【1】肺ガンとは何か? |
肺ガンとはどんな種類の癌なのでしょうか?
本節では肺ガンの種類や症状について解説しました。
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胃ガンを追い抜いた肺ガン |
胃ガンを追い抜いた肺ガン |
日本はガンの中では特に胃ガンで亡くなる人が元々非常に多い国でした。これは、日本の伝統的な食事が保存食を多く用いるために比較的塩分が多かったためではないかとも言われています。また、胃カメラの発達やガン検診の普及により早期に発見される胃ガンが増えたことや、手術方法や術後の抗ガン剤治療の進歩などにより胃ガンが完治する例が増えてきたことも大きな理由でしょう。これはとてもよいことですが、その一方で、肺ガンが昨今急速に増えつつあり、今や男性のガンによる死因第1位になっているのです。
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肺ガンは何故増えているのか? |
元々胃ガンが多かった日本で昨今なぜ肺ガンが増えてきたのでしょうか? その原因として考えられるのがタバコ、すなわち高い喫煙率が挙げられます。
JTの統計によると、現在の日本人男性の喫煙率は約40%です。これは先進国の中でも上位にランクする高さなのですが、今から約40年ほど前には、驚くべきことにこれが80%を超えていました。タバコを吸っても、直ぐに肺ガンになるわけではありませんが、長期に渡って喫煙行動を続けることがガンの発生に密接に関わっていると考えられています。いわゆる軽いタバコに変えることで健康管理をしているつもりの人もいるようですが、残念ながら余り効果は期待できません。近年では、肺ガンのみならず、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんも増えつつありますが、これらは、やはりこの数10年間の高い喫煙率が原因であると言えるのです。
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肺ガンとは? |
肺ガンは肺にできる悪性腫瘍で、以前はタバコを吸う男性に多い病気でしたが、現在はタバコを吸わない肺ガンの患者も増えています。また、女性の患者も増えています。その原因として、周囲の人が吸ったタバコの煙によって害を与えられる副流煙の影響も考えられます。肺ガンは男性のガンの中では死因の第1位、女性のガンの中では死因の第2位の病気なのです。
ガンは他の臓器やリンパ節に転移する病気です。肺ガンは脳や肺、全身の骨、肝臓、副腎などの臓器や気管支近傍のリンパ節に転移することがあります。また、肺ガンは顕微鏡で見たガンの形から小細胞肺ガンと非小細胞肺ガンの2つに大別されます。ただし、サイズの小さいガンが小細胞肺ガンというわけではなく、小細胞肺ガンは非小細胞肺ガンに比べて早い段階からリンパ節転移や他の臓器への転移を来す悪性度の高い肺ガンで、発見されてから1〜2ヶ月で死に至ることもあります。手術治療の対象となる殆どの患者は非小細胞肺ガンです。
身体の細胞は、普段必要な分だけ分裂して増加し、古くなると壊れるという過程でバランスを保っています。しかし、この過程が狂い細胞が増え過ぎて塊を形成することがあり、これを一般にガンと呼びます。そして、肺ガンはその名前の通り肺に起きるガンのことはですが、肺から発生するガンのこと全般を指しており、気管や気管支、肺胞の細胞が様々な原因でガン化したものを言います。
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肺ガンの種類 |
肺ガンは小細胞ガンと非小細胞ガンとに大別されます。また、肺門型肺ガンと肺野型肺ガンとに大別されます。
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肺門型肺ガン |
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肺の入口でまだ枝分かれする前の段階にある太い気管支におこるガンのことを肺門型肺ガンと言います。気管支や肺動脈、肺静脈が出入りする部分で、身体の中心にあるため、X線では見つけづらい場合があります。 |
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肺野型肺ガン |
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肺の奥の方で枝分かれした細い気管支や肺胞などにガンが出来た場合を肺野型肺ガンと言います。これはX線検査やCT検査でも見つけやすいガンですが、肺野部には感覚神経がないので、症状が出た段階ではかなり進行している怖れがあります。 |
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小細胞ガン |
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肺の入り口近くに発生しやすく、喫煙者に多い。進行が速く転移しやすい。 |
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非小細胞ガン |
