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今月のワンポイントアドバイス


 最近、通常のイジメに加えて、学校裏サイトやプロフなどをめぐったネットいじめが子どもたちの世界で横行しています。ネットいじめとは、インターネットを使った意図的かつ攻撃的な言動で他人を傷つける行為のことを言います。今月は、そのようなネットいじめの実態と対策について特集しました。
 なお、いじめ全般については以前「イジメの実態とその克服」と題して特集しましたので、そちらを参照して下さい。
ネットいじめ

ネットいじめと携帯電話
【1】新たないじめの場〜ネットいじめの実態と種類〜
【2】学校裏サイトとプロフ〜ネットいじめの温床〜
【3】子どもと携帯電話〜ネットいじめとの関連をめぐって〜
【4】ネットいじめ対策〜親や教師が出来ること〜


【1】新たないじめの場〜ネットいじめの実態と種類〜

 非公式のインターネット掲示板である学校裏サイトや、自己紹介などが目的の携帯電話用サイト・プロフでの書き込みなどにまつわるネットいじめをめぐって、子どもたちが自殺や暴力事件といった様々なトラブルに巻き込まれるケースが昨今増えています。実際、学校裏サイトやプロフなどでのネットいじめは増加傾向にあるようで、たとえば文科省の平成19年度全国調査では、ネットいじめは前年度よりも約1,000件増の約5,900件が確認され、それはいじめ全体の約6%を占めていると言います。子どもたちはどうやらインターネットという新たないじめの場を見つけたようです。
 本項では、それらネットいじめの特徴や種類、また諸外国時での実態などにつき、以下で取り上げ解説しました。
ネットいじめとは?〜通常のいじめとの違い〜

 インターネット上におけるいじめを「ネットいじめ」または「サイバーいじめ(Cyber-bullying)」と言い、過激かつ陰湿なものは「サイバー・リンチ」とか「ネットリンチ」とも呼ばれています。それらは、ウェブサイトやオンライン、或は電子メールや携帯電話などの場で行なわれるいじめで、要するに「インターネットを使った意図的かつ攻撃的な言動で他人を傷つける行為」のことを言います。そして、インターネットという性格上、そのいじめがネットワークを通して全世界にいじめが広がる可能性が識者によって指摘されています。その証拠に近年、世界中でネットいじめが発生して問題になっており、たとえばインターネットの法規制やフィルタリング規制に発展する国や自治体も出てきている状況です。


 ネットいじめはいわゆる匿名性があるため、通常のいじめのように相手との物理的な力関係が軽視され、その意味が薄れる傾向が指摘されます。また、ネットは監視に欠け、現実の世界以上にいじめが横行しやすい側面もあります。さらに直接的な対面がないため、相手の気持ちが通常のいじめ以上に分かりにくいという特性も持っています。さらにネットいじめは、一度これが広まると、リアルの交友範囲から離れた他学校の生徒などにも広がる傾向があって問題を深刻化させています。たとえば悪質なケースでは、相手をを誹謗中傷するだけでなく、標的を特定して個人情報をネット上のあちらこちらにばらまき、さらにはネットの世界を飛び出して自宅や職場に直接嫌がらせをする場合まであると言います。なお、ネットいじめは通常のいじめよりも第3者に発覚し難いため、ネットいじめの被害者が突発的に自殺などしてしまった場合、何が原因で彼が自殺したのか遺族等には皆目見当もつかなくなるという危険性が高いことも問題だと言われています。

 また、特にネットいじめは中傷等が目に見える形でネット上に記録されてしまうために、いじめ被害者が癒されずに苦しみ続けるという性質を持っていることはネットいじめの特徴的な傾向だと言ってよいでしょう。 特にウィキペディアなどに代表されるようなウィキを使用しているサイトや2ちゃんねるのような掲示板サイトなどは記録を半永久に保存し続けるというシステムを採用しており、管理者であるシステムオペレーターが該当する投稿を削除しない限り、中傷等の記録(ログ)がいつまでも残ってしまうため、それがネットいじめの温床になっているのす。
 要するに、これが学校や職場における通常のいじめならば、登校拒否や長期欠席をしたり、或は転校や転職をしたりすることによって、まだしも直接的ないじめの被害から逃れることも可能でしょうが、ネットいじめの場合は、インターネットがこの世に存在し続ける限り、残念ながらそのような退避手段が存在していないわけです。また、検索エンジンで個人名での検索結果にネットいじめが表われるような場合、転校先でもいじめに遭ってしまったり、或は転職活動で不利になったりするというようなケースも存在します(※最近では、採用側が応募者の氏名で検索して、応募者がどのような人物であるか確かめようとする場合もあると言います)。特に日本の場合は改名が簡単ではないため、一度実名がインターネット上に流出すると、いじめの被害者がそれによって長年苦しむことになりかねないのです。
ネットいじめの特徴

 いわゆるネットいじめとは、要するに「インターネット上のいじめ」のことで、それは、携帯電話やパソコンを通じてインターネット上のウェブサイトの掲示版などに特定の子どもの悪口や誹謗中傷を書き込んだり、或はメールを送ったりするなどの方法によっていじめを行なうものですが、それらネットいじめには、大体次のような特徴があると指摘されています。


■ネットいじめの特徴
 不特定多数の者から絶え間なく誹謗中傷が行なわれ、被害が短期間で極めて深刻なものとなる。
 インターネットの持つ匿名性から安易に誹謗・中傷の書き込みが行なわれるため、子どもが簡単に被害者にも一方で加害者にもなる。
 インターネット上に掲載された個人情報や画像は、情報の加工が容易に出来ることから誹謗中傷の対象として悪用されやすい。また、インターネット上に一度流出した個人情報は、回収することが困難となると共に不特定多数の他者からアクセスされる危険性がある。
 保護者や教師などの身近な大人が子どもの携帯電話等の利用の状況を把握することが難しい。また、子どもの利用している掲示板などを詳細に確認することが困難なため、ネットいじめの実態の把握が難しい。
 なお、このようなネットいじめについても、他のいじめと同様決して許されるものではなく、学校においても、ネットいじめの特徴を理解した上で、ネットいじめの早期発見&対応に向けた取組を行なってゆく必要があることは論を俟ちません。

