【1】危険な熱中症〜その症状と分類〜 |
今年も熱中症の季節がやってきました。
本節では、その熱中症の症状や分類を中心に、熱中症がどんな障害なのか出来る限り詳しく説明しました。
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今年の熱中症の傾向 |
熱中症の発症数が急増する7月は熱中症予防強化月間です |
熱中症の発症数が急増する7月は熱中症予防強化月間です。
政府は平成25年から7月を「熱中症予防強化月間」と定めて気象情報、熱中症の予防法や応急処置などについて国民により広く注意を促すことになりました。熱中症は、毎年7月から8月に集中して発生し、特に梅雨明けの蒸し暑く、急に暑くなる7月には、身体が暑さに慣れていないため、例年熱中症による救急搬送者数や死亡者数が急増しています。
私たちの体は、血管を広げて外気に体内の熱を放射したり、汗をかいて蒸発させたりして体温の急激な上昇を防いでいます。しかし、気温が高いと体内の熱は放散されず、湿度が高いと汗は蒸発しません。熱中症は、周りの温度に体が対応することが出来ず、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節機能が上手く働かないなどが原因で起こります。日最高気温が30度を超える辺りから熱中症による死亡が増え始め、その後気温が高くなるに従って死亡率が急上昇します。また、熱中症は気温が高い場合だけでなく、湿度が高い場合や風が弱い、日差しが強いなどの環境でも起こりやすくなります。近年、地球温暖化や大都市のヒートアイランド現象によって熱中症の危険性は高まってきています。特に小さい子どもや高齢者、体調不良の人、肥満の人、普段から運動をしていない人などは熱中症になりやすいので注意が必要です。
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今夏の熱中症患者数は昨年並みの4万人 |
消防庁によると、昨年は6〜9月の間に全国で4万人以上の人が熱中症によって搬送されたそうです。東京都23区で搬送された人は8月から9月頃にかけて多くなっていますが、その間は最高気温も高く、このことから気温と熱中症患者数は正の相関が見られることが分かります。そうすると、気になるのが夏場の気温です。それでは、今年の夏は一体どれぐらいの暑さになるのでしょうか?
天気予報から考えると、日本の天気を左右する偏西風が平年よりもやや南寄りで、暑さのポイントとなる太平洋高気圧の張り出しが平年よりも弱めであること、また、日本の気温に影響を及ぼすチベット高気圧もやや弱いといったことから、今年の夏は、高気圧に覆われそうな東日本では気温は平年並みか少し高めで、その他の地域はほぼ平年並みだろうと考えられます。そのため、しっかりとした予防策を講じなければ今夏の熱中症患者数も昨年と同様4万人程度になる可能性が高いと言えるでしょう。
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梅雨時の熱中症に注意を〜6月の後半〜7月前半は熱中症要注意時期!〜 |
ギラギラと照り付ける真夏の太陽と酷暑。熱中症と言えば盛夏のイメージがあります。確かに熱中症の発生は猛暑に最も多いことは事実その通りです。しかし、実は熱中症は真夏に限った話ではありません。今年は5月に各地で真夏日が記録されるなど汗ばむほど暑い陽気がゴールデンウィーク前後から既に見られました。そして、その暑さに比例するかのように、熱中症が原因とみられる救急搬送者も5月から各地で増加しています。その証拠に、4月下旬から5月下旬までの約1カ月間において、全国で熱中症による救急搬送者が1,800人も出ているそうです。この数字に驚きを感じる人も少なくないでしょう。熱中症は7月や8月といった真夏のシーズンに起きるものだと考えている人もいるかもしれませんが、実際は6月といえども警戒に十分値する時期と言えるのです。それでは、実際どのタイミングで熱中症の予防を考える必要があるのでしょうか?
熱中症発生のリスクが特に高くなるタイミングとして、5月の暑い日と梅雨の晴れ間、梅雨明け、そして、お盆・お盆明けの4つが挙げられます。
梅雨の間は曇りや雨で少し気温が下がるのですが、晴れた時には気温が上がるので、くれぐれも注意が必要です。さらに梅雨が明けると気温がぐんと上がるので、こちらも注意が必要です。そしてお盆やお盆明け。身体を休めた後に暖かい気温の中、庭作業など色々と作業をすると熱中症になりやすいわけです。特に今年は、6月の後半に曇りや雨が少ないことが見込まれているだけに、6月の後半は広い範囲で熱中症に注意が必要となります。従って、熱中症が増えてくるタイミングで意識的に予防策や対策を講じることが重要だと言えるでしょう。なお、そんな熱中症のリスクを一目で確認できるよう、日本気象協会は自社サイト内で「熱中症情報」を発信していまする。熱中症のリスクを高める要因の一つである湿度も踏まえ、全国840地点もの熱中症リスクを「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」などの文言とマークを使って分かりやすく表記、これを毎日3回更新することで、出来る限りタイムリーな情報を提供していまする。これらのサービスをうまく活用するのもよいでしょう。
それでは、なぜ熱中症は梅雨時など真夏以外の時期も気をつけなければいけないのでしょうか? それは熱中症の原因を考えてみればよく分かります。熱中症は身体の内外の熱によって引き起こされる病気です。ホメオスタシス(恒常性)と言って、生物である人間は身体の内外の環境変化にかかわらず体温を一定に保とうとしますが、寒い時には体内で熱を作り、暑い時には汗をかいて熱を発散させる仕組みになっているわけです。しかも熱は身体の外からやって来るものばかりではありません。運動をすれば筋肉中で熱が作られ、体温も上がりますが、このような身体の中と外の熱バランスの上に体温が一定に保たれているわけですが、その体温調節の過程で熱によって体内のバランスが上手く取れなくなることがあり、体温調節そのものも上手く働かなくなってしまうことがあるので、そうした状態が熱中症だと言えます。そこで、まだ盛夏とはなっていない梅雨時も要注意の時期だと考えられるわけです。もっとも梅雨が明けてひとたび真夏となってしまえば、身体も暑さに段々と順応してゆきます。汗を上手にかいて体温等を一定にコントロールすることが出来るようになるのです。けれども、梅雨時にはまだ身体が暑さに慣れていない状態で、そのために汗を上手くかくことが出来ず、体温調節に手間取ったりします。そんな時、梅雨の中休みなどで急に気温が高くなったらどうでしょうか。気温が高くなるばかりでなく、蒸して湿度が非常に高かったとしたらどうでしょう? 湿度が高い状態では汗は蒸発しにくく、蒸発時に気化熱で体温を奪ってもらう効率が落ちてしまいます。当然上手に汗をかけない上に効率まで悪いのです。従って、梅雨時にも熱中症に充分なりやすいということになります。
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気温差大での熱中症に注意〜気温や湿度と熱中症の関係性を知ることも大切〜 |
気温が高くて日差しもきつい夏ですが、海水浴やキャンプ、バーベキューに花火と実は格好のレジャーシーズンでもああります。そんな楽しいひと時も熱中症になってしまっては台無しです。しかし、熱中症は、正しい知識と予防策を知っておけば何とか防ぐことができます。従って、気温や湿度など天気と熱中症の関係性を知ることも大切な予防策の一つです。どうかこれからの暑い時期はいつも以上に天候に注意を向けてほしいものです。
暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)というものがあります。その内容は後で詳しく紹介しますが、WBGT温度の上昇と共に熱中症患者の発生数が増加します。具体的には、1日の内で最高のWBGT温度が25になった辺りから熱中症患者が発生し始め、それが28を上回るようになると患者数は激増します。そこで、当然この暑さ指数(WBGT)を熱中症予防に役立てるよいのではないかということになります。暑さ指数(WBGT)が高くなれば、つまり暑さ指数(WBGT)を上昇させるような条件が揃うと熱中症の発生が多くなります。すなわち、気温が高く、湿度が高く、物体表面温度が高ければ、暑さ指数(WBGT)も高くなり、当然ながら熱中症も増えてゆきます。しかしながら、こうした条件が揃わなくても、つまり暑さ指数(WBGT)が実際それほど高くなくても熱中症が発生することがあります。気温が特別高くなくても、ひどく蒸していなくても、日差しが強くなくても、通風がかなりあっても、熱中症になる時はなってしまうことも多いのです。その原因として考えられているのが気温差です。すなわち、気温が乱高下する時には身体の方がそれについてゆけなくなるのです。これは身体が暑さに慣れていない時も同じです。そのため、梅雨時の熱中症に注意が必要だったのです。しかも、気温差が大きくなるのは季節を選びません。それは冷房の良く聞いた室内から室外に出た時も同じです。そんな訳で、熱中症対策として日頃から気温差を常に意識することが大切になります。さらに、個人差(体調等)のあることも忘れてはなりません。その上、気温が低下し始める秋口には思わぬ残暑もやって来ます。そんな秋の熱中症にも注意が必要です。