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- 腺ガン
女性に多く、肺の奥の方にできやすい。症状が出にくい。
- 扁平上皮ガン
喫煙者に多く、肺の入り口付近にできやすい。
- 大細胞ガン
肺の奥にできやすく、通常増殖が速い。
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原発性肺ガン |
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肺の気管支から肺胞に至る組織の表面を覆う上皮性細胞より発生する悪性腫瘍を原発性肺ガンと言います。この細胞集団は肺という所属臓器の特異性を失い、増殖力のみを持ち、更に細胞の個々の密着性をある程度失って遠隔転移増殖を起こし、それと共に、周囲への圧迫と浸潤破壊を行なって宿主を死に至らしめます。
ガンのうち肺ガンの罹患率は、男性では第1位となり、女性でも昨今は乳ガンや胃ガン、大腸ガンを抑えて第2位を占めるまでになりました。また、好発年齢は中高年層です。原発性肺ガンの主な種類としては、扁平上皮ガン、腺ガン及び未分化ガン(大細胞ガン及び小細胞ガン)が挙げられ、この他に若干の稀なガンが存在し、また、それぞれのガンの間では性質が相当異なっています。発生頻度は日本と欧米では異なり、日本では腺ガンと扁平上皮ガン、未分化ガンは5:3:2の発生率であるのに対して、欧米では扁平上皮ガンが最も多いと言われます。男女別では、扁平上皮ガンは男性に圧倒的に多く、腺ガンは女性肺ガンの大部分を占め、未分化ガンは男性に多く、これら各種のガンのうち扁平上皮ガンは、喫煙がその発生の原因に深い関係があるとされています。常習喫煙者の肺ガンによる死亡は、非喫煙者の場合に比べて、男性で3.6倍、女性で2倍であると言います。男性に肺ガンが多いことや、近年の女性の喫煙率の上昇と共に女での発生が増加していることなどから見て喫煙と肺ガンの関係が窺えます。 |
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肺ガンの初期症状 |
長引く咳と血痰に注意 |
肺ガンははっきりした初期症状が出にくい病気であるため、自力で早期発見しようとする場合には小さな異変にも注意をはらう必要があります。また、肺ガンの初期症状として特に気をつけるべきなのは、長引く咳と血痰です。これら2つの症状は、ガン組織による気管支の閉塞やそれに伴う感染症、そして、脆くなっているガン組織の血管からの出血が原因となって見られるものです。
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血痰が出る |
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肺ガンの初期症状として、通常最初に思いつく症状として血痰がありますが、血痰が出ただけで肺ガンと決めつけるのは早計です。血痰は他の症状と同時に見られた場合に心配すべき症状です。肺ガンによる血痰は、ガンに侵された部位から出血が起ることによって生じます。血の塊のような血痰が出るケースは少なく、痰の中に細い血が混じる程度のことが多いとされています。
痰は様々な状況で出ます。白色や黄色、緑色など病状に応じて痰の色も変化しますが、注意すべきは血痰、すなわち痰に血が混じることです。痰は、気管支粘膜の分泌物と空気と一緒に吸い込んだゴミ、細菌をやっつけた後の白血球の残骸などが一緒になったもので、風邪を引いた時にも出てくる一般的なものです。通常は、白色の多少泡だったものとして喀出されますが、細菌感染によっては、黄色くなったり緑色になったりします。しかし、痰に血が混じることは基本的にはありません。血が混じるというのは、粘膜から一部出血しているということで、白い痰にすーっと赤い糸を引いたように出ていたり、血の塊が混じっていたりという場合には、放置することなく、医師の診察を受けることをオススメします。もっとも、咳のしすぎで喉の粘膜に傷が付いていたり、他の疾患で血痰がでることもありますが、肺ガンの初期症状の場合もありますくれぐれも放置することがないよう注意して下さい。 |
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長引く咳 |
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風邪に似た症状のため見過ごしてしまうことが多いですが、肺ガンの初期症状として咳は特徴的です。咳は普通の風邪や喘息などでも見られる一般的な症状なので、暫くすれば治るだろうと考えて医者にかからないこともよくあります。もちろん数日でピークを越えるような咳ならそれでも構わないのですが、長引く咳には注意が必要です。肺ガンや、最近では肺結核についても注意が必要なので、たとえば1ヶ月近く咳が続くような時には、まずは近くの医療機関を受診することをオススメします。
肺ガンの初期の咳の特徴として、乾いた空咳であるという点が挙げられます。また、長期間継続して咳が出続ける場合には特に注意が必要です。熱がないのに一ヶ月以上の空咳が合った場合、息切れを伴うほどの咳が出る場合は肺ガンの初期症状である可能性が高いと言えます。 |
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その他の目立つ初期症状 |