ネットいじめの類型と種類

 ネットいじめには様々なものがありますが、手段や内容に着目して、これを次のようにり類型化することが出来ます。なお、実際のネットいじめは、これらに分類したそれぞれの要素を複合的に含んでいる場合も多くあります。


■1):掲示板やブログ、プロフでのネットいじめ
掲示板・ブログ・プロフへの誹謗中傷の書き込みをする
 インターネット上の掲示板やブログ、プロフ(=プロフィールサイト)に、特定の子どもの誹謗中傷を書き込み、いじめに繋がっている場合もあります。
掲示板やブログ、プロフへ個人情報を無断で掲載する
 掲示板やブログ、プロフに本人に無断で実名など個人が特定出来る表現を用いて、その個人の電話番号や写真等の個人情報が掲載され、そのために当該個人に迷惑メールが届くようになったりするケースがあります。また、個人情報に加えて容姿や性格等を誹謗中傷する書き込みをされて、そのためにクラス全体から無視されるなどのいじめに繋がったりしたケースもあります。
特定の子どもになりすましてインターネット上で活動を行なう
 特定の子どもになりすまして無断でプロフなどを作成し、その特定の子どもの電話番号やメールアドレスなどの個人情報を掲載した上、「暇だから電話して」などと勝手に書き込みをしたことによって、個人情報を掲載された児童生徒に他人から電話がかかって来るなどの被害が生じます。

■2)メールでのネットいじめ
メールで特定の子どもに対して誹謗中傷を行なう
 誹謗中傷のメールを繰り返し特定の子どもに送信するなどしていじめを行なうケースがあります。なお、インターネット上から無料で複数のメールアドレスを取得できるため(サブアドレス)、誰からメールを送信されているのか、いじめられている子どもには分からないこともあります。
チェーンメールで悪口や誹謗中傷の内容を送信する
 特定の子どもを誹謗中傷する内容のメールを作成し、「複数の人物に対して送信するように促すメール(チェーンメール)」を同一学校の複数の生徒に送信することで、当該生徒への誹謗中傷が学校全体に広まるようなケースがあります。
なりすましメールで誹謗中傷などを行なう
 第3者になりすまして送られてくるメールのことを一般に「なりすましメール」と呼びます。なりすましメールは子どもたちでも簡単に送信することができるため、クラスの多くの子どもになりすまして「死ね、キモイ(気持ち悪い)」などの嫌がらせメールを特定の子どもに何10通も送信した事例などもあります。

■3)その他
 口こみサイトやオンラインゲーム上のチャットでの誹謗中傷の書き込みの事例などがあります。また、最近の事例ではSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用して誹謗中傷の書き込みを行なうことが増加してきています。ネットいじめは、インターネットの使い方の変化や新しいシステムやサービスなどの出現などによって新たな形態のいじめが生じることが考えられます。

ミーンガール症候群〜日本以外の国におけるネットいじめの現状〜
ミーンガール症候群とネットいじめ

 アメリカには「ミーンガール (※意地の悪い女子の意) 症候群」という言葉があるそうです。これは、残虐性を孕んだ少女が、「格好良くない」「可愛過ぎる」「賢い」と見なしたり、或は何らかの不快感の捌け口にしようと目をつけた少年や少女に対し、相手を苦しめたり恐怖心を煽ったりイジメたりといった行為を繰り返す状態を指しています。そして、こうした振る舞いのはたやすくWeb 上に場を移すもので、ある調査によると、インターネットを使用するティーンエイジの32%はオンラインで迷惑行為の対象になったことがあると言います。具体的な内容としては、脅迫めいたメッセージを受け取ったり、個人的な Eメールやテキスト・メッセージが当事者の同意なしに転送されてしまったり、当惑するような写真が許可なく掲載されているのを見たり、或はオンライン上に自分に関する噂が広まった、などというものです。なおその調査では、アメリカでも、ネットいじめで最も一般的な形態は、個人的と思われる情報を使ってネット上で攻撃することだということが明らかになりました。

 もちろんミーンガール症候群の子どもたちがネットいじめの首謀者なのか否か軽々しくは断じることは出来ませんが、しかし、ミーンガール症候群がWeb 上でも顕在化していることを示す経験的証拠が多く見つかったことも事実のようです。ちなみに、その調査によると、少女は少年よりも攻撃対象になりやすく、また、自分の個性や考えをオンライン上で開示しているティーンエイジは、オンライン上の活動に積極的ではないティーンエイジよりも攻撃対象になりやすいなどの傾向があると言います。
アメリカ〜ネットいじめが日常化する米国のティーンエージャー〜

 アメリカ合衆国では、疾病対策センター(CDC) が若年層(10〜17歳)がネットいじめを受けているケースが急増しているという調査結果を07年に発表しました。また、ちょっと古いデータですが、バーモント州では03年に13歳の少年が数ヶ月に渡って校内とオンラインの両方で「同性愛」と嘲られて自殺した事件があって、それがキッカケとなって、ネットいじめに対する州内での取り組みが盛んとなったと言います。
 また、ごく最近では、多くのティーンエージャーがネットでのいじめを経験している実態が最近UCLAのの心理学教授らによる調査で明らかになりました。それによると、米国のティーンエージャー(12〜17歳)の4人に3人が過去12カ月間で少なくとも1度はネットでのいじめを体験しており、その中で親や教師などにその事実を相談しているのは10人中1人だけだと言います。調査によると、ネットでいじめを経験した子どものうち85%は学校でもいじめに遭っていたと言いますし、また、学校でいじめに遭っている場合ネットでもいじめに遭う確率もかなり高かったと言います。そしてアメリカでも、インターネットは子どもたちの学校での友だち付き合いと切り離せないし、その意味でネットでのいじめは学校でのいじめとよく似ていると言います。
イギリス

 イギリス政府が実施した調査によると、英国の12歳から15歳の34%は何らかのネットいじめを経験したことがあると言います。そのため、07年9月には、その実態に対処するため「ネットいじめ防止キャンペーン」を英政府が立ち上げたと報じられました。
韓国

