【1】インフルエンザより怖いRSウイルス |
秋から冬にかけて、インフルエンザに先駆けて流行するRSウイルス感染症。本節では、そのRSウイルス感染症の症状とインフルエンザその他の感染症との違いについて解説しました。
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インフルエンザより怖い!?RSウイルス |
毎年冬に猛威を振るうインフルエンザですが、そのインフルエンザよりも怖い感染症がRSウイルス感染症です。特に乳幼児は要注意です。ちなみにある調査によると、全体ではインフルエンザ患者の方が死亡者が多いものの、1歳未満ではRSウイルス患者の方が死亡者が多いという状況もあると言われます。
RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による乳幼児の代表的な呼吸器感染症で、日本を含め世界中に分布しています。症状としては軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々ですが、初めて感染発症した場合は重くなりやすく、特に乳児期早期(生後数週間〜数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎や肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。そのため、特に乳児期早期(生後数週間〜数カ月間)のお子さんがいらっしゃる場合には、感染を避けるための注意が必要です。
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幼児と高齢者は気をつけて |
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RSウイルス感染症は、小学生以上の児童になると感染しても重症化することは少なく、風邪とよく似た症状から自然治癒するケースが殆どですが、心臓に疾患がある人や喘息を持っている人は成人でも重症化しやすくなります。しかし、このウイルスに特に注意が必要なのは6歳までの幼児と高齢者です。特に生後1年までの乳幼児や生まれつき心臓に障害のある子どもの場合、細気管支炎から重症化するケースが多いので注意が必要です。初期の症状は風邪とよく似ているので、風邪気味でも咳がたくさん出る場合は、軽く考えずに医療機関で診察を受けるようにしましょう。 |
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RSウイルス感染症とはどんな感染症か |
RSウイルスによる乳幼児の代表的な呼吸器感染症です。毎年冬季に流行し、乳児の半数以上が1歳までにほぼ100%が2歳までに感染し、その後も一生再感染を繰り返します。
RSウイルス感染症は冬場に流行する感染症です。通常は秋から増加し12月頃にピークを迎え、年明けは徐々に減少し3月ころに落ち着く、という流行パターンを呈します。流行すると、多い週には1週間あたり5000件の報告になることがあります(報告数は医療機関受診者でRSウイルスの感染が確認された人のみなので、実際には何倍もの感染者がいると推定されます)。年齢別に見ると、0歳〜1歳児が7割を占め、0歳〜2歳児までで全体の9割以上を占めています。
RSウイルスは、何百種類もある風邪の原因となるウイルスの一種で、細気管支に感染するため、呼吸器系の症状が強く出ます。一度感染しても直ぐに抗体ができないため何度も感染します。感染を繰り返すことで少しずつ免疫が上がり、症状は軽くなっていきます。大人でも免疫ができていないため、母親の抗体で守られている乳児でも感染します。半数以上の乳児が1歳までに感染し、遅くても2歳までにはほぼ全員が感染するほど感染力の強いウイルスです。乳幼児が感染すると重症化することが多いと言われており、気管支炎や細気管支炎、肺炎などを発症することもあります。
RSウイルスとは余り聞き慣れない名前ですが、新生児が特に罹りやすく、感染すると重症化しやすいため、生後1年ぐらいは注意しなければならないウイルスです。ちなみに、RSウイルスのRSとはRespiratory
Syncytial(呼吸器の合胞体)の略で、その名の通り鼻や喉、気管支などに感染するウイルスです。ウイルスに感染すると、患部の細胞が腫れてお互いにくっついてしまうため、このように名付けられました。
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流行するパターン |
RSウイルスは秋から冬に流行する感染症の一つで、ある年には一週間で5007件もの感染報告が
あったと言われており、それなりに危険性も高いウイルスです。このウイルスは、冬に感染するということもあり、乳幼児の場合は加速度的に悪化してしまう可能性もあります。風邪に似た症状のため、大人は風邪だと思い込んでしまうこともあります。そして、今度はその大人が子どもに感染させてしまうという事例もあるので、十分大人も気を付ける必要があると言えます。
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近年のRSウイルス感染症の発生傾向について |