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嚥下困難、呼吸困難 |
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肺にガンがあると、肺炎や気管支炎を起こしやすくなります。また、肺ガンが食道近くのリンパ節に転移した場合食道や気管支が圧迫され、呼吸がしづらい、食べ物が飲み込みにくいという症状が出る事があります。 |
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声が嗄れる |
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ガンが声帯の神経まで到達してしまうと、声が嗄れることがあります。 |
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喘鳴 |
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喘息のようなゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音がする症状を喘鳴と言います。気管や気管支にガンが出来ている場合、空気の出入り口が狭くなってしまうので、それが笛のような作用を起こして喉が鳴る場合があります。 |
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背中の痛み |
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肺ガンが原因となって背中が痛くなる理由は2つあると言います。一つは、肺の腫瘍から出血が起こってその周りで炎症が起きている、その場所がたまたま背中だったという場合、もう一つは、肺の奥で大きくなった腫瘍が背中側に突出し、背中の神経を圧迫している場合です。前者はやや早期に見られる症状ですが、後者はそれなりにガンが進行している恐れがあるため注意が必要です。 |
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その他(やや進行が進んでいる可能性がある場合の症状)
〜他の器官への転移によって起こりうる症状〜 |
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以上は肺ガンの初期症状として挙げられるものですが、肺ガンの症状は非常に気がつきづらいものです。また、肺ガンは転移しやすいという特徴があるため、別の器官への転移によって肺ガンに気がつく場合も考えられます。
- 肺ガンは身体の中心にある骨に転移しやすく、肋骨や胸椎、腰椎等に転移するとその骨が痛む、感覚が麻痺するなどの症状が起こります。また、神経が侵されることで腕の痛みや痺れ、肩の痛みが現われる場合があります。
- 大静脈に浸潤した場合、また、副腎に転移してホルモン分泌に異常が起きた場合は、顔や首が腫れることがあります。
- さらに肺ガンの転移の中で最も恐ろしいとされる脳転移が起きた場合、感覚障害や目の霞み、頭痛、歩行困難などが起きる場合があります。
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参考:似た症状が現れる別の病気 |
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- 風邪
血痰や咳、身体がだるいなどといった症状は風邪に似ています。風邪と間違えて放置してしまう場合もありますが、余りにも長期に渡り症状が続く場合は肺ガンの可能性を疑うべきです。
- 気管の炎症
気管支炎や気管拡張症が起こると、肺ガンの初期症状と同様に血痰が出る場合があります。気道から出る血の場合、鮮やかな赤になる事が特徴です。また、咳もこれらの病気の症状です。さらに、気管の炎症として喘息がありますが、咳は喘息の代表的な症状でもあります。通常の喘息だとヒューヒューと音のでる喘鳴の症状がありますが、咳結核だとこの症状がありません。なお、喘鳴は気管や気管支にガンが出来た場合にも起こる症状なので見分けを付けるのは困難です。
- 間質性肺炎
間質性肺炎は肺の組織の線維化が起きる疾患の総称です。肺が硬く縮んでしまう病気で、空咳や呼吸困難など肺ガンと似た症状が出ることが多く見られます。間質性肺炎は肺ガンを併発しやすく、ガンの治療が肺炎に悪影響を及ぼすこともあるため治療が難しくなります。遺伝やウイルス感染により起こるとされており、喫煙が危険因子となります。軽い病気ではないため、こちらが心配される場合も早めの受診が必須です。
- 肋間神経痛
肺ガンが転移した場合背中の痛みが症状として現われることがありますが、同様に肋間神経痛によっても強い背中の痛みが起こる場合があります。肋間神経痛は肋骨に沿って走っている神経が痛む症状のことで、神経が骨や筋肉の間に挟まれて起こります。通常では起らないほどの非常に強い痛みのため、内蔵疾患ではないかと疑いがちな症状ですが、神経の病気なので別の対処が必要になります。
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肺ガンが進行すると・・・ |
