。肺炎の予防にもなります。
更衣
  • 好みを大切にし、目的や気温などに適したものを選択するが、主体性の低下を招かないようにしましょう。

  • 着る順番が分からない場合は、一枚ずつ手渡しし、できるところをやってもらいながら手を添えましょう。
自発性意欲低下・抑鬱
  • 脳血管性認知症の場合、頻度が高いと言われています。

  • 決まった日課や外出、デイサービスへの参加をすすめてみましょう。

  • 更衣及び整容をして布団から離れることをすすめましょう。

  • 肘掛け付きの椅子に座り、音楽を聴いたりして五感を刺激しましょう。
注意障害
  • 何かをしようとしている時は、気を逸らさないように言葉かけに留意しましょう。
感情&欲求の制御障害
  • プライドが傷つけられると興奮して暴力を振るう場合があります。

  • 受け止めて、肯定も否定もしないで流動的な態度で受容しましょう。

  • 散歩やおやつなどを共にして、快の時間を多くしましょう。

  • 興奮している時は間を置き、場や対象を変えてみましょう。
まだら対
  • 脳血管性認知症では、障害がまだらとなり、出来ることと出来ないことが入り混ざっていて、混乱が生じることがあります。出来ることを見定め、出来ないことでも、手順を示すと出来る時があります。

  • 「はい」「いいえ」で答えられる質問の仕方もよいでしょう。

  • 嚥下(飲み込み)障害については正しい姿勢を保つよう声をかけ、覚醒度を上げます。

  • 食後は暫く座位を取りましょう。歯磨きは嚥下性肺炎の予防になります。

室内全体の環境整備へのヒント


環境整備のヒント
  • 躓かないように小さいテーブルや固定されていない小さい床マット、マガジンラック、電気コード、床マットなどは除きましょう。

  • リラックスでき、安心感のある静かな環境を心懸けましょう。

  • 間接照明で光源が目に入らないよう、また影を作らないような方向から適切に照明しましょう。

  • 整理整頓して室内をシンプルにしましょう。

  • ゴミ箱は遠くに置くか、ゴミ箱と分からないものに変えましょう。

  • 食べても心配のない植物などに変えましょう。

  • 馴染みのもの、思い出の品を飾りましょう。

  • 壊れやすいもの、危険なもの(例:殺虫剤、薬、化粧品、塩、食べ物の残り、刃物、針、マッ チ類、タバコ、灰皿)は手の届かないところに置きましょう。

  • 写真や肖像画、鏡などで幻覚を起こす場合は片づけましょう。

  • 大切な書類や通帳は隠したり破いたりしないよう鍵の掛かる場所に保管し施錠しましょう。

トイレ
  • トイレと分かるように「便所」と書いてドアに貼るか、絵や目印をつけて迷わないようにしましょう

  • トイレには手摺りをつけ、トイレットペーパーは見やすく、手の届きやすいところに置きましょう。

台所
  • ガスコンロのスイッチを見えないように隠すか、コンロ全体をカバーで覆いましょう。

  • 電気コンロに変えるか電子レンジを使いましょう。

  • 冷蔵庫や棚に鍵をつけましょう。

  • 食べてもよいものを棚などに入れておきましょう。

食事
  • 食器の色はテーブルと区別できる色のものにしましょう。

  • 1度に出すのは1つの皿とし、目の前に置きましょう。

  • 飲み物を注ぐ時はコップの半分までにしましょう。
洗面所
  • 水を出しっ放しにする場合は、洗面台の水栓を自動で止まるものに変えましょう。
タンスなど
  • 引き出し類には何が入っているか絵を描いて貼りましょう。
浴室
  • 入浴時に水を恐れることが多いので、浴室には手摺りやイス、シャワーの温度などを整えましょう。
階段
  • 階段口にアコーディオンカーテンなどを付けて階段が見えないようにしましょう。

  • 階段口に柵を付けましょう。
玄関
  • 1つのドアに鍵を2つつけましょう。

  • 玄関ドアに観葉植物を置いてドアをカモフラージュしましょう。
徘徊
  • 徘徊がある場合は、ブレスレッドやお守りに住所・氏名・電話番号、そして認知症であることを記載して身につけてもらいましょう。

  • 玄関ドアに徘徊センサを付けましょう。

  • 近隣人や商店などに認知症があることを伝えて、見かけた時の対応、買い物への対応など地域の理解を求めましょう。
電話
  • 電話番号を大きく書いて貼っておきましょう。

  • 大きなボタンの電話機にしましょう。

認知症の方の食事と食事介助
認知症高齢者にとっての食事と食事介助のポイント

 認知症の人は、認知症が重度になるに従って自分で食事を摂ることが段々困難になってゆきます。つまり、自立して一人で食事が摂れている状態から、声かけによる指示が必要な段階、そして、食事摂取を他人に依存しなければならない状態(身体的な介助が必要になる)へと食事行為の自立の低下が進んでゆくのです。また、この自立の程度と同時に摂食・嚥下機能(※口に食物を摂り込むことや飲み込むこと)が少しずつ低下してゆくことが多いです。この摂食・嚥下困難&障害は、食物摂取量が低下や体重減少を生じ、低栄養状態にもなり、そして、少量の食物を誤嚥する危険を増し、誤嚥性肺炎や生命の危険にも繋がる重要な問題となります。 認知症の患者の食事介助


