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 昨今、子どもたちの学力の低下が指摘され、「ゆとり教育」がその大きな要因として批判の矢面に立っています。今月は、ゆとり教育の目的と意義を確認し、学力低下をもたらしたとされるゆとり教育の問題点を指摘し、併せて昨今のゆとり教育見直しの議論を紹介・解説します。格差社会の到来が心配される昨今、子どもたちの生きる力と確かな学力の形成に資するために私たちは何をしたらよいのでしょうか? 教育問題を中心に改めてこの問題を考えてみましょう。

ゆとり教育と学力の低下
ゆとり教育の前は詰め込み教育が行なわれていた
ゆとり教育の目的〜生きる力と真の学力の形成を目指して〜
ゆとり教育の成果と問題点〜ゆとり教育が学力の低下を招いた!?〜
ついに重い腰を上げた文部科学省〜ゆとり教育の見直しと今後〜


ゆとり教育の前は詰め込み教育が行なわれていた

 ゆとり教育の問題に触れるに先立って、本項では、ある意味でゆとり教育と表裏一体の関係にあると言われる「詰め込み教育」とは一体どのような教育理念だったのかにつて、まずは簡単に解説しておきます。
ゆとり教育と詰め込み教育

 ゆとり教育という考え方は、1970年代以降のいわゆる「詰め込み教育」の反省に立って導入された教育理論です。そのため、ゆとり教育とは何かを知るためには、“詰め込み教育とはどのような理念に立った考え方で、どのような問題点があったのか”をまずは知る必要があります。


「ゆとり教育」と「詰め込み教育」は、教育理念としては実は表裏一体の関係にあると言っても過言ではありません。教育の歴史としては「詰め込み教育」が先に来ますが、どちらにもメリットとデメリットがあるため、どちらがより優れた教育理念かを単純に決めることは出来ないという事情があるのです。
詰め込み教育とは何か?

 1970年代までの日本の教育現場で取り入れられていたのが、いわゆる「詰め込み教育」で、これは戦後の日本の教育理念をリードしてきた考え方です。


 詰め込み教育とは、簡単に言うと「知識をひたすら頭の中に詰め込むこと」に力点を置いた教育と言えます。
詰め込み教育のメリットとデメリット

 詰め込み教育とは上でも触れたように要するに知識をひたすら頭の中に詰め込む事に力点を置いた教育ですが、このような教育法には以下のようなメリットとデメリットがあると考えられています。


■詰め込み教育のメリット
□1: 基本的な知識の学習
 「詰め込み教育」のメリットは、基本的な事項を暗記し続けることによって頭の中に多くの知識が残せることです。実はこのことは人間の学習過程においては非常に重要なことで、若いうちに知識を覚えるクセを身につけないと、その後の人生における判断材料が乏しくなり、豊かな想像・創造がしづらくなってしまうのです。
□2: 試験判定の簡易さ
 「詰め込み教育」のメリットには、学力を判定する学校の先生の負担が少ないということも挙げられます。「詰め込み教育」における試験は単純に“知識を知っているか知らないか”をメインに構成出来るので、生徒の習熟度を画一的・客観的に点数化しやすいのです。

■詰め込み教育のデメリット
□1: 学習意欲の維持が困難
 「詰め込み教育」のデメリットとして最も議論に挙げられるのが、「生徒が学習意欲を維持するのが難しい」ということです。大抵の人は、ただ物事を暗記する勉強を飽きずに継続することには嫌悪感があるはずで、そのため、どんなに新しい単元に学習が進んでも、暗記することが増えるだけでは、生徒に高いモチベーションを要求する方が無理というものでしょう。そんな訳で、「詰め込み教育」では生徒の積極的な学ぶ意思や想像力を育むのは難しいとされています。
□2: 知識習得の一過性
 知識習得の一過性とは、簡単に言うと「どんなに知識を覚えても、テストが終わればそれまで覚えた知識を忘れてしまう」ということです。これは学習という行為の本質を大きく見誤っていると同時に、学習者にとっても殆どプラスになることがない非常に重大なデメリットと言ってよいでしょう。
□3: 激しい受験競争
 「詰め込み教育」のメリットとして「試験の点数を画一的につけやすい」というものがありましたが、それが結局1970年代にピークを迎えた過度の受験競争をもたらしました。そして、さらに受験競争の激化が生徒のストレスを増大させ、イジメに代表される問題の数々を招いたのだとも考えられています。