肺ガンが進行した時には、局所の進展による症状と遠隔転移による症状が見られるようになってきます。すなわち、 肺ガンの進行に伴って見られる症状は、局所の進展によるものと他の臓器への転移によるものとに分けることができます。
肺ガンの治癒率を上げるためにも、当然ながら早期発見・早期治療が大切となります。また早期発見のためには、肺ガンの初期症状に注意すると共に、年に最低1回の定期的な健康診断を受けられることをオススメします。
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局所の進展による症状 |
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肺ガンが胸壁や肋骨、背骨などに浸潤してゆくと、当然それに伴う痛みがでてきます。また、神経への浸潤による痛みや嗄声(声が嗄れること)、瞼が開かないなどの症状が見られるようになります。さらに肺を包む胸膜と呼ばれる膜全体にガンが広がった時には、胸水と呼ばれる水が胸腔内に溜まり、呼吸困難感が出現することがあります。 |
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他臓器への転移による症状 |
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肺は全身の血液が集まり通過していく臓器なのでガンが非常に転移しやすい性質を持っています。肺ガンの場合には脳や肝臓、副腎、骨に転移しやすいのが特徴です。脳への転移では頭痛や嘔気が、骨への転移では腰痛などの痛みが見られます。 |
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その他 |
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これはガンに共通のことですが、特に理由なく体重が減少したり帯状疱疹(ヘルペス)を発症する場合には何らかの悪性疾患の存在も疑われるので、万が一でもこのような兆候が出た場合には医療機関を受診して下さい。 |
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肺ガンとそのステージ |
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肺ガンのステージ |
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肺ガンのステージや進行度を調べるためには、肺だけを調べるのではなく、胸部X線検査やCT検査、ヘリカルCT検査、超音波検査(エコー)、MRI検査など様々な画像診断技術を用いて、ほぼ全身を隈なく検査します。また、肺ガンは大きく小細胞ガンと非小細胞ガンとに分けられます。
小細胞ガンはガンの進行が早く転移もしやすいため、発見された時には進行しているケースが多いガンです。小細胞ガンは肺の入り口付近に出来ることが多く、気管や気管支に進展していたり、左右の肺の間にある縦隔リンパ節などにも早い段階で転移をします。もっとも小細胞ガンは抗ガン剤や放射線が効きやすいという性質があるため、治療により腫瘍が縮小するケースも多く認められます。ただし進行も早いため、直ぐに悪化することも多くあるわけです。
その一方、非小細胞ガンは肺の奥の方にできることが多く症状が出にくいため、症状が出た時には既にリンパ節などに転移しているケースがあります。そして、この非小細胞ガンの中でも腺ガンは早期の段階でリンパ節などへ転移しやすく、胸膜炎などを引き起こしやすいガンです。また、扁平上皮ガンは発生した部位に留まることが多く、転移を比較的しにくいガンです。病巣部が限局していれば、病巣部位を完全に切除することにより治癒する可能性も十分に期待できます。 |
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肺ガンの進行度 |
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肺ガンの進行度は、肺ガンの大きさやリンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などによって規定されます。これは1期から4期に分別されており、1期から3期は更に2つに分割されます。従って肺ガンの進行度は1A、1B、2A、2B、3A、3B、4の7段階に分けられることになります。そして、1期が初期で、4期が進行した段階であり、終期であると言えます。
肺ガンの治療前にその進行度を決める目的は、治療方針を決めることと治療効果の予測にあります。たとえば1A期の肺ガンの患者が手術を受けると5年後の生存率が約80〜90%、1B期の場合には70〜80%だと予測されます。より早い進行度で手術をした方がガンは治癒する可能性が高くなるわけで、肺ガンが進行した段階では手術そのものができなかったり、たとえ手術を受けても治癒する可能性が低いと言われます。 |
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【2】肺ガンの検査とその治療 |
肺ガンが発見された場合、私達はどのように対処すればよいのでしょうか?
