台風は暖かい海面から供給された水蒸気が凝結して雲粒になるときに放出される熱をエネルギーとして発達します。平均的な台風の持つエネルギーは広島,長崎に落とされた原子爆弾の10万個分に相当する巨大なものといわれています。
さらに詳しく専門的に
台風は対流圏全体に及ぶ巨大な渦巻きである。
中心付近は暖かい空気,すなわち軽い空気で覆われ,従って地表は低気圧となっている。これを中心として反時計回りに回る強い風が吹いている。中心を回る風に比べると,半径方向の風はごく弱いが,地表付近では中心方向へ,上層では外向きに流れている。中心付近は台風の眼と言って風や雨の弱いところである。それを取り巻いて眼の壁雲と呼ばれる積乱雲群がある。
この構造から台風発達のメカニズムを次のように考えることができる。積乱雲群は水蒸気の凝結熱を放出するために必須のものである。ここでより多くの凝結熱が放出されれば,より暖かくなり,従って中心はより低圧になる。しかしそのためには新たな水蒸気が継続的に供給されなければならない。それをもたらすものが渦である。渦があると下層では中心に向かう流れが作られ,それによって台風周辺の広い領域から水蒸気が中心付近に集められる。渦が強くなると,中心に向かう流れも強くなる。これが中心付近で上昇し,積乱雲群を維持・発達させる。ただし下層での中心向きの流れのためにはもうひとつ重要な要因がある。それは摩擦である。摩擦がないと,渦は中心の回りを単に回り続けるだけだからである。摩擦があって始めて流れは中心に向かう。摩擦は一般的には運動を阻害する要因であるが,台風の発達にとっては不可欠なものである。