詰め込み教育の爪跡〜受験競争と日本の社会システム

 上でも触れたように詰め込み教育は戦後の日本の教育をリードしてきた考え方ですが、ここでは、その詰め込み教育が日本の社会に残した爪跡について簡単に触れておきましょう。


 詰め込み教育の爪跡として必ず引き合いに出されるのがいわゆる「受験競争」です。確かに詰め込み教育は知識をひたすら暗記する形式を取りやすいので、その結果として過度の受験競争を引き起こしやすいという特徴があります。


◇注:  確かに、以前は「詰め込み教育こそ受験競争とそれに続く就職競争の最大の原因だ」と考える方が多くいました。この受験競争は70年代にピークを迎えましたが、これは必ずしも詰め込み教育自体が問題ではなく、実は大学のランクがそのまま就職に直結するという日本のシステムそのものの問題でした。ゆとり教育が主流の現在の社会においても受験競争がなくならないことがこれを証明していると言ってよいでしょう。


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ゆとり教育の目的〜生きる力と真の学力の形成を目指して〜

 ゆとり教育の内容を知るためには、どのような部分にその“目的”が設定され、その結果としてどのような“利点”があると想定されているのかを知ることが欠かせません。本項では、そのような観点から、ゆとり教育とは一体どのような教育なのかを解説してゆきます。
生きる力と確かな学力

 変化の激しいこれからの社会を生きる現代の子どもたちには、「生きる力」を養うための「確かな学力」を育むことが必要であることは論を俟ちません。そして、ゆとり教育の目指すものも、ひとえにこの力の形成に他ならないと言ってよいでしょう。


■生きる力とは?
 「生きる力」とは、変化の激しいこれからの社会を生きる子どもたちに身につけさせたい「確かな学力」「豊かな人間性」「健康と体力」の3つの要素からなる力
確かな学力:
 知識や技能はもちろんのこと、さらにこれに加えて、学ぶ意欲や、また、自分で課題を見つけて自ら学び、主体的に判断し行動し、そして、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの。
健康・体力:
 逞しく生きてゆくために必要な健康や体力
豊かな人間性:
 自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心など
生きる力



ゆとり教育の目的

 ゆとり教育は生徒個人の自主性を伸ばすことに主眼を置いた教育です。すなわちゆとり教育の目的とは、簡単に言えば「生徒の勉強の負担を減らしてその分こころの余裕を確保し、より自由な発想を育もう」ということにつきます。そして、さらにそれは国際社会で通用し得る真の学力を形成することをも目的としています。


■ゆとり教育の目的
 各学校のスタッフが自分たちで知恵を出し合って特徴豊かな教育を行なう
 生徒の学ぶ勉強範囲を絞ることでその負担を減らし、浮いた時間は生徒個人の自主的な勉強の時間に当てる
 生徒自身が「自分で物事を考える力」を育てることが出来るよう導く

ゆとり教育のメリット

 それでは、詰め込み教育に対してゆとり教育には一体どのようなメリットがあるでしょうか? 
 本節では、参考までに文部科学省が当初考えていたゆとり教育の利点を以下に紹介します。


■ゆとり教育の利点
□1: 考える力を養う
 ゆとり教育の利点は何と言っても、“子どもたちが自分自身で物事を考える力を育てられる”という点です。要するに、基本的には「学校で教わる勉強範囲は少なくなったので、それ以上知識を吸収したければ自分で調べるしかない」という理屈ですが、このような学習過程によって生徒の考える力を養おうと考えたのです。
□2: 生きる力を養う
 物事を自分で考えるという習慣は人間が生きていく上では欠かせない要素です。要するに、これは「物事を自分の頭で考える力とは生きる力に直結している」という考え方です。
□3: 豊かな人間性を育む
 「生きる力が養われると、それは豊かな人間性につながる」という論理です。簡単に図式的に説明すれば、〔生きる力を養う→多くの経験を積む=多様な価値観を学ぶ→豊かな人間性を育む〕というプロセスが起こる、という考え方です。