本節では肺ガンの検診とその治療法について取り上げ解説しました。
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肺ガンの検査 |
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肺ガンの確定診断をつける検査(細胞や組織を採取するための検査) |
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確定診断をつける検査は全ての患者に有用というわけではありません。影の位置や大きさなどによって可能な検査が異なります。また、影が小さい場合には確定診断をつけるための検査が何れも出来ないことがあります。最近は影が小さい状態で見つかることも多いため、肺ガンで手術を受ける患者の半数以上が術前に確定診断がついておらず、そのため、診断と治療を兼ねた手術を受けられる方が増えています。
- 喀痰細胞診
痰に出て来るガン細胞を顕微鏡で診断します。気管支の中にガンが出来るとこの検査でガンと診断が確定することがあります。肺の末梢にできたガンは痰の中にガン細胞が出てきにくいため、残念ながらこの検査では診断がつきません。
- 気管支鏡
口または鼻から直径6mmぐらいのファイバースコープを気管支まで挿入して観察し、腫瘍が直接見えればこれを一部採取し、或は腫瘍が見えなくてもX線透視下で腫瘍に向かってブラシを挿入し、細胞を一部かき取って顕微鏡で診断します。喉の麻酔を行ない、更に検査中は眠くなる薬を投与することで苦痛を軽減して行ないます。なお、肺の末梢にできたガンは通常の気管支鏡が届きにくいため、特殊な気管支鏡を呼吸器内科に依頼して行なうことがあります。ただし、ガンが出来た場所や大きさによって気管支鏡での診断は困難なことがあります。
- CTガイド生検
CTで肺をリアルタイムで見ながら身体の外から肺の影に向かって針を刺し、影の一部を採取します。局所麻酔で行なわれます。気管支鏡検査と同様、ガンができた場所や大きさによってCTガイド生検での診断は困難なことがあります。
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肺ガンの広がりを調べる検査 |
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肺ガンと確定診断がついたり、肺ガンが強く疑われた患者に対しては、次にガンの転移を調べる検査を行ないます。
肺ガンは脳や肺、全身の骨、肝臓、副腎などの臓器や気管支近傍のリンパ節に転移することがあります。そして、ガンの転移の程度によって治療方針が変わるため、転移を調べる検査は重要です。脳以外の臓器や骨への転移、或は胸の中のリンパ節転移を調べるには造影CTと共にPETが有用です。ただし、脳転移はPETでは調べられないため、脳の造影MRIを撮って調べます。これらの検査の結果、肺ガンの進行度が決まります。 |
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肺ガンが見つかったら? |
肺ガンはどのように発見されるのか? |
肺ガンはレントゲンやCTなどの検査で見つかります。検査を受けるキッカケは検診や人間ドック、或は咳嗽や血痰や痛みなどの自覚症状です。一般的に自覚症状がキッカケで発見された場合に比べて、検診や人間ドックで発見された肺ガンの方が小さく、初期の段階のことが多いと言われます。また、レントゲンよりもCTの方がより小さな肺ガンを発見することが可能です。近年CTで肺を精密に調べることが出来るようになったため、初期の肺ガンを見つけやすくなっています。なお、PET検査は初期の肺ガンは見つけられないこともあるので、初期の肺ガンを見つけようと思ったら精密なCTの方がよいでしょう。
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肺ガンが疑われたら |
肺ガンを疑う影が見つかった場合、まず肺の精密なCTを撮ります。そして、肺に出来た影の大きさや形や場所を調べると同時に、胸の中に腫れているリンパ節がないかなどのチェックを行ないます。CTを撮る際には造影剤を使用することで更に詳しく調べることが可能です。以前にCTを撮ったことがある場合には、そのCT画像と比べることで、影の経時的な変化でサイズが大きくなっていないかなどを調べることが出来ます。また、たとえ肺ガンの疑いありと診断された場合でも、実際は肺炎や良性の腫瘍であることもあり、その選別には精密CTが有用です。次にCTで肺ガンが疑われた場合、次に行なう検査は肺ガンの確定診断をつける検査です。CTで肺ガンを疑われても、ガンという確定診断がついたわけではなく、確定診断をつけるためには影の部分の細胞または組織を採取して(生検と言い、ガンを全て切除する検査ではありません)、病理医が顕微鏡で調べてガンと診断した時に初めて肺ガンの確定診断がつくのです。
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肺ガンの早期発見と健康診断 |