 世界でも早い時期に高速インターネット環境を整えた韓国では、既に国民の重要なインフラとしてインターネットが日常的に利用されていますが、当然ながらそのデメリットとしてネットいじめの問題の根も深く、政治問題に近い様相を呈しており、一部では「サイバー暴力」とも呼ばれています。特にネットいじめを象徴する最初の事件が起きたのは05年で、これはソウル地下鉄で飼い犬の糞を始末せずに下車した女性の行為が発端として、その後お年寄りが始末するまでの顛末を撮影したとされる動画がネット上に公開され、直ぐに実名など個人情報が突き止められて、女性のHPに非難の書き込みが殺到したと言います。また、それと同じ頃にある大手企業勤務の男性が標的にされた事件も起き、07年初めには人気歌手や女優が相次いで自殺したことの背景にこのようなしつこい中傷の書き込みも取り沙汰されました。そんな中で意識改善の試みもあり、悪質な書き込み「アクプル(=悪と英語のリプライを合わせた造語)」の被害を訴え、「ソン(善)プル」を増やそうという運動が国民的俳優アン・ソンギ氏などの連名で若者を中心にモラル向上を呼びかけていると言います。
参考1:大人のネットいじめ〜もはや子どもの世界だけの話じゃない!?〜

 10代の約3分の1がネットいじめを受けたことがあると言います。ネットいじめに遭ったという子どもの割合にも驚かされますが、そもそもネットいじめとはどういうものかと言うと、それはインターネットを使った意図的かつ攻撃的な言動で他人を傷つける行為のことで、具体的に言うと、メールやチャットでの誹謗中傷、掲示板などで特定の人の悪口を書く行為のことを言います。最近は携帯電話のカメラで撮った恥ずかしい写真や暴行中の動画がネットで流されるケースもあります。また、たとえば暗証番号で鍵をかけた学校裏掲示板などでいじめの予告や打ち合せを行なうケースもあると言います。このように、加害者の匿名性と、時間や場所に関係なく手軽にいじめが出来る点がネットいじめの大きな特徴だと言ってよいでしょう。

 しかも、ネットいじめは何も子どもたちだけのものではないのです。現実には大人の世界でも実はネットいじめが起きているというのです。大人の場合は、不特定多数が見る大型掲示板に企業別のスレッドを立てて、個人情報を書き込んで中傷するケースが多いと言われます。また、仕事中にチャットで特定個人の陰口をみんなで言い合ったり、上司が部下の失敗談を社内の一斉メールで送信するケースもあると言います。また、それ以外に、たとえば上司からの連絡メールが何故か来ない人がいるとか、職場の裏サイトに悪口や中傷がたくさん書いてあって、そのプリントアウトを読むかと言われて断わったところ、職場で様々な嫌な目に遭ったなどと言う体験談もあると言います。何れにせよ、職場でのいじめは、上司がその権限や権力を持って行なうパワーハラスメントが一般的ですが、そのネット版もあるということなのでしょう。
 こういったいじめは何も職場だけに限られたものではありません。とにかく、ネットいじめの実態は私たちの想像以上に根深いものがあるのかも知れません。
参考2:関連用語解説


学校裏サイト:
 ある特定の学校の話題のみを扱う非公式の匿名掲示板。全国規模の他、学校別や学年別のものもある。在校生や卒業生が立ち上げたものがその大半を占める。(※なお、学校裏サイトに関してさらに詳しいことは「【2】学校裏サイトとプロフ〜ネットいじめの温床」をご参照下さい。)

(電子)掲示板:
 参加者が自由に文章等を投稿することでコミュニケーションを行なうことが出来るウェブサイトで、BBSとも言う。掲示板の管理者がテーマ等を設定し、その内容に沿った書き込みをするものが多い。学校裏サイトもこれら掲示板のひとつ。

プロフ:
 プロフィールの略で、携帯やパソコンを使って簡単に自己紹介ができるサイト。氏名や連絡先だけではなく、写真を添付し、趣味など詳しい個人情報を掲載するのが一般的。

ブログ:
 ウェブログの略で、個人や数人のグループで管理運営され、日記のように更新されるウェブサイト。携帯やパソコンから作成できるWEB上の日記のようなもので、その多くにコメント機能があり、不特定多数の者が見たりコメントを書き込んだりすることが出来る。事業者(プロバイダ)が行なっている無料のプロフィール作成用サービスを利用すれば、小・中学生でも簡単に作成することが出来る。なお、携帯電話等を使用して更新するブログは「モブログ(モバイル・ブログの略)」と呼ばれている。

SNS:
 ソーシャルネットワーキングサービスの略。コミュニティ型の会員制のウェブサイトのこと。既存の会員からの招待がないと会員になれないという形式をとっているものも多く、会員になると自由に書き込みを行なうことが出来、会員以外は閲覧不可になっているものが大半を占める。

口こみサイト:
 インターネット上で様々な物事の評判を情報交換のためのウェブサイトのこと。利用者が自由に書き込むことができる。

チェーンメール:
 届いたメールをそのまま複数の人に転送するよう求めるメールのこと。かつて「不幸の手紙」と言われたものの携帯メール版。

なりすましメール:
 自分のアドレスからではなく、他人のメールアドレスを使って他人になりすまして送るメールのこと。

チャット:
 掲示板(BBS)などと同様にコンピュータネットワーク上のコミュニケーション手段のひとつで、複数の人がネットワーク上に用意された場所に参加してテキストを入力してリアルタイムに他愛ない会話(雑談)を行なうシステム。なお、インスタントメッセンジャー(IM)など、ある種のソフトを用いて、多くは1対1で会話を行なうシステムもある。

オンラインゲーム:
 コンピュータネットワークを利用して、別々の場所にいてもオンライン上で同時に同じゲームを行なうことができるサービス。なお、ゲームだけではなくチャット等による書き込みを行なうことでコミュニケーションを行なうことが出来る。


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【2】学校裏サイトとプロフ〜ネットいじめの温床〜

 ネットいじめの温床であると言われる学校裏サイト、そして子どもたちの個人情報が安易に晒されるプロフ。本項では、その学校裏サイトやプロフについて簡単ながら以下で取り上げ解説しました。
学校裏サイトとは? 