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熱中症はどんな障害か? |
熱中症は気温が高いなどの環境下で体温調節の機能が上手く働かず、体内に熱がこもってしまうことで起こります。小さな子どもや高齢者、病気の方などは特に熱中症になりやすく、重症になると死に至る怖れもある怖い障害です。
熱中症は運動や暑熱から起こる身体体の障害の総称で、専門的には高温障害とも言われ、一般に熱射病や日射病と呼ばれているものは重症の熱中症のことを言います。特に医学的にいう熱射病は、視床下部の体温を正常に保とうとする機能が低下して汗が止まってしまい、体温が40℃を超えて、そのままでは死に至る極めて緊急性の高い状態を指します。なおこのうち、太陽光がその一因となるものを日射病とも言います。
熱中症は気温や湿度が高い環境によって体温調節の働きに異常が起こる病気で、気温・室温が高く湿度が高いと起こりやすくなります。そのため、熱中症は真夏だけでなく、急に気温や湿度が高くなる6月下旬から危険度が増してきます。梅雨の間に急に晴れてぐっと気温が上がる時や、梅雨が明けて蒸し暑くなる時などは注意が必要です。なお、新生児や乳児・幼児期の子どもや高齢者は体温の調節機能が不完全なため、熱中症になりやすいと言われています。
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熱中症とその分類 |
熱中症になると具体的にどのような症状が現われるのでしょうか? 日本救急医学会(熱中症に関する委員会)では、熱中症の症状を重症度によってI度からIII度までの3つに区分することを推奨しています。熱中症は急速に症状が進行し、重症化しますので、軽症の段階で早めに異常に気づき、応急処置をすることが重要です。
熱中症は軽い症状から命に関わる重症なものまで段階的に幾つかの症状があります。軽いものでは、立ち上がった時などにクラッとするいわゆる立ちくらみや、呼吸や脈が速くなる、唇の痺れなどが現われることがあります。また、大量の汗をかいて体内の水分と塩分が不足すると、足や腕、腹などの筋肉に痛みを伴う痙攣が起こることがあります。その他にも、脱水症状によるだるさや頭痛、めまい、吐き気などの症状が見られることもあります。さらに症状が進むと、40度以上の高熱や意識障害、痙攣、異常行動などを起こすことがあり、この状態を一般に熱射病と言います。脳内の温度が上昇することで中枢神経に異常が起こり、身体の様々な臓器に障害が出て生命を落とすこともある危険な状態です。
軽症では口渇や発熱、顔面紅潮、目眩等ですが、多量の発汗が続き、水分は補給しても、電解質、特にナトリウム(塩分)の補給が不充分な場合に下肢や腹壁の筋肉に強直性の痙攣が見られますが、これを熱痙攣と言います。また、数秒程度の失神も見られることがあります。運動をやめた直後に起こることが多いとされており、運動中にあった筋肉によるポンプ作用が、運動を急にやめると止まってしまうことにより、一時的に脳への血流が減ること、また暑い中での長時間にわたる活動のため末梢血管が広がり、相対的に全身への血液量が減少を起こすことによるとされています。これがもう少し進んで、大量に発汗して水分とナトリウムの何れか或は両方が不足した状態になると、脱水症状が著明となり、目眩感や疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、吐き気、嘔吐などの幾つかの症状が重なり合って起こります。血圧の低下や頻脈(脈の速い状態)、皮膚蒼白、多量の発汗などのショック症状が見られることもあります。脱水と塩分などの電解質が失われて末梢の循環が悪くなり、極度の脱力状態となり、この時点で放置或は誤った判断を行なえば重症化し、重症へ移行する危険性があります。また、強い口渇により水分だけを摂取すれぱ、ナトリウム不足から熱痙攣と同じように筋の痙攣を起こします。まだ発汗機能が残っていれば、皮膚は湿潤し体湿は40℃を越えません。強い疲労感に加え、進行すれぱ意識障害を起こします。さらに重症化すれば意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、ショック症状などが起こります。高温下で体内の熱産生が発汗や放射などによる冷却機構を上回わり、休温調整が破綻した状態となります。体温が40℃を越えると、細胞に機能障害が起き、42℃では数分で細胞機能は不可逆性になります。診断や治療の遅れは直ちに生命の危機につながるため緊急を要します。
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参考:最初は体温が上がらないことも |
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熱中症になっても、軽症のうちは体温が高くならないこともあります。ただし、最初は軽症でも放置するとあっという間に重症化することもあるため、油断は禁物。「熱が高くないから大丈夫」と思い込まず、他の身体の症状をよく観察しましょう。おかしいと感じることがあったらまずは体温を測ることをオススメします。普段より1度以上高い場合は要注意です。涼しいところで横になるなどして身体を休め、熱が下がるまで様子を見ましょう。 |
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■熱中症の症状と重症度
〜筋肉の痙攣や立ちくらみ、頭痛などが見られたら要注意〜 |
分類 |
重症度 |
主な症状 |
I 度 |
軽症
現場での応急処置が可能 |
- めまい・失神
立ちくらみという状態で、脳への血流が瞬間的に不充分になったことを示し、これを一般に「熱失神」と呼ぶこともあります。
- 筋肉痛・筋肉の硬直
筋肉のこむら返りのことで、その部分の痛みを伴います。発汗に伴う塩分の欠乏により生じます。これを一般に「熱痙攣」と呼ぶこともあります。
- 大量の発汗
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II 度 |
中等症
病院への搬送が必要 |
- 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感
身体がぐったりする、力が入らないなどがあり、これを一般に「熱疲労」と呼ぶこともあります。
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III 度 |
重症
入院・集中治療の必要 |
- 意識障害・痙攣・手足の運動障害
呼びかけや刺激への反応がおかしい、身体にガクガクと引きつけがある、真直ぐ走れない・歩けないなど。
- 高体温
身体に触わると熱いという感触です。これを一般に「熱射病」や「重度の日射病」と呼ぶこともあります。
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熱中症の症状 |
熱中症の病型と症 |
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熱失神 |
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高温や直射日光により皮膚血管が拡張して血圧が低下し(起立性低血圧)、脳血流が減少して起こります。運動中よりも運動直後に起こりやすく、失神が特徴です。目眩や唇の痺れ、顔面蒼白、脈は速くて弱い、呼吸数の増加などを伴います。 |
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熱疲労(熱虚脱) |
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脱水による脱力感や倦怠感、目眩、頭痛、失神、吐き気、過呼吸、血圧の低下(起立性低血圧)、熱痙攣などの幾つかの症状が重なりあって起こります。頻脈(脈の速い状態)や皮膚の蒼白などの症状も現われます。 |
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熱痙攣 |
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大量に汗をかくと身体の中の水分と塩分が失われますが、水分だけを補給したことにより血液の塩分濃度が低下した時に起こります。足や腕、腹部の筋肉に痛みを伴った痙攣、腹痛などが起こります。 |
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日射病・熱射病 |
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中枢機能に異常を来し、意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識不明、昏睡など)が起こります。また、筋肉や肝臓、腎臓、血管などの機能が低下して命にも関わります。なお、熱射病と日射病は、症状はほぼ同じですが、発症した条件によって病名が違ってきます。
- 日射病:
夏の暑い陽射しの下で運動や仕事をすると大量の汗をかくと、身体の中の水分や塩分が著しく不足して脱水状態になり、体温調節機能が麻痺することにより起こります。
- 熱射病:
身体の熱を充分に発散できず、熱が身体にこもってしまい、高い体温に対処し切れなくなった状態です。高温多湿下では室内でも起こります。
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参考:日射病とは?〜日射病と熱射病の違い〜 |
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昔はよく聞かれた日射病という用語は、実は医師によって見解が異なっていて、熱失神=日射病とする説や、或は日光によって熱痙攣などの症状を起こした場合を日射病とする説などがあり、一部に混乱も見られます。また一般的には、従来、高温多湿の作業環境で発症するものを熱射病、日光の直射で発症するものを日射病と言って分けてもいましたが、その発症メカニズムは全く同じものであり、最近では混乱を避ける意味もあって熱射病の用語に統一されつつあるようです。ただ、何れの場合も熱によって引き起こされる機能障害であることに違いはなく、素早い対処が症状を悪化させない重要なポイントであることに変わりはありません。 |
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症状の現われ方 |
先にも触れたように、熱中症は、(1)軽症の熱痙攣、(2)中等症の熱疲労、(3)重症の熱射病の3つに分類され、その症状は、頭痛や疲労感を主とすることから、俗に「暑気中(あた)り」と言われる状態や、筋肉がこむら返りを起こす熱痙攣、脱水が主体で頭痛や吐き気を催す熱疲労、体温が40℃を超え、意識が無くなる最重症の熱射病まで様々です。
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熱虚脱 |
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最も多く見られる熱中症で、頭重感、頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感などで発症し、進行すると、脳血流の減少による目眩や耳鳴り、血圧の低下による顔面蒼白や冷汗などが現われます。さらに意識喪失が見られることもあります。通常、体温の上昇は見られません。 |
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熱痙攣 |
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塩分を補給せず水分だけを補給した場合に低ナトリウム血症が増強(水中毒の状態)されて発症します。口渇や目眩、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、身体各部の有痛性の筋れん縮・痙攣などが現われます。れん縮は手足の筋に見られることが多く、胃に生じることもあります。通常、体温の上昇は見られません。 |
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熱射病(日射病) |
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熱の放散が障害され、体内の蓄熱量が増加するため、体温が上昇します。この状態を熱疲労と言います。放置すれば体温はさらに上昇し、ついには体温調節中枢の破綻を来して熱射病に移行します。熱射病では、体温調節中枢が破綻しているため、体温が41℃以上にもなります。初期には著明な発汗や口渇、頭痛、目眩、吐き気、嘔吐、倦怠感などが認められます。進行すると、皮膚は乾燥し熱く紅潮して痙攣や意識障害、乏尿・無尿などが見られます。 |
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熱中症とその原因 |
熱中症の原因 |
熱中症の発症は高温多湿環境に長時間晒されることが原因で、特に乳幼児や高齢者、不眠・疲労・脱水・基礎疾患(高血圧、糖尿病、心疾患、アルコール中毒、貧血、甲状腺疾患、慢性閉塞性肺疾患など)がある人では熱中症が発生しやすくなります。
人間の体は、皮膚からの放熱や発汗によって体温を下げますが、外気が皮膚温以上の時や湿度が非常に高いと放熱や発汗が出来にくくなり、熱中症を引き起こします。
基礎疾患のある高齢者や肥満・糖尿病の患者、アルコール依存症の患者は、熱射病に陥りやすいとされています。異常な熱波に見舞われた年に多くの高齢者に発生したという報告や、泥酔してサウナで昏睡に陥った人、車内に閉じこめられた幼児の報告もありますが、通常は灼熱環境下での運動や作業を無理に続けた時に発生します。一方、死に至ることもある最重症の熱射病には、素因(元々の体質)が関係するとする考え方があります。その論拠は、スポーツ医学の発達で指導管理を徹底しても熱射病が発症すること、また、熱射病は麻酔により異常な高体温となる悪性高熱症とその病態がよく似ていることにあります。ちなみに、悪性高熱症は骨格筋の筋小胞体におけるカルシウム代謝の異常が原因で、家系的な素因のあることが証明されています。
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熱中症の本当の原因は温暖化!?〜温暖化が進むと熱中症による死亡確率が2〜5倍にもなる〜 |
夏の暑い時期に起きる身体の適応障害を熱中症と言いますが、地球温暖化に都市部でのヒートアイランド現象(都市部の気温が周辺部よりも高くなる現象)が加わって、その発生の増加が近年社会的注目を集めています。このまま温暖化が進み、90年比で平均気温が4.8度上がる2100年までには、熱中症で死亡する危険性は205倍になるとも予測されています。また、最近の統計により、学校でのスポーツ中の発生だけでなく、労働現場や中高年での熱中症の発生が多いことが認識されています。重症型熱中症の死亡率は高く、30%以上にもなると言われます。
近年あらゆるところで地球の温暖化が指摘されています。人間が生活する中で、必要以上に二酸化炭素などのガスを排出したため、地球の平均気温が上ってしまうという現象は、海面の上昇や異常気象といった自然への影響だけでなく、人間自らへの影響も出ています。その証拠に、熱中症の発症数や死亡者数が毎年増加していることも温暖化によるものであると言われています。実際のところ、夏日が増えたり最高気温が上昇することに伴い、熱中症の発症数も増加しています。空調設備の室外機から排出される熱風や自動車などによる排気ガスなど多くの人間社会の排出物が温暖化を確実に進めていますが、その中でも特にヒートアイランドと言われる都市部が異常に気温が上昇する現象が熱中症を増加させているのです。たとえば日本の首都である東京の場合、真夏日が数10年前から比べると2倍近くに増えており、また、30度以上を記録する時間も増加しています。ちなみに、過去のデータから、東京では気温が35℃以上になると熱中症を発症する人が増えることが指摘されています。また、日没後の夜間においても25℃以上の熱帯夜が増加しており、さらに発症者を増やす一因になっています。とにかく、東京はヒートアイランドの代表の都市のひとつであると言われているのです。また、都市部の気温の上昇だけでなく、その影響によって周辺地域に豪雨や落雷なども招いています。たとえば昔に比べて雨不足で渇水が続いたかと思うと、集中豪雨がや季節外れの雷雨などがあったりと気圧も不安定になり、湿度へも影響を与えています。今後ますます温暖化は進むと言われているので、都市部だけに限らず、気温や湿度が上昇し、熱中症を起こしやすい気候になるのは避けられないのかも知れません。
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環境と身体の状態が熱中症の2大要因 |
気温の高い環境にいることで体温を調節する機能が狂ったり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたりすることで起こるめまいや頭痛、痙攣、意識障害などの症状を総称して熱中症と言いますが、この熱中症を引き起こす要因には、環境によるものと身体によるものとがあります。
環境と身体の要因が重なった時に熱中症が起こりやすくなると考えられています。注意が必要な時期は、梅雨の晴れ間や梅雨が明けて直ぐの時期で、暫く涼しい日が続いた後急激に暑くなった日などがそれに当たります。注意が必要な場所は、運動場や公園、海やプールなど強い日差しが当たる屋外や、駐車場に止めた車の中や体育館、気密性の高いビルやマンションの最上階などの場所です。浴室やトイレ、寝室など家庭内の風通しの悪い室内でも熱中症が起こりやすくなるので注意が必要です。
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熱中症の2大要因 |
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- 環境の要因
- 身体の状態
- 激しい運動などにより体内でたくさん熱が産生される
- 暑さに身体が慣れていない
- 疲れや寝不足、病気などで体調がよくない など