早期発見・早期治療が健康診断の目的 |
健康診断の目的は、ガンその他の病気を早期に発見し、早期に治療を行なうことで、病気への治療成績を向上させることにあります。
胸部レントゲン写真の場合も、当然ながら肺ガンや縦隔腫瘍などの胸部の悪性疾患を早く見つけることを目的にしています。肺ガンにしても縦隔腫瘍にしても、いわゆる出来物があると、通常は写らないような影が胸部レントゲン写真に写ります。このような影が観察された時、検診を行なう医師は要精検、つまり「もう少し詳しく検査して下さい」というコメントを出します。この際、健康診断の目的が早期発見&早期治療であることを考えると、少しでも気になるような影があれば、取り敢えず再検査と考えます。すなわち、健康診断の場合には「疑わしきは罰する」というのが基本的なスタンスであると言えるのです。
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肺ガンの早期発見 |
ガンの発生機序は今のところ不明で、根本的治療法は未だ暗中模索の状態だと言っても過言ではありません。唯一の確実な肺ガンの治療法は、早期にガンを発見し、病巣が広がらないうちに外科的に完全に切除することです。肺ガンの早期発見のため、喀痰細胞診などによる集団検診が盛んになりつつありまする。
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レントゲン検査の肺に影で考えられる病気 |
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肺に影が出来るのは悪性疾患の場合だけではありません。意外に様々状態があります。
レントゲン検査での肺に影があるという結果を見て肺ガンかもしれないと心配される人が多いようです。しかし、肺に影が写る原因には実は肺ガン以外にも様々なものがあるのです。その代表的なものが炎症によるものです。特に60代以上の年代の人は昔の結核の後などが残ってしまっていることがあります。このような状態では「肺尖部胸膜肥厚」とか「肺尖部に斑状陰影」などと記載されている場合が多く見られます。また、血管の蛇行や肋骨の重なり、女性の場合には乳頭が腫瘤状陰影になって写ることもありますし、血管腫や過誤腫など良性の腫瘍が写っている場合もあります。要は肺に影があるからと言って必ずしも肺ガンとは限らず、むしろ肺ガンであることの方が少ないのが現実なのです。 |
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健康診断で肺に影があると言われたら? |
健康診断で肺に影があると言われた場合はどうすればよいでしょうか?
健康診断書に書かれてある医師の所見が「1年後に再検査を」というものであれば、まずは肺ガンや縦隔腫瘍など心配すべき状態ではないと考えてよいでしょう。これは通常、昨年より前のレントゲン写真と今年の分とを見比べて変化がないことを確認出来た場合なので、まずは良性の変化か、生理的な陰影と考えてよいでしょう。また、「直ぐに再検査を」と言う場合には、出来るだけ早くその指示に従っていただきたいところですが、その際にも余り心配しすぎることはありません。健康診断の基本が「疑わしきは罰する」というスタンスであることに思いを致し、淡々と検査を進めることが大切です。ただし、最も避けなければいけないのが、健康診断で異常があると言われているものの、ガンや大きな病気が見つかると怖いので検査は受けないという態度です。
何れにせよ、早期発見・早期治療がガンの治療の基本です。余り心配しすぎることなく、検査を進めてゆくことが自分の大切な体を守る第一歩となることをお忘れにならないようにお願いします。肺ガンの疑いがある、または肺ガンだと診断された場合、すごく不安を感じることでしょう。しかし、治療しなければガンは進行してしまいます。より早い段階で適切な治療をすることで治癒の可能性が高くなります。
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定期的な健康診断と禁煙が大切 |
ガンの根治的な治療を行なうためには、ガンの早期発見と早期治療が欠かせません。特に40代に入ると、胸部レントゲン写真を年に1回撮影してレントゲン上の異常の有無を見ると共に、経過を見てゆくことは非常に重要なことです。また、医療機器の進歩により、被曝量を抑えながら画像解像度の高い胸部CTを撮影出来るようになって来た上に、健康診断では自費になるものの、PETによる健診も行なわれるようになって来ました。このように、肺ガンの早期発見&早期治療のためには、やはり定期的な健康診断が不可欠です。また、予防はどんな健康診断、早期治療よりも有効です。
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肺ガンとその治療 |
肺ガンの治療 |
肺ガンのステージが1A期から2B期の患者の標準治療は手術です。1A期の患者に手術を行なうと1B期の患者に手術を行なう場合よりもガンが治癒する可能性が高くなります。つまり、より早い段階で治療した方がガンが治癒する可能性が高いということになります。そして、ごく早期の肺ガンを除き、ガンの再発を予防する目的で手術後に抗ガン剤治療を行ないます。