◆認知症高齢者にとって食事の意味
 食事は体力と生命維持のための栄養摂取
 生活の中での大きな楽しみ、満足感や充足感、安心感に繋がる
 食事の行為自体がその人らしさ(個人の食体験)の現われ
認知症の高齢者にとって求められる食事介助の基本
 食事は、毎日の生活で欠かせないものである故に、介助を必要とする認知症高齢者にとってより質の高い介助が求められます。ただ食べてもらうだけの行為ではなく、食事を美味しく、満足感に通じる介助が必要になります。

美味しく食べられるための介助


バランスの取れた食事を心懸けよう
  • 蛋白質:少なくとも1食に肉や卵、魚、チーズ、豆類(豆腐・納豆など)から1つ摂りましょう。

  • 水分:積極的に水分を摂るようにしましょう。好みのものを摂り入れましょう。

  • 野菜・海藻類:不足しがちなので、毎食欠かさないように。食物繊維の多いニンジンなど根菜類を意識して摂るようにしましょう。

  • 果物:ビタミン・ミネラルの補給になるので、毎日1回は摂りましょう。

  • 牛乳・乳製品:カルシウムの補給のために毎日コップ一杯の牛乳またはヨーグルトを摂りましょう。

  • 塩分:摂りすぎないように塩や醤油は控えめにしましょう。
食べ物の調理の工夫方法
  • 食べやすいように軟らかく調理しましょう。野菜は煮た方が食べやすいでしょう。また、パサパサしたものは咽せたりつかえたりしやすいので、汁気を含ませ、軟らかく調理しましょう。汁物は咽せやすいので、少しとろみをつけるとよいでしょう。

  • 料理の温度は、多少加減しつつも、熱いものは熱く、冷たいものは冷たくしましょう。

  • 脂っこいもの、塩からい味付けは控えましょう。

  • ひと口で食べられる大きさ、手で摘んだり、箸やスプーンで取りやすい大きさに工夫しましょう。

  • 色合いや形など目で楽しませたり季節の香りを添えたりして食欲をそそる工夫をしましょう。
介助の工夫
  • ひと口ひと口の食べる速度やペース、リズムをその人に合わせてましょう。

  • 時間がかかっても急かさないようしましょう。

  • 必要以上に大声で話しかけないようにしましょう。

心地よくリラックスできるための介助


食事時の姿勢
  • 上体が起こせる時はできるだけ座位にして、ギャッジベッドではない時は背中にクッション置いて上体を支えます。

  • 飲み込み時に咽せたり誤嚥を防ぐために、頭と肩は少し前屈みにして、顎を下に引き気味にして胸につけるようにします。

信頼感や安心感が持てる介助


信頼感や安心感が持てる介助
  • 食事に関係する快い会話を心懸けましょう。

  • 他の人の食事を食べてしまっても叱らないようにしましょう。

楽しみとなる介助


食事環境
  • 車椅子を利用しても家族と一緒に食卓について食事をするようにしましょう。

  • ベッドで食べる場合も、家族の食卓が見える場所で、家族の話し声が聞こえるようにしましょう。

食事時間
  • 毎日の生活の中で食事は楽しみの一つです。食事は、生活のリズムを保つためにも、食事の時間を一定しましょう。

満足感の持てる介助


満足感の持てる介助
  • おかわりをする時には,小さい茶碗にしたり、大盛りにして満足させてあげましょう。

身体状態によりよく対応できる介助


食器や食事用具
  • できるだけ自分で食べてもらうように、食器やスプーン、箸などの食事用具がたくさん市販されていますので、障害の程度に合った軽くて持ちやすい、清潔で、落としても割れにくいものを選ぶとよいでしょう。

食事を拒否する場合の介助


主な原因
 食事に関心が持てない、食事環境に変化が多い、食事やその場に不快感がある、食事内容に不安がある、食事行為に恐怖がある、食事にストレスがある、介助を拒否しているなど。

介助の工夫
 食べようとする行為が見られたり、ひと一口ふた口でも食べられたりすれば大丈夫です。
  • リラックスできる食事場面や雰囲気を整えましょう。そのためにも、焦らず、ゆったりとした気持ちで介助します。

  • 介助者の態度は明るく笑顔での声かけの配慮を心懸けましょう。

  • 食事品数を多くしないようにしましょう。

  • 食事に時間をかけましょう(※ただし1時間以内)。

  • 食事中の過剰な声かけは控えましょう。

  • 他人や周りを意識させないように配慮しましょう。

自分から食べようとしない場合や食事への意欲がない場合の介助


主な原因
 食事以外に気になることがある、介助者への依存心が強い、睡眠が充分に摂れていない、食べる意識や食事への意欲が持てない、食事内容が好みに合わない、生活リズムに乱れがあるなど。