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どうして熱中症になるのか? |
人間の体温は視床下部にある体温の中枢によって一定に保たれるようにコントロールされています。しかし、高温多湿の環境の中で水分の補給が乏しい状態で長時間活動を続けると、体温の上昇と脱水から熱中症を生じるのです。
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熱中症に罹りやすい原因 |
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- 環境
- 前日より急に温度が上がった日
- 温度が低くても多湿であれば起こりやすい
- 室内作業をしている人が急に外に出て作業した場合
- 作業日程の初日〜数日間が発症しやすい
- 統計的にかかりやすい時間帯は、午前中では10時頃、午後では13時から14時頃に発症件数が多い
- 素因
- 5歳以下の幼児
- 65歳以上の高齢者
- 肥満者
- 脱水傾向にある人下痢等)
- 発熱のある人
- 睡眠不足
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熱が放出されず体内にこもることで症状が起こる |
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体温調節機能の乱れや体内の水分が失われることが原因に |
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運動や作業をすると私たちの身体の中で熱が生まれます。ただし、人間の身体には体温調節機能が備わっているため、体温が上がり過ぎた時には、自律神経の働きで末梢の血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込むことで熱を身体の外に放出し、それと同時に、体温が上がったら汗をかき、その汗が蒸発する時に身体の表面から熱を奪うことで上がった体温を下げる働きをします。ところが、余りに暑い環境に長くいると、体温調節機能が乱れて体外への熱の放出が出来なくなり、体内に熱がこもって体温が上昇します。また、急激に大量の汗をかくと、体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れてしまいます。それが筋肉や血流、神経など身体の様々な部分に影響を及ぼすと、痙攣やめまい、失神、頭痛、吐き気といった熱中症の症状が現われるてくるのです。 |
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高齢者や乳幼児、持病のある人は要注意 |
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熱中症になりやすい人として、高齢者や乳幼児、運動習慣がない人、太っている人、体調がよくない人、暑さに慣れていない人などが挙げられます。特に高齢者や乳幼児は、体温調節機能の衰えや未熟さによって体内に熱がこもりやすい(体温が上がりやすい)上に暑さを自覚しにくいこともあるために熱中症リスクが高いとされています。子どもは大人よりも身長が低く地面に近い分、アスファルトの照り返しなどによる熱の影響を受けやすくなることも要因のひとつです。また、心臓病や糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病も体温調節機能の乱れの原因となることがあり、ハイリスク要因になります。病気の治療のために薬を服用している場合も、薬の種類によっては発汗の抑制や利尿作用があるものもあり、熱中症の原因になることがあります。 |
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【2】熱中症の予防とその対策 |
熱中症は下手をすると死を招く怖い病気です。しかし、感染症などと違って、熱中症はきちんとした知識の下に充分な予防が可能な障害でもあります。
本節では、そんな熱中症の予防や、いざ熱中症に罹ってしまった場合の対処法について解説しました。
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熱中症の対策〜熱中症は予防が大切〜 |
普段からちょと心懸けておくだけで熱中症の対策になり、熱中症を発症しにくくなります。まずは体調を整えることが何よりも大切ですが、仕事をしてゆく上では規則正しい生活を毎日続けるのは中々難しいものです。寝不足や風邪気味といった身体の不調は日常的にもあるかも知れませんが、しかし、体調が思わしくない時は、早めに仕事を終えるようにして、出来るだけ体調を整えるようにし、外出やスポーツは暫く控えるた方がようでしょう。また、着用する衣服も出来るだけ通気性がよいものを選ぶようにして、帽子や日傘などで直射日光を遮ることが必要です。最近は汗を吸いやすい素材や乾きやすい素材の衣料が多く販売されているので、それらを積極的にを着用することも有効です。そして、こまめに水分を補給できるように、出来るだけ手許に飲み物を置くことも必要です。出かける場合も小さな飲み物を持つようにすると、喉が渇いたと思った時に手軽に水分を給することができます。塩分なども併せて補う必要があるので、出来ればスポーツドリンクなどが望ましいようです。さらに食欲が余りなくても、出来るだけきちんと食事することも重要です。人間は元々食べ物によって栄養を摂取すように出来ているので、疲れや暑さなどから余り食欲がないかも知れませんが、何とか工夫して食事を摂るようにしましょう。なお、子どもやお年寄りには、特に周りの人が気を配ることが必要です。子どもの場合、つい遊ぶことに夢中になったりしていると、喉が渇いていることを言わないケースもあります。また、お年寄りの場合も体力的に無理をしている場合もあるので、周囲が気を配ることが大事です。
熱中症は生命に関わる病気ですが、予防法を知っていれば防ぐことができます。熱中症を防ぐために、日常生活の中では、次のようなことに気をつけましょう。
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急に暑くなる日は要注意 |
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熱中症は暑い環境に長時間さらされることにより発症します。特に梅雨の合間に突然気温が上がった日など身体がまだ暑さに慣れていない時は、暑い日に熱中症が起こりやすくなるため特に注意が必要です。そのためにも、暑さには徐々に慣れるように工夫しましょう。また、夏の猛暑日にも注意が必要です。湿度が高いと身体からの汗の蒸発が妨げられ、体温が上昇しやすくなってしまいます。特に猛暑の時はエアコンの効いた室内など早めに涼しいところに避難しましょう。 |
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暑さを避ける |
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屋外では、日陰を選んで歩いたり日傘をさしたり帽子を被ったりしましょう。また、屋内での熱中症を防ぐため、扇風機やエアコンを適切(設定温度28度以下、湿度60%以下)に使ったり、簾やカーテンで直射日光を防いだりして暑さを避けましょう。 |
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服装を工夫する |
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汗を吸収してくれる吸水性に優れた素材の服や下着を着ましょう。また、襟元はなるべく緩めて熱気や汗が出ていきやすいように通気しましょう。また、太陽光の下では熱を吸収して熱くなる黒色型の衣類は避けましょう。 |
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小まめに水分を補給する |
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喉が渇く前に水分を補給しましょう。また、寝る前の水分補給も大切です。特に暑い日には知らず知らずのうちに汗をかいているので、小まめに水分を補給することが大事です。汗には塩分が含まれているので、大量の汗をかいた時は、スポーツドリンクなどで水分と共に塩分も補給しましょう。ただし、アルコールは尿の量を増やし体内の水分を排出してしまうため、ビールなどでは水分の補給は出来ず、却って危険です。 |
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高齢者は上手にエアコンを |
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高齢者や持病のある人は、暑さで徐々に体力が低下し、室内でも熱中症になることがあります。節電中でも上手にエアコンを使ってゆきましょう。また、高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくい傾向があるので、小まめに水分を補給しましょう。周囲も高齢者のいる部屋の温度に気を付けるように心懸けましょう。 |