ゆとり教育の内容

 以上のような効果が期待出来ると考えられたゆとり教育の実際の内容は一体どのようなものでしょうか? 
 ゆとり教育の具体的な内容について、本節では幾つか項目を分けて簡単に紹介します。


■ゆとり教育の内容
□1: 勉強内容の選択
 これは、生徒が学校から与えられた勉強を能動的にこなすのではなく、自主的に教科を選択することを言います。こうすることで生徒の学習意欲が上がり、より学習効率とそのクオリティが上がるという考え方から来ています。
□2: 総合的な学習の時間
 “各学校がその創意工夫によって独自の学習カリキュラムを組み、バラエティに富んだ学習機会を生徒に与えよう”というのが総合学習の狙いです。たとえば農家に行って芋掘りの体験学習をさせたり、英語や中国語を教えたり、或はゴミ拾いなどでボランティア精神を養わせたりと、学校によって多くの試みがなされているとされています(※現実には英語などの言語学習にあてる学校が多いようです)。
□3: 選択学習
 選択学習は主に高校などで実施されていますが、生徒の習熟度に合わせてより発展的な内容を扱うことが可能であることを指します。つまり、“より生徒個人に焦点を合わせた学習機会を与えよう”というわけです。
□4: 問題解決力を養う学習
 問題解決を養う学習とは、たとえば「観察や実験」「プレゼンテーションやディベート」のような「問題を解決するのに時間と思考力を必要とする学習」を指します。ゆとり教育の目的である「考える力を養う」を実現するためにはまさに打ってつけの分野というわけです。
□5: 学校週5日制
 これまでの理念的な内容とは少し離れますが、ゆとり教育を実践するための手段として週休2日制の導入にも触れないわけにはゆきません。週休2日制がどのような制度なのか説明する必要はないでしょうが、何故ゆとり教育に週休2日制が関係するかというと、これは、「土曜日は休みにするので、日ごろの疲れを取って下さい」というわけではなく、空いた時間で生徒が自主的に学習する機会を与えようとしているのです。


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ゆとり教育の成果と問題点〜ゆとり教育が学力の低下を招いた!?〜

 それでは、文部科学省や政府が期待したゆとり教育は実際に成果を上げているのでしょうか? 
 本項では、ゆとり教育の逆説的な成果としてよく取り上げられることの多い「学力低下」の問題につて、以下でなるべく詳しく解説してゆきます。
ゆとり教育の経緯〜ゆとり教育路線は既に20年以上前から始まっていた!〜

 日本の教育は文部科学省が告示する「学習指導要領」によって決まります。現在の学習指導要領は1998年に全面改訂されたもので、2002年度(高校は2003年度)から全面的に実施されました。そのため、ゆとり教育はこの時に始まったと思っている方が多いのですが、実際は“ゆとり教育路線”として、ゆとり教育は20年以上も前の1981年度から始まっていたのです。従って、現在34歳以下の人は小学校からゆとり教育を受けていたことになります。


実施年度 中学3年間の総授業時間の変化 理念と概要
1981年度 3,535h→3,150h ゆとり教育路線
(※ゆとりと充実。戦後初めて学習内容と授業時間を減らした)
1993年度 3,150h 新学力観による教育
(※興味や関心を重視、生活科の新設、月2回土曜が休みに)
2002年度 3,150h→2,940h (本格的な)ゆとり教育
(※3割削減、学校週5日制、総合的な学習の時間)