 学校裏サイトとは、ある特定の学校の話題のみを扱う非公式の匿名掲示板で、別名「学校勝手サイト」とも呼ばれます。その殆どが部外者が入れないようパスワードを設定されていたり、携帯電話からのアクセスしか出来ない、或は学校名で検索してもヒットしないようになっており、そのため、検索エンジンなどで探し出すのは容易ではありません。08年3月に文部科学省が発表した「青少年が利用する学校非公式サイトに関する調査報告書」では38,260サイトが確認されたと言います。
 そして、こうした匿名掲示板には、実名を挙げての誹謗中傷や猥褻画像が大量に書き込まれています。このうち誹謗中傷については、在校生などが標的になるだけでなく、在校生の保護者に関するデマがサイト内で流されて最終的に被害者が転校を余儀無くされるといったケースもあると言います。またそれ以外に、イニシャルや伏字などでの誹謗中傷が行なわれることもあるため、特定の個人ではなく該当のイニシャルを持つ全員が被害に遭うことも考えられます。また、時には児童・生徒以外にも、いわゆるモンスターペアレントなどが批判・攻撃目的で学校裏サイトに書き込むケースもあると言われます。


ネットいじめと学校裏サイト ちなみに、学校裏サイトの存在が初めて取り上げられたのは07年1月のことで、プロフとともに裏サイトの危険性が識者によって警告され始めたことがキッカケだと言いす。そして、その約3ヵ月後に大阪府警がある中学校の学校裏サイトの管理者を書類送検したことで、各メディアで社会問題として学校裏サイトが徐々に取り上げられるようになりました。また、その年の9月には神戸市須磨区の私立高校のいじめ自殺事件で、被害者の男子生徒に対して誹謗中傷や脅迫紛いの文章を裏サイトに書き込まれていたことがセンセーショナルに取り上げられて、以後いじめ関連の報道の中で学校裏サイトが頻繁に取り上げられるようになってゆきました。なお、上記の事例でも分かるように、学校裏サイトは決して完全な匿名ではなく、警察などの機関が動けば個人の特定は不可能ではありませんし、当然民事上の責任を科される場合もあります。また、この事件でも明らかになったように、学校裏サイトの開設者は現役の在校生に限られるわけではなく、学校の卒業者や保護者、或はそれ以外の第3者による場合もあるのです。

 なお、ブラウザ機能付き携帯電話を子どもが持つことが一般的ではない日本以外の国ではこうした匿名掲示板の問題は顕在化していないと言われます。また、携帯電話からの書き込みに関しては携帯電話会社が問い合わせに応じないため、加害者が中々特定されにくいという問題もあります。そのため、携帯電話から利用できる学校裏サイトはいわゆる無法状態になる傾向が強いのです。
中・高校生たちにとってのプロフとは? 

 学校裏サイトと並んで、中・高校生たちが当たり前に知っている・作っている・閲覧している携帯サイトに「プロフ」と呼ばれるものがあります。主に女子中・高生が発信するもので、自分のプロフィールを携帯サイト上で公開しているものを一般にプロフ言います。それは、まず顔写真に始まり、名前や年齢はもちろん、大まかな住所や趣味嗜好も、そのプルフィール・サイトに用意されている質問事項をびっしりと埋めることで自分のデータを一般に開示してゆくのです。子どもたちは、そうして出来上がった自分のプロフを、携帯電話の赤外線通信機能を使って、名刺交換するように友だち同士で交換しているのです。
 個人情報を発信することの危険性が叫ばれる中にあって、このように自らデータを開示してゆく子どもたちがたくさん存在しています。その証拠に、PCでも「プロフ」をキーワードにWeb検索してみると、直ぐに色々な携帯プロフィール・サイトにたどりつくことが出来るでしょう。

 本人になりすまして援助交際を求める書き込みをされたり、作り上げられた性癖を書き込まれたりするといったようなひどいいじめにプロフが使われたこともあるのも事実で、彼女たちの文化を全て否定するつもりは毛頭はありませんが、何らかの機会に一度、プロフには一体どのような危険性があるのかを親御さんといっしょに考える機会があればよいと思います。


■高校生(男女別)がプロフに公開している情報
高校生がプロフに公開している情報

学校裏サイトへの対策とその難しさ

 現在の法制度では、学校裏サイトに代表されるこうした匿名掲示板の開設者を刑事的に処罰することは出来ず、決定的な対策は存在していません。それにも拘わらず、ブラウザ機能付き携帯電話を安易に子どもに与えている日本の現状がネットいじめをを横行させる最大の原因であると言ってよいでしょう。従ってその対策としては、フィルタリング機能の充実やブラウザ機能付き携帯電話を子どもに与えることのリスクの周知(※ペアレンタルロックはアダルトサイトや出会い系サイトなど成年者対象サイトにしか有効ではありません)や、或はインターネット・リテラシー教育などの対策を組み合わせてゆくしかないでしょう。


 学校裏サイト対策の難しさとしては、たとえば携帯電話からの書き込みは、書き込む度にホスト名やIPアドレスが間に介在するプロキシサーバーによって変化するため特定されにくいという要因も指摘されています。また、携帯電話の個別識別情報についても個人情報の範疇に該当する可能性があるため、掲示板サービスを利用している管理者が直接その番号を知ることが出来るケースは殆どなく、実質的には携帯電話からの子どもたちによる書き込みを制止するための手段は現状では存在していません。
 さらに、現時点でのインターネットに関する法規制は「プロバイダ責任制限法」以外にないことから、被害者の対応は非常に限られたものとなっていると言わざるを得ません。また、海外のホスティングプロバイダを使った場合は日本の法令が適用されないケースもあることから、違法性の高い掲示板を海外のサーバーに置くことにより管理人の責任を免れようとする者も多く、管理人が誰なのかすら判明しないこともあります。さらに、検索エンジンに対する規制も存在しないことから、検索結果に表示される内容についても、検索エンジン運営会社に対応を求めることは難しいと言ってよいでしょう。なお、YAHOO!を始めとする検索エンジン運営会社の多くは、検索結果に表示される内容についての削除依頼は、依頼内容の正当性や削除権限の有無を確かめることが出来ないとして削除依頼自体を受け付けていない会社も多いのが現状なのです。