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暑さに備えた体力づくりをする |
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暑さに徐々に慣れるように工夫しましょう。日頃からウオーキングなどで汗をかく習慣を身につけておくと夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもなりにくくなります。 |
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個人の条件を考慮する |
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熱中症の発生にはその日の体調が影響します。前の晩に深酒をしたり朝食を抜いたりした状態で暑い環境に行くのは避けましょう。風邪などで発熱している人や下痢などで脱水症状(※脱水症状とは発熱や下痢・嘔吐、運動などによる激しい発汗などにより、体内の水分や塩分が大量に失われた状態のことで、脱水症状になると、頭痛やめまい、倦怠感などの症状が現われ、重症になると意識を失うこともあります)の人、小さい子どもや高齢者、肥満の人、心肺機能や腎機能が低下している人などは熱中症を起こしやすいので、そのような人の暑い場所での運動や作業を考慮する必要があります。 |
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おかしいと思ったら病院へ |
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熱中症は頭痛やめまい、吐き気、倦怠感などの症状から、ひどい時には意識を失い、声明が危険に晒されることもあります。何かおかしいと感じたら直ぐに涼しいところに避難し、医療機関に相談しましょう。 |
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周りの人にも気配りを〜集団活動の場ではお互いに配慮する〜 |
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集団で活動する場合にはお互いの配慮や注意も必要です。自分のことだけでなく、ご近所で声を掛け合うなど周りの人の体調にも気を配りましょう。また、スポーツ等の行事を実施する時は気温や参加者の体調を考慮して熱中症を防ぎましょう。特に暑い場所での作業や運動は、小まめに休憩したり、一人一人当たりの作業時間を短くしたりしましょう。また、活動の後には涼しい環境で安静にするなど体温を効果的に下げるように工夫しましょう。 |
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どんな症状なら病院に行くべきか? |
熱中症予防のためのガイドラインを参考に |
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暑さ指数(WBGT)と熱中症予防指針 |
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熱中症予防のためにどのような温度環境でどのように過ごしたらよいのか、という指針となるものが2つあります。一つは、アメリカにおいて提唱された温度の指標となる暑さ指数(WBGT)と呼ばれるもので、気温・湿度・輻射熱という3つの要素から算出します。熱中症に注意が必要な季節(毎年6月〜9月頃)になると環境省のホームページで各地の実況値と予測値を公開していますので参考にして下さい。もう一つは日本生気象学会による日常生活における熱中症予防指針で、WBGTによる参考温度を基準に危険度の目安と日常生活を送る時の注意点などを示しています。生活や外出などの参考にされることをオススメします。 |
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急に暑くなった日は要注意 |
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人間の身体には元々環境への適応能力が備わっているため、暑い環境でも数日過ごすうちに自律神経の働きがよくなり、汗を上手にかけるようになったり体温調節ができるようになってゆきます。ただ、涼しい日が続いた後に急に暑くなった場合などは、身体がまだ暑さに慣れていないため、上手く適応出来ずに熱中症になってしまうのです。そのため、梅雨の晴れ間など急に暑くなった日には特に注意が必要になります。 |
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運動中や仕事中以外に、生活の中で起こる熱中症も多い |
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熱中症と聞くと、炎天下でスポーツをしたり無理な作業をしたりすることで起こると考えている人も多いでしょうが、実際には家庭内で日常生活の中で起こる熱中症も多くあります。特に高齢者や乳幼児は、エアコンのない室内や風通しの悪い場所にいると、余り動かず静かにしている時や寝ている時などにも熱中症を起こす危険もあるため気をつけましょう。小まめに室温を測り、風通しや服装に注意して過ごすことが大切です。 |
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■日常生活における熱中症予防指針 |
暑さ指数(WBGT) |
注意すべき生活活動の目安 |
注意事項 |
危険
(31℃以上) |
全ての生活活動で起こる危険性 |
高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避けて涼しい室内に移動。 |
厳重警戒
(28〜31℃以上) |
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意。 |
警戒
(25〜28℃以上) |
中度以上の生活活動で起こる危険性 |
運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる。 |
注意
(25℃未満) |
強い生活活動で起こる危険性 |
一般に危険性は少ないものの、激しい運動や重労働時には発生する危険あり。 |
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どんな症状なら病院に行く?〜その目安が分かる熱中症のガイドラインが誕生〜 |
暑さを増すこれからの季節、気をつけたいのが熱中症ですが、日本救急医学会では熱中症の診療指針を初めてまとめた「熱中症診療ガイドライン2015」を公開しました。これは、国内外の論文報告や全国の救命救急センターなどでの調査結果を下に作成したもので、どのような症状で医療機関に行くべきか、そ目安を示しています。 |
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発症ピークを避けて外出 |
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季節に関わらず暑さを感じる環境下で体調を崩した際は常に熱中症の可能性を疑った方がよいと言われます。ただ、一般に熱中症の症状を訴える人が増える時期は7月中旬から8月上旬までの期間で、最も警戒すべき時期は梅雨明け前後だとされます。そのうちでも熱中症の症状が出やすい時刻は正午と午後3時前後であることが判明しています。こうしたピークを避けて外出の計画を立てることが熱中症の予防に繋がるのです。なお、熱中症患者の割合には地域差が見られ、近畿・中部などの大都市圏で人口の割に発症率が高いとされます。夏の西日本では他のエリアよりも熱中症に対する注意を徹底する必要がありそうです。 |
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症状のレベルをチェック |
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同ガイドブックでは、熱中症の重症度を1度から3度までに分類し、各レベル毎の対処法を掲載しています。先にも説明しましたが、I度は、体温などに関わらず立ちくらみやめまい、生あくび、こむら返りなどが起きる状態で、I度は頭痛や嘔吐、虚脱感、集中力や判断力の低下などの症状が現われる状態、そして、III度は重症で、意識障害や痙攣発作などが起きるとされます。 |
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初期段階は「身体を冷やす」「水分・塩分補給」 |
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I度なら現場での応急処置で回復を図ることが可能です。冷たいタオルなどで体の表面を38度以下に冷やし、水分や塩分を補いましょう。水分補給の際は、普通の水では体内の塩分が薄まり、痙攣を起こす可能性があり、一方スポーツドリンクには大きな問題はないものの、塩分が少なく糖分が多いという特徴があります。従って熱中症発症後に補給する水分としては、0.1から0.2%の食塩水が理想となります。現実的には市販の経口補水液が最良ということになるでしょう。その他、梅昆布茶や味噌汁なども塩分を含んでいるため効果が期待出来ます。 |