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RSウイルス感染者の報告数は例年冬期にピークとなり、夏期には少ない状態が続いていますが、2011年以降、7月頃から感染者の増加傾向が認められています。このように近年は流行のスタートが早い年が多く、秋に流行がピークに達して、そのまま冬まで流行が続くことがあります。特にここ数年は早くから感染者が増加する傾向にあり、9月頃から患者が増えてくることがあります。たとえば一昨年は11月から12月にかけて流行しましたが、昨年はそれよりも早くから感染者が増加しました。今後も感染症の発生時期が早まる傾向にあるため、今後の地理的な広がりや年齢分布、重症例の発生などの動向について更なる注意が必要です。 |
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RSウイルス感染症は分かりにくい |
RSウイルス感染症は風邪と似て咳やクシャミ、鼻づまりに熱といった症状が出ることもあって、風邪と勘違いしてしまうことが多いと言われます。もしもお子さんがこのウイルスに感染しても、恐らく親御さんも「風邪かな?」くらいにしか思わないでしょう。どうやって風邪ではないことに気がつくかと言うと、止まらない激しい咳が続くのでおかしいと気づくのが一般的だと言われます。また、病院に行って専用の検査を行なうことでRSウイルス感染症だと分かることが多いとされます。
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RSウイルス感染症の症状 |
RSウイルスに染すると咳や鼻水、発熱など通常の風邪と同じ症状に加え、ゼーゼーという雑音を含む呼吸が見られます。咳はひどく、むせるような咳が生じます。発熱は38度〜39度くらいになることがありますが、38.5度以上の高熱を伴うことは多くはありません。大人が感染した場合、症状は風邪程度で収まりますが、乳児の場合は重症になりやすく、乳幼児期の呼吸器感染症としては最も重要な疾患とされています。RSウイルスは永続性抗体を作りにくいため、現在有効なワクチンがなく、また、感染力が非常に強いため、何回も感染する恐れがあります。従って、幼児期における再感染での発症はよく見られます。加えて将来的に肺機能に影響を及ぼすため喘息になりやすく、気道が閉塞状態になる慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクを高めてしまう可能性も指摘されています。
通常RSウイルスに感染してから2〜8日間程度の潜伏期間を経て発熱、鼻汁などの症状が現われ、それが数日続きます。初感染乳幼児の約7割は、上気道炎症状のみで数日のうちに軽快しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴や呼吸困難症状などが出現します。低出生体重児や、心臓や肺に基礎疾患があったり、神経や筋肉の疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクが高まります。重症化し、入院治療を受けるのは1〜3%程度とされています。重篤な合併症として注意する必要があるものには、無呼吸発作や急性脳症などがあります。初めて感染した場合は症状が重くなりやすく、低出生体重児や先天性心疾患、慢性肺疾患、免疫不全などを持つハイリスク児は要注意です。なお、生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、呼吸器症状を伴わない非定型的な症状を呈することで診断が困難になる場合があり、突然死に繋がる無呼吸発作を起こすこともあります。乳児期早期(生後数週間〜数カ月間)のお子さんがいる場合には、感染しないよう、周りの大人たちの注意が必要です。ただし、感染の回数が増えるほど症状は軽くなると言われており、2歳以上の子どもについては鼻風邪程度の症状ですむことも多くなります。しかしながら、先天性心疾患や慢性肺疾患などハイリスク乳幼児の風邪症状に留意し、症状が認められたら直ちに医師へ受診させることが必要です。
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RSウイルス感染症の主な症状 |
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- 咳や鼻水、発熱(38.5度以上の発熱は少ないが、咳がひどい)
- 喘鳴がある(ゼーゼーいう喘息のような苦しそうな呼吸)
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RSウイルス感染で起こる細気管支炎 |
1歳ぐらいまでの小さな子ども、特に早く生まれた低出生体重児や心臓に病気を持っている子どもの場合、細気管支炎を起こして重症化しやすいとされます。さらに肺に病気を持っている人にの場合も重症化します。細気管支炎は肺に近い気道(細気管支)にRSウイルスが感染し、様々な症状を起こす病気です。細気管支炎では38.5℃以上の発熱は少ないですが、咳がひどいのが特徴です。
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代表的な症状 |
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- 水のような鼻汁
- 鼻づまり
- ひどい咳、むせるような咳
- 呼吸数が多くなる多呼吸や肋骨の下がへこむ陥没呼吸などの呼吸困難
- 呼吸をさぼる無呼吸