 その上、管理者#管理人が管理自体を放棄しているケースでは、削除を求めることも困難です。たとえば2ちゃんねる(2ch)などのように管理が放棄されている比較的規模の大きい掲示板において検索エンジンで実名での誹謗中傷が検索出来るケースでは、上でも指摘したように、場合によっては何10年という将来に渡って被害を受け続けることも想定されるわけです。なお、管理者が削除依頼を掲載することも多々あり、削除を依頼するという行為自体が被害を拡大させるケースもあります(たとえば生徒や児童が個人で開設した裏サイトでは、こうしたサイトで誹謗中傷を見つけた教師が安易に削除依頼をして、その仕返しに教師が「お前の奥さん浮気してるぞ」などの事実無根の中傷記事を書き連ねられるなどの嫌がらせを受けて、結果的に休職や退職に追い込まれるようなことすらあると言うのです)。そのため、掲示板サービスを運営する業者については、管理人が削除しない場合には代理で削除するべきではないかという議論も一部では行なわれていますが、利用者自身のプログラムを使って構築した掲示板サイトの場合は、運営するホスティングプロバイダでさえ特定の書き込みのみを削除をすることは技術的に難しいものがあります。従って、投稿を削除する場合はホスティングの利用を停止させるという方法以外に取り得ないと言えるわけです。また、利用者が独自ドメインを使用している場合は、仮に特定のホスティングプロバイダが契約を解除しても、利用者がまた新たなホスティングプロバイダと契約すれば引き続き以前と全く同じ状態でサイトを公開できるため、その実効性の高さには疑問が付いて回わらざるを得ないと言ってよいでしょう。
参考3:学校裏サイトに関しての参考図書


◆参考図書1:学校裏サイトについての参考文献
下田博次『学校裏サイト』東洋経済新報社
下田博次・著
(群馬大学社会情報学部大学院研究科教授)
『学校裏サイト』
東洋経済新報社・08年3月刊、¥1,575
安川雅史『「学校裏サイト」からわが子を守る! 』中経出版
安川 雅史・著
(全国webカウンセリング協議会理事長)
『「学校裏サイト」からわが子を守る! 』
中経の文庫、中経出版 ・08年5月刊、¥580


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【3】子どもと携帯電話〜ネットいじめとの関連をめぐって〜

 以前「携帯電話依存症」の特集でも取り上げましたが、子どもにとって携帯電話はコミュニケーションのためのツールとして今や手放せない必需品となりつつあるようです。
 本項では、ネットいじめとの関連を中心に、携帯電話の学校への原則持ち込み禁止をめぐる議論や、携帯電話見直しに関する一部の取り組みを以下で紹介・解説しました。
携帯電話に縛られる子どもたち

 携帯電話にインターネット機能が99年より搭載され、その前からメール機能も搭載されていたために、中高生を中心に文字コミュニケーションの道具としても携帯電話が大きく認知されました。さらにパケット定額制が導入されてからメールやネットにその生活をかなり縛られてゆく中高生が増加してゆきました。

 食事の時も右手でお箸を持ちながら左手で何不自由なく携帯電話でメールをしている子どもたちも増えています。そればかりか、ビニール袋に入れてお風呂場に携帯電話を持ち込む子もいます。さらに勉強する時も、机の上に携帯電話を置かないと勉強が出来ないと言うのです。それは何故かと言うと、「友だちからメールが来たら直ぐに返信しないと無視していると思われてしまうから」と彼らが考えているからです。彼らは、自分が送ったメールに相手から返信が来ないと不安になるため、「ところでいま何してるの?」と質問形式の一文を加えて送信します。すると、メールを受け取った人は、直ぐにメールに返信しないと無視していると思われてしまうので直ぐに返信のメールを送ります。お互いに質問形式の一文が書かれているために、どうでもよいやり取りをいつまでも繰り返して、メールを終わらせるが出来ません。
 全ての子どもたちがそうだとは言いませんが、子どもたちの間には暗黙のルールがあって、たとえばそのひとつが「3分ルール」と言われるものがあるそうです。それは、メールが来たら3分以内に返信しなくてはならないというもので、このため、メールを送った相手から3分以内に返信が無ければ「自分は無視されているのかな……」と段々不安になってゆくのです。そのことも手伝って、返信のスピードが遅い子や絵文字やデコメを送ることが出来ない子がいつの間にか学校裏サイトなどに悪口を書き込まれたり、嫌がらせメールを受け取るようになってしまうこともあるのです。そのため、「氏ね(死ね)」「キモい」「うざい」と嫌がらせメールを5分おきに送りつけられて学校にゆくのが怖くなり、不登校になった子どももいると言います。
小・中学校での携帯電話“原則禁止”通知とその理由

 文科省は本年1月30日、「小・中学校には携帯電話を原則持ち込み禁止とする」などの指針を示し、それに沿って教育委員会や学校において基本的な指導方針を定めるよう、『学校における携帯電話の取扱い等について』という通知を出しました。
 本節では、文科省は何故このような通知を出したのか、通知によって一体どんな効果を文科省が狙っているのかなどにつき以下で詳しく解説しました。
携帯電話持ち込みに一定の方向性を〜ネットいじめ自殺受けて〜

 先頃発生したさいたま市立中学3年の女子生徒がネットいじめを苦に自殺したとされる問題で、1月20日の閣議後会見で、塩谷立文部科学相は、携帯電話の学校持ち込みについて「実態調査を踏まえて文科省として一定の方向性を打ち出したい」と述べたと言います。また、文科省はでは、これまで各学校での対応を求めていましたが、事態を重く見て、国としての方向性を打ち出すことになりました。
 なお、女子生徒の自殺をめぐっては、プロフと呼ばれる携帯電話の自己紹介サイトに「キモイ(=気持ち悪い)」とか「うまくすれば不登校になるかも」との中傷の書き込みがあり、ネットいじめが自殺の一因と見られていました。この女子生徒の自殺について、塩谷文科相は「理由の如何を問わず、あってはならないことだ。使い方も含めて指導を徹底してほしい」と述べたと言います。また、携帯電話については、政府の教育再生懇談会が小中学校への持ち込みを禁止すべきと提言しましたし、さらに塩谷文科相も、これまで「学校に携帯電話は必要ない」などと発言しています。
学校における携帯電話等の取扱い等に関する調査結果