実は“ゆとり”がなかいゆとり教育!?
〜ゆとり教育では分数の計算をわずか1年の間で学ばなければいけなくなった〜

 腕で解説したようにゆとり教育路線は既に20年以上前から始まっていたわけですが、実際に教育がゆとり教育に大きく路線変更したのは第2期からのことです。すなわち、1989年(実施は1993年度から)と1998年(同2002年度から)に学習指導要領が変わり、現在の「ゆとり教育」へ教育路線が大きく変更されたのです。ところが、皮肉なことに期待されていたゆとりは一向に生まれませんでした。

 ゆとり教育に路線を大幅に換えながら期待されていたゆとりが生まれなかった原因は一体何でしょうか?
 それは、学習内容を厳選し、総合的な学習の時間などを増やしたのはもちろんよいのですが、それと同時に授業時間や授業日数までも減らしてしまったことにあります。


◆解説:  現在の中学校の授業日数は大体190日前後(始業式などを除く)ですが、これでは、定期テストや学校行事がある日を除いたら、1年のうち約半分しか授業がないことになります。このように授業時間自体が少なければ、余裕を持って子どもたちが学習内容を学ぶことが出来なくなり、結果的にゆとりがなくなっているという事態を生んでいるわけです。

 たとえば、これまでの教育では分数の計算は小学校5年生で足し算・引き算、6年生で掛け算・割り算を学んでいました。要するに、2年間かけてじっくり分数の計算を学んでいたのです。ところが現在のゆとり教育では、何と6年生のたった1年間で分数の計算を全て学ばなければいけなくなり、却って授業の密度が濃くなってしまったのです。そして、このしわ寄せは中学校に向かい、分数など小学校で習ったはずの基本的な計算が出来ない中学生が増加してしまったのです。


 そもそも長い期間をかけて基礎基本をじっくり学ぶ「ゆとり」がないわけで、これでは、ゆとり教育の本来の目的とは正反対の結果になってしまいると言ってよいでしょう。

学力低下の原因は何か?

 ゆとり教育は今や悪者にされている感がありますが、学力の低下は何もゆとり教育だけが問題だとは必ずしも言い切れません。ここでは学力の低下の原因について幾つか項目を挙げて紹介します。


■学力の低下の原因
□1: ゆとり教育
 実際に基礎学力が低下傾向にあるというデータは幾つも存在していることからも分かるように、学力低下の原因がゆとり教育の実施にあることはほぼ間違いがない事実でしょう。(※ただし、ゆとり教育だけでこれほど深刻な学力低下は起きないことも忘れてはならないでしょう。) 
□2: 日常の誘惑の増加
 学力低下の原因のひとつとして、日常生活における誘惑の増加を挙げることが出来ます。これは、子どもがテレビや漫画・インターネットなどに熱中するために勉強をしていないということです。これを敢えてゆとり教育に結びつけると、折角土曜日が休みになっても、その分遊ぶ時間が増えただけで、子どもは勉強していないことになります。
□3: 家庭環境
 学力低下の原因が家庭環境にあることも間違いない事実です。つまり、学力低下の背景には、親が子どもにちゃんとした躾=教育をしていないツケが現われていると考えることも出来るのです。
□4: 大学の乱立
 学力低下の原因のひとつに、大学の数が増えすぎたことも挙げられます。この20年間で大学の数は2倍弱に膨れ上がりました。しかし、学力の高い大学が増えたのでなく学力の低い大学が急増したので、結果的に平均点を落とすように大学生の学力低下を招いたとも言えるのです。


◆参考アンケート:学力低下の原因として考えられるもの
学力低下の原因

学力の低下は一体何をもたらすか? 

 ゆとり教育の失敗による学力の低下が格差社会化を推進するのではないかという危惧が一部で囁かれています。ゆとり教育などによる学力の低下が今後もたらすであろう事柄について、本節では幾つか項目を分けて簡単に紹介・解説しておきます。


◆参考アンケート2:学力の低下は心配か?
学力低下は心配か?