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RSウイルス感染症の主な留意点 |
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RSウイルスは乳児(1歳未満の赤ちゃん)が感染すると重症化する恐れがあるので、症状の変化などには注意が必要です。また、2歳以上の子どもや大人が感染しても風邪のような軽症でRSウイルスと気が付かずに乳幼児に移してしまうことがあるので、2歳以上の子どもや大人も感染には気を付けることが必要です。 |
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RSウイルス感染症が重病化しやすいリスク要因 |
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- 早産児もしくは在胎期間が35週以下
- 気管支肺異形成症(BPD)
- 先天性心疾患(CHD)
- 免疫不全
- 染色体異常
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RSウイルス感染症が重症化する可能性がある場合とその原因 |
乳幼児の場合で初めてこのウイルスに感染してしまった場合、重症化しやすい傾向にあるなどと言われています。たとえば咳がひどくなって気管支炎を起こしてしまったり、肺炎になってしまったりすることもあるので、なるべく病院に行くようにすることをオススメします。もっとも病院でも対処療法しかできませんが、入院が必要になる場合もあるので医師に診断してもらう方が安心できます。
なお、RSウイルスの感染によって重病化しやすい先天的な原因としては、まず早産または在胎期間が35週以下であること、また、気管支肺異形成症や先天性心疾患、免疫不全、染色体異常などが考えられ、母乳期間が短いというのもリスクの1つと考えられます。
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RSウイルスと風邪やインフルエンザその他との相違 |
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RSウイルスと風邪との違い |
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風邪は、風邪の症状を引き起こすインフルエンザ以外のウイルスに感染したために発症します。風邪の原因となるウイルスは、その多くが春と秋に多い鼻風邪を引き起こすライノウイルスと、冬に多い鼻やのどの症状が出るコロナウイルスです。これらは症状が軽いのも特徴のひとつです。
その一方、11月〜1月の冬に特に流行するRSウイルスも、実は風邪ウイルスの種類のひとつなのですが、他の一般的な風邪症状を引き起こす風邪ウイルスと大きく違う点が、RSウイルスが気管支炎の症状を引き起こす風邪ウイルスであるということです。多くの風邪が母親からもらった抗体が働くためブロックできるのですが、RSウイルスは母親からの抗体をもってしても感染・発症してしまいます。免疫ができにくいため、繰り返して感染することも特徴の一つです。そして、幼児が発症すると症状が辛く、初めての感染・発症の場合は特に症状が重くなる傾向にあるとされています。また、1歳未満の乳幼児が発症すると、気管支炎や肺炎を引き起こす場合があるので、とても怖い風邪ウイルスでもあります。そのため、入院治療が必要となることもあります。なお、大人の感染は軽い風邪症状で済む場合が多いとされています。 |
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RSウイルスとインフルエンザとの違い |
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インフルエンザもウイルス性の病気ですが、こちらは風邪ウイルスとは異なるものです。
RSウイルスとインフルエンザの違いは、RSウイルスは咳や鼻水、熱(場合によっては高熱)や呼吸の喘鳴(ゼイゼイ苦しそうな音)が徐々にに症状として現われるて来るのに対して、インフルエンザの場合は、年齢問わず、高熱を伴った諸症状と共に急激に発症すること、そして、悪寒や頭痛、関節痛、倦怠感や胃腸の不調などなどの全身症状があるということです。どちらにしても、乳幼児にとっては重症化しやすく、とても怖いウイルスという点では変わりありません。 |
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RSウイルスと喘息の関係 |
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乳児期に細気管支炎などになると、5年後に気道が過敏になりやすくなると言われています。たとえばその証拠に、3歳までにRSウイルスが原因の細気管支炎に罹ると、7歳半までの喘息になる可能性が10倍以上にも跳ね上がるという報告があります。そんな訳で、細気管支炎の主な原因であるRSウイルスと喘息とは密接な関係にあることにが分かります。 |
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【2】RSウイルスの対処法〜その治療と予防法〜 |
RSウイルス感染症に罹ったらどのように対応すればよいのでしょうか?