 08年12月1日時点で児童・生徒の携帯電話などの持ち込みを原則禁止または一律禁止としている学校は、小学校が20,527校、中学校が9,919校、高校が878校。それに対して携帯電話持ち込みを禁止にしていない学校は、小学校が1,273校、中学校が104校、高校が3,562校だと言います。すなわち、携帯電話を持ち込み禁止にしている学校は90%以上あることになります。なお、高校の場合は、遠距離通学の生徒や、或は塾やアルバイトで帰宅が遅くなる生徒も多く、児童の発達段階も小・中学校とは違うという側面があり、そのため、持ち込み禁止ではなく、使いながら学ばせるが、学校内での使用は禁止しているという学校が多かったせいで、違いが出た可能性があります。
国としての基本的な考え方

 漫画やゲームと同じで、学習に不要なものは学校には持ち込まないようにすべきだという考え方があります。携帯電話も学習には当然ながら不要なもののひとつです。学校現場では、携帯電話は学校には不要だという認識が徹底されているかも知れませんが、安全の観点から子どもに持たせたいという親御さんがいるのも事実です。一般的には携帯電話の取り扱いについてまだ混乱している部分もあるため、今回の通知においては、国として基本的な考え方を示したという側面もあるようです。ただし、これはあくまで「原則」禁止なのであって、地域の事情や保護者の仕事上の都合、また安全の観点などから携帯電話を子どもに持たせることを禁止しているわけではありません。
 また、携帯電話の持ち込み禁止は多くの学校では既にやっていることが明らかで、そのため、今回の通知は学校の後押し的な意味もあるようです。学校が保護者に対して携帯電話の指導をする際にも、「学校の判断で持ち込み禁止」というだけでは説得力が足りない面も否めません。それに対して、「国や教育委員会も持ち込み禁止が望ましいとしている」と親御さんに対して説明すれば指導がしやすくなるというメリットもあるわけです。また、今回の通知を契機として、学校でルールを決めたり、教育委員会で考え方を定め、情報モラル教育を徹底したりして、家庭や地域に働きかけるキッカケにしてほしいという狙いもあると言います。
持ち込み禁止だけではネットいじめ対策には繋がらないが・・・

 携帯電話によるネットいじめや有害情報関係のトラブルは、実は学校の外で行なわれているものが殆どで、携帯電話の学校への持ち込み禁止に必ずしも効果があるとは思えないという批判もあります。確かにその通りで、学校への携帯電話の持ち込みを禁止しただけでは、有害情報にアクセスして事件に巻き込まれるトラブルやネットいじめなどの問題が必ずしも解決するわけではありません。肝心なのは、ネットいじめを減らしたりトラブルから子どもたちを守るためには、携帯電話の学校への持ち込み禁止という措置を取ることによって、それが情報モラル教育や、家庭でのルール作りやその指導、また子どもの利用実態の把握などが大切で、そのための契機となればよいという狙いがあるわけです。何れにせよ、携帯電話を子どもに持たせるか持たせないかは最終的には各家庭での判断に委ねられますが、持たせたきりではなく、子どもを見守る体制作りが大事だと言えるでしょう。
 ちなみに、これまでは一部に「学校が持ち込み禁止などの指導をしていないために携帯電話の問題が起きる」という誤解があったかも知れません。しかし、既に多くの小・中学校で携帯電話は持ち込み禁止となっているという事実から見ても、それでも問題が起きるとなれば、家庭その他で保護者の見えないところで問題が起きていることが明らかになるはずです。
携帯電話を取り上げるつもりではない

 世の中が携帯電話やインターネットを規制する方向に進んでおり、原則持ち込み禁止からさらに厳しい規制につながるのを危惧する声もあります。
 確かに携帯電話にはいい面もあり、子どもに携帯電話を持たせるかどうかについてはあくまで家庭の判断であって、文科省としては携帯電話を取り上げるところまでは考えていないと言います。
 文科省が現在行なっている施策は、単純な規制ではなく適切なルールを作っている段階で、現在政府全体で行なっているのは、所持禁止などの規制をしようという話ではなく、子どもが危険に巻き込まれないために必要な取り組みとして考えられているわけです。何らかのサービスを提供する際に負の面があるなら、改善に向けた取り組みを行なうのは当たり前のことで、逆に子どもたちを守るための取り組みを整備していかなければ、それこそ「持たせるな」という議論になるかも知れません。そうならないよう企業も努力しなければならないし、文科省も子どもたちに携帯電話の使い方も含めて教えようとしているわけなのです。
情報モラルについての正しい教育を

 4月から施行される教育指導要領には、「情報モラルについて教えるべき」という文言が入っています。それに併せて、文科省では情報教育の手引き書の作成を担当しており、もう直ぐ発表する予定で、その他にも情報モラルの観点から専門家を派遣して教員や生徒指導担当者を指導するなどの対策も考えているところだと言います。

 とにかく、現在は携帯電話の持ち込み禁止だけが前面に出ている状況ですが、これは一律ではなく、あくまで状況に応じてのことであり、一切禁止ではありません。携帯電話の持ち込み禁止だけでは確かに子どもは守れません。携帯電話の正しい使い方の指導や情報モラル教育、家庭での教育が重要なので、今後とも家庭への働きかけや啓発をしてゆく必要があります。保護者にも、携帯電話は本当に必要か、持たせる場合はどうしたら子どもが被害に遭わないで使えるか、保護者として何をすべきかしっかり考えてほしいし、見守る体制を作ってもらいたいものです。何れにせよ、今後も携帯電話文化を残しつつ、子どもの安全を守れる方法を模索することが重要です。ただ取り上げるのではなく、正しい教育と理解が浸透することが望まれます。


◆参考:子ども向け啓発リーフレット『ちょっと待って、ケータイ』
子ども向け啓発リーフレット『ちょっと待って、ケータイ』
 昨今、子どもたちがインターネットを介した犯罪被害等に巻き込まれるケースが増えています。このような実態を踏まえ、文科省では、特に携帯電話のインターネット利用に際しての留意点やトラブル、犯罪被害の例、対応方法のアドバイスなどを盛り込んだ子ども向けリーフレットを作成、小学校6年生全員に配付しています。
 リーフレットは、子どもたちが読みやすいようマンガを使って事例を解説するなどの工夫が為されています。そのため、子どもたちだけでなく親子で一緒に読んで、携帯電話のインターネットを介して起きた事件例やその対処方法を知ったり、或は子どもに携帯電話を適切に使うためのモラルやマナー、利用のルールなどについて親子で話し合い、学び合うための参考とされるとよいでしょう。