学力低下と貧乏

 学力低下は結局のところ貧乏につながってゆきます。

 貧乏な状態というのが人間にとって不幸な状態のひとつだということについてはどなたも異論がないでしょう。もちろん貧乏でも心が豊かな人は大勢いるのは皆さんもご存知の通りですが、貧乏が原因で犯罪に奔る例も跡を絶たないのも事実です。要するに、学力の低下によって今後望む職業に就けない貧乏な若者が増えることで、格差社会化が推進するのではないかと恐れられているのです。
学力低下と国際競争力の低下

 学力の低下が目に見える形で私たちの生活に与える影響のひとつに、国際競争力の低下が挙げられます。要するに、学力低下によって国際市場と対等な力関係を維持することが今後難しくなるだろうと危惧されているのです。
学力低下と情緒の不安定化

 最近よくキレる子どもの話題がよく取り上げられるようになりましたが、これにはゆとり教育による学力低下が関係しているのではないかという研究報告があるのです。


 当然ながら学力の低下が直ちに情緒の不安定につながるわけではありませんが、知力と情緒・体力がが互いに関連しあった人間にとって大事な能力であることは論を俟ちません。

 たとえば数学や理科に代表されるような教科を身に着けるためには「論理的な思考能力」や「答えを導くまで諦めない忍耐力」などが必要です。しかし、ゆとり教育によってこのような教科の学習機会を失ってしまうと、当然身に付くべきこれらの能力が発展しないまま成長することになります。それが結果的に情緒の不安定をもたらしている可能性もあると考えられているのです。
学力低下と国家としての秩序の悪化

 上で述べた国際競争力の低下や情緒不安定が招く社会状態は非常に深刻なものがあると言ってよいでしょう。具体的には国際競争力の低下は国家としての収入減を意味しますから、国民の所得が減ることを意味します。つまり、貧乏な人間が増えるということです。また、貧乏人が増えると明らかに増加するのが犯罪です。そして犯罪が増えると、更なる社会情勢の悪化を招きます。このようなサイクルが続くと、日本という国家は少なくとも現在のような生活レベルを維持することが非常に難しくなるでしょう。

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ついに重い腰を上げた文部科学省〜ゆとり教育の見直しと今後〜

 批判喧しいゆとり教育ですが、昨今、多くの人によってゆとり教育の見直し論議が声高に主張されています。本項では、ゆとり教育のどの部分が見直されようとしているのかにつて解説しました。
いよいよ始まった「ゆとり教育」の見直し

 「ゆとり教育を見直せ!」という圧倒的な国民の声に押されて、いよいよ教育の本丸である文部科学省や政府も動き始めました。


 上でも触れたように、現在のゆとり教育が導入される前の1980年から2002年までの22年をかけて「詰め込み教育」の見直しが行なわれてきました。そして、再び「ゆとり教育」の見直しが始まったのです。文部科学省や政府では、授業時間の増加だけでなく、教科ごとの教育内容や教員への評価の見直しも検討されています。ゆとり教育の見直しをキッカケに、議論は現在の学校教育全体の本格的な見直しにつながっているとも言えるでしょう。
ゆとり教育の何が見直されてようとしているのか? 

 上でも解説したように現在のゆとり教育には幾つかの改善すべき問題点があるわけですが、基本的に文部科学省が推し進めようとしているゆとり教育の見直し論議は、ゆとり教育を抜本的に改革するというよりは、そのウィークポイントを改善する方向に進んでいると言ってよいようです。また、最近では文部科学省の見直し論議だけでなく、行政の中枢である内閣府内においても「教育再生会議」が立ち上がり、様々な論議を繰り広げています。

 これら機関が考える見直し論の多くは、その実効性に疑問符がつくものも多いとも言われますが、ここでは彼らが一体どのような点を改善しようとしているのかについて解説します。