本節では、RSウイルス感染症の治療法と予防法等について解説しました。
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RSウイルス感染症の感染経路・潜伏期間 |
RSウイルスは毎年9月〜3月にかけて感染者が多い感染症です。感染は普通のウイルスと一緒で、飛沫や接触などにより感染します。RSウイルスの潜伏期間は感染から2〜8日(平均3〜4日)で発症しますが、ウイルスの感染期間が7〜20日と長いため、感染が広がりやすいことがその特徴となっています。ボリュームゾーンとしては4日〜6日となっていて、特に対策も必要となります。家族が発症した場合は逆算して最高8日前からの感染を疑って、20日間くらいは他の人と接触させないように気をつけた方がよいでしょう。また、RSウイルスの感染経路としては、主に飛沫感染と接触感染の二つがあります。咳やクシャミなどによって感染してしまうことが多いので、マスクの着用なども考えましょう。
感染経路は通常のウイルスと同様、鼻粘膜や眼瞼結膜(がんけんけつまく。結膜のうち目蓋の裏側の部分)からで、感染している人が咳やクシャミ、会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛沫感染や、感染している人との直接の接触、ウイルスが付いている指や物品(ドアノブや手すり、スイッチ、机、椅子、玩具、コップ等)を触ったり舐めたりすることによる間接的な接触で感染します。ただし、麻疹や水痘、結核のように空気感染(飛沫核感染)はしないとされています。
RSウイルスは感染力と増殖力が強く、発症前の潜伏期にも周囲の人を感染させませす。また、症状が消えてから1〜3週間後も感染力を失わないため、保育園や学校、病院の入院病棟、老人ホーム、家庭内などでの集団感染が生じやすいので注意が必要です。そのため4、院内などの集団感染においては隔離策等が取られています。また、眼や鼻などの粘膜からも感染するので、通常の鼻と口を覆うマスクをしていても感染する場合があります。汚染されたカウンターでは6時間、手についたウイルスは約30分感染する力を持っていて、かなり感染力が強いウイルスと言えます。
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日常生活における感染要因 |
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RSウイルスが接触感染・飛沫感染すること、呼吸系を弱めてしまう原因であること、免疫力の低下などが背景にあることから、日常生活においては次のことが感染などの要因となります。
- 兄弟姉妹がいる
- 保育施設を利用している
- 家族に喫煙者がいる
- 男児である
- RSウイルス流行期前半に出生している
- 母乳保育期間が短い
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RSウイルス感染症の検査と診断 |
冬季に乳幼児が咳や鼻水に続いて呼吸がゼーゼーして来たような場合には、3〜4割ががRSウイルス感染症によるものだと考えられます。RSウイルス感染症の検査は鼻水を用いて行なうもので、インフルエンザの検査に似ています。検査はRSウイルスの抗原検出キットを使用して通常30分ほどで結果が出ますが、3歳以下で入院している患児のみに限り保険適用が認められています。また、血液検査でRSウイルスの検査を行なうことも可能ですが、結果が出るまでに数日を要します。また、細気管支炎の診断は胸部X線で行ないます。肺に空気が溜まり気味になるので、肺が黒く映ります。気管支炎も肺炎も胸部X線で診断できます。
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RSウイルスの検査はいつから? |
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どこで検査すればよいか |
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RSウイルスを検査できる病院は主に内科です。子どもの場合は、まずは小児科に連れて行って診察してもらうことが重要となります。検査にかかる時間としては、大体30分程度で、ウイルスがいるのかを検査キットを使って調べて、それによって判断するのが一般的です。症状が進行している場合や悪化している場合は入院になることがあるので、その点も頭に入れておくことが必要です。 |
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入院の基準となるもの |
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どのような症状が入院の基準になるかと言うと、症状が悪化している場合や経過観察が必要なる場合などが規準になります。それらの判断をするのは医師による部分が大きいため、医師の判断に従って行動することが必要です。赤ちゃんの場合は、医師でも判断が難しいことが多く、入院するかどうかの判断ができない場合もありますが、基本的には3歳以下の赤ちゃんや乳幼児は、RSウイルスに感染すると症状が重症化することが多いので、病院での入院治療が必須となります。 |