 なお、リーフレットの内容紹介及びPDFによるリーフレットのダウンロードが文部科学省のサイトより出来ます。

参考4:“中学生の中学生による中学生のための”携帯ネット入門

 携帯サイトなどによるネットいじめの被害が深刻化する中、生徒自身に携帯電話との付き合い方を考えさせる授業に取り組んでいる中学の先生がいます。東京都大田区立大森第3中学の大山圭湖教諭(53)は、「携帯電話は本当に必要か?」を生徒に徹底的に話し合わせたところ、その授授業を受けた学年ではネットいじめがなくなったそうで、授業について教育関係者からの問い合わせが相次いでいると言います。


中学生の中学生による中学生のための携帯ネット入門 生徒たちも「携帯に依存しているなんて何かおかしい」と感じていたからこそ、その思いをみんなに伝えてもらうことにしたと大山教諭は言います。そして、授業で行なったパネルディスカッションでは、10人の生徒に同級生や保護者の前で自分の思いを語ってもらったそうです。しかし、それでも思いが伝わらないと感じた生徒らは、自らの体験や思いを綴ったパンフレット『中学生の中学生による中学生のための携帯ネット入門』を作製したのです。その中で、携帯を持っていない生徒は「意識して携帯依存から抜け出して」と呼びかけ、或は「携帯でないと言えない本音なんてない。本音は直接話してこそ伝わる」と訴えました。また、1日中メールに嵌ったという生徒は、「携帯を終えた後、時間の経過に驚き、後悔した」との思いを綴っています。
 もちろん大森第3中でも携帯電話の校内への持ち込みは禁止だそうです。大山教諭も、「学校で携帯が必要だとは思わないが、ただ頭ごなしに駄目だと言っても子どもは反発するだけなので、自分たちで考えさせることが必要」と話し、「自分たちで考えたことで、子どもたちは自分たちなりの携帯電話との付き合い方を見つけたようだ。少なくともこの学年ではネットいじめはなくなった」と話しているそうです。

 なお、パンフレットは学年全員に配布されたそうですが、小・中学校への携帯電話持ち込みの議論が広まる中、教育関係者からパンフレットへの問い合わせも増えているそうです。
参考5:携帯電話をめぐる行政の対応


□平成19年
12月:  政府の教育再生会議、第3次報告で子供の携帯電話へのフィルタリング(閲覧制限)義務付けを求める
□平成20年
 5月:  政府の教育再生懇談会、小中学生の所持禁止を盛り込んだ第1次報告まとめる
 6月:  携帯電話会社に、18歳未満へのフィルタリングサービス提供を義務付ける有害サイト規制法が成立
 7月:  文科省、携帯電話の学校持ち込みについてのルール作りを各教委に通知
11月:  文科省、ネットいじめ約5900件と平成19年度の全国調査結果を公表。教員向けのネットいじめ対策マニュアルを作製
12月:  大阪府の橋下徹知事、小中学校への携帯電話持ち込み禁止を表明。政府の教育再生懇談会、「学校への持ち込み禁止」提言案をまとめる
□平成21年
 1月:  埼玉県、ネットいじめの対応マニュアルを公表。文科省、学校持ち込み禁止の方針固める


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【4】ネットいじめ対策〜親や教師が出来ること〜

 ネットいじめに対応するには私たちは一体どうしたらよいのでしょうか? 
 本項では、文科省が作成した学校・教員向けマニュアルを紹介すると共に、ネットいじめを受けている当事者や親御さんが出来る最低限の対応策などを以下で参考までに紹介しました。
学校・教員用のネットいじめに関する対応マニュアル〜その必要性と意義〜

 ネットいじめの解決に向けて文科省は、「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」の取りまとめ(第2次)の提言を受けて、08年11月、学校・教員向けに、ネットいじめに対応するための基本的な知識や方法とネットいじめに関する学校への対応に関する事例をまとめ、『「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集』と題するマニュアル文書を作成し公開しました。
 本節では、このマニュアルを文科省が作った経緯やこれを公開した理由などについて、参考までに以下で紹介・解説しました。
具体事例を紹介し、教育現場で役立つ内容に

 まずこのマニュアル&事例集の内容について簡単に言うと、大きく(A)「マニュアル編」と(B)「事例編」とに分けられています。

 まず(A)マニュアル編は、ネット上のいじめに関する基礎的な知識と参考にすべき資料などが一覧となっており、ネットいじめについて知識のない教員でもそのおおよそが理解できる入門編的内容となっていて、まずはネットいじめを「掲示板・ブログ・プロフによるもの」と「メールによるもの」とに分けて類型化、ネット上のいじめの典型的な事例を紹介し、掲示板などへの誹謗・中傷に対する削除依頼など対応の具体的な手順や児童生徒への指導のポイントを説明し、また、チェーンメールに関する対応のポイントも説明しています。さらにその他、いじめそのものだけでなく、教員向けの情報モラル指導力向上のためのカリキュラムや保護者への啓発に役立つ講座などネットいじめを防ぐために役立つ情報や資料も紹介しています。また、相談窓口や団体、法令などに関する資料も揃っています。
 次の(B)事例編では、全国から集まったネットいじめの事例とその具体的な対応を掲載しています。まずネット上のいじめに関する学校での対応事例を類型に分け、さらに小・中・高の学校種毎に分けて、15の事例の詳細な内容とポイントがまとめられて掲載しているため、重要なところがわかりやすくなっています。そのため、実際に似たようなことが起きた時に参考にできるようになっています。


「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)(PDF)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08111701/001.pdf