■ゆとり教育見直しの論点
□1: 教科
 ゆとり教育による学力低下を受け、文部科学省は主要教科の充実を考えたようで、特に以下の教科の育成には強く重点を置く計画のだと言われます。
  • 国語:全ての教科の基本能力となるので、国語力の育成には特に努める
  • 理系科目:数学や理科のような科目は論理的思考能力の育成には欠かせないので、より充実するように努める
  • 外国語:異文化コミュニケーション能力を拡充し、国際舞台で活躍するに充分な外国語力(≒英語力)を養えるようにその充実に努める
□2: 教師の質
 2006年案の目新しい改革案として教師の評価制度について言及していることが挙げられます。これは「教師の資質などについて保護者や評議員・生徒らの意見を取り入れる」というアイディアですが、これには現場から強い反対の声が挙がっています。「教師の仕事が人気商売になってしまう」というのがその主な主張です。
□3: 教員免許の有効期限化
 今まで教員免許は、基本的に大学卒業後に1度取ってしまえば定年まで失うことがありませんでした。ここに目をつけた教育再生会議は、教員免許を10年一区切りにし、その都度補修を義務付けたり、場合によっては教員免許を失効させることも視野に入れるとしています。
□4: その他
 その他にも、土曜日や長期休業日の短縮を含めた勉強時間数の改革や、子どもの教科達成目標の明確な指標化などが挙げられています。
□5: まとめ
 これらの案を総合すると、ゆとり教育によって削った学習時間を以前の状態に近づけることで生徒の学習時間を増やし、より基礎学力の向上に努めようとすることはもちろん、さらに教師の適正・実績を厳しくチェックする方向に時代は進んでいると言ってよいようです。これは教師にとってはある意味で不遇な時代の始まりかも知れませんが、そもそも今まで教員という立場が優遇されすぎていたと考える方が適切なのかも知れません。

今後の教育の方向性として何が目指されているのか? 

 ゆとり教育が見直されるとして、教育は今後どのような方向に進むのでしょうか? 
 上記と多少重複する部分もありますが、本節では、教育の今後の在り方につての議論を幾つか紹介・解説します。
(1) 教育内容

 上でも解説した通り今後生徒の学習量は増える方向に進んでいますが、その他にも、近年の教育現場で起きている様々な問題に対応するために、教育内容に関して以下のような方向性が示されています。


■今後の教育の方向性(1):教育内容の見直し
□1: 学校再生
 イジメや学級崩壊のような深刻な問題を解決するための指針作りも現在教育再生会議を中心に作成されています。具体的な方法論はまだ完成していませんが、多くの議論をまとめると、生徒の心のケアと教師の権限強化の方向に向かっていると考えられます。
□2: 子どもの規律
 子どもの規律とは、簡単に言えば社会生活に対応する上で最低限必要な道徳や倫理観念を教えようということです。近年の子どもによる信じられないような事件の数々を受けての提言だと言えましょう。

(2) 教師の質

 こちらも先に解説した通り、教師の質の問題に関しても大幅な改善案が出されています。上で紹介した教員免許の有効期限の議論の他にも、たとえば以下のような方向性を目指しているようです。


■今後の教育のの方向性(2):教師の質の向上
□1: 教員の民間採用
 これは「民間企業で養われた感覚を教育現場にも採用し、新しい風を吹かそう」という考え方です。それほど現在の教育現場は閉塞感に満ちているようです。
□2: 能力給の採用
 現在教員免許を持っている教師の中にも、優秀な教師とそうでない教師とがいるのは明白ですが、それなのに教員の給料がほぼ一緒なのは不公平で、かつ個々のモチベーションにも関わるということで、給与体系に能力給を採用しようとしています。

(3) 教育システム

 ゆとり教育の今後の行く末を教育システムの面から整理すると、以下のようなポイントに的を絞ることが出来ます。


■今後の教育の方向性(3):教育システムの改善
□1: 保護者や地域との一体化の促進
 教育のあり方を本来あるべき姿である〔学校―保護者―地域社会〕に3位1体化し、よりオープンな教育現場を目指そうと考えています。それと同時に、校長権限を強化するために学校教育法の改正や校長人材の外部登用も視野に入れているようです。
□2: 教育委員会の抜本的な見直し
 これまで非常に閉鎖的だった教育委員会の体質を抜本的に改革するような動きも目立ちます。地域住民に対する説明責任や危機管理能力を強化し、より機能的な団体へと構造を作り変えようとしているようです。


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