介助の工夫
 自力で食事が摂れない場合には、繊細な心情を十分に配慮しながら、焦らず、根気よく介助に食事が摂れるようになるまで温かく見守りながら、介助に勉めることが大切です。
  • 水分や汁物から優先して摂取をしてみましょう。

  • 嗜好品など好みのものから1品ずつ介助を始めてみましょう。

  • おにぎりやパンなど手で掴んで食べられる形態にしてみましょう。

  • 使っている食具の見直しをして使いやすいものにしてみましょう。

  • 食事の場所(景色のよい窓際など)を変えてみましょう。

  • 介助者の位置や高さを変えてみましょう。

  • 無理に急がすようなことをしないようにしましょう。

食事中に口の中に食物が残ったままで眠ってしまう人への介助

主な原因
 身体機能の衰え、覚醒状態の持続が困難、食事環境や食事量の負担、摂食機能の低下、疲労度が大きい、食事行動が取れない、自分の世界に入りやすい、周囲に順応しない、気分転換が上手くゆかない、薬の副作用など。

介助の工夫
 食事中に眠ってしまう人は一度にたくさん食べることができません。1日3回の食事の時間以外に、食事と食事の間にも水分や嗜好品を摂るようにしましょう。
  • 食事中に時々背中等を擦りましょう。

  • 声かけは耳元で行ないましょう。

  • 身体が傾いてしまった場合には揺り動かさず、姿勢の崩れを直しましょう。

  • 食事中に深呼吸や両腕の軽い運動をしてみましょう。

  • 1回の全体の食事量は少な目にしましょう。

  • 食事時間を長引かせないようにしましょう。

  • 目が覚めた後には水分と主食を中心に食べてもらいましょう。

  • 水分は香りのあるもの(ほうじ茶や玄米茶など)をすすめてみましょう。

参考:認知症についての参考書と参考サイト


◆参考図書
認知症予防財団『認知症30カ条 予防から介護まで』岩波ブックレット
認知症予防財団・編
『認知症30カ条 予防から介護まで』
岩波ブックレット795、岩波書店・2010年10月刊、693円

どのようにしたら、認知症を予防できるのか。認知症の人の家族は、どのように本人に接するのがいいのか。介護は、どのようにしたらいいのか。それぞれを10カ条として、計30カ条を、わかりやすく、具体的に解説。目次:1認知症予防10カ条、2認知症介護10カ条、3認知症介護家族の接し方10カ条。


認知症予防財団
http://www.mainichi.co.jp/ninchishou/

長谷川嘉哉『患者と家族を支える認知症の本』学研メディカル秀潤社
長谷川嘉哉・著
(医療法人ブレイングループ理事長、医師)
『患者と家族を支える認知症の本』
学研メディカル秀潤社・2010年06月刊、1,890円

認知症専門医の著者の体験を下に、認知症患者を理解し温かく支援できるケアのコツをイラスト等を用いて具体的に示した。

山口晴保『認知症予防 読めば納得!脳を守るライフスタイルの秘訣』協同医書出版社
山口晴保(日本認知症学会理事、医師)・著
『認知症予防 読めば納得!脳を守るライフスタイルの秘訣』
協同医書出版社・2008年09月刊、1,890円

最新研究をもとに、食事に関するアドバイスや運動による効果を詳説。具体的な予防法を満載した、高齢期を活き活きと過ごしたいと願う方をサポートする医療関係者必読の書

河野和彦『認知症治療28の満足 後悔しないためのベストの選択』女子栄養大学出版部
河野和彦・著
(名古屋フォレストクリニック院長、医学博士)
『認知症治療28の満足 後悔しないためのベストの選択』
女子栄養大学出版部・2009年11月刊、1,890円

認知症が急増しています。アルツハイマー型、レビー小体型、ピック病……認知症の種類や症状はさまざまで、治療法も異なります。しかし、診察まで何か月も待たされ、適切な診断・治療が受けられず、悪化する患者さんも少なくありません。認知症は、早期発見・治療がなにより大事。家族の気づきと、それをきちんと受け止める医師の連携が欠かせません。家族や介護関係者だけでなく、医療関係者にも参考にしていただきたい1冊です。


■参考サイト1:相談窓口&情報提供サイト
NPO 認知症予防サポートセンター
http://www.iiyobou.org/
認知症介護情報ネットワーク(DCnet)
http://www.dcnet.gr.jp/
認知症のポータルサイト とうきょう認知症ナビ | 東京都の公式サイト
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/zaishien/ninchishou_navi/
■参考サイト2:家族の会&自助グループ
公益社団法人認知症の人と家族の会
http://www.alzheimer.or.jp/
公益社団法人・日本認知症グループホーム協会
- 公益社団法人・日本認知症グループホーム協会オフィシャルサイト
http://ghkyo.or.jp/home/
認知症フレンドシップクラブ
http://dfc.or.jp/
認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議
http://www.ninchisho100.net/
■参考サイト2:病院紹介
認知症 病院紹介―笑顔とこころでつながる医療 リバスタッチ_jp
http://www.rivastach.jp/
病院検索で自分に合った病院探し! − 口コミ病院検索QLife(キューライフ)
http://search.qlife.jp/saas/inph/


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