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II度以上は受診を躊躇わないで |
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II度以上は医療機関を受診するレベルですが、I度に分類される症状でも、回復の兆しがなければ医療機関に行くべきです。一方、III度となると最早救急車を呼ぶレベルに達しており、殆どは入院を要する状態です。本人の意思で動くことは難しいため、周りの人間が水を噴霧させるなどして、搬送される前に身体を冷やすことが望ましいとされます。
一度熱中症に罹ると後遺症が残ってしまう恐れもあります。その一方で、III度と見なされるような重症でも、早い段階で周囲の人が気づいて適切な処置を行なえば影響が残らないケースも少なくありません。当然ながらその場での対処が命運を分けることがあります。従って学校や職場などで体調を崩した人がいたら、一般の人でもぜひこの指針を役立ててほしいものです。 |
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熱中症予防の工夫 |
暑さを上手に避けて生活する工夫を |
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エアコンを賢く活用する |
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エアコンをつけて温度設定していても、センサーの場所や感度によって設定温度が正確ではないこともあります。人が過ごしている場所の気温が正しく測定出来るように配慮し、室内の人数や行動、服装などに合わせて温度を設定しましょう。幾ら節電しているからと言って、目安としては28度を超えないように設定しておくと安心です。また、エアコン使用時は冷風が直接人に当たらないように注意が必要です。冷気は部屋の下のほうに溜りやすいので、扇風機などを利用して風を動かすと、余り室温を下げなくても涼しく過ごせます。カーテンや簾などで直射日光を遮る、冷気を外に逃がさないなどの工夫もエアコンの効果的な利用に繋がります。 |
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冷やしすぎにも注意が必要 |
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エアコンの活用は熱中症予防に効果的ですが、冷やしすぎは却って身体にもよくありません。室内の気温を余り下げてしまうと、今度は涼しい部屋から暑い屋外などに出た時に急激な気温差に身体が適応出来ず、めまいや気分の悪さなどが引き起こされることがあります。身体に負担をかけないためにも、余り設定温度を低くしすぎない(24℃以下にならない)ように心懸けましょう。 |
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家庭内の風通しの悪い場所をチェック |
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家の中でも風通しの悪い場所は熱気がこもりやすく、熱中症の原因になることがあります。締め切った寝室や浴室、トイレ、火を使って調理するキッチンなどは、時々ドアを開ける、扇風機や換気扇を回すなど意識して風通しを図ることが大切です。 |
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涼しく過ごせるよう服装も見直して |
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吸湿性、通気性のよい素材の衣類を選ぶ |
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少しでも涼しく過ごすためには、汗を吸い、通気性のよい綿素材の衣類が適しています。近年多く市販されている吸汗素材、速乾素材のシャツや軽く涼しいタイプのスーツなどもオススメです。首回りが締め付けられると熱がこもってしまうため、なるべくネクタイを外し、襟元を弛めて風を通しましょう。それだけでも体感温度は下がると考えられます。 |
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「暑いから着ない」は逆効果 |
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暑いならいっそ何も着ないで過ごす方が涼しくてよいのではないかと考える人もいるかも知れませんが、それは却って逆効果です。衣類は、汗を吸って蒸発させるのを助ける他に、直射日光の熱や紫外線から肌を守る役割も果たしているからです。 |
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参考:暑さに負けない身体づくりも大切 |
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熱中症は身体が暑さに慣れていないことで起こりやすくなります。身体が暑さに慣れることを「暑熱順化」と言いますが、普段から運動をしていて適度に汗をかく習慣がある人は暑熱順化していることになり、熱中症に罹りにくくなります。1日30分程度のウォーキングを続けるなど普段から暑さに対抗できる身体づくりをしておくことをオススメします。また、寝不足や二日酔い、疲れが溜っている、風邪気味、食事抜きなどによって体調が悪い時も熱中症に罹りやすいため、日頃から十分な栄養と休養を摂り、健康管理を心懸けることも重要です。 |
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小まめに水分補給を |
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水分だけでなく塩分も一緒に補給することが大切 |
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汗をかいたら、水分といっしょに塩分を摂りましょう。暑い時にはたくさん汗をかきます。汗をかくことは、身体の熱を逃がして体温が上がりすぎないように調節するために必要なことですが、しかし、汗をかけば体内の水分と塩分が失われることになります。それによって血液の流れが悪くなり、脳や身体の隅々にまで酸素や栄養が届きにくくなるため、筋肉の痙攣や頭痛、吐き気、めまいが起こったり、高熱が出たりします。これを予防するためには小まめな水分補給が不可欠ですが、水分だけを摂ると、今度は塩分が不足して血液が薄い状態になってしまうため、塩分も一緒にとることが必要となります。その目安としては、コップ1杯(200ml)の水にひと摘まみ(0.2g)の塩を入れた塩水か、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンクがよいとされています。 |
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喉が渇かなくても水分を補給 |
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脱水症状のサインとして、喉の渇きに加えて、汗や尿の量が減る、尿の色が濃くなるなどの症状が挙げられますが、軽い脱水状態では喉が渇かないこともあります。特に高齢者は脱水症状が進んでいても喉の渇きを感じにくいことがあるため、飲みたいと思わなくても、外出や運動、入浴、睡眠などの前に水分を摂り、その後にも水分を摂ることを心懸けましょう。ただし、高齢者は水分の摂り過ぎによっては心臓に負担がかかることもあり、注意が必要な人もいます。持病のある人は水分の摂り方について主治医に相談しましょう。 |
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利尿作用のある飲み物に注意 |
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飲むものは水、麦茶、塩水やスポーツ飲料などが望ましいでしょう。それ以外に好きな飲み物を飲んでも構いませんが、カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールを含む酒類には利尿作用があるため、却って脱水症状を進めてしまう危険もあります。利尿作用のあるものは飲み過ぎないよう注意が必要です。 |
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熱中症とその治療 |
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医療機関での受診が望ましい場合とセルフケアが可能な場合 |