有識者会議からの意見で作成

 文部科学省はこれまでにも子ども向け啓発リーフレット『ちょっと待って、ケータイ』の作成・配布やフィルタリングの普及促進のための啓発活動、保護者及び教職員を対象としたインターネットの安全・安心利用に向けた啓発のための講座『e-ネットキャラバン』の実施など、ネットいじめに対して様々な取り組みを行なってきました。
 また、既に多くの子どもが携帯電話を持っており、それによって近年、ネットいじめや誹謗・中傷、インターネットや携帯電話を使って犯罪に巻き込まれる事件が増えてきました。しかし、一部の教職員の中には、携帯電話やネットが自分にとって身近ではない上、ネット上のいじめは見えないところで起きていることもあり、中々認識しづらく対応も難しいといった側面があります。そこで、先生たちにもネットのことがよく分かるような資料を作る必要があると考えて文科省がマニュアルと事例集を作ったので、国としても出来ることをして現場をバックアップしたいと考えたわけです。

 ちなみに、07年9月から開催された「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」において有識者から家庭や地域・学校・行政が為すべきことについての提言がありましたが、その時、ネット上の誹謗・中傷等を発見した場合や子ども・保護者等から相談があった場合の学校としての対応マニュアルを作成・配布することが必要だという趣旨の提言がされたのが、マニュアルを作成するそもそものキッカケだったと言います。
 今回のマニュアル・事例集は、このために作られたワーキンググループで検討及び案を出してもらい、それを下に事務局で検討して作成したもので、ワーキンググループが出来たのが7月で、それから3〜4カ月で出来上がったものだそうです。事例集部分は、各都道府県教育委員会から代表的な事例を挙げてもらい、分類・掲載したため、実際かなり豊富で具体的です。
地域に合わせた活用を

 神奈川県や北海道など既に独自のネットいじめ対応マニュアルを作っているところもあると言います。ところが、残念ながらそれらは参考には出来ても、他の地域では実際に利用することは出来ません。しかし、統一的なマニュアルを国が出せば、これを全国で活用してもらうことが可能です。そして、これはあくまで基本的な方針と考えればよいので、細部にわたるようなことまで国が決めて内容を厚くするのではなく、必要最低限知っていてほしいことがマニュアルとしてまとめられました。すなわち、どの問題が多く起きているのかといったことや、学校と地域の連携がうまくいっているかどうかなど、地域によってトラブルの状況や対応を行なうための状況が異なることも当然あるでしょうから、そこで、「このまま使えたら使ってもらってもいいし、内容を付け加えてもらってもいい」という立場で編集されたマニュアルであるわけです。ちなみに、新しい技術の登場に伴う問題が出て来ればもちろん文部科学省としては当然何らかの対応を行なう可能性はありますが、今回のマニュアルはあくまで自治体がこれをベースに地域に合わせて充実させることが目的であるため、現時点では今回のマニュアル・事例集のアップデートなどは検討されていないと言います。
ネットいじめの対策1〜自分でも出来る対策〜


■自分でも出来るネットいじめ対策
 自分の個人情報がネット上に書かれていないか、検索サイトで自分の名前どを定期的に検索する(エゴサーチ)
 書込みを見つけた場合、証拠としてそのページを保存しておく
 掲示板の管理者やプロバイダにIPアドレスの開示と書込みの削除を依頼する
 インターネットのトラブルを扱う民間団体や学内や社内の窓口に相談する
 警察にも相談窓口は設置されているので、警察にも相談する
 匿名の投稿が可能であるとは言え、IPアドレスを追跡すれば送信者を特定出来る場合もあります。また、名誉毀損などの罪に問える可能性もあるので、決して泣き寝入りせずに、とにかく「ダメもと精神」で思い切って相談してみましょう。

ネットいじめの対策2〜親が気をつけるべきポイント〜


■子どもの様子からネットいじめを発見するポイント
 内向的になったり、動揺したり不安になったり、落ち込んだりしている
 他人(弟妹など)を怒鳴ったりいじめたりすることで怒りを表わす
 不眠や頭痛、胃痛、食習慣の変化など身体的な不調を表わす
 社会的な出来事への関心を失う
 以前は問題なかったのに、急に登校を嫌がる
 インターネットなどの技術の利用方法の変化が認められる

■保護者がネットいじめについて子どもと話せるようにするための方法
 オープンに話せる雰囲気を作り、問題が起きてからではなく、日頃からインターネットやテクノロジーについて親子間で話をする
 オンラインで問題があった時は報告するように促し、子どもの話に親が耳を傾ける
 もしもいじめられたとしても、いじめられた方が悪いわけではないのだと子どもを力づける
 他人に助けを求めることは弱さの印ではなく、自立し、そして、いじめている側に「いじめを続けることは許されない」というメッセージを送る手段だということを強調する

■ネットいじめを防止するための最善の方法
 インターネットの安全な使い方を学び、子どもに教える
 写真やビデオなど、いじめに利用されるかも知れない個人情報を投稿することの危険性を子どもに教える
 子どもが言ったことを割り引いて聞いたり、「無視しなさい」「深刻に考えなくていい」などの間違った気休めを子どもに対して言わない
 コンピュータを使えないようにするなどの軽率な対策を取らない
 子どもがいじめに遭ったら、親が一緒に解決策を見つけてあげることを明言する
 子どものネット利用を監視する。たとえばコンピュータを家族のいる場所に置き、ソフトをコントロールし、また、子どもが他の場所でインターネットにアクセスしている場合はそれを極力把握する

参考6:「ネット上でのいじめ」に関する参考文献


参考図書2:ネットいじめについての参考文献
荻上チキ『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』PHP新書537
荻上 チキ・著(批評家・ブロガー、人気サイト「トラカレ!」主宰)
『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』
PHP新書537、PHP研究所・08年7月刊、¥777
渡辺真由子『大人が知らない ネットいじめの真実』ミネルヴァ書房
渡辺 真由子・著
(メディアジャーナリスト、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所非常勤講師、元テレビ局報道記者)
『大人が知らない ネットいじめの真実』
ミネルヴァ書房 ・08年7月刊、¥1,575


参考図書3:いじめ全般に関する参考文献
山脇由貴子著『教室の悪魔――見えない「いじめ」を解決するために』ポプラ社
山脇 由貴子・著
(東京都児童相談センター・心理司。臨床現場の生の声を発信し続ける今最も注目される若手臨床家)
『教室の悪魔――見えない「いじめ」を解決するために』
ポプラ社・06年12月刊、¥924
森口朗『いじめの構造』新潮新書
森口 朗・著 (教育評論家。東京都職員として学校勤務を経験)
『いじめの構造』
新潮新書、新潮社・07年6月刊、¥714


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