次に3A期になると標準治療は存在しないため、各病院で治療方針が異なることがあります。手術で切除出来る場合には手術が選択され、手術での切除が出来ないと考えられる場合には放射線や抗ガン剤が選択されますが、当然ながら患者によって病態が異なるため、治療方針の決定は難しくなります。この場合は特に主治医と十分相談することが大切です。
そして、3B期及び4期には通常、手術が選択されることはなく、放射線と抗ガン剤治療が選択されます。ただし、たとえば脳転移が数か所のみある場合や単発の副腎転移がある4期の患者などに対しては、肺の手術と放射線と抗ガン剤の組み合わせで治療が行なわれることもあります。
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肺ガンのステージ別の治療 |
肺ガンの分類やステージによって、基本的な肺ガンの治療方法は確立されています。
肺ガンの治療方法は、主にガンの病巣を外科的に切除する手術療法、抗ガン剤を使う化学療法、放射線療法の三つを患者に合わせて単独あるいは組み合わせて行ないます。
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ステージ1〜2期の治療方法 |
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ステージ1〜2期の患者には、可能な限り外科的に切除することが奨められます。手術の際には、リンパ節への転移を確認したり再発を予防したりするため、同時にリンパ節を摘出します。標準的な手術としては、ガンのある肺葉やガンのある方の肺全体を切除します。ただし、ステージ1期のごく早期の場合で、症例選択によってはガンのある周辺からやや大きめに切除する縮小手術でも標準的な肺の肺葉切除と同等な予後が得られるとのことで、治療選択として挙げられます。なお、その一方で、ステージ3A期で一部のリンパ節への転移がある場合、手術が可能な方でも、まず化学療法ないし化学放射線療法を行なってから外科的な切除を行なうことが検討されます。ただし、手術が難しい症例では、化学放射線療法を行ないます。
また最近では、ステージ1期の場合には胸腔鏡(きょうくうきょう)を用いた肺葉切除も行なわれています。胸腔鏡を用いた手術は開胸手術と比べて、手術時間や出血量、入院期間、術後の合併症などの差はありませんが、切開創が小さく、そのため患者の負担が小さいという利点があります。さらに転移が少なく、5年生存率がよいとも言われています。その一方で、ステージ1〜2期の患者で、全身状態など色々な理由で手術が出来ない場合には、放射線療法で根治を目指すことが奨められています。なお、1期では局所的な照射のみでも再発する確率は0〜3%とも言われています。また、先進医療で自費となりますが、粒子線治療と言って重粒子線・陽子線治療など局所への集中性を高めた治療法も開発されています。 |
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ステージ3A期の治療方法 |
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ステージ3A期で、リンパ節への転移がない場合には他の臓器への転移がない可能性が高く、外科的な切除で効果が高いと考えられています。一方ステージ3A期でリンパ節への転移がある場合、手術が可能な人の場合、まず放射線療法を行なってから外科的な切除を行ないます。ただし、リンパ節への転移があって手術が出来ない場合には化学療法や放射線療法を用います。 |
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手術不能なステージ3A期〜3B期の治療方法 |
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抗ガン剤を使った化学療法と、放射線療法を同時に併用して治療を行ないます。これを化学放射線療法と言います。ただし、有害事象など身体に対する負担が大きいため、治療は全身状態が良好な場合に限られています。放射線療法のみ、或は化学療法のみを行うこともあります。 |
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ステージ4期の治療方法 |
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化学療法と緩和療法によってガンの進行を遅らせ、痛みや呼吸困難などの症状を和らげて、少しでも長く日常生活が送れるように対処します。なお、全身状態が良好な場合には生存期間が延長することが明らかになっています。
非小細胞肺ガンは早期であれば外科的な切除で根治も可能な病気です。また、分子標的薬を使った化学療法や体に負担の少ない放射線療法など新しい治療法も日進月歩です。 |
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