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症状が軽く自力で水分補給出来、意識がはっきりしていて、涼しいところで暫く安静にして改善される場合は、まずはセルフケアで様子を見ましょう。しかし、激しい頭痛や吐き気、40度近い高熱など症状が重い場合は速やかに医療機関を受診することが必要です。さらに、自力で水分が摂れないとか、異常行動や意識障害が見られる、痙攣を起こしているなどの場合は、一刻も早い対応が必要なため、速やかに救急車を呼んで下さい。
■熱中症の重症度別の対応方法 |
分類 |
症状 |
対応方法 |
I度 |
めまい・失神(立ちくらみ)・筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)・大量の発汗 |
直ぐに涼しい場所に移して身体を冷やし水分・塩分を与える |
II度 |
頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感 |
自分で水分・塩分を摂れない場合は、直ぐに病院に搬送する |
III度 |
意識障害・痙攣・手足の運動障害・高体温 |
直ぐに病院に搬送する |
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熱中症の検査 |
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検査が必要になるのは、熱中症の中でも熱射病(日射病)です。熱射病では、病態の把握と重症度の判定のため、胸部X線検査(肺水腫の検索)、頭部CT検査(脳浮腫の検索)、血清AST、ALT、LDHの測定(肝障害時には上昇)、血清尿素窒素・クレアチニン濃度の測定(腎障害時には上昇)、血清CPKの測定(筋融解時には上昇)、血小板数・プロトロンビン値・活性化部分トロンボプラスチン時間・FDPの測定(播種性血管内凝固症候群の検索)、動脈血ガス分析(アシドーシスの検索)、血清ナトリウム・カリウム・クロール濃度の測定(電解質異常と程度の検索)、白血球数・ヘモグロビン濃度の測定(脱水の存在で上昇)といった検査が必要になります。 |
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熱中症の診断 |
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高温多湿環境に長時間晒された病歴が重要で、各病型は臨床症状の現われ方が診断の決め手になります。多くの場合、幾つかの病型が混在して発症します。意識障害を来す疾患や痙攣を起こす疾患、発熱を伴う疾患との区別が必要になります。 |
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熱中症の治療方法 |
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- 熱痙攣:
大量の発汗に対し水分のみを補給した際に起こりやすく、相対的な塩分の不足が原因とされています。そのため、生理的食塩水や乳酸加リンゲル液の点滴静注を行ないます。
- 熱疲労:
脱水症の一種ですが、体温調節機能が残されているため発汗は持続し、体温もそれほど上昇していません。生理的食塩水や乳酸加リンゲル液の点滴静注と鎮痛薬の投与で効果がありますが、脱水の補正に時間がかかるため、入院のうえ治療を行ないます。
- 熱射病(日射病):
視床下部の体温中枢や汗腺の機能が衰退して深部体温は40℃以上になり、緊急性の高い状態です。血液学的には消費性凝固障害(凝固因子が消費され、出血傾向が出現する)を認め、生存例でも高率に急性腎不全に陥ります。集中治療室に収容し、(1)身体冷却、(2)体液・電解質の補正、(3)抗痙攣薬、筋弛緩薬の投与、(4)消費性凝固障害に対する治療、(5)その他の対症療法が集中的に行なわれます。
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熱中症の応急処置 |
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基本の応急処置 |
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- 休息:
身体を冷却しやすいように衣服を緩め、安静にする。
- 冷却:
涼しい場所で休ませる。風通しのよい日陰やクーラーの効いた部屋に移動する。また、氷嚢や氷塊などで腋の下や首の周囲、脚の付け根などを冷やし、血液を早く冷ます。
- 水分補給:
意識がはっきりしていれば水分補給(スポーツドリンク等)を行なう。なお、意識障害や吐き気がある場合は医療機関での輸液が必要で、救急車を呼んで至急医療施設へ搬送する。
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熱中症の救急処置は“FIRE”(ファイヤー)と覚えよう |
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熱中症における臓器障害の抑止は水分補給と体温を下げることがキーポイントとなります。スポーツ及び教育現場での応急処置は、具体的には次のようになります。いざという時に備えて「FIRE」と覚えておきましょう。
なお、予防もこれに準じます。
- F(Fluid):液体(水+塩分)の経口摂取、または点滴
- 意識があればスポーツドリンクなどを飲ませる。意識が混濁していれば出来るだけ早く点滴を開始する
- I(Ice):身体の冷却
- 衣服を脱がせる
- 氷嚢または冷えたカンジュース等で首筋や脇の下、足の付け根などの大きな動脈が触れる部位を冷却する
- 水を口に含んで身体に吹きつける
- 団扇や扇風機で風を送る
- R(Rest):運動の休止、涼しい場所で休む
- 涼しい場所で休ませる。可能であればクーラーのある部屋へ移す
- E(Emergency):緊急事態の認識、119番通報
- 119番通報、救急車の手配
- 意識状態のチェック
- 体温のチェック(※現場での体温は熱中症診断に役立つ重要な情報となります)
- 医療機関に到着したら、倒れた現場での状況や気温、スポーツの強度及び練習時間などを担当医に話す
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運動×ミルクプロテインで熱中症対策! |
熱中症対策は厚くなる前から始めよう |
運動で1Lの汗をかくと、血液中から失われる水分量は100mlにもなると言われ、それに伴って体温を調節する働きも低下します。従って、熱中症を防ぐためには何はともあれ小まめな水分補給が大切となりますが、最近の研究から分かってきたこととして、ややきつい運動の後に牛乳や乳製品を摂取すると、体温の調節機能が改善し、暑さに負けない身体になることが明らかになっています。つまり、熱中症対策には、運動中の小まめな水分補給だけではなく、本格的な夏が訪れる前から暑さに負けない身体づくりをすることも大切なのです。
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インターバル速歩×牛乳&乳製品で、暑さに負けない身体をつくろう |
暑熱環境で運動すると、発汗によって血液量が減り、十分な血液が心臓に戻りにくくなります。その結果、脳や筋肉、皮膚などに十分な血液が行き渡らず、体温の調節機能がうまく働かなくなって熱中症が起こります。これを防ぐには、血液量を増やすと共に筋力を高めて心臓に血液が戻りやすい状態にしておくことが必要となります。
血液は身体の隅々まで流れて酸素や栄養を届け、老廃物を回収していますが、体内で発生した熱を皮膚の近くまで運んで冷やすといった体温の調節機能も果たしています。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目ですが、人の心臓は体の上部にあるため、下がった血液を心臓まで押し戻すには、収縮を繰り返す筋肉のポンプ力が必要です。それを高めるには、ややきつい運動と運動直後の牛乳や乳製品の摂取がオススメなのです。
それでは、そのややきつい運動とはどの程度の運動なのでしょうか? ややきつい運動とは、最大体力の60%以上の負荷がかかった運動です。1日30分以上、1週間に4日以上ややきつめの運動を続けると効果的だと言われています。運動の種類はややきついと感じるなら何でも構いませんが、体力のない人や運動習慣のない中高年、高齢者にはインターバル速歩が適しています。インターバル速歩とは、早歩きとゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返し、これを1日5セット以上行なう運動です。そして、運動後30分以内に牛乳や乳製品を摂取します。このトレーニングを10日間続けると血漿量(血液中の水分)が増加し、体温の調節機能が上昇する上に、数カ月後には筋力もアップして暑さに負けない身体がつくられるという寸法です。
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運動後の牛乳&乳製品を習慣にしよう |
それでは、なぜ運動後に牛乳&乳製品を摂取するとよいのでしょうか?