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いつから検査するのか |
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RSウイルスの検査は、症状が出てきてから行なうことが一般的です。実際に感染しても潜伏期間があり、直ぐに病院に行くという方が少ないのが現状です。潜伏期間が4〜6日となっているので、それを基準に考えましょう。検査後、入院が必要な場合は入院し、3〜4日で病院を退院できます。なお、いつから登園できるかという点に関しては、医師の判断の元で決めることが重要となります。基本的に登園や登校に関して出席停止になることはないのがRSウイルスです。 |
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RSウイルス感染症の治療法 |
残念ながらRSウイルスに今のところ特効薬はなく、RSウイルス感染症には明確な治療法はありません。従ってRSウイルスに感染した場合は、水分をしっかり補給して、安静にする対症療法が治療の基本となります。
発熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を用います。喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては鎮咳去痰(ちんがいきょたん)薬や気管支拡張薬などを用います。また、脱水気味になる場合は、喀痰(かくたん)が粘って吐き出すのが困難になるので、水分の補給に努めます。細菌感染の合併が疑われる場合は抗生剤を使用します。また、ミルクの飲みが悪い場合は輸液をしたりします。咳に対しては、気管支を拡げる薬や痰を切りやすくする薬、炎症を抑えるステロイドが使われたりします。呼吸状態が悪くなると、人工呼吸器を着けて呼吸を助けてあげる必要があります。特に早く生まれた低出生体重児や心臓に病気を持っている子ども、一部のダウン症の子どもの場合は重症化するので予防が大切で、その予防のためにはパリビズマブ(シナジス)という薬が使われています。ちなみにパリビズマブ(シナジス)は、RSウイルス粒子表面のあるタンパク質を特異的に結合する免疫グロブリンで非常に高価な薬で、3kgの赤ちゃんで使うと1回約8万円弱になります。RSウイルス感染の流行期の前に1ヶ月毎に5回筋肉に注射します。また、RSウイルス自体に効果があると言われているリバビリンという薬がありますが、日本では残念ながら使用できません。ウイルスを抑える作用はあるのですが、症状や重症度の改善はないと報告されているためです。
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RSウイルス感染症に気づいたらどうするか? |
RSウイルス感染症は保育所などで施設内流行を生じやすいので注意が必要です。また、家族内感染も高い率で起きます。飛沫や接触により感染するので、患者さんの気道分泌物の付着したものの扱いに注意し、手洗いとうがいを励行しましょう。
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RSウイルス感染症の予防 |
RSウイルス感染症の感染経路は飛沫感染と接触感染で、発症の中心は0〜1歳児です。一方、再感染の際には感冒様症状または気管支炎症状のみである場合が多いことから、RSウイルスに感染していても感染に気づかない2歳児以降の子どもや成人が存在しています。従って、自分自身や配偶者など、または2歳以上の子どもが風邪のような症状の時には、乳幼児への主な感染ルートは家族なので、なるべく0歳〜1歳児には近づかないようにすること、また、家族全員で手洗いなどをすることが感染予防に繋がります。また、0歳児と1歳児に日常的に接する人は、RSウイルス感染症の流行時期はもちろん、流行時期でなくとも、咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用するなどして0〜1歳児に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるオモチャや手摺りなどは小まめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水及び石鹸による手洗いか、或はアルコール製剤による手指衛生に励んで下さい。なお、タバコの煙は子どもの気道を刺激するため咳症状を悪化させ、喘鳴を起こす上に、また、感染後の症状悪化だけでなく、健康時にも気道の状態を悪くしてしまうため、感染するリスクも高くなると考えられます。従って、室内を適度な温度(26〜28度)と湿度(40%以上)に保ち、小まめに換気・掃除をして清潔を保つことも重要です。
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RSウイルス流行期に控えるべきこと |
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RSウイルス流行期(10月頃〜2月頃)には、特に、次のような場所への外出や行動を避けましょう。
- 受動喫煙の環境
- 人の出入りが多い場所
- 保育所の利用
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