ややきつい運動で筋肉に負荷がかかると糖質が燃料として使われる割合が大きくなります。運動中は筋肉に蓄えられているグリコーゲンがエネルギー源として使われますが、量が減ると筋細胞の膜の表面にインスリン感受性グルコース輸送体という物質が現われ、血液中のグルコース(ブドウ糖)を筋細胞に取り込もうと活発に働き始めます。ところが、運動が終了すると急速にこれが消滅するため、筋肉に輸送体が出現している運動直後が栄養補給の絶好のタイミングとなり、運動中に消費したグリコーゲンが効率よく回復します。また、運動中は筋線維が損傷するので、その修復のために材料となるアミノ酸を筋細胞に運ぶ必要がありますが、牛乳や乳製品にはそれらに必要な糖質とタンパク質の両方が含まれ、これが効率よく吸収されて活用されるので丈夫な体づくりに役立つわけです。さらに、糖質とタンパク質を一緒に摂ることで血液量が増加して汗をかきやすい身体になり、暑さに対する順応性も高まります。この仕組みの一つと考えられているのが血液中のアルブミンで、アルブミンは分子量が大きく、血管の内側から外側に移動しにくい性質を持っていますが、栄養補給によって血液中のアルブミン濃度が高まると浸透圧の影響で血管内に水分が引き込まれ、血液量が増えるのです。このように、ややきつい運動をすると、体内でグルコースやアミノ酸の取り込みが活発になり、牛乳や乳製品を摂取することで筋力がアップして血液量も増え、暑さに負けない身体がつくられという次第です。大人は夏の健康維持のために、成長期の子どもは熱中症予防のおやつとしてややきつい運動後の牛乳&乳製品を習慣にしてみるのもよいと思います。
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参考:熱中症のキッカケになる体調不良に注意 |
熱中症の発生には、個人の体力や暑さに対する耐性、体調なども大きく影響します。疲れている、熱がある、風邪気味など体調がよくない時は当然ながら体温を調節する機能も低下しています。また、胃腸の調子を崩して食欲がない、下痢気味の時は脱水を起こしやすくなります。そんな時は運動は控えて無理をしないようにして下さい。また、夏の脱水は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあるので、運動する時は前日から体調に気をつけるようにしましょう。また、運動後は当然ながら体力も消耗しています。大量に汗をかくと身体が冷えて夏風邪の原因になることもあります。そんな時に牛乳や乳製品に含まれるタンパク質(ミルクプロテイン)は免疫細胞の栄養にもなります。運動後30分以内にこれらを摂取すると、筋肉の回復を早めるだけでなく、身体の抵抗力も増します。運動した翌日に疲労や不調を残さない体のケアに役立ちます。
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熱中症になってしまったら |
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熱中症に気づいたらどうするか? |
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軽症の熱虚脱や熱痙攣では涼しい所で安静を取り、スポーツドリンクや食塩水を飲用して下さい。重症例や熱射病(日射病)では内科を受診して治療を受けて下さい。とにかく、日常生活では長時間の高温多湿環境にさらされないように注意し、水分や塩分の補給を忘れないように心懸けましょう。 |
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熱中症で病院に搬送されたら |
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熱中症は症状が急変することがよくある病気なので、発症後はできるだけ早く医師などに診てもらう必要があります。病院などへ搬送する場合は、たとえ本人に意識があっても、症状が出た状況をよく理解してる人が一緒に付き添うようにして詳細を伝えなければなりません。医師が症状に応じた的確な処置を如何に迅速に行なえるかは、付き添う人の説明が大きく影響します。付き添う人は、具合が悪くなった時の状況や天候や日照などの環境だけでなく、現場での応急処置の内容なども医師に正確に確実に告げることが重要です。たとえば今までに熱中症になったことがあるかどうか、また、どんな病気をしたことがあるかなども、付添い人の知る限り伝えるようにしましょう。本人に意識がある場合は、付添い人の説明が足りなかった発症状況や症状の進行、持病なども伝え、現在服用中の薬などがあれば具体的に医師に告げることも重要です。なお、病院などに搬送された場合は、一般的にまず身体を冷やす処置が行なわれます。身体の外側からは、氷枕などで首や腋の下や太股の付け根などを冷やし、できるだけ体温の上昇を抑えます。また、冷却マットなどを使う場合や身体に水で濡らしたガーゼや水滴そのものを吹き付けて、扇風機などで風を送り冷やす場合もあります。場合によっては胃などに管を使って冷却水を挿入し、身体の内側からも冷却するケースもあるようです。これは体内の血液を冷やすことにより身体を冷やそうとするものです。 |
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回復後も暫くは安静に |
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熱中症は回復してしまえば終わりというものではありません。一説によると、熱中症になった経験のある人は熱中症になりやすいとも言われています。また最近では、熱中症で体温が高くなると、大腸菌でつくられた内毒素が血液中に漏れ出て、体温が正常に戻っても身体の抵抗力が弱まるという研究結果もあるくらいです。何れにせよ熱中症になった後は、病院を受診して大事を取ると共に、暫くの間は身体を労る生活をする必要があります。くれぐれも「もう大丈夫」とばかりに翌日からまた活発に活動を始めるなどという無謀なことをしないように心懸けましょう。 |
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症状が回復しても必ず病院へ |
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回復したつもりでも体内に影響が残っていたり再発の恐れがあります。熱中症になったら、回復した後でも必ず病院で診てもらうようにしましょう。 |
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熱中症の家庭での治療 |
熱中症の家庭での治療とその注意点 |
軽症の場合には高温環境から涼しい場所に移し、衣服を緩め、仰臥位とします。
普通の生活を送っていても、寝ているだけでも汗はかいています。それが高温や運動時となると、非常に多くの量の汗をかくことになります。汗の元は血液中の水分です。そして、汗をかくということは身体の中から水分を外へ出してしまうということです。出してしまったら補わないと(食事や飲み物を摂らないと)身体の調子は当然ながら悪くなります。悪くなった状態を脱水と言いますが、この脱水した状態は、身体の不調を起こすだけでなく、危険な症状を起こす原因となります。この危険な症状が熱中症なので、従って、熱中症の場合にはまず水分を補給しなければならないということがよく分かります。しかしながら、脱水があるからといっても、水分だけの補給はナトリウム(塩分)不足になるので、必ず塩分の補給も必要になります。水だけをとっても、吸収のスピードが余りよくないため、それは脱水からの回復が早くないからで、吸収スピードを早やめ、回復を早めるためにも塩分が必要になるわけです。要するに、水だけよりは薄い塩水の方がよいのです。なお、猛暑の中での仕事やゴルフやスポーツの際には、氷水やジュース、ビールだけ飲んでいると、却って熱痙攣を起こす危険もあります。その際、市販のスポーツドリンクは水分と電解質(塩分)が含まれており、好都合です。また、暑い中で気分が悪くなったり汗をかきすぎたりした時には必ず休憩を取るようにしましょう。昔ながらの根性ものは危険です。また、嘔気や意識障害、体温が39℃を越えるような重症の場合には熱射病を疑って、直ぐに医療機関を受診しましょう。点滴による水分と電解質の補給が急務となります。また、体温が非常に高い場合には、救急車などの来るまでに衣服を除き、氷枕を腋窩や鼠径部に置いて身体を冷やすようにしましょう。さらに、寝たきりなどのお年寄りは、高温の部屋で寝ているだけでも体調を崩しますので、温度が異常に高い場合や汗をかいている時にはエアコンの使用も考えましょう。
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熱中症になったら食べ物は? |
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熱中症対策によい食品 |
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そのポイントは「塩分や水分の多く適度に冷たいものコマメに摂取する」ことです。
- スポーツドリンク
- 梅干しと冷たい麦茶
- 水分を多く含んだ果物や野菜
- 味噌汁
- ビタミンB群(特にビタミンB1) ※ビタミンB1は豚肉や鰻、玄米等に多く含まれています。
- 注意:カフェインを多く含むものは利尿作用があるのでなるべく避けるようにしましょう。
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熱中症になったらお風呂は? |
比較的症状の軽い熱痙攣の場合は、立ちくらみやこむら返りを起こすことがあります。この段階では熱中症と気づかないことも多いですが、これらの症状を軽視していると危険な状態に陥ることもあるので注意が必要です。
健康な状態でも、お風呂に入ることが原因で却って熱中症を引き起こすケースもあることが報告されています。そんな訳で、40℃の湯船に10分間浸かると500mlもの水分が体内から失われるので、たとえ症状が軽くても入浴は避け方が無難です。また、幾ら暑いからと言って水風呂などで急激に体温を下げると、却って症状が悪化するので大変危険です。
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入浴時の注意点 |
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- 高齢者の一番風呂は避ける
- 高齢者が入浴中は時々声をかける
- 寒い時の露天風呂は避ける
- 浴室暖房や湯気で浴室を暖めておく
- 湯温40℃以下で半身浴する(肩まで深く浸からない)
- 長時間の入浴は避ける(5分前後)
- 入浴前後に水分補給する
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